本日小田原で行われた全国女子選手権決勝、関東1位の日本体育大学女子ラグビー部と関東2位の東京山九フェニックスラグビークラブの試合は開始から最後まで80分間、スリリングな戦いが続きました。いい意味で女子らしさがなく、鍛えたフィジカルとスキルが随所に見られたバトル、集まった観客の方も楽しんだと思います。日本協会HPの結果お知らせは、こちら。
前半は日体大が数少ないチャンスをトライに繋げて12-7とリード
試合を振り返ると日体大のキックオフから始まった前半、フェニックスが敵陣でボールを動かして攻め込み、日体大は自陣で粘り強く守る展開になりました。フェニは最初のスクラムから押し込んで日体大にプレッシャーをかけ、強気に仕掛けていきます。強力FWがG前に攻め込みますが、日体大は本当に接点での圧力に勝って踏ん張りました。その後、敵陣に入ったスクラムから狭いサイドを14番東選手がショートパントを使って抜け出し、あわやトライという場面も作りました。準決勝と同様、自陣からはキックを使ってエリアを進めようとする中で前半27分、エリア中盤でフェニの10番黒川選手のキックを日体大13番松田選手がチャージし、自らボールを拾って先制トライを奪います。
その次のトライはまたも日体大。準決勝の最後のトライ場面と同じように、後半35分に敵陣22m付近に攻め込むと12番人羅選手のキックパスを14番東選手が走りながらキャッチし、そのままDFに触られるにインゴールへダイブ。12点をリードして前半の終盤、Youtubeでは47:30過ぎ、フェニの黒川選手が試験的ルールの50-22を成功させて敵陣22m内でラインアウトのチャンスを作ります。この場面、DFラインの裏に蹴られたボールを12番古田選手が素早く戻って触りキープ、日体大のDFの圧力を受けた9番野田選手が体制を崩されながら捌いた球を、黒川選手が低く速いキック、本当に素晴らしいプレーでした。残り1分でチャンスを得たフェニはモールでG前に攻めるとそのまま継続し、最後はG前のラックを2番柏木選手が超えるようにダイブしてトライ、角度のあるキックを15番大黒田選手が成功して5点差に詰めます。
得点の奪い合いになった後半、勝負を決めたのはエースのニア選手の走り
フェニックスのキックオフで始まった後半、柏木選手のトライの勢いそのままに開始からフェニックスが攻め込む大外の11番鹿尾選手が飛び込み同点トライ。その後はお互い勝利を目指して激しい攻防に。接点でのファイト、キック合戦など見応えのあるプレーが出てくる中で、攻め込んでG前のラックからFWの選手がDFを押し込んでトライを奪ったり、キックチャージからトライを奪ったり、キックのカウンターで抜け出したチャンスからトライを奪ったりと、残り10分の時点で日体大24-22フェニックスという得点状況。両チームとも本当に良いプレーが続き、リザーブの選手も出場し、体力的にも厳しい時間帯に入っても高い強度でした。
そんな中、残り3分でフェニックスが自陣でマイボールのスクラム、逆転のチャンスを迎えました。ここで日体大FWがスクラムを押し込んでペナルティーを奪うと、9番高橋選手がクイックで仕掛けて、敵陣22mに入るとFWがアタックを仕掛けていきます。今思えば、このまま時間をつぶして逃げ切ることも出来たと思いますが、ラックからモールを組もうとしたところで受け渡しが出来ずノッコン。フェニックスが自陣22mから最後のチャンスを得ます。
このプレッシャーのかかる中で、フェニックスのアタックは本当にお見事でした。Youtubeでは1:49:00ごろから、これまでセットプレーの1次攻撃からDFに仕掛けていた古田選手がスクラムからボールを受けると、ループに走った中島選手へパス、中島選手はDFが迫るプレッシャーでも外の高橋選手へ見事なクイックパス、そこからニア選手へ渡るとこのシーズンで何度も見せた爆走で一気に敵陣へ。そこからFWのアタックを挟み、野田選手が素早く捌いて逆サイドへ展開し、大外の8番鈴木選手が22mラインに迫ります。そして最後の展開、セットしたラインから中島選手、高橋選手とボールが回るなか、日体大DFは素早く前に出てタックルを狙います。高橋選手のパスを受けた6番倉持選手はタックルを受ける前にクイックパスで再びニア選手へ。大きなスペースを日体大のDFもカバーに走り、ライン際で15番大内田選手がタックルを仕掛けますが、ニア選手の足はタッチラインに出せず、左ライン際に飛び込み逆転トライ。最後までFWBKが一丸となって繋いで取り切ったベストトライでした。
最終スコアは27-24でフェニックスが逆転勝利。2週間前の準決勝からお互いが優勝を目指して、さらにチーム力を上げて挑んだ、そんな決勝戦でした。勝敗を分けた明確な差はありません。大学生主体の日体大がここまで勝ち上がってきた道のり、関東大会では負けたフェニックスを相手に勝ち切る寸前までいったのは本当にお見事。そしてフェニックス、関東大会でアルテミスターズに敗れた試合では、逆転を狙う中で相手DFのしつこい球への絡みにサポートプレーヤーのファイトに勝てず、反則が目立っていました。負けられない状況から日体大に勝ち、BPを重ねて関東大会を2位で通過。決勝戦でもHPにある試合結果の詳細を見直してみると、リードを奪う場面は一度もなく、最後にようやく取り切っての勝利でした。リザーブ含めてチームが本当にゲームプランを理解し、やり切ったからこその逆転トライでした。
春の太陽生命WSSに続いての優勝、2冠達成した東京山九フェニックスは本当におめでとうございます。そして日本体育大学ラグビー部女子、ここ数年は思うように勝ち上がれず、苦しんだ中で日本一を目指して、鍛え挙げられて、勝ち上がって本当に強いチームでした。見事な決勝戦でした。