サクラ15は米国との第2戦、逆転負けから何を学ぶか

17日土曜に静岡県のエコパスタジアムで行われた女子日本代表サクラフィフティーンと女子米国代表のテストマッチ第2戦、日本は裏へのキックを有効に使ってアタックのチャンスを作り、DFでも第1戦と同様に粘り強くファイトしましたが、終了間際に逆転のPGを許して8-11で敗れました。現地で応援しましたが、本当に惜しい試合でしたね。色々と現地で感じたことも含めて振りかえりながら、秋のテストマッチに向けての学びを探っていきます。

なお試合の写真とレポートについてはRUGBY JAPAN 365の記事に得点経過含めてわかりやすいのでリンク載せます ⇒ 「サクラフィフティーン一歩及ばず惜敗

ハイライトの映像だけでも、日本が敵陣へのキックをうまく使ったことがわかりますね

試合前のウォームアップから日本が勝利する可能性を十分に感じました

この試合の米国代表のメンバーですが、先発メンバーの総キャップ数はFWBKともに日本の方が上回っています(日本が294、米国が245)。米国は3か月前にメルボルンというアウェーでオーストラリアから5トライを奪い32-25で勝利していました。その時の先発メンバーはFW8人のキャップ数が201、BKが127でした。土曜の日本戦のメンバーを見ると、3か月前の試合ではリザーブだった選手が先発入りしたり、他にも若い選手が入ってチャレンジングなメンバーと言えるでしょう。

試合前のウォームアップを見ていましたが、日本と比べて米国は明らかにミスが多かったです。ADをやっていてもパスミス、キャッチミスのハンドリングエラーが多くて、もしかしたらストレスがあったかもしれません。第1戦の同点引き分けから準備してきたとはいえ、前日に関東地方の東を台風が過ぎ去り、南の温かな空気がもたらした日本の蒸し暑さはかなり影響していたと思います。一方で日本のウォームアップは順調に進んでいるように見えましたし、第1戦から修正したプレーをしっかり出せれば、普通に勝てるのではないかと感じました。

ここからは試合で感じた話をしますが、勝敗を左右したと感じた場面をいくつか。まずは試合の入りですね。相手のタッチキックから敵陣ラインアウトでのアタック、1stフェイズでSO大塚選手が前に出たDFラインの裏を狙ったキックを相手がチャージして自陣に戻されてピンチになり、そこから米国のアタック、ラインアウトモールを押し込まれました。春の香港戦でも感じましたが、試合序盤で得たチャンスですぐにキックを選択するのはもったいないなと。もちろん上手くいけばビッグチャンスになりますが、そこは精度をもっと高く、確率を上げていかないと。試合後の会見で米国のキャプテンが「前半は35分間守っていた感じ」と話し、まさに前半6分過ぎに先制を許して以降は、日本がほとんど敵陣でプレーできていました。

勝利するために準備してきたラインアウトモールで取り切れなかった日本

私は第1戦をハイライトしか見ていないのですが、日本は守る時間が長かったと聞いていました。第2戦はそこを修正して前半からキックを有効に使い敵陣に入り、アタックを継続して、米国を自陣に釘付けにしていました。試合中も米国がタッチキックを狙う場面では、日本の選手から「右足、右足」と相手のキッカーにプレッシャーをかけていました。ただ攻め続けた前半に奪った得点が1T1PGの8点のみ。ここはもっとPGを狙ってもよかった意見があるかもしれませんが、前半から敵陣22mに入ったラインアウトではBKの選手がモールに加わって押し込んでいました。おそらくチームとしてはラインアウトモールでトライを奪うために練習を重ねてきたと感じました。

この日も攻守にアグレッシブなプレーを見せた古田選手、ラインアウトモールにも加わっていました

また前半37分に大塚選手がPGを決めて8-5とリードした直後、このまま3点差でリードして前半を終わるかと思ったところに、相手の自陣でのミスから敵陣でアタックチャンスが生まれ、距離的にPGを狙える状況になりました。結果的にタッチキックを選んでトライを狙いに行った前半ラストプレーでのミス、そして逆転を狙う試合終盤でのBK選手のオフサイド、ラストのオブストラクションで終わったのを含め、準備してきたモールでミスからトライを奪いきれなかったところは反省、修正しないといけませんし、それはコーチングスタッフ側の力量になると思います。またFWのモール一本だけでなく、BKでも1発でトライを狙うようなサインプレーの準備も必要ですね。アタックのオプションを複数用意したいです。

ほんの少しの判断の遅さ、小さなミスが勝敗を左右するテストマッチ

日本としては第2戦に向けての戦略、目指してきたプレー、やりたいことはかなり見せていたのではないかと感じています。それはアタックだけでなく、DFも同様で後半の8-8の同点という状況の中で米国のアタックを低いタックルで止めて、2人目がジャッカルを決めてマイボールにする場面が続きました。18時キックオフでも蒸し暑さが残る中、日本の選手は本当によく走っていましたし、相手がこぼした球にセービングしたり、相手のボールをもぎ取る場面もありました。米国の選手はアタックで思ったより前に出れず、ストレスを感じていたと思いますし、キックで敵陣へ進もうとするも、日本のBK3の今釘選手、松村選手、西村選手の3人が本当に上手く対応して、大塚選手含めて相手陣のタッチライン際を狙うキックはかなり有効でした。またDFラインの裏への短いキックにも素早く反応してダイレクトキャッチからカウンターアタックを仕掛けていました。

同点のまま迎えた試合終盤、自陣で相手のキックをキャッチした西村選手が相手のポジショニングを見て敵陣を狙ったキックをチャージされて自陣22mに侵入されると、そこでの反則をきっかけに攻め続けた米国が逆転のPGを決めました。この場面も西村選手がもう少し早めに判断して裏に蹴れば防げたと思いますが、終盤の疲れもある時間帯で素早く正しい判断をするのは本当に難しい。この辺りは試合経験を積み重ねて、判断とスキルを磨かないといけません。これは逆転を狙う終盤に敵陣22mに入ったラインアウトでも同様です。またコーチングスタッフが用意した戦略、ここではプレーの判断や制限も含めて、選手へどう落とし込むかを徹底して考えてほしいなと思います。練習で取り組んだことを試合でいかに100%出し切ってスコアに結び付けるか、もっと細部への拘りが必要です。

試合を振り返って感じるのは、日本は勝つための準備をしっかり重ねてきて、試合でも狙ったプレーを見せていました。それでも結果的に勝利できなかった。もしW杯のようなトーナメントだったら、敵陣でのPGチャンスで3点を重ねていたかもしれません。国内でのテストマッチ、さらに第1戦ではトライ数を上回っての引き分けだったからこそ、第2戦は積極的にトライを奪いにいったのもあると思います。ただスコアだけを見ての勝敗ではなく、あくまで個人的な思いとして、この調子が良くなかった米国を相手に日本らしい戦いを見せて勝てなかったのは本当に悔しい。だからこの試合から学んだことは本当に多くて、苦くても良い勉強と捉えて、秋の海外遠征での勝利に繋げてほしいなと思います。選手、そしてコーチングスタッフ含めて、勝利への拘りをもって頑張ってください。

試合後の大友さんのポスト「じれったい」という表現に、なるほどなと思いました。