24日に東京パラリンピックの開会式が行われて、さっそく車いすラグビー日本代表が予選リーグを3戦3勝で1位通過して大会を盛り上げてくれていて嬉しいですね。一方で女子15人制日本代表候補は合同(強化+TID)合宿を岩手県釜石市で行っています。協会HPの合宿レポートはこちら。また釜石市でもSNSで積極的に情報発信していますね。私も昨年10月に釜石市を訪れる機会がありましたが、ラグビー関係者には特別な場所なんだなと感じました。合宿の話題については、週末にでも改めてブログに書きたいと思います。
東京五輪の振り返りを何度もブログで書きましたが、幾つかの媒体で新しいものが出ていましたね。結果はどうあれ、ここ5年間の目標としていた大会なので、たくさんの意見があって良いかと思います。今回はまだNHKスポーツのWebで見逃し配信があるので、4週間前の2試合を簡単に振り返ってみます。まず中国戦、見逃し配信のリンクはこちら(1:10:00過ぎから)
試合開始から中国のDFの圧力を受けて仕掛けられなかったサクラセブンズ
中国のキックオフで始まった前半、お互い大量得点を奪って3位で8強を狙う者同士の戦いは日本がしっかりキャッチするも、自陣22m内で外から内へパスを折り返したところで中国のタックルをしっかり受けてしまいそこから反則。そのペナルティーからわずか28秒で中国が先制のトライ。その次のキックオフでは梶木選手が平野選手を1人リフトでしっかりキャッチして攻めようとするも、外でボールを受けた白子選手が捕まってタッチに出されてピンチに。そこでのラインアウトから中国BKの選手のステップにDFが触れずポスト下にトライを許し、この時点で僅か2分30秒。その後の前半では攻撃権を得ると捕まるのを避けてDFの裏のスペースを狙ってボールを蹴るも確保はできず、またDFでも粘りを見せられず、1人のタックルミスから独走トライを許してしまう残念な展開で、前半は0-19。日本は敵陣でのアタックが出来ない苦しい展開の中で梶木選手のタックル、自陣G前でのジャッカルが目立ちました。
迎えた後半、中国選手の独走を原選手が追いかけてノッコンを誘いますが、その後のスクラムで交代で入った堤選手がスクラムから持ち出したところで中国選手が手をかけてターンオーバー。また自陣で相手にボールを奪われて、そこから相手の突進を止め切れずトライされました。一言で言えば、攻守に仕掛けて前に出る中国、プレッシャーを受けてやりたいラグビーが出来ない日本、ですね。日本の攻撃権からスタートするも、パスを繋いでいるうちにボールを奪われて、中国はそこからトライで終わる。仕掛ける選手が出てこないなか、後半に入ってきた選手が仕掛けていくと良い場面も出てきましたが、結局捕まるのを避けて裏へのキックを蹴っては継続できず。レフリーのジャッジもアンラッキーでしたが、攻守に前に出る中国の勢いに飲まれましたね。戦う準備が整っていたとは思えない試合、最後は後半残り1分に敵陣中央のペナルティーからクロスダミーでスピードに乗った相手を捕まえきれず、独走トライをされるなど、悔しい云々を感じないほどの完敗でした。キックを上手く使ったアタックを目指してきたと言いますが、ある程度仕掛けて相手DFを注目させたうえでキックを使うことでより友好的になりますが、この試合ではキック頼みのアタックにしか見えませんでした。DFでも中国の個々の選手が仕掛けに接点でやられて倒れる選手が多かったです。その中でジャッカルでボールを奪う場面もありましたが、プレッシャーをかけ続ける場面はなかったですね。そして次のケニア戦、見逃し配信のリンクはこちら(40:30過ぎから)。
負けられないケニア戦、勝敗を分けたのは何だったのか
ケニアのキックオフで始まった前半、日差しが差し込む中でケニアにボールを奪われるも、そこから低いタックルで相手を倒すと山中選手がジャッカルに成功。クイックで仕掛けて敵陣に入ると、そこからアタックが左右に揺さぶり前に出て、ケニアからオフサイドの反則を誘い、最後は外の原選手がインゴールに飛びこんで5点先制。その後のキックオフでは相手を捕まえられず、追いかける展開であっさり自陣に攻め込まれるも、素早く戻り、ポジショニングの遅いケニアのアタックに対して低いタックルで孤立したところで6番弘津選手がジャッカル成功。中国戦とは明らかに違う動きでゲームを支配し始めます。
