昨年のユニバーシアード決勝を改めて振り返る

5月も終わりですね。先日、緊急事態宣言も解除されてまだ油断はできないものの、徐々に日常が戻りつつあります。スポーツ界も宣言前のように戻るのは時間がかかりますが、しっかり対策をとって、徐々に本格的な活動再開に向けて歩んでいきたいです。

男女両方で金メダルを獲得したユニバーシアード日本代表、表彰式後の集合写真

JSPORTSでユニバーシアードの男女決勝をヘッドコーチとキャプテンと共に振り返る番組が放送されたので、オンデマンドで見てみました。昨年の開催地はナポリ、かなりの猛暑だったとか。女子決勝は稲田仁ヘッドコーチと平野優芽キャプテンがリモートで収録に参加、解説していました。

https://www.youtube.com/watch?v=wjaHP3mCzcw
ユニバーシアードの準決勝のロシア戦、決勝のフランス戦はこちらで見れるようです

稲田ヘッドコーチ、平野キャプテン、二人とも昨年の大会だったこともあってか終始リラックスしていて、時には少し笑いも聞こえる解説でした。得失点の場面でもわかりやすい解説でした。先制トライされた場面は、平野「まず1対1のノミネートがずれてしまった、最後は私のミス」と振り返り、稲田HC「先制トライを取られた後は、主導権を握って戦えてる」とのこと。主導権を握れるかはプレッシャーと向き合う上でも重要ですね。他にも当時のチーム状況や仲の良さが伝わる解説で楽しませてもらいました。

試合の内容については以前のブログでも書いていました。勝つべくして勝った良い試合でしたね。改めて日本が勝つために強みにしていきたいと感じたのは「粘り強くしっかり守る、KOリスタートを獲得する」の2点でした。守るというのは相手のトライを3トライ以下に抑えるか、KOリスタートは例えばマイボールを50%獲得、レシーブは80%キープといった指標を作るですかね(おそらくチーム内ではあるとは思います)。これがワールドシリーズの強豪国相手にどれだけ出来るか。KOのところはサイズでは劣勢になりがちなので、高いボールを蹴って相手に競りにいけるか、ここはキックスキルを高めて強みにしていきたいです。

今年2月に行われたシドニー大会の予選ロシア戦を振り返ってみました

ワールドシリーズ、シドニー大会の予選でのロシア戦、最後に独走を許して悔しい逆転負け

シドニー大会の試合がYoutubeにあったので、先ほどの強みにしたい点に注目しながら見てみました。前半開始からはロシアの接点の強さにプレッシャーを受けながらも、何とかボールをキープしてアタックする時間が多かったです。前半残り1分を切って、相手にポスト下に先制トライを奪われましたが、粘り強く守れていました。後半開始のKOリスタートを再獲得して同点に追いつくと、次のKOリスタートでも相手のノッコンを誘いました。その後も粘り強い守りで相手のハンドリングエラーを誘い、後半残り2分を切って逆転トライ。しかしその後のKOリスタートはクリーンキャッチされてしまい、最後はDFで粘れず中央から外に走れて捕まえられず、そのままポスト下にトライされて14-12、悔しい負けでした。

前回のブログでも触れましたが勝負どころでのプレーの質を高く保つ、というところで最後の1分、少しだけ足りなかったですね。そして守る時間が多く、敵陣で攻める時間が少なかった結果、2トライしか奪えず、得点でリードできない時間帯が続きプレッシャーがかかったかもしれません。試合を見る限り、日本の選手のほうがよく動けていましたが、最後にスピード勝負で負けたのが残念。

東京五輪までまだ1年以上ある中で、選手のセレクション含めてどう準備していくか。夏には活動が再開されると思いますが、まずは個々の選手の成長に期待しています!

