関東女子大会OTOWAカップ第2節

12月に入ってから、2回目のブログになります。2週間前の第1節を終えてから振り返りのブログを書くつもりが、更新できずに第2節になりました。前節の試合については、関東協会のYoutubeチャンネルにハイライト動画がUPされています。昨年は無観客開催となり女子ラグビーのファンの方々に選手のプレーを見せる機会がほとんどありませんでしたが、今年は会場によっては有観客で行われています。

私が現地で見た試合、単独チームになった東京山九フェニックスが快勝しました

第1節の東京山九フェニックスとPTS立正の試合を簡単に振り返ると、前半にフェニックスが5トライを奪いましたが、ワイドに素早くボールを動かして、PTS立正を振り回していました。前半はほとんどがフェニックスのアタックの時間帯で、PTS立正は自陣でDFするばかりでチャンスを作れず。後半は慣れてきたPTS立正が交代で入った日本代表の阿部選手、長田選手らの奮闘もあり、敵陣G前まで攻め込んで1トライを返しますが、フェニックスはラインアウトからモールを押しこんで2番塩崎選手がトライを奪うなど2トライを追加し、快勝しました。スコアは離れましたが、初戦を迎えた時点でチームの完成度の差が現れていましたね。

第1節の勝者通しの対決は予想以上にアルテミスターズが快勝

そして今日26日、全国各地でかなりの冷え込みになる中、横河武蔵野アルテミスターズとRKUグレースの試合が、茨城県の流通経済大学第2ラグビー場で行われました。

第1節では日体大に勝利したアルテミスターズ、ラインブレイクから一気に走り抜けたり、見事なトライが多かったです

第1節はRKUグレースがBRAVE LOUVEに大勝、アルテミスターズが日体大に大量リードから2点差まで追い上げられるも逃げきってそれぞれ勝利しています。お互い相手を研究した上での試合は接戦になるかと予想していました。今回アルテミスターズの兄弟チーム、アトラスターズのYoutubeチャンネルで試合の配信があったので、自宅で観戦出来ました。

風のぶつかる音が聞こえ、アシスタントレフリーのフラッグもかなりの勢いで揺れていました。天気は良かったですが、少し難しいコンディションだったと思います。ラインアウトではスローイングが風に流されてノットストレートになる場面も多かったです。

それでも両チームともに自陣から積極的にボールを動かしていました。アルテミスターズは9番津久井、10番高木のHB団が上手く試合をコントロール、鋭いパスから味方の選手を前に出し、敵陣に入ってチャンスを作ります。敵陣中央スクラムからFKを奪いクイックで攻め込むと、前半8分に14番名倉選手が右隅に飛び込み先制のトライ。その後も接点の攻防でも前に出る場面が多く、優位に経ちました。グレースもDFの素早い寄りからジャッカルを決める場面もありましたが、試合が進むにつれてアルテミスターズの勢いがゲームを支配していきました。0-17で迎えた前半27分にグレースが13番内海選手がラインブレイクし、40m独走トライを返すも、前半の終盤に2トライを加えたアルテミスターズが前半だけで5トライを奪い、27-7でリードしてハーフタイム。

後半はサイドが変わり、風向きがどう影響するか注目していました。開始から風上に立ったRKUグレースが敵陣22mに入り、トライチャンスを作りましたが、アルテミスターズが何とか守り切りました。この開始10分の攻防が勝敗を決めた印象です。グレースは前半に比べてアタックする機会は増えましたが、ハンドリングエラーや反則が目立ち、最後まで試合の流れを掴めませんでした。

アルテミスターズは後半13分に突き放すトライを奪い、その後もDFでも前に出る場面が多かったです。グレースは後半23分にエリア中盤から内海選手がラインブレイクし、G前まで一気に進んで2トライ目を奪いますが、反撃はその1トライのみ。後半36分にはアルテミが敵陣22mでのラックから9番津久井が少し持ち出すと、まっすぐ走りこんできた7番小西に繋いで裏に抜けると、サポートに走った2番の選手がダメ押しのトライ。最終スコアは37-14でアルテミスターズがグレースに快勝しました。

改めて試合を見直しましたが、日本代表サクラフィフティーンの選手の活躍が目立ちました。アルテミスターズはHB以外にも1番南選手、3番ラベマイ選手を軸にスクラム、FW周辺のDFでも優位に経ちました。また14番名倉選手のボールキャリーも流石でしたね。グレースは10番大塚選手が得意のキックを使う場面があまり多くなかったです。ペナルティーからのタッチキックはもしかしたら意図的にノータッチを狙っていたかもしれませんね。また13番内海選手は再三のラインブレイクを見せていました。怪我で春からの代表合宿には呼ばれていませんが、次の試合でもあのランでチームを引っ張ることが出来れば、また呼ばれると思います。

