先週は毎日のように7人制ラグビーを見ていたので、ふと見なくなるとなんか寂しいもんですね。五輪も先週のメダル獲得ラッシュから少し落ち着いた感じがありますね。
まず前回のブログを紹介するときに「外から見た総括」という表現をしましたが、実際に選手のコンディションはどうだったのか、戦略・戦術の落とし込みは満足だったのか、そしてチームの自信はどうだったのか、などは外から見ても実際のところはわかりません。内定メンバーから怪我で離脱した松田選手、米国戦の前半ラストプレーで負傷交代したライチェル海遥選手不在の影響の大きさは、チームにとってかなり打撃だったかもしれません。五輪が終わった後で日本協会で大会総括の記者会見が予定されていますが、そうした外から見えない部分にも触れるかもしれませんね。
また前回の最後に紹介したハッシュタグ「#7人制女子ラグビー改革素案」の件で、主務の部屋さんのTwitterの内容を引用しながら、自分の考えや意見をお伝えしていきます。代表強化よりも育成や普及の内容のほうが多くなるかと思います。見苦しい内容もあるかもしれませんが、興味あればお読みください。
前回も書きましたが「フィジカルとスピードの差をどう埋めるか」という課題。数値目標の共有、全国の選手・指導者の共通理解を進める、というのは良いアイデアだと思います。選手のわかりやすい目標、モチベーションのアップにも繋がりますよね。海外の代表チームのデータもあると、さらに効果がありそうです。協会主導で明確化する、という点が気になりますね。ある知り合いの指導者の話では、今は海外の強豪国の指導者同士が繋がっていて情報をある程度オープン化し共有しているそうです。全てをオープンにする必要はないですが、例えば代表チームの平均値とか、MAXの重量、ブロンコの最速タイム、20mシャトルランの最大レベル、などで良いかと思います。協会主導というのは、代表主導ということかもしれませんが、誰がやるのかはっきりしないところがありますね。上手くシェアできる環境があるとよいですし、全国のチームから協会にお願いする形もありますね。ただ数字が独り歩きすると、また意図とは違う意味合いを持ってしまう恐れもあります。
数年前にコベルコカップに出場する関東高校女子チームのサポートをしていた際、セレクションで立ち幅跳びの測定を行っていました。当時は千葉ペガサスの監督を務めていて、今回の東京五輪で話題を集めた陸上の寺田明日香選手が所属していたのもあり、その場で寺田選手に連絡して自己ベスト記録を教えてもらい、高校生の選手に伝えたら目を大きくしていました(記録はうる覚えですが250㎝以上だったかな)。日本人はいわゆる欧米の白人系に比べて体を大きくするのに長い時間がかかるイメージがあります。セブンズユースアカデミーはリオ五輪にも出場した兼松さんが担当していますし、そういうフィジカルの課題克服に向けた目標設定、トレーニングの正しいやり方や食育、栄養学、の指導も行っているでしょう。
ハイレベルな試合数の確保について、まず太陽生命WSSが2014年から始まり、これまで女子ラグビーの強化、普及に大きく貢献してくれました。それ以降の5年間で全国に多くの女子チーム(クラブ、大学)が立ち上がる要因にもなったと思います。そしてチャレンジチーム、将来の代表候補の選手たちで構成する即席チームはその年ごとに選手の顔触れが大きく変わることもありましたが、今回の代表チームにも共同キャプテンの清水選手、ライチェル海遥選手は高校生の時にチャレンジチームで年上の大学生やクラブチームとの試合経験を積むことができたと思います。
個人的な危惧ですが、極端に言えば来年以降も太陽生命WSSは行われるのかどうか。もちろん継続して開催されるのを願っていますが、これまで冠スポンサーに対して、どれだけのメリットを与えられたのか。東京五輪の結果に関わらず、大きなターゲットとしていた東京五輪を終えた後の強化予算は間違いなく減るだろうし、厳しくなるだろうと思います。またコロナ禍で応援する企業も経営がこれまでのようにはいかない可能性もある中で、これまでのように大会があるか。数年前は夏にピンクリボンカップという15人制の交流大会もありましたが、続きませんでした。後は太陽生命WSSの競争力向上が必ずしも代表チームの強化には直結しないのもあります。ワールドセブンズシリーズのコアチームに昇格できず、昇格決定戦の開催も未定の中、国内で何とか代表強化を進めていかないといけませんが、極論で言うと国内で海外の強豪国相手のような試合経験(相手が男子でも)は積めない。そう思う理由はリオ五輪の前から東京五輪までの間、強豪国と戦った時の負け方がほとんど変わらないからです。悔しいことに北九州で開催されたシリーズ大会、日本は2大会とも全敗でした。だからこそ試合経験がなくても7位入賞した中国のように、フィジカルでもスピードでも鍛えられる部分をしっかり鍛えて、それに後で経験を加えられるような強化を1日も早く進めていかないといけません。
