サクラセブンズのケープタウン大会を振り返る

8日日曜は府中朝日フットボールパークで行われた女子関東大会OTOWAカップを観戦に行ってきました。結果はRKUグレースが日体大に、TKMがアルカスにそれぞれ勝利しました。この2試合の観戦記は、WebサイトRUGBY JAPAN 365でもレポートがUPされると思うのでまた改めて。今回はケープタウン大会を6位入賞で終えたサクラセブンズの戦いを振り返ります。日本協会HPの遠征レポートを見ると、多くの写真があり見応えがありますね。

初日の予選プール、NZに前半をリードして競った展開に

まず先週のドバイ大会に続くケープタウン大会では、これまでの予選プール4チームのフォーマットから異なり、3チームになって初日の試合が2試合になりました。連続して8強入りを狙う日本はまず前回10位の中国と戦い14-7で勝利、8強入りをほぼ決めてNZに挑みました。

先週のドバイでは12-36で負けたNZとの再戦はお互い2トライを奪って前半を終える展開に

前半開始2分でNZが2トライを奪い先行しますが、そこからサクラセブンズが反撃。まず自陣10mのラックから永田選手が素早く持ち出すとそのまま60mを独走トライ。そしてさらに前半終了間際に攻め込むと、敵陣22mのラックから出たボールを受けた今大会キャプテンの内海選手が外にステップして目の前のDFを置き去りにして抜け出しトライ、コ12-10とリードして折り返しました。ハイライトにはない場面でも、DFで我慢して相手のミスを誘うなど、NZを相手に前半をリードして折り返すのは初めてだったのではないでしょうか。

後半開始してすぐにギアを上げてきたNZに逆転トライを許しますが、サクラセブンズは反撃。敵陣22m内に攻め込んだり、終盤にはNZ選手のハイタックルによるシンビンもあり、7点差以内の負けで得られるBPを目指して3トライ目のチャンスもありましたが、最後はオフロードパスが繋がらずに12-22で負け。NZのコンバージョンが1本しか決まっていませんし、敵陣でのDFでラインブレイクを許さず、簡単にポスト近くにトライをさせない日本の堅いDFが良かったと思います。それでもNZにはいつでもトライを奪えるような余裕を感じましたし、まだ優勝を狙う上位の国とは力の差があるのかなと感じました。

5位トーナメントの初戦はアイルランドから先手を取って勝利

日本が2トライを先行しリードする展開になり、相手にプレッシャーを与えました

日本はキックオフレシーブからアイルランドに攻め込まれますが、内海選手が倒された選手の腕にうまく絡んでボールを奪うと、そこから素早く展開し大橋選手が相手DFをステップでかわし大外の吉野選手が約35mを走り切って7点先制。さらに3分に大谷選手が追加のトライを奪い、12-0とリード。アイルランドにもトライを返されますが、終盤に敵陣10m過ぎのラックから高橋選手が持ち出して目の前のDFを引き付けて、逆サイドからラック脇に走りこんだ内海選手がそのまま抜け出しトライ。19-5とリードし、前半を終えて優位に進めました。

後半開始のキックオフから、DFのギャップを走られて捕まえられずに独走トライを許して7点差に追い上げられますが、その直後のアタックでケープタウンで大活躍の内海選手が外に仕掛けて相手DFを引き付けると、大谷選手がクロスに走りこんで一気に65mを独走トライ。まだ残り5分あるとはいえ、相手に連続トライを許さずにすぐに14点差に戻したのは大きかったです。その後のアイルランドの反撃を2トライのみに抑え、26-22で勝利しました。

最終戦の5位決定戦の相手はカナダ、先週のドバイ大会では2連勝した相手ですが、この日のカナダは所々でラック近くをまっすぐに前に出てくるパワープレーを仕掛けてきて、日本のDFを後ろに下げていました。日本の素早く前に出てくるDFへの対策として、ボールを後ろに下げずにゲインライン近くのプレーを増やしてきたのかもしれません。前半の終盤に日本の反則からクイックで攻めてきたカナダに、戻り切れずにタックルにいった永田選手がシンビンになると1人少ない時間帯でカナダに2トライを奪われて、リードを拡げられます。日本は試合終盤に吉野選手がトライを奪いますが、5-22で敗れてケープタウン大会を6位で終えました。

日本のアタックに独自性を感じた一方、相手も日本対策を講じてます

シリーズ2大会を終えて日本は総合6位、

ケープタウン大会を振り返ると、まず連続8強入りを果たしたという結果は見事でした。これまでチームの熟成度が足りない中で苦戦が続いていたシリーズ序盤、どのチームもパリ五輪後にメンバーの入れ替えが大きく行われたと思いますが、その中で日本はどの選手も活躍していました。特にケープタウン大会ではキャプテンの内海選手が攻守に渡り活躍していましたし、キッカーとしての役割もしっかり果たしていました。またチームとしては粘り強いDFとキックオフの攻防でしっかり戦えたことが、安定した戦いが出来た理由と思いました。

また他の強豪国の試合もいくつか見ましたが、やはり個人での強さ、速さを軸にしてトライを奪う形が多かったです。太陽生命WSSでも活躍していたニア・トレバー選手、米国代表に復帰すると準決勝では先週のドバイ大会王者のオーストラリアを相手に後半2トライを奪って決勝に導くと、決勝でのNZを相手に自陣から80m近くの独走トライを奪いました。

https://twitter.com/SVNSSeries/status/1865799411583836296
ワールドセブンズシリーズものインパクトを残すニア・トレバー選手の走り

振り返れば日本戦のNZもフィジカルもサイズも上回る個々が仕掛けて、追いかけて捕まえる日本のDFから逃げるようにオフロードパスで繋いでトライを奪っていました。一方で日本はアイルランド戦の内海選手や大谷選手のトライのように、2人がうまく連携して鮮やかにトライを奪う形がありました。きっとチームとしてトライを奪うためのパターン、戦略をしっかり共有しているのだと感じます。個人の力で上回るのは難しい中、高いスキルとチームの連携で上回る、そんな日本の戦いは独自性があって面白いですね。

一方で勝てなかったNZやカナダは、日本に対して強みであるフィジカルを押し出すような戦いを見せて、ゲームの流れを掴んでいました。NZやオーストラリアはパススキルも高くワイドなラインから1対1の場面を作ってくるので、今後さらに上位進出を狙う上ではいかにアタックの精度を高めて、自陣からでもボールを持つ時間を増やしていけるかが大事ですね。相手のアタックの時間を減らすという意味では、相手の反則から自信のあるスクラムを選択して時間を使うのも良かったと思います。次の豪州パース大会までは約1か月半、このメンバーを主体に他の候補選手もレベルアップしえtさらなる成長を期待。頑張れ、サクラセブンズ!

最後に大会2日目のハイライト、選手が入れ替わってもNZの安定した強さは本当にあっぱれ