また別会場の府中朝日フットボールパークの2試合は、日体大がBRAVE LOUVEに、PTS立正がYOKOHAMA TKMや国際武道大学、弘前オーバルズなどの合同チームに、それぞれ勝利しました。第2節を終えて、予選で2勝したアルテミスターズは、全国選手権をかけたプレーオフへの進出がほぼ決定。またPTS立正は1勝1敗で一足早く、予選での試合を終えましたが、2位でプレーオフに進出する可能性が高そうですね。

今日は女子以外にも大学選手権の準々決勝や、東京で中学生の全国ジュニア選抜大会が行われていました。そして明日からは高校ラグビー、花園が開幕します。年末、ラグビーの話題が増えてきますね。先週、女子の関西大会も三重PEARLSの優勝で幕を閉じましたが、また試合はチェックできていませんし、年内にもう1回はブログを更新できればと思います。

女子日本代表の英国遠征で感じた課題

12月になり、夕方になるとかなりの冷え込みを感じるようになりました。2021年も残り4週間ないですね、健康に気を付けていきましょう。

先週、大西将太郎さんがJ SPORTSのYoutubeチャンネルで、女子日本代表について熱く語っていました。再生回数がまだ3桁なのが残念ですが、ありがたいですね。動画の中で、日本協会のHP内にラグビー女子日本代表応援サイト Road to WRC2021、があるのを知りました。リンク張っておきますね。コンセプト、サクラウェーブ、改めて思い出しました。

https://www.youtube.com/watch?v=6yIlLfxVKM8
ヨーロッパ遠征3試合の結果にも触れてくれています

また11月27日にはラグビージャーナリストで女子ラグビーをよく取材してくださる大友信彦さんがRUGBY JAPAN 365のサイトで11月のイギリス遠征レビューを書いてくれていました。今回はこの記事の内容を紹介しながら、個人的な意見を整理しようと思います。

試合ごとに内容が良くなるも、得点力不足が明らかになった

先ほど紹介したレビューにあった3試合の戦績
 11月7日 日本×5-23ウェールズ(T:齋藤聖奈)
 11月14日 日本×12-36スコットランド(T:永田虹歩、加藤幸子、C:平山愛)
 11月20日 日本×12-15アイルランド(T:古田真菜、齋藤聖奈、C:大塚朱紗)
世界ランクで格上の3か国を相手にした遠征、各試合のレビューは以前のブログでも書いたので、そちらをご覧ください。レスリーHCのコメントには「W杯本番と同じようなサイクルを経験できた。これはチームにとって大事な学びの時間になったと思う」とあり、確かに来年開催のW杯に向けて、学びは多かったと思います。選手も2年ぶりの遠征できっと苦労やストレスもある中、良い戦いを見せてくれたと思います。この遠征からさらに成長してくれるはず。

一方で多くのファンからは「良い試合だった、来年に向けて良い準備になった」というコメントがアーカイブ内やSNSでも見れました。何をもって良い試合だったのか、と思うと強豪国相手に持てる力を出し切って粘り強い戦いが出来た、というのかもしれません。選手が必死に起きて、素早く動き、攻守に奮闘していた姿は本当に良かった。ただそれで満足してしまい、勝敗に関しての意識が少ない印象は否めません。来年に向けて良い準備?本当に良い準備が出来たのか?私が感じたのは得点差以上の何か、勝利までたどり着けない相手との差の部分です。

そして見出しに書いた話になりますが、女子日本代表の大きな課題は得点力不足です。遠征中の5トライのうち、G前に迫ってラックサイドを攻め込んだのが4トライ。もう1トライは、敵陣10m付近でタックルを受けた小林選手が素早く起き上がってラインブレイクし、フォローに繋いで古田選手がトライしたアイルランド戦の1トライのみでした。試合を見ていて、チームとしてどうトライを取るのか、どう得点を取るのかが見えないと感じました。極論、今のサクラはG前まで攻め込まない限り、トライは取れません。

https://www.youtube.com/watch?v=s-34nIiItmY

チーム内ではアタックのプランとして、阿部、津久井という国際レベルの球捌きの良いSHがいて、ハイテンポでボールを動かして仕掛け続けるというのはあると思います。SOからのアタックのオプションが少なく、そこからの1パスを相手DFに狙われて思いっきりタックルを受ける場面も何回かありました。ラックからプレッシャーを受けてアタックのテンポがスローになった時など、DFの崩し方をチームで取り組めているのかどうかがはっきり見えません。海外の強豪国と比べると、外の選手(FB、WTB)のスピードは劣っていて、一気にラインブレイクしてチャンスを作る場面がなかなか作れませんでした。BKがユニットで上手く動いて、抜けだす場面を作りたいのですが、意図してそういうセットや動きがない印象です。

