惜敗したアイルランド戦のレビュー

土曜は男女の15人制の試合とセブンズの試合が重なり、日本代表を応援する夜でした。結果として勝ったのは女子セブンズのみ、他のカテゴリーは勝利できず、悔しい結果となりましたが、1年前には男子のヨーロッパ遠征も中止にせざるを得なかったので、新型コロナの猛威を乗り越えて、ようやくここまで戻ってきたという気持ちもありますね。マイナスから0に戻ったというか、ここからどう積み上げて勝てるようにするかですね。

試合前のコイントスでしょうか、日本はリザーブも南主将。写真はJRFUのTwitterから拝借。

サクラフィフティーンの相手はアイルランド。前の試合で世界ランク6位で格上の米国を破り絶好調のアイルランド。日本は前半に2トライを奪い、優位に進めるも、後半はホームのアイルランドが勢いを取り戻し、強力なFW陣が2トライを奪い返して、12-15で負けてしまいました。日本はこの遠征の3試合で一番良い出来と感じた分、悔しい負けですね。日本協会HPのアイルランド戦後のコメントはこちら。個人的には南主将のコメントにとても共感します。それとラグビーリパブリックの振り返り記事はこちら、マッケンジーHC「苦い経験も収穫」

https://twitter.com/JRFUMedia/status/1462100006220058630
前半2トライを奪ってリードして折り返したものの、後半に無得点なのは2017年W杯の予選プールと同じ結果ですが、内容は良かったです

勝てる可能性を大いに感じさせながら後半に得点を奪えず惜敗

https://twitter.com/JRFUMedia/status/1461348980852363265
アイルランド戦の登録メンバー、南主将がリザーブに回ったり、5番LOに立正大学の吉村選手が先発出場で代表デビューとなりました

遠征最終戦についてレビューしながら、色々と振り返り思ったことは短く書いていこうと思います。まず試合登録メンバー、強力なスクラムを持つアイルランドを相手に、これまでスクラムをリードしてきた南主将をリザーブに入れたのはちょっと疑問です。まだ代表デビューの吉村選手よりも前の試合でも出場した北野選手を先発に入れるべきではと思いました。リザーブにはFW6名を並べましたが、期待していたインパクトプレーヤーのライテ選手はメンバー外。BKはSHの阿部選手とSOの山本選手で他のポジションをカバーするにはなかなか厳しいのかなと思います。今後はユーティリティープレーヤーが求められるかもしれません。

試合について、協会HPの詳細はこちら。前半は攻め込まれた6分にボールを奪い返して自陣から脱出しようとしたキックでオフサイドを取られ簡単にアイルランドにPGで先制されました。しかしホームのアイルランドに対して日本のDFの素早いプレッシャーを受けて、外のスペースに展開するもノッコンやパスミスが目立ち、勢いを掴めず。日本は相手のペナルティーからSH津久井選手が積極的にクイックを仕掛け、サポート選手も加わり、オフロードを売内で大きく前に出る場面も。キックは避けて、コンタクトを重ねて継続して攻め込みます。

前のスコットランド戦はメンバー外だった庵奥選手、この試合では先制トライの場面にも絡むなど、素晴らしいプレーを見せました。写真はJRFUのTwitterから拝借。

アイルランドは自陣でボールを奪うとキックで前に進もうとしますが、FB庵奥選手が素晴らしいキックレシーブから敵陣に攻めこむなど、中盤から前でプレーする時間帯が多かったです。そんな中で前半17分に敵陣ラインアウトからのアタックで倒されたCTB小林選手が素早く起き上がって裏に抜け出すと、サポートに寄ったFB庵奥選手、CTB古田選手と繋がり逆転のトライ。DFもしつこく動き回り、アイルランドには得点チャンスを作らせず、前半29分には相手のNo.8が顎への危険なタックルでレッドカードとなり14人になりました。そんな中でFW陣がDFラインを突破し、G前に攻め込んで、ラックサイドをしつこく攻めると、37分にFL齊藤選手が飛び込み逆転トライ、トライ後のキックも決まって12-3とリード。そのあとのキックオフからも、FWが自陣22m付近のラックからオフロードでつないで抜け出しNo.8永井選手が独走し、あわやトライというチャンス場面を作るなど、自分たちのラグビーを見せる時間帯が多い前半でした。