ここで日本の選手から「裏、裏」というコールが聞こえますが、試合を見ていて感じたのは「今は蹴るべきではない」という印象です。ケニアより動き出しが早く、プレッシャーをかけている状況、継続してテンポよく振り回せばチャンスは作れそうでした。しかし日本の選手は明らかに「裏へのキック」という判断になっていました。キックをした結果、ケニアの選手がボールを拾うと、倒し消れずに繋がれ、80mを一気に独走されてポスト下にトライされました。その後のキックオフでは自陣から左右に広く揺さぶり、ボールを1分以上継続してチャンスをうかがいます。敵陣に攻め込んだところで、ラックでの球出しが上手くいかず反則してしまうと、そこでのスクラムを起点に外に仕掛けられると日本のDFを上手く引き付けて、外に繋がれてまたしても独走トライを許してしまい、5-14で前半を終了しました。良い場面は日本のほうが多かったと思いますが、結局DFの場面になると、どうしても弱い部分が出てしまいます。それでも攻撃で継続できれば、後半は勝負できると思わせる戦いでした。
9点差を追いかける後半、日本はキックオフからボールを奪い一気に敵陣22mに攻め込みます。そこからはケニアのDFの粘りに前に出れませんが、継続してチャンスをうかがうと、永田選手が裏に蹴りこんだボールをインゴールで小出選手が抑えてトライ。4点差に詰め寄ります。前半同様、日本のやりたいラグビーが見えるスタートでした。さらに次のキックオフでケニアのミスから敵陣でアタックチャンスを得ます。敵陣22mに入ったところでラックのボールがこぼれてケニアにボールを奪われますが、その後のDFでしっかり面を作って前に出てプレッシャーを仕掛けます。もしかしたらケニアにはキックするオプションがないと事前に分析したうえでのプレーかもしれません。敵陣G前に押し込むと、4番梶木選手がジャッカルに成功し、クイックで仕掛けてインゴールに飛び込み逆転のトライ。後半の開始から逆転するまでの4分は完全に日本のペース、ケニアはパニックみたいな状況でした。
残り3分を切って3点リードした状況から日本のキックオフ。ケニアのアタックは個々が仕掛けるシンプルなもので、1人2人としつこく捕まえては素早く起き上がり、粘り強くDFします。狭いサイドのライン際の1対1を抜かれてピンチになりますが、必死に自陣に戻って相手のノッコンを誘います。残り1分半を切っての自陣スクラム、左右に揺さぶるもラインブレイクは出来ない中でケニアがオフサイドの反則。場所は自陣10mの中央付近、残り時間は40秒、日本はスクラムを選択し、時間を使って逃げ切ろうとしましたが、そこからの逆転負けは皆様も知っているかと思います。スクラムから持ち出した堤選手が捕まってボールがこぼれ、ケニアにボールを奪われますが、この時点でノータイム、守り切れば勝てます。しかし外に振られて1対1の場面になると劣勢になり、中央のラックで外のスペースを走られてG前に攻め込まれると、最後はタックルで倒した後にオフロードで繋がれてインゴールに飛び込まれました・・・勝ちを意識した残り1プレーからまさかの逆転負け。日本のやりたいラグビーをたくさん見れましたが、結局は個々の強さが際立ったケニアが最後に勝利をつかみ取りました。
改めて勝敗を分けたのは何だったのか。試合展開は日本のペースでした、ケニアは前半のようにトライした場面はあっさり取りましたが、それ以外の時間は日本の粘り強いDFに手を焼いているようでした。日本の良いプレーも目立ちましたが、勝負所での判断ミスから相手にトライを奪われたのも事実。勝負所でしっかり判断し、ミスのないプレーをするチームの成熟度が僅かに足りなかったのかもしれません。前半のキックの判断、後半最後のスクラムの判断、プレーする選手がどのように判断したのか。個々で反省はしていると思いますが、チームとしてもしっかり振り返ることで、これからの日本代表の成長に繋がるはずだと信じています。4週間経ちましたが、来月にはまた7人制の代表の活動も再開するでしょう。どういう強化体制になるのかわかりませんが、まずは個々の選手のレベルアップ、パワーアップがなければ、世界では通用しないので、その辺りは引き続き注目しようと思います。