そのため何とか敵陣に攻め込んでチャンスを作った時に、こうトライを奪う決め事のようなオプションがなく、取り切れないんじゃないかなと個人的には思いました。そしてコーチ陣はそういうトライを取り切るプレーを指導しているのか。男子にはトニー・ブラウンという世界レベルのアタックコーチがいて、2019年のW杯では外に福岡、松島のような世界レベルのフィニッシャーがいました。そして試合では上手く余らせた大外を抜け出してトライチャンスをたくさん作りました。その時の男子のイメージが私には強すぎるのもありますが、サクラは果たしてどう得点を取って勝つのか。

ここ最近の女子の試合結果(World Rugby HPより)を改めて見ると、勝ったチームは最低15~20点は奪っています。そして日本は退場者が出て14人になったアイルランドから50分で1トライしか奪えなかった。悔しい現実ですが、やはり3トライを取る力をつけないことには勝つ可能性は低いまま、良い試合で終わってしまうでしょう。気になって2017年のW杯の5試合のスコアを探してみましたが、予選3試合で7トライ、イタリアには0-22と完封負けで、最終戦の香港には44-5で勝利しました(参考サイト)。また接戦になると、キッカーのプレースキックの精度が大事になります。実際、アイルランド戦では古田選手のトライ後のコンバージョンが外れましたが、もし決まっていて14-15の1点差でゲーム終盤に進んでいたら、敵陣の反則で逆転PGを狙うこともできたはずです。もしラインアウトが取れる計算が出来ていたら、ラインアウトからモールを組んでG前まで押し込むことも狙えたはずです。しかし前のブログで触れたとおりプレッシャーを受けてクリーンキャッチが出来なかったので、それも出来なかった・・・あの12-15の負けはそういう悔しい負けでした(あくまで個人的な印象です)。

遠征3試合すべてに出場した南キャプテン、これからの頑張りに期待

会HPにあるアイルランド戦後のコメントで南キャプテンが最後に「来年のワールドカップに向けては、セットピースを安定させること、精度を上げることや、攻撃のオプションを増やすことが重要になってくる」と語っていましたが、本当にその通りだと思います。選手の頑張り以上に、コーチングスタッフの頑張り、チームの引き上げがないと、来年のW杯でのベスト8入りは難しい状況だと思います。個人的な予想ではほかの予選プールの予想もしたうえで、米国、カナダ、イタリアを相手にどれかで1勝すれば、ベスト8進出に大きく近づくと思います。だからこそ、攻撃のオプションを増やし、得点力を高めるのを1年かけて準備してほしいですね。改めてチームのコンセプトで掲げられている「サクラウェーブ SAKURA WAVE」をどう体現するか、イメージから具体性を持ったアクションに変えてほしい。

最後にレスリーHCは「日本の女子選手は国内での15人制をプレーする機会が極端に少ない」と話していました。これは本当にそうで、関係者が新しい大会やシーズンスケジュール含めて考えないといけません。あくまで個人的な意見になりますが、今後の国内スケジュールは
 2月中旬~6月下旬 セブンズ(太陽生命WSS、リージョナルSなど)
 9月中旬~2月上旬 15人制(関東大会、関西大会、全国選手権など)
という形になるかなと。そして10月11月はサクラのテストマッチ期間でしょうか。本当は春にもテストマッチを組みたいと思いますが、なかなかハードルは高いかもしれません。2019年のように7月に南半球に遠征できれば良いですが、予算に限りはありますしね・・・それと東京五輪のレビューの時にも書きましたが、国内で15人制の試合機会を増やすことがそのまま代表強化に繋がるとも限らないのは否めません(選手にとっては経験=プラスですが)

そんなこんなで長文になりましたが良い試合をしたことで満足して、ここから勝ち上がるために克服すべき課題を見逃してしまうと、東京五輪のセブンズのように、思い描いた戦いが出来ず、悔しい結果になります。2017年W杯で11位に終わった後のレビューから進歩しないと。実はサクラセブンズも世界大会に出れば、得点力不足という点は同じだと思います。選手の強化と同じくらい、コーチングスタッフがいかに鍛え上げられるかが大事と改めて感じました。頑張ろう、サクラフィフティーン、サクラセブンズ!!