昨年12月のドバイWSSを振り返る

まず前回の更新から2週間が経ち、新型コロナの感染もピークを過ぎてだいぶ落ち着いてきました。1日も早く2月の頃のように、各地で試合が行われる日が戻ってくるのを願っています。

最近はWorldRugbyのYoutubeに過去のW杯の面白い試合などがフルタイムでアップされてきていますね。先月も紹介しましたが、2010年の女子W杯はまだ女子ラグビーに携わる前の頃なので、こういう機会に見ることが出来、大変貴重です。先週には昨年のドバイ大会のブラジルとの試合がアップされたので見てみました。

ドバイではフランスがNZを破る番狂わせ。23分過ぎから日本とブラジルの試合。アタックする時間が長く試合を優位に進めますが、ラスト1分で独走を許してしまい逆転負け

23:40辺りでメンバーが見れますが、日本の先発7名を見ると2番香川は高校3年生、5番永田と9番弘津は大学1年生と若いメンバーを入れていました(社会人は11番伊藤のみ)。

日本はKOレシーブからテンポ良くアタックで前に出て開始50秒で敵陣22mに入りますが、チャンスのラックでSH役の永田が持ち出したところでDFに捕まり腕を上手くかけられてボールを奪われると、それをきっかけに外の1対1を抜かれてそのまま95mを走られてしまいました。ボールを失った場面を見ると、前に出ていますがその他の選手のポジショニングが遅れていますね。そこにいたるまで5回のラック、2回のオフロードパスを使って良いアタックだっただけに、試合の流れを逃してしまうもったいないプレーでした。ワールドシリーズの試合を見ると、相手の独走に追いついて止める場面はほとんどありません。それだけトップスピードの差があるのは否めないのかなと思います。

日本のトライはその直後、KOレシーブから再びオフロードを交えて3回目のラックで敵陣22mに入り、そこからオフロードを上手く繋いで最後は6番長田がトライし1分で同点に追いつきます。前半の開始2回のアタックで目立ったのは3番のバディヴァカロロ(ライチェル)ですね。外で前に進めて、捕まってもオフロードを上手く繋いで、チャンスを拡げてくれました。その後のプレーでもジャッカルを決めてボールを奪っていますね。

その後もアタックで上手く繋ぎますが、ラックでのコンテストではプレッシャーを受けて、テンポよくアタックさせてもらえず。日本らしいアタックを強豪相手にどれだけ出来るか、という点では接点の攻防は強化すべきスキル、ポイントになりますね。前半ラストプレーでも攻め込んで、インゴールに飛び込むもその直前のパスがスローフォワードになりノートライ。しかし前半だけで3回も敵陣22mに入るなど日本の良いアタックが見られました。

同点で迎えた後半はDFからでしたが、しっかり横の選手と連携してブラジルにプレッシャーをかけて敵陣でノットリリースザボールを奪うと、そこから仕掛けて4番大竹が右中間にトライ。そしてこの後のコンバージョンを惜しくも失敗したことが最後に響きました。その後はDFでペナルティーを奪うと、タッチキックでエリアを取り、優位に進めていくなど残り2分を切る辺りまでは、試合展開は明らかに日本の勝ちゲームでした。

しかし残り1分を切って、前半同様ラックの球出しが乱れて自陣で相手ボールのスクラム。そこをきっかけに前半にも独走トライを決めたエースの11番に外の1対1でタッチライン際を走られて左中間にトライ。そして簡単ではない位置からのキックを決められて悔しい逆転負けとなってしまいました。

試合を通じて感じたのは、勝負どころでプレーの質が高く保てなかったことです。ラックで積極的にファイトをされたことが、後半の終盤のプレーに影響したのかもしれません。後半開始に5点差にしてリードを奪ってから、アタックの機会を得ても前半のように継続することが出来ませんでした。自陣でペナルティーを奪ってもクイックで仕掛ける選択肢を取らず、ラインアウトにして時間を使いました。DFではトライを奪われた場面をのぞいてタックルエラーはほとんどなく、むしろ良い連携でした。目指していた日本のスタイルをしっかり出せていただけに、チャンスにしっかりトライを奪う精度が足りなかったですね。やはり2トライで勝つのは難しい(日本協会HPの大会後のHCとキャプテンのコメントはこちら)。