逆転トライを奪った古田選手を祝福する庵奥選手、写真はJRFUのTwitterから拝借。

9点リードで迎えた後半の立ち上がり、アイルランドがG前に攻め込んでプレッシャーをかけてくると、日本は4分にキックチャージからトライを返されます。この場面、スクラムでプレッシャーを受けて、フロントローがラックへの動きが遅れ、アイルランドDFへの壁を作れずに、キッカーの小林選手へのコースを開けてしまったのが原因で、防げた場面でした。遠征中、立ち上がりに勢いに乗れずにいた悪い部分が出たのと、これをきっかけにアイルランドが逆転へ向けてスイッチが入ります。前半のミスを修正し、シンプルに接点で前に出るようになったのと、ホームの声援を受けて、アタックに勢い、モメンタムが出てきました。日本は受ける時間帯が多く、前半のように敵陣でアタックする時間がなかなか作れず、体力を奪われたかもしれません。

日本は遠征中、不安だったラインアウトでミスが目立ち、ゲーム展開に大きく影響しました

そして一番の誤算は前後半共にラインアウトでミスばかりが続き、ゲームの展開を作れなかったこと。試合映像を見直してみましたが、15本のマイボールのうち、キープしてアタックできたのは半分以下。それもキャッチミスだったり、低いボールをタップしたりで、クリーンキャッチは0でした。正直テストマッチレベルに関係なく、これでは勝てません。逆転を狙った後半に敵陣に攻め込んで反則を獲得した位置は、PGを選択して同点も狙える位置。タッチからG前ラインアウトでモールのオプションもあったかもしれませんが、結局タップキックから攻め込むしかありませんでした。人数を少なくしたり、工夫してキープするオプションがあったのかわかりませんが、スローイングだけでなく、LOの佐藤選手、櫻井選手の不在も影響したのかもしれません。ラインアウトコーチとしてサクラフィフティーンOGの中嶋さんがいますが、今後に活かして欲しいです。セットプレーの安定は強豪に勝つための必須条件なので。

日本な終盤に敵陣に攻め込むチャンスを作りましたが、G前のラック脇を攻め込んだ選手がダブルモーションを取られたり、ノータイムからのアタックでもタックルを受けて耐えられずに倒れたところのサポートが遅れて、ノットリリースを取られるなど、3点差を追いかける展開で得点を取り切ることが出来ませんでした。アタックの戦術、オプションが少ないのも、この遠征で感じたことです。遠征3試合で奪ったトライは5つ、そのうち4つはG前に攻め込み、FW陣がラックサイドへのアタックを続けてもぎ取ったトライでした。BKが1次攻撃のサインプレーで抜け出す場面もなかったです。戦術を整理し、オプションを多く準備することで、G前に攻め込んだ時に、良い判断が出来て、日本らしい展開ラグビーからのトライを奪う場面が見たいですね(ただ凄く時間がかかることですし、指導できるアタックコーチがいるかどうか…)

後半になかなか得点チャンスが作れない中、3点リードしているアイルランドが簡単なPGを失敗した場面もあり、本当に勝てる可能性が大いにあった試合でした。良い経験だった、良い試合だった、で済ますにはもったいないというか、14人になった相手に逆転されて、勝ちを逃したと選手、スタッフは感じているのではないでしょうか。これがもしW杯の予選プールだったら、PGを狙って同点にするという選択肢もあったかもしれません。いずれにせよ、得点力を上げていかないと、今後も良い試合までで終わってしまうかもしれません。

遠征3試合を振り返れば、どれも世界ランクが格上で戦い方も似たような相手に対し、通用した部分と通用しなかった部分がはっきりしました。W杯まで1年を切り、どれだけテストマッチの機会を作れるかはわかりませんが、まずは引き続き個々のスキルアップ、サイズアップを続けていかないといけません。テストマッチのゲーム強度に慣れることで良くなる部分もありまが、男子と同様に女子でも国内の試合では正直難しいです。英プレミアでプレーする加藤、小林、山本の3名はこの遠征中、本当に活躍が目立った選手に入りますが、本当に今後ベスト8入りを目指すなら、海外で毎週のように試合をしてタフになる選手がもう少し出てこないと厳しいかもしれませんね。

最後にWorldRugbyのHPにある他の国の試合結果を見ると、予選プールで日本と戦う米国は連勝を続けるイングランドに0-89と完敗。カナダは2週間前に日本に勝ったウェールズを相手に、24-7と逆転勝利しています。同じプールのイタリアはW杯予選をホームで戦い抜いたからか、テストマッチは行っていませんね。それとフランスがNZに29-7で勝利するなど、ヨーロッパ勢の強さが目立ちますね。

