横河武蔵野が全国女子選手権、2年ぶりの優勝

本日、鈴鹿市で行われた15人制の全国大会、準決勝2試合が行われる予定が今週に入り、新型コロナの変異型の感染拡大による所属選手の濃厚接触者の疑いやチーム内で陽性者、農耕接触者が出てしまった関係で三重PEARLS、RKUグレースの2チームが出場辞退となり、今日の試合が急遽、優勝決定戦(決勝戦ではなく)という扱いになりました。

出場辞退に備えて3位以下の順位も決めていましたが、直前に発覚して代替出場を検討する時間もなかったのかなと思います。
グレースは先週、東京山九フェニックスを相手に快勝。更なる活躍も期待されていただけに残念です

九州ながと合同がDFで健闘し、競った展開になった前半

私も当初は現地で観戦する予定でしたが、同行する予定だった方が諸事情により行けなくなり、天気があまり良くないのもあって、YouTubeでライブ観戦することにしました。試合結果ですが、予想通り横河武蔵野アルテミスターズが勝利しました。日本協会のHPにもすでにお知らせが出ています。津久井キャプテンのコメントもありますね ⇒ こちら

日本協会のチャンネルでライブ配信されましたが、映像が時々動かなくなったり、ちょっと見づらかったです

前半は開始から両チームがボールに手がつかず、ノッコンの多い序盤でした。関東大会と同様、アルテミは自陣からもボールを動かして攻め続けますが、九州ながと合同はしっかり分析していましたね。所々で相手をひっくり返すような狙いすましたタックルを決めて、DFの接点でプレッシャーをかけていました。アルテミは攻める時間は多かったですが、先週のPTS立正戦のようにテンポよくアタックを進められず、ストレスもあったと思います。見ていてDFのロールアウェイが遅く、SH津久井選手がボールを捌くのに少し時間がかかったようにも見えます。アルテミは前半20分過ぎにようやく敵陣22mに入ると、強力なFW陣がG前に迫り、22分にラックサイドを潜ったNo8高野選手がトライを奪いましたが、前半はこの1つのみ。九州ながと合同のDFの強さのほうが目立った前半でした。

アタックを修正した横河武蔵野が後半に3トライを奪って突き放しました

競った前半でしたが、FWとアタック力は明らかにアルテミが優位だったので後半は修正するだろうと予想していました

九州ながと合同の健闘のなか迎えた後半は開始10分から両チームの攻防が続きましたが、敵陣22mで相手のアタックを止めてジャッカルを決めたアルテミがペナルティーからクイックで仕掛けてG前まで攻め込むと1トライ目のように3番南選手が低い姿勢でラックサイドを潜るようにトライを奪うとそのあとのキックオフからも攻め続けたアルテミが連続トライ。後半27分には交代出場の日本代表CTBの中山選手が外から内に切れ込んでショートパスを受け取りそのまま抜け出して4トライ目。九州ながとの反撃を0に抑えて28-0で勝利しました。

予想していた通りの結果となりましたが、試合を見てもアルテミの強力FWを中心としたアタックが目立っていました。特に昨年秋にヨーロッパ遠征を行った日本代表の選手たちのパフォーマンスは良かったですね。3番南選手はスクラムを押し込んだり、低いタックルを決めて、すぐに起き上がって戻るなど良いパフォーマンスでしたし、8番高野選手も激しいプレーをしていました。14番名倉選手もトライはなかったですが、ボールを持った時の強さはさすがでしたし、それらの選手以上に遠征メンバーから外れた小西選手のボールキャリー、ジャッカルも凄かったです。九州ながとも選手個々の力は差があったと思いますが、粘り強いDF、ブレイクダウンでの接点の強さを見せ、アルテミも苦戦したと思います。

来年度以降の課題として、15人制の試合機会をどう増やしていくか

冒頭に書いた通り、新型コロナの変異型の影響によりこの試合で15人制のシーズンは終えることになりました。女子選手の数もチームも増えてきましたが、公式戦の数はいまだに十分ではありません。関東大会が始まる12月の前から、各チームで練習試合は重ねてきたと聞いていますが、やはり公式戦や冠大会がないとスポンサーや関係者の目に留まる機会も少ないですし、どうやって試合数を増やしていくかですね。