予選で戦ったNZとの試合は明らかな実力差、どう差を埋めるか

ブラジル戦の2日前に行われた予選のNZ戦は8トライを奪われ完敗、前半はKOレシーブをキープできずDFばかりの苦しい試合で、流れを作れず。

予選のNZとの試合がYoutubeにもあったので見ましたが、こちらはブラジル戦の出来と比べると、真逆のような試合でNZが自分たちのスタイルを存分に見せ付けていました。BlackFernsは個々の強さと速さ、チームのリアクションスピードと連携、オフロードのスキルなど、お手本のような戦いを見せてくれました。日本が仕掛けるのではなく、終始プレッシャーを受けてしまった戦いで、これでは勝てないですね。強豪相手に強みをどこに作るか、もしくは相手の強みをいかにして消すか。対策が求められますね。このNZの戦い方から学ぶことは多いと感じました。

なお補足するとおよそ2ヵ月後のオーストラリア大会では同じNZ相手に0-28という試合でした。トライ数0-4ではまだまだ勝利するのは難しいですが、戦い方次第で自分たちのスタイルを発揮できるとは思います!思っていた以上に文が長くなってしまったので、今回はこの辺で。最近は15人制の試合を見てばかりだったので、改めてセブンズの試合も見直そうと思います。

太陽生命WSSの大会方式を見直して2チーム増やして考えてみた

GWも明日6日を残すのみですが、政府の緊急事態宣言が延長されて、引き続き在宅勤務が続きそうな感じです。数ヶ月前は先週末に太陽生命WSS東京大会が行われる予定でしたが、それも中止になってしまいました。5月もスポーツの開催は大変厳しそうです。早くて6月から学校が再開すればよいのですが・・・後はこれから経済的に苦しくなる人が増えると思います。そろそろ世の中を明るくするような話題が出て欲しいと願っています。

太陽生命WSSの大会方式を自分なりに考えてみた

今年の太陽生命WSS、ならびにリージョナル7sと入替戦が全て中止になり、今回は昇格、降格がありません。代わりになるような大会、例えば昨年は9月に大学生の全国選手権が立正大学で行われましたが、今年はそれもどうなるかわかりませんね。それでも女子ラグビーの強化に大きく貢献した太陽生命WSS、今後の更なる強化、普及に繋げるにはどういう大会にしたら良いのか、考えてみました。

見直す前提として、大会がより盛り上がるのと、それが競技力の向上に繋がるもので考えてみました。それで去年の大会の結果を見て考えたのが
・参加チームを12から2チーム増やして14チームで編成
・14チームを上位8チームのAリーグ、下位6チームのBリーグに分ける
・大会の成績でAリーグとBリーグの自動入れ替えを実施

になります。

まず2019年の太陽生命WSSの総合順位を振り返ってみた

まず日本協会のHPにある2019年度の年間総合順位を見てみました(括弧内の数字は総合ポイント)。優勝ながとBA(69)、準優勝アルカス熊谷(63)、3位三重パールズ(61)、この3チームが60ポイント以上。4位のフェニックス(49)から7位の日体大女子(39)までが10ポイントの間に入っていて。8位のPTS(27)は7位と12ポイントも離れて、入替戦に回った追手門学院(16.5)が10位ですね。降格した横河武蔵野(9.5)は8強に残れずでした。チャレンジチームにいたっては3大会で12位、おそらく1勝も出来なかったはず。

2017年と2018年度は私も千葉ペガサスの監督として戦いましたが、そのときの入替戦への目安が総合20ポイント(4大会で全て9位の場合、4P×4で16P)で、まずは予選プールを勝ち抜いて8強が残るカップトーナメントに進出出来るかが大事です。ワールドウィメンズセブンズシリーズでなかなかカップ戦に進出できないサクラセブンズも似たような立場ですね。総合ポイントを見る限り、優勝を争う上位3チームが抜けていて、上位進出を目指す5,6チームと入替戦回避を目指す3,4チーム(チャレンジチームは降格がありませんが含んでいます)。