サクラセブンズは東京五輪で完敗した中国に14-12で勝利し、アジア予選1位でW杯出場を決めました。素晴らしいですね。試合映像を見直して、ブログで振り返り出来ればと思います。サクラはフィフティーンもセブンズもここから来年に向けてますます強化を進めないとです。

日曜のスコットランド戦のレビュー

日曜深夜に行われたスコットランド戦、協会SNSでのライブ中継は試合開始から見れませんでしたが、前半終了間際に12-10と逆転するも、後半は4トライを奪われて、12-36で敗れました。日本協会HPにある試合後のレスリーHCや選手のコメントはこちら。またキックオフ前にラグビージャーナリストの大友さんが2年前の試合メンバーやキャップ数を比較をしてくれていました。貴重ですね。先発メンバーの総キャップ数が100に満たない日本と、450を超えるスコットランド・・・10年あっても埋まらないですね、近隣に定期的に戦えるライバルがいないのは残念。いつぞやの男子のパシフィックリム的な大会を女子で・・・実現は難しいか。

試合を振り返る前に、佐藤優奈選手が前半にレッドカードを貰った危険なタックルについて。ラグビー元日本代表の大西さんが動画を引用ツイートする形でコメントしていました。優奈とは前にお話ししたこともあります。とても真面目な子なので、すごく反省していると思うのですが、ここから学んで、素晴らしいプレーヤーに成長してくれると思います。

大西さんは男子の解説でお忙しい中、女子ラグビーの話題も触れてくれます、ありがたい。

SNSのコメントでは厳しい判定だとか、前半の終わりに抜け出した齊藤聖奈選手を追いかけたスコットランドのタックルもハイタックルじゃないか、などといったコメントがありました。TMOでの判定はレフリングの判定基準に合わせる形でレフリーとテレビマッチオフィシャルが相談して決めています。そして首から上への直接的なコンタクトプレーについては、大怪我の可能性もあるため、故意かどうかは関係なく厳しい裁定になっています。齊藤選手へのタックル場面については、個人的な意見として、追いかけている状況でインゴールに抑えようと齊藤選手が低くなったために結果的に高くなった印象で、危険なタックルには見えませんでした(もちろんトライを防いだ素晴らしいタックルです)。

また試合展開についてはRUGBYJAPAN 365の記事に素晴らしいまとめがあるので、リンクを載せておきます ⇒ 「欧州遠征第2戦・スコットランドに敗れるも戦う姿勢は崩さず、勝利にこだわり最終戦に向かう」

ウェールズ戦の課題を修正して良い戦いを見せた日本

前回のブログでプレビューを書いたときに、スコットランド対策として、相手10番のキックからいかに攻めるか、という話をしましたが、日本はBK3に加えて両CTBも素早く戻って対応して、仕掛けるアタックが出来ていました。また強みであるラインアウトモールの対策として、あえて入らずに見ることでオブストラクションを誘う賢い判断もありました。ただ大事な立ち上がり、開始から10分の攻防でアタックを継続するもラックでプレッシャーを受けてターンオーバーされたり、11分のスコットランドの先制トライはDFのギャップに仕掛けた相手にオフロードを繋がれて、ラインブレイクされて、外にいたBKが内側に寄った外のスペースへ展開されて、14番に走られました。

またこの試合でもアタックで倒れた選手へのサポートが遅れて、ノットリリースを取られる場面が目立ちました。ただ前半は、ミスもありましたが、スコットランドとの攻防で日本のDFが素早く絡んで反則を奪う場面もありました。そして最後の10分は、相手のアタックをDFがしっかり止め続けて、ミスからチャンスを作ってG前まで攻め込み、1人少ないFW陣がラックサイドを押し込んで2トライを奪い、自分たちの目指すラグビーを見せて逆転しました。

試合を見ながらハーフタイムで呟いた後半の注目点、立ち上がりに自陣での攻防が長く続き、2トライを奪われて、相手に余裕を持たせてしまい、チャンスを作れず。

迎えた後半、スコットランドのキックオフをしっかりキャッチし、自陣での攻防が続くなか、人数優位のスコットランドが外の14番へ上手く運び、敵陣22mに入ると、バックドアなど細かいパスをつないでDFの的を絞らせず、サイドは外で1対1の状況を作って逆転のトライ。そして日本は相手の反則から敵陣22mでのラインアウトを得ますが、そこでのミスから一気に攻め込まれてトライを奪われました。後半の立ち上がりの攻防で5点差を追いかける展開になり、ペースを掴みたい中で個人のミスが連続してあっさり2トライ目を奪われたのが痛かったです。ミスをカバーできる余裕がなかったのかもしれません。

