東京五輪、女子セブンズは全敗の12位で悔しい終戦

29日から行われた女子7人制ラグビー競技、日本は予選の3試合、9位~12位決定戦の2試合、1勝もできずに12位で大会を終えました。リオ五輪で金メダルを目指しながら10位に終わってからスタートした5年間の強化の集大成。悔しい、という言葉では表しきれない深い悔しさは選手、スタッフ、そして応援したファンの皆様にも多いのではないでしょうか。

大会5試合のスコアはこちら。5試合で6トライ、36点、そして失点は136点。
予選1戦目 VS豪州 0-48
  2戦目 VS米国 7-17
  3戦目 VS中国 0-29
トーナメント1回戦 VSケニア 17-21
11位決定戦 VSブラジル 12-21

大会期間中、日本協会HPには試合の結果と選手コメントが比較的早くアップされていました。忙しい中の情報提供、ありがたいですね。今日の昼にアップされた大会を終わってのヘッドコーチ、選手のコメントはこちらです。また中日スポーツさんも小出選手のコメント「日本は5年前より成長したが、世界のレベルに達していなかった」をタイトルに入れた記事をアップしていました、こちらです。個人的に大会の3日間を振り返ろうと思います。正直に思ったことを書くので、見苦しい文もあるかもしれません。ご了承ください。

試合展開を振り返ると5試合を通じて、リードする時間は短く、7点差より開くような展開もありませんでした。開始から相手DFのプレッシャーを受けて、前に進めずに、どうアタックしするか迷ってしまい、ボールを奪われて一気に得点される場面が予選の3試合では目立ちました。見ていて日本はどういう戦術、戦い方をやりたかったのか。人とボールが動くラグビー、という言葉も出ていたと思います。しかし見ていてそうした意図を感じさせるアタックの時間帯は短かったです。ケニア戦やブラジル戦の1トライ目はそれが感じられて良かったですね。裏へキックする場面もありましたが、きれいにトライに繋がったのはケニア戦の永田選手からのキックをキャッチした小出選手のトライくらいでしょうか。単純に相手に脅威を与えるようなアタックが出来なかった、キックは蹴らざるを得なかった印象もあります。

DFに目を向けると、3トライを奪ったほうが勝利の可能性がかなり高いセブンズで、5試合すべてで相手に3トライを奪われています(ケニア戦は最後に逆転された展開でしたが)。入場する様子を見た時点で、海外勢との体格差を感じた方は多いと思います。それは試合を見ていても、懸命にタックルに行きますが、1対1のフィジカルのバトルで負けているのを痛感しました。タックルに行く日本の選手が体を当てて倒すというより、当てて掴んで倒れているイメージでしょうか。またDFでタックルを外されてそのまま独走される場面が目立ちました。選手の絶対的なスピード不足は得点に現れました。8強に進んだチームの試合を見ていると、自陣から独走されてもカバーするDFが追い付いて止めて粘ります。日本はハーフラインを超えた時点でもう振り切られていて、相手が減速してポスト下にトライ、みたいな場面が多かったです。これは最終戦の前半のブラジル戦でもありました。

5年前のリオ五輪の試合を見た時に感じたのは、最初のキックオフでボールをキープできないのが課題でしたが、東京五輪ではプレッシャーはあれどしっかり対応できていたほうでした(むしろ男子のほうがかなりやられていました)。そしても1つの課題は圧倒されていたフィジカルとスピードの差、ここは上回るのは難しいけれども、最低限ファイトして我慢できるくらいのものはないと厳しいなと感じていました。この課題2点を東京五輪に向けてどう克服するかが、個人的には代表強化のキーファクターかと思っていましたが、今回の5試合を見て、フィジカルの差は埋めきれませんでした。むしろコロナ禍で大会が1年延期したことで、海外勢がそこを強化してきて、日本が遅れを取ったのかもしれません。

選手の大会期間中のコメントを見ると「(前の試合は)良くなかった(やりたいことが出来なかった)けれど、(次の試合で)修正、成長できた」みたいな言葉がありました、確かにそうですし、苦しい試合が続く中でのポジティブなコメントだとも思います。それでもこれまでの長く厳しいトレーニングを積み重ねて、準備をしてきてようやく訪れた本番の舞台で、そのような言葉が出るのはかなり悔しいですね。見ていて力を出し切れなかったというより、相手のプレッシャー(強さと速さ)を受けて力を出せなかった場面が多かったのが予選の3試合でした。

目標としていた8強進出を逃し、気持ちを切り換えて挑んだトーナメントの2試合は、過去に勝ったこともある相手で、実力的にも勝つ可能性のある相手でした。そして自分たちが目指すラグビーを出来た時間帯もありました。しかし終盤に疲れも出て、プレッシャーのかかる中でミスも出て、最後にトライされてしまった。それまで開始から全力で戦ってきたからこそ、残り数分でメンタル含め、余力がなかったのかもしれません。個人もチームも勝ち抜く力が足りなかったということでしょう。得点と順位が残酷なくらいに表していると思います。

今回のチームはリオ五輪の経験者が2人、これまで代表チームを引っ張ってきたベテランの選手がセレクションから漏れて、かなり若がえったチームでした。内定メンバーが発表された時のブログを振り返ると「どんな戦いをするか、予想がつきません」と書いていました。メンバーのセレクションについてはどうこう言うのはおこがましいですが、今回の戦いを見ると、突破役となる選手がいないのがアタックの迷いに繋がったのかもしれません。内定メンバーから負傷で外れた松田選手、アメリカ戦の怪我で戦列を離れたライチェル海遥選手は、まさに突破役の選手でした。それと個人的には、バックアップに入っていた鈴木彩夏選手もワールドシリーズなどで仕掛けて抜け出すプレーができる選手だったので、いないのが残念な選手の1人でした。