15人制とのシーズン時期や試合数について、まず年間スケジュールは今のフォーマット(2月~7月はセブンズ、9月~2月は15人制)のままでよいかと思います。前の段落で話した太陽生命WSSも春開催のみで良いと思います。その中で参加チーム数の増減やリージョナルセブンズをどうするか、全体の最適化を行う必要があります。昨年5月に太陽生命のフォーマットについてブログで書いたので、興味ある方は見てみてください(ABの2部リーグ制)。個人的には大事なテーマですが、みんなで議論し始めると収拾がつかなくなりますし、下手すると15人制の代表強化に良くない影響もあります。もし15人制の代表強化をセブンズ並に出来たら、目標としているW杯ベスト8進出は大きく近づくでしょうが、これはあくまで仮の話です。3月のブログでも書きましたが、再来年の秋から女子の新たな国際大会が始まります。それを見越して、今あるものをどう最適化していくか、これは協会主導で考えなければいけませんね。
7人制に特化した指導者の育成について、2016年に女子7人制ラグビーが国体でも正式種目になり、この5年間の間にほぼ全部の都道府県で女子チームが出来ました。そして女子チームの指導者は多かれ少なかれ、男子との違いに戸惑い、苦労が絶えないと思います。協会として、指導者のライセンス有資格者を増やすべく、各レベルの講習会を行っていますが、その内容にセブンズの要素も少しは入っているかとおもいます。さらにセブンズに特化した指導者を増やすのであれば、主務の部屋さんが提案した通り、代表スタッフが全国を回って講習会を行うような取り組みはありだと思います。以前にエディーさんが日本代表HCを務めていたころ、各地に出向いてコーチングクリニックを行い、指導者の育成と若い選手の普及に貢献していました(ちなみに代表チームとの契約内容にこれらの活動は含まれていなかったとか)。本当に日本ラグビーの強化に貢献してくれたと感じる指導者は全国に多いでしょう。そういった試みから協会・代表チームへの信頼、興味、応援が増えていくことも期待できます。
またセブンズのコーチングについての本などもありますが、まずはセブンズという競技の中身、戦略・戦術、トレンドなどの情報をオープン化していくことで、上記の話はある程度進められるのではないかと考えています。2019年W杯の開催前、中高生の育成年代への指導やタレント発掘を行っている野澤武史さんが「このW杯を機にポッドシステムが日本に広まる」と講演の場で話していましたが、その通りになりました。国内では15人制が主流なのもあり、7人制のトレンドをよく理解していない指導者はもしかしたら多いのかもしれません。かくいう私も3年前に女子7人制の現場を離れてから、もうついていけていない部分もあるくらいです。セブンズの普及に日本協会としてどう取り組んでいくか、方向性は見えませんが、現場レベルで情報の共有できる仕組みはここでも求められるというか、あればもっと良くなるかと思います。代表の強化に関しては、本当に少数精鋭で進めていく方向になるかと予想しています。
長くなりましたが、最後に先ほども名前の出た野澤武史さんが朝日新聞に東京五輪の女子セブンズを振り返る記事があったので、リンクを紹介します。「最下位に沈んだセブンズ、パリ見据えて根本改善を お手本はバレー」なお有料会員記事になりますので、ご了承ください。それと早稲田大学ラグビー部コーチの後藤翔太さんが振り返った記事もあるので、同じく紹介します。「RUGBYJAPAN365プレミアムページの後藤翔太さん「Shota’s Check」東京五輪女子セブンズレビュー」こちらも同様、会員専用の記事になります。女子ラグビーをよく知るお二人の振り返りは、なるほどと思わせてくれる意見ばかりです。ありがたいですね。
女子ラグビーの代表チームの強化を考えると、どんどん話が長くなってしまいますね。すみません。まだ海外のチームとの比較だったり、代表選手のセレクションだったり、今後の具体的な強化だったり、整理したい内容がありますが、3日間連続で更新して、少し息切れしています。今週中にまた更新出来ればと思います。長文、お読みいただきありがとうございました。