その後も自陣での攻防が続き、なかなか敵陣深くに攻め込むことは出来ませんでしたが、ウェールズ戦に比べると、アタックでは短いパスを上手く交えてオプションを用意したり、フェイズを重ねてもボールをキープし続けることが出来ていました。どこかで上手く仕掛けて、ラインブレイクから22mに攻め込んでチャンスを作れたら良いのですが、そこまではたどり着けず。アタック面では修正できた部分が多かったですが、一方でBKラインでトライチャンスを作れていないのが気になります。この2試合、数少ないチャンスでFWが合わせて3トライを取っていますが、DFの人数を減らして外に展開して飛び込むような場面がありません。ただテンポ良く攻め込むアタックでは、前には出れても、ラインブレイクが出来ないのが現状なのかもしれませんし、次のアイルランド戦ではBKのアタックにもっと注目したいですね。

振り返ると全体的に前回からの修正がわかる場面も多く、スコットランドに勝つための準備をしてきたのだと思います。それでも60分を14人で戦うというこれまでにない状況の中で、勝敗を見ればスコアが示す通りの内容だったなと思います。SNSにあるファンの方々はサクラフィフティーンの奮闘に良いコメントが見られます。2年ぶりのヨーロッパ遠征で強豪相手にしつこく食らいつくプレーを見せている一方で、アタックでは相手の長い手に絡まれてのノットリリースや、競った展開での連続したミスなど、海外の強豪国との戦う中でのプレッシャーを乗り越えるにはまだ経験が足りないのかなと。アタックでは慌てず、テンポをコントロールして継続することで、日本が目指す展開に持ち込められないかなと思いました。

あと気になったのはキックの使い方ですかね。自陣からの脱出、DFの部分は良くなっていますが、敵陣のアタックでは裏に転がす無理なキックが目立ちます。もしかしたらオプションがない中で、キックしかないという判断かもしれませんが、もう少しチェイスのタイミング含め、改善できると思いました。今のサクラフィフティーンがヨーロッパ勢とのテストマッチに勝利するなた、相手を3トライ以下に抑えて、何とか3トライ以上奪うようなロースコアの展開になるかと思います。残り1試合、米国を倒して上向きのアイルランドを相手に、選手の多くは2017年W杯での逆転負けを思い出しているでしょう。タフな遠征の中で、怪我人なども出ていますが、次のアイルランド戦ではさらに良い戦いを見せてほしいですね。

14日深夜に行われるスコットランド戦のプレビュー

今週末もヨーロッパ遠征中の日本代表の試合が予定されていますが、男女の試合ともFacebookだったりSNSなどでライブ観戦出来ます!WowowやJSPORTSと契約しなくても見れるのはありがたいですね(地上波で中継されるのかは知りませんが・・・)。日本女子代表サクラフィフティーンは先週、世界ランク11位のウェールズに5-23で負け。私のレビューは前回のブログをご覧ください。今回は9月のW杯ヨーロッパ予選でアイルランド、スペインに勝利した世界ランク9位のスコットランドが相手です。日本協会のHPを見たら、ウェールズ戦の翌日8日にエディンバラに移動してから合宿レポートの更新がなかったです。大丈夫かな。

勝者がW杯出場に近づく予選3戦目で戦い、アイルランドにラストプレーで劇的な逆転勝利でした

格上相手に勝ち上がったスコットランド、後半の粘り強さが注目

日本女子代表とは2年前に戦い、日本が残り10分で10点を追いかける展開から2トライを奪い、24-20で勝利しました。今回は2年前のリベンジをかけて必勝の試合。ヨーロッパ予選の試合を改めて見直しましたが、DFも固く、10番のキックを上手く使いながら、後半に逆転して勝ち上がってきました。特にG前のラインアウトモールは強力な得点源で、ATで活躍が目立つ要警戒の選手は8番、13番、15番辺りです。

