花園女子エキシビションと代表HC続投のはなし

昨日27日に全国高校ラグビー、花園が開幕しました。開会式後には高校女子の選抜メンバーがあつまる東西対抗戦が3年ぶりに行われました。この3年、女子は何で行われないのかという声もSNSではよく見ましたし、何より花園でプレーする機会を逃した大学生ラガールの子たちも少なくないわけで、まずは無事に開催できたことに感謝です。

高校女子トップレベルの高まりを実感した花園エキシビション

試合に出場予定だったメンバーは内容は事前に日本協会HPで発表されていました、こちら。また試合内容についてはRUGBY JAPAN 365さんのサイトで大友信彦さんが白熱が伝わる写真と共に素早く試合レポートを上げているのでリンク貼っておきます ⇒ 「3年ぶりの開催「花園U18女子15人制」レポート」

試合結果は西軍が7-0で東軍に勝利、前述のリンクの最後にこれまでの通算成績がありますが、西軍は2018年に続き連勝。その前の2017年は東軍がその年のW杯で活躍したSH津久井萌をはじめ、今年のW杯でも活躍した加藤幸子らトッププレーヤーが集まって、西軍から4トライを奪い24-0で勝利しました(この年の西軍にものちの日本代表が多くいたと思いますが、ここでは割愛)。3年ぶりの試合は開始早々のキックの攻防から、レベルの高さを感じさせました。私が2015年に花園で見た女子のエキシビションはキックは飛ばないのが前提、長いパスを放る選手も少なく、いかにショートパスでを繋いでアタックを継続するか。確か先制トライは東軍のNo8鈴木彩夏(2017年のW杯でも活躍)が敵陣中央のスクラムから持ち出してそのまま30mくらい独走して奪ったと思います。ひたむきなタックルは変わりませんが、極端に言えば、敵陣でずっと攻め続けてようやくトライを奪った後は、お返しのキックオフから今度は守り続けるみたいな、アタックディフェンスの延長みたいな試合だったと思います。

クボタスピアーズの岸岡選手もこんな驚いた呟きを上げるくらい、女子は素晴らしいプレーばかりでした。

岸岡選手の呟きを紹介しましたが、女子ユースの強化としては以前からセブンズユースアカデミーの取り組みはありました。セブンズユースはこの前NZで行われた国際大会に出場し、初優勝を成し遂げてきました。協会HPの遠征レポートは、こちら。それに加えてこの1,2年で日本協会の「Strong Girls」発掘プロジェクトだったり、強化の新たな試みが増えたこと。また高校のチーム数、選手数が増えて、男子と一緒に練習するようなチームも増えてきていること、ラグビーの環境が恵まれてきたことがレベルアップの理由かなと思います。全国各地の高校女子ラグビー関係者の努力、熱量に感謝ですね。

個別に活躍した選手を挙げると長くなるので書きませんが、3年生以外でも活躍が目立った選手もいて、今後もこの花園エキシビションは本当にレベルの高い試合が見れると思います。なので協会の関係者はどうかプレー時間を20分ハーフから伸ばしてほしいと思います。現場的な視点で見ると、選抜された選手をすべて出場させたい一方、試合の勝敗もある以上は、流れ的に選手交代がしにくいところはあるのかなと。高校女子トップレベルの選手たちであれば、30分ハーフでも十分に良いプレーを見せてくれると思います。

女子日本代表HCはレスリーの2024年3月末までの続投が発表

そして女子日本代表サクラフィフティーンの新たな体制について、先日の報道の通りW杯でも指揮したレスリーHCに続投を要請、そして契約更新の発表が日本協会HPでもありました、こちら。W杯を終えた後、以前のブログにもいろいろと書きましたがレスリー体制の継続について、個人的には否定的な部分があり例えば戦術など試合でのパフォーマンスに関することですね。一方で国際的なコネクション、選手の海外へのチャレンジのサポートなど協会関係者のコメントにもあるように評価すべき点もあります。来年秋の新たな国際大会「WXV」に向けての強化というところでは妥当な判断です。

ただラグビー女子日本代表の強化を考えたときに、あくまで個人的な意見ですが、何か新しい人材を招き入れる必要がある段階にきているんじゃないかなと思っています。上手く説明はしにくいのですが、強化システムを作れる人、もしくは戦術の立案、落とし込みに特化した人を登用できないと似たような結果になると感じています。これは外に見えにくい部分でもあるので、ゆえに上手く言えないところもありますが・・・まあ難しい(苦笑)

現場で観戦した関東大会、関西大会の戦いを見ても、選手の数は増えて全体のレベルは年々上がっているなと感じています。一方で世界のレベルも高まる中で、日本代表というハイパフォーマンスなところの強化にも今後は一層高いレベルが求められていくと思います。よく課題として国内のゲーム数についての話がありますが、国内のゲーム数が増えるのと代表強化は直接繋がらないのが個人的な意見です(選手の試合経験が増えるのはもちろんプラスですが)。年明け1月には関東大会の最終日、そして全国女子選手権がありますし、そこでのパフォーマンスを観ながら、また改めて整理したいなと思います。

