昨日の深夜に行われた日本女子代表サクラフィフティーンとウェールズ女子のテストマッチ、結果はご存じだと思いますが、5-23(前半0-11)で負け。日本はアウェーの中、所々で良いプレーを見せてチャンスを作るも、スコアは終盤に1トライを返すのがやっとでした。日本協会HPにあるウェールズ戦後のコメントはこちら。
前後半共に立ち上がりの大事な時間帯でミスが目立ち苦しい展開に
昨日はライブで観戦しながら、Twitterで気づいたことを呟いていました。色々と振り返ると長くなりそうなので、勝敗のキーポイントに絞って、整理できればと思います。前半、ウェールズのキックオフから始まりましたが、大事な1stアタックでプレッシャーを受けてペナルティー、そこからラインアウトのモールを押し込まれ、開始わずか1:25でトライを奪われました。
2年ぶりのテストマッチとはいえ、チャレンジャーの立ち上がりとしては最悪ですね。この立ち上がりに慌てず、先手を仕掛けて、何フェイズか継続して、敵陣に入るなり出来れば違った展開になったと思います。その後もアタックでキックをチャージされたり、ラインアウトでのミスもあり、10分間はほぼ自陣でのDFの時間帯となりましたが、粘り強く守りました。ウェールズの攻撃のオプションがあまりないのは、事前に予想していた通りで、むしろオフロードを狙ってくる場面もありましたが、全体的には裏へのキックの対処含め、意図するDFが出来ていたと感じました(ナイターという状況で落球する場面もありましたが)。
11点差を追いかける後半の立ち上がりについては、日本のキックオフから相手のミスもありボールを奪うと、アタックでフェイズを重ねたり、裏へのキックを使って前に出てプレッシャーをかけていました。ウェールズのアタックもしっかり止めて敵陣に攻め込むと、後半6分過ぎにウェールズ6番の選手がパスで浮いたボールを叩き落したためにシンビンになり、追い上げるチャンス。しかしG前のラインアウトでモールを組んだところ、ウェールズの選手に絡まれ失敗。その後もミスが目立ち、後半12分に自陣22m内でのアタックで落とした球をセービングされると、そこからウェールズの15番のJoyce選手にトライを奪われてしまいました。
ここでシンビンの間に得点差を詰めたい状況から、一転して拡げられて18点差となり、苦しい状況に追い込んでしまいましたね。Joyce選手は後半32分にもトライを追加し、この試合のPlayer of the Matchに選ばれました。このトライも自陣でのアタックでのパスミスから、ボールを落としたのをセービングされて奪われたのがきっかけでした。奪われた3トライを振り返ると、DFを崩されたというよりは、テストマッチのプレッシャーの中で、自分たちのミスから失点に繋げてしまいました。こういう展開では、選手が奮闘して良い試合はできても、勝つのは正直、厳しいですね。コメント欄を見ても、女子ラグビーファンから健闘を称えるようなコメントが多かったです。ただ男子も過去にそうだったように、善戦するのが精いっぱいで勝ち切るだけの実力はまだないのかもしれません。そしてここを乗り越えないと、来年のW杯のベスト8進出(予選プールで米国、カナダ、イタリアを相手に勝利)も見えてきません。
スタッツは互角に戦えていても、中身はどうだったか
斉藤健仁さんがスタッツを紹介してくれていて、一方で課題はセットと決定力というのも示してくれていました。本当にその通りで、遠征前からもまずはセットプレーである程度戦えないと厳しい試合になるなと予想していました。試合を振り返れば大事な場面でミスが目立ったのは、チャレンジャーの日本。スクラムに関しては、反則を取られる場面もありましたが、相手が交代した直後だったり、早めに仕掛けてきたようにも見えました。逆に反則を奪った場面もあり、決して対応できないほどの差があったとは思えません。後半に点差がついてウェールズにも余裕が出てきた中で、前に出る場面が増えましたが、前半からそういう場面を作れないと、トータルのスタッツでは上回っていても、勝負には勝てないですね。
決定力に関しては、世界ランク上位の国と比べると、明らかにBKのスピードには差があります。キャリーやメーターで上回っていても、ウェールズのJoyce選手のようにチャンスで取り切る選手がいなかったですね。日本はこの試合、11番名倉選手や13番古田選手のボールキャリーが目立ちました。後半に追いかける状況で、アタックのオプションがあまりなく、ウェールズのDFはFW経由含めた2パス目やラインの後ろにセットした選手を明らかに狙っていて、外のスペースに素早くボールを運んでチャンスを作る場面があまりなかったです。DF裏へのキックを外でチェイスした選手が再獲得して前に出る場面もありました。日本は攻め方のオプションを幾つか用意し、DFのポジショニングなど状況を見て、チームで良いオプションを選べるようにならないといけません。むしろラインブレイクしたのは、倒されてからラックになる前にすぐに立ち上がって前に抜け出したりした場面ですね。これは2年前のスコットランド戦でも小西選手がチャンスを作っていましたし、海外のチームはあまりやらないので、今後の試合でもチャンスがありそうです。
個人的には世界ランクが上の相手とは言え、個人個人の実力差はあまり離れていないと感じるで、来年のW杯でのベスト8を目指すなら善戦をしたところで結果がすべて、というスタンスで見ています。日本に勝利したウェールズはこの後、南アフリカ、カナダとの試合を控えています。来年のW杯の予選プールで日本と戦うカナダとどんな試合を見せるのか、注目ですね。そのカナダは米国相手に2連勝して好調です。試合映像はYoutubeにあるので、近いうちに見てみたいと思います。日本は来週にスコットランド、次にアイルランドとウェールズと同様に強い相手とのテストマッチが控えています。戦い方はウェールズと似ていると思いますが、1週間でどう準備するか。ともに注意すべき選手は事前の試合映像で分かっているので、まずはウェールズ戦で出た課題、アタックでのオプションを整理して、接点でボールをしっかりキープし、動かし続けること、そして立ち上がりから慌てず、仕掛けていって、自分たちの展開に持っていけるかですね。
また長文になってしまいました。個人個人について詳しくは書きませんが試合後に呟いた通り、よいプレーを見せた選手もたくさんいました。特に後半に出てきた加藤さん、小林さんの英エクセター・チーフスのコンビはいい活躍をしていましたね。次のスコットランド戦ではDFで激しさやしつこさで目立つ選手が出てきてほしいですね。またライブ中継があるのを期待して、応援していきます。