日本戦の試合登録メンバー、ホームで2連続では負けられない。かなりの強敵です。

W杯予選での戦い方はスコットランドらしいというかオーソドックスで、自陣からまずFWを当てて、10番がロングキックを蹴って、カウンターに来た相手を止めるという展開が多かったです。またワイドに展開して大外のWTBが前に出る場面もありました。ここは10番のポジショニングを見れば、わかるところなので、日本はしっかりいい準備をして、プレッシャーをかけたいですね。そのためにはまずキックをキャッチするBK3(WTB名倉、谷口、FB平山)が積極的に仕掛けるのと、全体はすぐ戻ってセットして、で相手より早く動き続けてほしいです。

またDFは極端に出ることはあまりなくて、タックルにいくというよりは受け止めるような印象です。ただヨーロッパ予選初戦ではイタリア相手に38-13で負け、相手のサインプレー、オフロード、裏へのキックなどで簡単にトライを奪われています。勝利したスペイン戦でも開始すぐにラインアウトからBKラインが抜かれて先制されました。日本としては素早いテンポでかく乱したいですが、単調な攻めになると我慢比べになり不利になるので、色々なオプションを用意して、相手DFを悩ませるようなアタックを期待したいです。

イタリア戦のハイライト、イタリアのトライ場面は参考になりそうです

日本はスタメンに変更あり、後半から活躍した加藤、小林が先発に

サクラ15の試合メンバー、リザーブにFWが6人入るなど結構な変更がありました

2年前の勝利からさらにトレーニングを重ね成長を続けている女子日本代表、試合登録メンバーは日本協会HPにも発表されていますが、先週のウェールズ戦からフロントローのメンバーなど入替があります。FWはリザーブ20番に経験豊富な鈴木実沙紀が入りました。BKでは10番が山本から流通経済大学の大塚に代わりました。2年前は逆転トライを奪ったヒロイン大塚、この試合が怪我からの復帰戦みたいなので、得意のキックや仕掛けからチャンスを作ってほしいと思います。先発メンバーで注目なのは英プレミア、エクセター・チーフスで活躍中の3番加藤、12番小林ですね。先週のウェールズ戦でもATでチャンスを作ったり、良いプレーを見せていました。日本を勢いづけるようなビッグプレー、サクラウェーブに期待。

スコットランドの情報を探すと、大事なホームでパーフェクトな準備をしている、みたいな記事がありました。 ⇒ PREVIEW: SCOTLAND LOOKING FOR PERFECT HOMECOMING AGAINST JAPAN (英語です) さっと読んだ感じですが「お互いこの1戦に勝って、来年のW杯に向けて勢いをつけたい」みたいなことが書かれています。それと4番のEmma Wassell選手は代表51試合目だそうです(日本女子の最多キャップは6番齊藤選手の24です、えらい違い・・・)。先週のウェールズ戦の映像を分析した上で挑んでくるでしょう、かなり手ごわい相手です、本当に。

https://twitter.com/WorldRugby_JP/status/1457572275448737792

そんなスコットランドを相手に、日本女子代表サクラフィフティーンはどう戦うか。レスリーHCも「次の試合はいかにチャンスやモメンタムを作り出すか」という修正点を挙げていました。勝つためには最低でも3トライは取る必要があると思うので、敵陣でチャンスをいかに作るかが大事ですし、そのためにはなるべく敵陣でアタックする時間を増やしたい。ペナルティーが増えるとゲームの流れを掴めません。プレッシャーをかけ続けて、ホームのスコットランドから先手を取って、慌てさせるような試合を期待したいです。

また前回のブログでも書きましたが、先週は前後半の立ち上がりで良いプレーが出来ずに流れを逃しただけに、注目です。練習通りやろう、では相手のプレッシャーを受けてしまうかもしれません。体は興奮しつつも、頭は冷静に。相手をしっかり見て、良い判断、良いスキルを最初から見せてほしいですね。スコットランドはW杯出場を決めてから初のホーム戦、テストマッチ3連勝を目指して戦ってきます。アウェーの中、勝利目指して強いサクラフィフティーンを見せてほしいです。

最後に来週の土曜に戦うアイルランドは昨日、ダブリンで世界ランク6位のアメリカを相手に20-10で勝利したそうです。イングランドも世界ランク2位のNZに2戦とも快勝しましたし、ヨーロッパ地区の勢いが凄いですね。頑張れサクラ!!