関西女子大会最終節、三重PEARLSが6連覇

前回からほぼ1か月振りの更新になります。先週は府中朝日フットボールパークで行われた関東大会の2試合も観戦していましたが、帰ってきてからバタバタしていてあっという間に週末になっていました。第1試合は前の週で日体大に敗れた横河武蔵野アルテミスターズと苦戦が続いているYOKOHAMA TKMオーバルズ(弘前サクラオーバルズとの合同)が戦いました。この試合は前半と後半最初の得点はSH津久井選手が抜け出したFWの選手をサポートしてトライを奪いました。またDFでも粘り強く、相手が攻め込んでピンチになりそうなときにジャッカルを決めるなど、終始アルテミペースで完封勝利しました。TKMは所々で外に展開して良いアタックを見せるも、タックル後のブレイクダウン周りでの反則が目立って、ちょっと残念な戦いでしたね。関東協会HPの公式記録はこちら

第1試合目はアルテミスターズが34-0で快勝

第2試合はRIA(立正大、国際武道大、アルカス熊谷の合同チーム)とRKUグレースの試合でした。この試合はRIAの永田選手が先制トライを奪うも、徐々にRKUグレースが流れをつかみました。10番大塚選手が敵陣への大きなキック、前に出てきたDFの裏に転がすキックなど、チームを前に進めるキックががとても有効でしたし、前半最後にはスクラムトライを奪いました。後半はRIAも2トライを奪いましたが、グレースは逆転を許さず24-17で勝利しました。

そして昨日は流通経済大学ラグビー場で東京山九フェニックスとYOKOHAMA TKMオーバルズの試合が行われ、フェニックスが13-5で勝利しました。関東協会HPに大会の勝敗と勝ち点の乗った星取表があります、こちら。全国女子選手権に向けては1敗で並ぶ日体大、フェニックス、アルテミの3チームの争いでしょうか。星取表では日体大とTokyo LaDieSの試合が中止扱いですが、日体大の不戦勝なので勝ち点5が加わり、日体大がリードしている印象です。

関西大会は三重PEARLSが大会6連覇を達成

昨日はスポーツの杜鈴鹿のラグビー場で行われた関西大会を観ましたが、天気予報通りというかそれ以上に寒さを感じる1日でした。観ている方もですが、グラウンドの選手、MO、関係者は大変だったと思います。第1試合はともに初勝利を目指す2チームでしたが、IRIEが57-0で大勝。IRIEは9番、10番、12番の大学生選手がアタックを上手くリードし、トライを重ねました。Central Rhinorsは何とか1トライを奪おうと攻めましたが、2度インゴールに入るもグラウンディングが認められず、相手の粘りもあって惜しいプレーでした。

そして第2試合は勝った方が優勝ということで、三重PEARLSと九州ながと合同が戦いました。それまで関西大会の試合映像は見たことなくて、なんとなくPEARLSが勝つんだろうと思っていましたが、開始10分で九州ながとが2トライを奪いリード。PEARLSはそこから相手の反則で攻め込むと、ラインアウトモールを押し込んでトライ。前半は九州ながとがPEARLSをしっかり分析してよい準備をしてきたと感じさせる内容でした。10番下村選手のキックも50-22ルールが適用される場面があったり、DFでジャッカルを決める場面も多く、PEARLSは我慢の時間が多かったと思います。15-7と九州ながとがリードして前半終了。

後半ですが、開始から20分は得点が動かず。PEARLSが攻める場面が多い中、九州ながとの粘り強いDFが目立ちました。それでもPEARLSが敵陣22mに攻め込み、相手が反則した場面。治療する選手がいて試合が止まる中、PEARLSベンチからは「ショット」の声、まず3点を確実にとって1トライで追いつく状況にしようという意図だったと思います。しかしグラウンドの選手はそれを聞いたうえでトライを狙いに行く積極策を選択した結果、FWの選手が奮闘してトライを奪い、流れをぐっと引き寄せました。この判断の見方は様々あるかもしれませんが、PEARLSというチームの底力を感じました。そしてこの直後に先日のW杯でも活躍したサクラ15の齊藤聖奈選手が出場。その後も残り時間少ない中、自陣から相手の反則、ラインアウトの繰り返しでG前に攻め込むとその齊藤選手がラックサイドに飛び込み決勝トライ。19-15と劇的な逆転勝利で6連覇を飾りました。

https://twitter.com/RugbyPearls/status/1604419337133006848
関西大会最終戦、PEARLSと九州ながと合同の試合は最後まで白熱した展開でした

優勝したPEARLSはW杯にも出場した日本代表選手が多くいますが、そのPEARLSを相手に九州ながとも本当に奮闘していました。15番大内田選手は確かながと所属だったかな。相手のキックをキャッチし、鋭いステップでタックルを外して、リスタートの起点になっていました。またPEARLSがBKに展開した時もしつこく捕まえると、隙があればブレイクダウンでプレッシャーをかけて反則を奪うなど、判断よくプレーしていました。

そんな最終戦で戦った両チームはともに留学生ら外国人選手がいましたが、彼女たちがキープレーヤーでもある一方で、それに頼りすぎることなく、チーム全体が良い動きを見せていました。日本人でも活躍が目立った選手がそれなりにいて、視察に来ていたレスリー日本代表HCも満足していたのではないでしょうか。この2チームが年が明けて1月22日から始まる全国女子選手権に出場します。開催地はまた鈴鹿なので、関東のチームを相手にどんな戦いを見せてくれるか、楽しみですね。