日経の五輪振り返り記事を読んでコメント

先週13日に日本経済新聞の谷口さんの記事が出ました。タイトルは五輪惨敗の7人制ラグビー 強化へ先進的な挑戦必要に、メダル獲得を目指した結果、男女合わせて10試合で1勝9敗ですから悔しいけれど、惨敗です。無料で全部読めるので読んだラグビー関係者も多いと思います。今回はその内容を読み返しながら、思ったことをコメントしていきます。前回のブログから繋がる内容かもしれませんが、似たようなこと言っているかもしれません(苦笑)

惨敗の理由は色々あれど、結局は個々の力がトップに及ばないのは否めず

「ただでさえ国際経験が乏しい我々にとって、本番でベストなパフォーマンスを発揮するコンディショニングをすることは難しかった」というコメントがありましたが、男女ともにワールドセブンズシリーズに昇格し、コアチームとして参加するも勝てずに翌年降格というのがありました。一方で東京五輪を控えている日本を招待チームとして参加し、強化させたいWorld Rugbyの意向みたいなものを感じることもありました。そうした実戦の機会にも自分たちの強みを出して勝利を重ねるような戦いは出来なかった。試合映像を見る機会は限られましたが、負けるパターンはどれも似ていたのではないか。ベストなパフォーマンスと聞いて思い出すのは2016年のリオ五輪の男子、これまで勝ったことのないNZに照準を合わせて勝つとその勢いを続けて準決勝へ。3日目のフィジーと南アフリカは力及ばずでしたが、それでも日本のスタイルが見える試合だったと記憶しています。

2021年の東京はホーム、実際に会場の東京スタジアムで本大会1年前にリハーサルで試合形式を行ったり、対策をしていましたが、それでもコンディショニングが難しかったというコメント。また大会前に男女とも海外勢との実戦機会をあまり作れなかったともありました。コロナの感染防止対策と海外勢の来日のタイミングもあり、やはりこの状況下で国内で実戦機会を作るのは難しいのは本当でしょう。結果的に石橋をたたきすぎたのだろう、とのコメントもありましたが、もしベストなパフォーマンスを発揮したところで、本当にメダルに届く力があったのかなんとも微妙です。やはりコアチームとして海外の強豪相手に試合経験を積み重ねながら、地力をつけないといけない、岩渕HCのコメントは最もだと思いますし、五輪でメダルを狙うとはそういうことかなと思います。

女子は「選手の力を引き出せたとはいえない」というコメントがありました。それに加えて「ここ数年の体づくりが非効率だったとの批判があるほか、五輪直前に男子チームと多く試合をしてけが人が続出するなどHCの体調管理にも疑問が残る。」ともありました。記事を疑うわけではないのですが、どれだけそうだったのかは正直わからないです。体づくりが非効率、って具体的に何なんだろうと。男子チームと試合をしたからけが人が続出したんですかね。それはHCの体調管理という責任なのか(もちろんチーム内ではS&Cやメディカルのスタッフ含めての責任と感じているのでしょうが)。根本の課題は選手層、ともありました。女子バスケの競技人口と比べたりもしていますが、女子ラグビーの競技人口は果たして他の国と比べて日本より多いのか。トーナメントで惜敗したケニア、ブラジルに競技人口で負けているとは思いません(実際は未確認です)し、国内でもジュニア世代からトップ世代まで様々な指導者が工夫を凝らして選手を鍛え、育てていると感じています。

ラグビーの裾野が広がれば、代表がおのずと強くなるというのは違うのでは

それからラグビーの裾野をどう広げるか、若手のタレント発掘をどうやるか、などというコメントもありました。確かに大事ですし、ここ数年でも男子高校生のBIGマンFASTマンキャンプなど強豪校以外のチームからサイズやスピードのある選手を育てようという取り組みが行われています。実際に2年前の菅平でのキャンプの様子を見学することが出来ましたが、カンタベリーのビブスがピタッとしているFWの選手たちを見ると、将来が楽しみになりました。女子は世界でも稀な国内のセブンズシリーズ大会、太陽生命WSSが2014年から行われ、国体と合わせて全国各地で女子ラグビーチームが立ち上がったり、高校でも新たに女子ラグビー部が出来た学校も増えています。

ただ競技人口が増えた結果、代表の強化に直結するというわけではないと思います。他の国の戦いを見ても、セブンズという競技に特化して鍛え上げられた集団という印象です。日本もそうやって鍛えてきたと思いますが、力の差は埋めきれませんでした。Twitterのフォロワーや関係者の話の中に、女子は太陽生命WSSの試合を増やしたほうがいい、みたいなコメントもありましたが、それと代表チームの強化は全く別物ですね。国内の試合経験を増やすことで、海外の代表チームと戦えるかというと正直そうは思えない。だからこそ代表チームの強化の仕組み、システムをいかに作っていくかが直近の課題ですね。そこが整って、出来上がってこそ、タレント発掘と育成がより結果に結びつくのだと思います。

そして最後の段落ですが「「東京五輪は終わったが、協会として7人制の強化はむしろ加速していく」と岩渕専務理事は強調する。「男女ともどこの国もやっていないような先進的な取り組みが必要になる」とも話した。現場、それを支えるマネジメント、普及や育成……。自国での惨敗を、様々なレベルで先進的な挑戦を始めるきっかけにしてほしい。」とありました。むしろ加速、先進的な取り組み、とありますが、今のところ実際にそうなるのかどうか疑問です。具体的なアイデアはこれから考えるのでしょうが、そもそも強化に必要な財源がどこにあるのだろうか、東京五輪の準備以上の予算を付けられるような結果ではないでしょう。

本当に手っ取り早いのは、海外から優秀な指導者を引っ張ってくることだと思います。協会の本気度が伝わりやすいですし、国内チームの協力も得やすいのではないでしょうか。男子の15人制は2012年からエディーさんがHCになりましたが、代表強化に加えて各地でジュニア選手へのクリニックなどの普及活動やコーチ向けの勉強会などを通じて自分のコーチング哲学や取り組みを積極的に共有するなどの育成活動にも携わってきました。その中で全国各地の指導者の横の繋がりも増えていったと感じています。

また先週Numberで柔道の井上康生と女子バスケのホーバスHCの記事がありました。
「目標設定からの逆算」で五輪を好成績に導いた指導者2人、“もう一つの共通点”とは
こちらの記事の内容からも参考になる部分は多いと思います、是非是非。7人制ラグビー競技は他の強豪国と比べて、まだ力の差はあるのが事実です。この惨敗から5年10年かけて、しっかりした地力をつける強化が出来ることを願っています。

最後に女子15人制日本代表の話を少しだけ。まず新たなアシスタントコーチが加わることが発表されました。元スコットランド女子代表のダルグリーシュ氏だそうです、ラグリパの記事はこちら。また来週から釜石市で合宿を行うことも発表されていますね。こちらは改めてブログで整理できればと思います。