ウェールズ戦のレビューをしてみた

昨日の深夜に行われた日本女子代表サクラフィフティーンとウェールズ女子のテストマッチ、結果はご存じだと思いますが、5-23(前半0-11)で負け。日本はアウェーの中、所々で良いプレーを見せてチャンスを作るも、スコアは終盤に1トライを返すのがやっとでした。日本協会HPにあるウェールズ戦後のコメントはこちら

https://twitter.com/WelshRugbyUnion/status/1457496098323542019
両チームが入場する直前には花火や煙など会場を盛り上げる演出が素晴らしかったですね

前後半共に立ち上がりの大事な時間帯でミスが目立ち苦しい展開に

サクラフィフティーンの試合メンバー、玉井選手のTwitterから拝借。スクラム重視のメンバーと感じました

昨日はライブで観戦しながら、Twitterで気づいたことを呟いていました。色々と振り返ると長くなりそうなので、勝敗のキーポイントに絞って、整理できればと思います。前半、ウェールズのキックオフから始まりましたが、大事な1stアタックでプレッシャーを受けてペナルティー、そこからラインアウトのモールを押し込まれ、開始わずか1:25でトライを奪われました。

2年ぶりのテストマッチとはいえ、チャレンジャーの立ち上がりとしては最悪ですね。この立ち上がりに慌てず、先手を仕掛けて、何フェイズか継続して、敵陣に入るなり出来れば違った展開になったと思います。その後もアタックでキックをチャージされたり、ラインアウトでのミスもあり、10分間はほぼ自陣でのDFの時間帯となりましたが、粘り強く守りました。ウェールズの攻撃のオプションがあまりないのは、事前に予想していた通りで、むしろオフロードを狙ってくる場面もありましたが、全体的には裏へのキックの対処含め、意図するDFが出来ていたと感じました(ナイターという状況で落球する場面もありましたが)。

11点差を追いかける後半の立ち上がりについては、日本のキックオフから相手のミスもありボールを奪うと、アタックでフェイズを重ねたり、裏へのキックを使って前に出てプレッシャーをかけていました。ウェールズのアタックもしっかり止めて敵陣に攻め込むと、後半6分過ぎにウェールズ6番の選手がパスで浮いたボールを叩き落したためにシンビンになり、追い上げるチャンス。しかしG前のラインアウトでモールを組んだところ、ウェールズの選手に絡まれ失敗。その後もミスが目立ち、後半12分に自陣22m内でのアタックで落とした球をセービングされると、そこからウェールズの15番のJoyce選手にトライを奪われてしまいました。

https://twitter.com/WelshRugbyUnion/status/1457419412030599172
事前の試合映像を見ても警戒する選手だった15番Joyce選手、線は細いですがステップはキレキレの良いランナーでした

ここでシンビンの間に得点差を詰めたい状況から、一転して拡げられて18点差となり、苦しい状況に追い込んでしまいましたね。Joyce選手は後半32分にもトライを追加し、この試合のPlayer of the Matchに選ばれました。このトライも自陣でのアタックでのパスミスから、ボールを落としたのをセービングされて奪われたのがきっかけでした。奪われた3トライを振り返ると、DFを崩されたというよりは、テストマッチのプレッシャーの中で、自分たちのミスから失点に繋げてしまいました。こういう展開では、選手が奮闘して良い試合はできても、勝つのは正直、厳しいですね。コメント欄を見ても、女子ラグビーファンから健闘を称えるようなコメントが多かったです。ただ男子も過去にそうだったように、善戦するのが精いっぱいで勝ち切るだけの実力はまだないのかもしれません。そしてここを乗り越えないと、来年のW杯のベスト8進出(予選プールで米国、カナダ、イタリアを相手に勝利)も見えてきません。

スタッツは互角に戦えていても、中身はどうだったか

斉藤健仁さんがスタッツを紹介してくれていて、一方で課題はセットと決定力というのも示してくれていました。本当にその通りで、遠征前からもまずはセットプレーである程度戦えないと厳しい試合になるなと予想していました。試合を振り返れば大事な場面でミスが目立ったのは、チャレンジャーの日本。スクラムに関しては、反則を取られる場面もありましたが、相手が交代した直後だったり、早めに仕掛けてきたようにも見えました。逆に反則を奪った場面もあり、決して対応できないほどの差があったとは思えません。後半に点差がついてウェールズにも余裕が出てきた中で、前に出る場面が増えましたが、前半からそういう場面を作れないと、トータルのスタッツでは上回っていても、勝負には勝てないですね。

