サクラ15とオーストラリア戦の振り返り

昨日は夕方からラグビー関係者のSNSが「女子日本代表、強豪オーストラリアに12-10で勝利」という話題で溢れていました。サクラ15の選手、スタッフ、関係者の皆様、本当におめでとうございます。チーム内で新型コロナの陽性者が出るなど、タフな状況の中でのアウェー戦の勝利、2019年のスコットランド戦以上の出来と言ってよいでしょう、本当に。

POM(Player of the Match)を獲得した10番大塚選手、写真は映像を配信したStan SportのSNSから拝借。

勝利の要因は粘り強いDFに加えて、キックを使ってのエリア獲得

試合の簡単なレポートと試合後の南主将をはじめ選手、スタッフのコメントはRUGBY JAPAN 365で見事な記事にまとめられているので、ご覧ください
 ⇒ 「ワラルーズに勝利!歴史的快挙を成し遂げた」

試合は相手の強みであるラインアウトモールに対して、あえてコンタクトせずに見て、反則を誘うなど、しっかり対策を練っていました。先日のフィジー戦を会場で見れたことで、チーム内でいい議論が出来たのではないかと。スクラムでは大型FWを相手に反則を取られたり終始苦しい展開でしたが、課題のラインアウトでは初テストマッチの公家選手が安定したスローイングを見せました。そしてDFでは素早いセットから相手FWのアタックを止めて、DFで前に出る場面が多かったです。キックのカウンターから外のBKに走られることもありましたが、内側からカバーしたり、FB庵奥選手が捕まえるなど、トライチャンスを作らせません。

30分過ぎに最大にピンチの場面が訪れました。相手スクラムのアタックからラインブレイクされ一気にG前まで攻め込まれますが、SH津久井が見事なカバーDFでタックル、WTB今釘が左サイトから全力で戻って右サイトのスペースを埋めます。早くトライを奪いたい豪州は外へ大きなパスを放りますが、今釘選手が見事なインターセプト、そこから一気に敵陣G前まで進みました。津久井、今釘の2人の素晴らしい献身的なプレーで大ピンチを防ぎました。

後半開始のキックオフ、相手FWの多いサイドの逆を狙う賢い選択。そこからG前ラインアウトのチャンスを作り、開始から攻め続けます。敵陣でプレーを続けた結果、オーストラリアのミスから大塚選手が先制のトライ。後半のプレーを見ていると相手の豪州が明らかにストレスを感じているというか、自分たちのやりたいことが出来ない印象でしたね。スクラムでのターンオーバーをきっかけに後半14分にG前のラインアウトからトライを返されますが、この時間帯までこの嫌な形を作らせない、エリアを優位に進められたのが勝因の1つでしょう。

そしてこの後のキックオフでまたしても逆サイドを狙い、素早くプレッシャーを仕掛けて今釘、古田の2人で相手の反則を取り、G前ラインアウトのチャンスを作りました。そこからモール、ラックサイドなど攻め込むと、最後は相手の反則からSH津久井がクイックスタートし、FL細川選手がトライ。豪州に試合の流れを渡さずにトライを返したこの1連の流れは、この試合に勝つために徹底的な準備をやってきたと感じさせるものでした。その後も豪州の大型選手のアタックに、何度もゲインを許しますが、粘り強いDFを最後まで見せてくれました。

1番南主将はスクラムで厳しい戦いを強いられた中のフル出場、素晴らしい。写真はJRFUのSNSから拝借

最後は相手の簡単な位置からのPG失敗に助けられたという見方もあるかもしれません。ただこれまでは2017年のW杯など後半残り数分の時間帯にトライを奪われて悔しい負けをしたテストマッチもありました。この試合でもPGを狙う前、トライを狙う豪州の必死なアタックを止め続けていました。試合後のインタビューでの南主将の「自分たちのスタンダードが上がった」というコメントにはこれまでいい試合をして勝てなかった苦労を感じて、ちょっと感動しましたね。豪州協会のHPにあるゲームスタッツをみても、セットプレーの成功率は豪州が上回り、タックル回数は豪州の倍以上など、我慢の中、粘り抜いて、本当によくやりました。

格上の豪州との試合で感じた課題は色々とありますが、自分たちのやりたいラグビーを出して勝ち切った経験、これに勝るものはありません。遠征で感じた代表チームの振り返りは別にするとして、今は本当におめでとう。そして少し早いけれど、遠征お疲れ様でした。ここからが新たなスタート、という南主将の言葉に期待して、これからも応援します。