接戦を増やすためのリーグ分けと普及に繋げるための2チーム追加

で自分なりに考えたのが、まず競技力向上に繋げるためには接戦を増やすような仕組みづくり。そこで上位8チームをAリーグとして予選プールを4チームずつの2つに分けて、2日目のカップ戦は予選の順位に合わせてたすきがけで実施します。そして下位のBリーグですが4チームだと足りないので2チームを追加し、6チームで総当り(5試合)で行います。

追加の2チームですが、ワールドシリーズでは毎大会、1チームの招待参加があります。太陽生命WSSでも過去に招待チームの参加はありましたが、2017年からなくなりました(理由はよくわかりません、協会内で議論はあったとは思います)。なので大会毎に招待チームを選んで参加させることで、コアチーム以外への普及と強化に繋げられたら良いと考えました。招待チームは前年度のリージョナル7sの結果や地域性を見て選べば良いかと思います。例えば裾野大会に地元静岡のアザレアセブンを選ぶとかですね。

2018年の千葉ペガサスは4大会全てで8強に残れず、入替戦で横河武蔵野とPTSにそれぞれ負けてしまい降格。千葉ペガサスに勝利し、昇格を決めた横河武蔵野は2019年の4大会でいずれも8強に残れなかったように、上位と下位ではっきりと力の差がある現状は否めません(これはワールドシリーズも叱り)。なので下位でまとめて実力の差を少なくして総当り(例えば1日目に3試合、2日目に2試合)でBリーグの順位を決めます。ただAリーグとBリーグで総合ポイント争いでの優位不利は発生するので、それをなくすためにAリーグの下位2チームとBリーグの上位2チームを次の大会で入れ替えます。また大会での獲得ポイントですがAリーグの7位とBリーグの1位、Aリーグの8位とBリーグの2位を同じポイントにするとか、もしくはA7位(8)、B1位(7)、A8位(6)、B2位(5)にするのもありでしょう。

下位チームも最初の大会はBリーグでも、実力があればAリーグに上がって戦うチャンスを得られますし、AリーグのチームもBリーグに降格すると次の大会の総合ポイントがぐっと減ってしまうので、絶対回避するために2日目の試合は緊張感が以前より増したものになるかと思います。招待チームはコアチーム入りを目指すなかで、実際に大会に参加することで感じられるメリットは大きいですし、それに伴ってリージョナル7sも例えば優勝チームを次のシリーズ大会に参加させるようにすれば盛り上がるでしょう。

14チームにすると大会の試合数やチームの負担はどうなるか考えてみた

参加チームを増やしたことで、運営やマッチオフィシャルの負担も増えますが、宿泊や交通費などの予算はおいておいて、とりあえず試合数を整理してみました。
・12チーム:予選全18試合、2日目カップ戦12試合、トロフィー4試合
・14チーム:Aリーグ2日間で24試合、Bリーグ総当り15試合の39試合

とトータルで5試合増えますが、AリーグとBリーグの試合を交互に挟むことでチームの試合間の時間は長くなる見込みです。

太陽生命WSSは1試合の運営時間を22分で回すので6試合で132分、仮に140分としましょう。14チームでAリーグ予選12試合、Bリーグの総当り9試合の計21試合を回そうとした場合、第1試合を9:30開始として第7試合は11:50、第13試合は14:10、第19試合は16:30で、17:30過ぎには初日が終わります。2日目は全18試合で9:30開始であれば16:30には終了します。ただインターバルの時間を入れるのがスケジュール的には難しいですね(苦笑)

という感じで本当に個人的な考えですが、この大会方式になればもっと女子ラグビー全体の強化、普及に繋がるかと思います。チーム数も福岡に日本経済大学ナナイロプリズムなどの新たな女子チームが立ち上がっています。これから5年、10年先も太陽生命WSSが続くのかはわかりませんが、国内での大会実施を通じて、強化と普及の仕組みを上手く構成して欲しいなと思います。次回は代表強化についても考えを整理して、伝えていこうと思います。