決定力に関しては、世界ランク上位の国と比べると、明らかにBKのスピードには差があります。キャリーやメーターで上回っていても、ウェールズのJoyce選手のようにチャンスで取り切る選手がいなかったですね。日本はこの試合、11番名倉選手や13番古田選手のボールキャリーが目立ちました。後半に追いかける状況で、アタックのオプションがあまりなく、ウェールズのDFはFW経由含めた2パス目やラインの後ろにセットした選手を明らかに狙っていて、外のスペースに素早くボールを運んでチャンスを作る場面があまりなかったです。DF裏へのキックを外でチェイスした選手が再獲得して前に出る場面もありました。日本は攻め方のオプションを幾つか用意し、DFのポジショニングなど状況を見て、チームで良いオプションを選べるようにならないといけません。むしろラインブレイクしたのは、倒されてからラックになる前にすぐに立ち上がって前に抜け出したりした場面ですね。これは2年前のスコットランド戦でも小西選手がチャンスを作っていましたし、海外のチームはあまりやらないので、今後の試合でもチャンスがありそうです。

個人的には世界ランクが上の相手とは言え、個人個人の実力差はあまり離れていないと感じるで、来年のW杯でのベスト8を目指すなら善戦をしたところで結果がすべて、というスタンスで見ています。日本に勝利したウェールズはこの後、南アフリカ、カナダとの試合を控えています。来年のW杯の予選プールで日本と戦うカナダとどんな試合を見せるのか、注目ですね。そのカナダは米国相手に2連勝して好調です。試合映像はYoutubeにあるので、近いうちに見てみたいと思います。日本は来週にスコットランド、次にアイルランドとウェールズと同様に強い相手とのテストマッチが控えています。戦い方はウェールズと似ていると思いますが、1週間でどう準備するか。ともに注意すべき選手は事前の試合映像で分かっているので、まずはウェールズ戦で出た課題、アタックでのオプションを整理して、接点でボールをしっかりキープし、動かし続けること、そして立ち上がりから慌てず、仕掛けていって、自分たちの展開に持っていけるかですね。

また長文になってしまいました。個人個人について詳しくは書きませんが試合後に呟いた通り、よいプレーを見せた選手もたくさんいました。特に後半に出てきた加藤さん、小林さんの英エクセター・チーフスのコンビはいい活躍をしていましたね。次のスコットランド戦ではDFで激しさやしつこさで目立つ選手が出てきてほしいですね。またライブ中継があるのを期待して、応援していきます。

関東学院六浦が全国U18女子セブンズ初優勝

先週末に熊谷で行われた高校女子の全国大会、昨年から続くコロナ禍の影響でコベルコカップや花園での試合が中止となり、高校女子にとっては唯一の全国大会となりました(夏のオッペンカップはオープン参加のため外してます)。昨年は惜しくも準優勝だった関東学院六浦が決勝戦で石見智翠館を17-7で破り、初優勝しました。日本協会HPの発表はこちら過去の大会も調べてみたら、関東学院六浦は3年連続で決勝に進出するも優勝できずにいたので、悲願の日本一でしたね。ラグビーリパブリックの記事も出たので、リンク張っておきます。
⇒『関東学院六浦、初の日本一。一丸の石見智翠館も力及ばず

六浦の勝因は日本一のDF、大会4試合で失トライは3のみ

悲願を達成した関東学院六浦、ここ数年は神奈川や大阪のスクールで活躍する選手が多数進学し、関東高校女子をリードするチームになりました。私は2019年のコベルコカップで2位になった関東女子代表にコーチングスタッフとして帯同していましたが、その時も六浦の選手が一番多く選ばれて主力として活躍していたと思いますし、今年の大会MVPの向来選手は1年生で選ばれていました。9月に行われたセブンズユースアカデミーのメンバーを見ても六浦からは向来、寺谷、西、松村、矢崎の5名が選ばれていますね。

石見智翠館との決勝は4:10:00過ぎから、堅い守りを見せ相手のノッコンから繋いで奪った先制トライはお見事

8月のオッペンカップでも麗澤、佐賀工業を破って優勝し、Bチームも4位と選手層も厚く、大会前から優勝候補だと思っていました。おそらく参加チームもターゲットにして、分析していたかもしれません。そんな六浦の初日、予選プールの初戦は緊張もあったのか、四国の鳴門渦潮を相手に前半を終えて5-0、そして後半3分にハイタックルでシンビンが出てしまい6人に。そこから鳴門渦潮が上手に繋いでG前まで攻め込みますが、必死に守り、最後は5番西選手が相手のインゴールノッコンを誘う激しいタックルを見せてターンオーバーしました。結局、最後の1プレーでトライを奪い、12-0と勝利しました。よく走る連携の取れたDFに、スコア以上に六浦の強さを感じる試合でした。