他にも大会後の強化をどうしていくか、他のチームの強さの話など、まだまだ振り返り足りないのですが、ちょっと長くなったので今回はこの辺で。もう少し自分の中でも色々と整理して、次回以降のブログで書きたいと思います。ありがとうございました。最後にTwitterでも書きましたが、リオ五輪からこれまで代表の強化に携わってきたスタッフ、本当に厳しいトレーニングを重ねてきた候補選手皆様(本大会から外れたメンバー含め)、本当にお疲れ様でした。東京五輪、皆様の奮闘を見守り、全力で応援できました。ありがとうございました。

東京五輪のセブンズ競技、男子は11位、明日からは女子

23日に東京五輪が開幕、開会式のドローンによるパフォーマンスには驚きました。ソフトボールやサッカーなど先行して始まった競技もありますが、28日を迎えた時点で日本の金メダル2桁とは快挙というか驚きばかりです。競技の出来不出来が話題になるのも五輪ならでは、無観客なのは残念ですが、思っていた以上に楽しんでいます。

そんな中、26日からは7人制ラグビーがスタート。今回は男子からスタートし、1日2試合の3日間で12か国が戦っています。男子の結果は11位でした。各試合のスコアは、
  予選プール1試合目 VS フィジー 19-24
  予選プール2試合目 VS イギリス 0-34
  予選プール1試合目 VS カナダ  12-36
  9-12位決定戦1回戦 VS ケニア  7-21
  11位決定戦 VS 韓国 31-19
初戦で日本に苦戦したフィジーはその後、違うチームかのように調子を上げていって、先ほど行われた決勝戦、NZを相手に最後はPGを決めて27-12で勝利し、連覇を果たしました。

昼過ぎには協会HPにヘッドコーチや選手からのコメントが掲載されました。

日本について27日の2試合は見れていませんが、得点差を見る限りは接戦というわけでもなさそうですね。リオ五輪4位の快挙から、メダルを目指した戦いは最後に韓国に勝っての11位。3試合のパフォーマンスを見た感想としては、Twitterにも呟きましたが、「こんなもんだったのかな」というものです。フィジー戦もトライ場面など良いパフォーマンスを見せながら、大事なところでミスから失点したり、最後のラインアウトのようにチャンスを失ったり。最終戦の韓国戦もパフォーマンス自体は凄く良かったような印象はないです。

もちろん選手、スタッフの頑張りには敬意しかないです。開催国としてこれまで何日も何年も厳しい練習を重ねて強化に励んできました。キャプテンを務めた松井選手の走りも素晴らしかった。それでも世界の強豪国との差は埋めることが出来ませんでした。五輪でもキックオフの不安定さはぬぐえず、得点力がない中、DFでしっかり抑える試合展開にできず。またTwitterのフォロワーの呟きの中に「男子も女子の太陽生命WSSのように国内シリーズ大会を」みたいな意見がありましたが、個人的にはそれは良い強化策とは別かなと思います。今の代表メンバーのほとんどが所属するチームの理解を得て、セブンズに専念してきました。セブンズの試合経験が足りない印象はなく、国内にはない強豪国とのタフな試合経験をいかに重ねて、慣れるかが大事ですね。例えば今から10年前、まだ勝てなかった頃の15人制日本代表(エディーさん就任よりも前)も似たような印象です。課題を次のパリ五輪にいかに繋げるかですね。

そして明日から始まる女子、男子以上に厳しい戦いが続くと予想しています。初日はリオ五輪金メダルの高いスキルを持つ豪州、次に個人のサイズ、スピードが驚異の米国、この強敵を相手に大量得点を奪うのは難しいでしょう。まずはキックオフの攻防で簡単に相手にボールを奪われないこと、そしてDFでいかに粘り強く守り、前後半合わせて4トライ以下に抑えたいです。メンバーが大きく若返り、代表での試合を見たことのない選手もいて、正直スタメン予想するのも難しいです。協会HPに発表された大会の最終スコッド、13名はこちらです。

五輪登録メンバー予想も大きく外しましたが、それでもあえて先発7人を予想してみました。tまずスコッド内でもセブンズ経験の多いライチェル海遥、堤ほの花、平野優芽は確定でしょう。残りFW2名は弘津、フィジカルに自信のある梶木でしょうか。ラクロス出身で話題の白子は長身でキックオフのキーマンになりそうなので、交代含め出番はありそうです。BKですが、前回のリオを経験している小出もセブンズ経験豊富ですし、デュアルキャプテンでランニングに優れた清水もいるのでこの2名がスタメンに入るかと思います。そのほかにリオ五輪を経験している山中や突破力のある黒木、一気の加速で外を走り抜ける原が控えています。

永田や大谷はゲームメーカー的なポジションになるのかな、黒木はFWに入るかもしれませんし、原は後半に出てきて疲れの見えてきたDFをかき回すような動きを見せてくれるかもしれません。いずれにせよ、初日のタフな2試合をどう戦うか。怪我人が出る可能性もありますし、今はスコッド13名全員でまずは予選プール3試合をしっかり戦い抜いて、何とか8強進出を果たしてほしいなと思います。もし1勝2敗になった場合、おそらくほかのプールの3位との得失点差で8位に入るかどうかが決まります。太陽生命WSSや男子の結果を見る限り、目安は‐15点くらいですかね。なので予選で例えば5トライ差で大敗するとかなり難しいです。

長い文章になってしまいましたが、自分たちはこういう戦い方をするんだ、というのが見ているほうに伝わる試合をしてほしいと願っています。頑張れサクラセブンズ!!