大会MVPは六浦の向来桜子選手でしたが、発表前からMVPとるかなと思っていました。圧倒的な運動量、攻守にわたっての躍動感あるプレー、そして激しいタックル。六浦が目指すラグビーを体現していると感じましたし、今後の更なる成長が楽しみですね。

六浦の監督の梅原先生は私と同い年で、以前から高校女子カテゴリーでお世話になっていたのでこの大会でも試合を見た後に連絡をしていましたが、この初戦の展開はさすがにドキドキだったそうです(笑) 六浦はこの苦しんだ初戦からしり上がりに調子を上げて優勝しましたが、大会4試合で失トライは3のみ、総得点は91でした。トーナメントを勝ち上がる強豪チームは、2019年W杯の南アフリカもそうですが、堅いDFを持っています。アタックではどうしてもミスが出がちですが、DFは防げるミスの割合が高いかと思います。そして六浦の選手は総じてタックルの強い選手が多い印象です。失トライの少なさについて書いたので、過去の大会を調べたところ3年前の第1回大会では優勝した石見智翠館が4試合で失トライ0で、総得点は158でした。これは凄い、圧倒的すぎますね・・・

初出場の麗澤が3位、プレートは追手門学院、ボウルは開志国際が優勝

関東学院六浦以外のチームを見ると、初出場の麗澤(千葉県柏市)が予選プールで関西1位の追手門学院を14-12と逆転勝利して1位通過すると、2日目の3位決定戦では佐賀工業を破って3位になりました。初日の追手門学院戦では、追いかける後半に相手の裏へのキックを拾った4番池崎選手が左のスペースを走り切って同点トライを奪うと、5mライン付近の難しい位置から5番原田選手が逆転のキックを決めました。その後もノータイムでもゲームを切らずに攻め続けるプレーが印象的でした。

予選プールで麗澤に惜しくも敗れた追手門学院はプレート戦の初戦で京都成章と10-10の同点になり抽選で決勝に進むと、PEARLSを相手に7-7の後半、自陣スクラムでSHの4番小西選手が持ち出すとそのままDFのギャップを駆け抜けて独走しトライを決めて勝利しました。またボウル戦優勝の開志国際は予選初日の第1試合目、佐賀工業を相手に前半を終えて12-7とリードするなど健闘していました。2日目のボウルトーナメントでは2試合とも6トライ以上を奪う大勝で、予選の組み合わせ次第ではもっと上位に行けるチームでしたね。総じて振り返れば、全国各地からユースアカデミーに選ばれている選手が、活躍を見せた2日間でした。

毎年、大会を見る度にレベルが向上したと感じますが、東北選抜や北海道選抜など下位のチームにも良いプレーを見せる選手がいました。強豪校のレベルが高いのはもちろんですが、それ以外の地域でも男子と一緒に練習したり、それぞれの環境で良い選手が増えているのを感じました。ユースレベルはStrong Girls 発掘プロジェクトや15人制TIDユースチームも始まりましたし、今後の成長が楽しみですね!!

女子日本代表はヨーロッパ遠征前の最終調整に入りました

そして来月にヨーロッパで3つのテストマッチが予定されているサクラフィフティーン、昨日26日から菅平での遠征直前合宿が始まっています。日本協会HPの発表はこちら遠征メンバーは週末に発表されるとのことですが、このメンバーを見るとFWに青山学院大4年の小西想羅がいないのが気になりますね。2年前のスコットランド戦、後半から出場し大活躍し、前回の菅平合宿の試合形式でもかなりアピールしていたみたいです。RugbyJapan365に掲載されていたレポートはこちら ⇒ 「豪州遠征へ白熱バトル!
この遠征メンバーの8割以上がおそらく来年のW杯に挑むことになるかと思います。個人的にはセブンズ代表メンバーは来月のアジア予選を突破すれば来年W杯を控えているため、15人制代表へのメンバー入りはかなり厳しいと思っています。

またヨーロッパ遠征にはイギリスでプレーする山本、小林、加藤の3名も招集されると思いますので、どんな試合メンバーになるのか、楽しみですね。また近くなってきたらブログに書きたいと思います。男子と共に頑張れ、サクラフィフティーン!頑張れ、日本!