女子ラグビーの年間シーズンは春に太陽生命WSSを中心としたセブンズのシーズン、そして8月下旬に国体予選、10月上旬に本大会が行われます。15人制のシーズンは秋以降、そして2月上旬には全国選手権を終えるような予定ですが、今年は10月にNZでW杯が行われますし、2023年以降も秋に国際大会が行われます。女子の新たな国際大会「WXV」について書いたブログはこちら。そのため、10月11月は女子日本代表を優先としたスケジュールになるかと予想します。関東大会は7チームが参加しましたが、開幕を9月ごろに早めて、試合間もあまり開けずに総当たり戦で出来ないものかと思います(参加チーム、協会関係者含めて負担は大きくなりますが・・・)。

最後に女子セブンズ代表、サクラセブンズの候補選手(SDS)も熊谷で19日から合宿を行っています。スポットコーチとして元男子日本代表キャプテンの桑水流さんも参加していますね。合宿レポートは、こちら。こちらもW杯を控えていますが、国内での活動が中心となる中、今後どのように強化を進めていくか、楽しみですね。

関東女子大会終了、横河武蔵野とRKUが全国へ

昨日15日は関東女子大会の最終節が行われ、全国選手権出場をかけたプレーオフと予選プールの敗者が集まる順位決定戦が行われました。結果、プレーオフで勝利した横河武蔵野アルテミスターズとRKUグレースが、来週23日に行われる全国選手権への関東代表に選ばれました。

https://twitter.com/RKUGRACE/status/1482289133993459713

今年度は11月に日本代表サクラフィフティーンがヨーロッパ遠征を組んだ影響もあり、関東女子大会は12月開幕から1か月半の短期間で行い、優勝チームは決めずに、全国選手権に出場する2チームを決める形になりました。RKUグレースは予選2位から、1位の東京山九フェニックスを破っての出場決定、お見事ですね。アルテミとPTS立正の試合は今回もYoutubeでLIVE配信があり、私はアーカイブでチェック出来ました。

試合は開始から両チームともミスが少なくボールが繋がる展開。キックに関する試験的ルールである50-22を利用して、風下のアルテミが敵陣22mに入ってラインアウトのチャンスを作ると、そこが起点となり最後は外を抜け出したWTB名倉選手に素早くサポートしたSH津久井選手がボールを貰って先制トライ。アルテミはLO村上選手、FL小西選手やWTB名倉選手などパワーランナーにボールを集めてアタックを継続、接点でもタックルを上手くずらしたりして、サポートが寄る時間も作り、しっかりボールを継続します。PTS立正はスクラムで押されるも、ダイレクトフッキングから素早く球を出すなど上手く対応して攻めますが、なかなか敵陣深くに入ってチャンスを作れません。

前半22分に相手の反則から敵陣22mに入ってラインアウトのチャンス、後方へのスローをHO公家選手がしっかり投げ入れて攻め込み、G前でFWがトライを狙いますが、アルテミのFL小西選手がジャッカルを決めてピンチを脱出。その後もPTS立正のアタックを堅いDFで受け止めると、キックキャッチからアタックを継続して、CTB高木選手が裏に抜け出し、最後はWTB名倉選手が相手を振り切って右隅にトライ。その後も1トライを追加したアルテミが19-0とPTS立正をリードして前半終了。アルテミの攻守に素早い動き、粘り強いDFが光りました。

後半は逆転を狙うPTS立正の反撃から。LO秋田選手が裏に抜け出してチャンスを作り、そこを起点にG前の混戦に持ち込み、最後はラックサイドに飛び込んでトライ。そこからは両チームとも中盤での競り合いが続きチャンスを伺う中、点が動いたのは後半17分。アタックを継続し、アルテミがG前に攻め込み、ラックサイドをFL小西選手が飛び込んでトライ。続いて後半22分にもラインアウトからモールを押し込んで最後はFL小西選手がハットトリックの3トライ目。その後もキックオフレシーブからキックを蹴らず、攻め続けて敵陣に入り、最後はラインアウトからモールを押し込む展開で2トライを追加。後半40分を過ぎても攻め続けたアルテミが43-7でPTS立正に快勝しました。

MIPはトライにジャッカルに80分間、活躍し続けたといっても過言ではない小西選手が受賞したようですね。アルテミは攻守に圧倒していて、この大会で一番良い試合だったのではないでしょうか。PTS立正は初戦にフェニックスに負けてからの1か月で、リハビリから復帰した選手もいたり、チーム力を上げてきたと思います。このプレーオフに向けてアルテミ対策をしてきたとは思いますが、逆転を狙った後半、最初にトライした場面以外はチャンスがなかったような印象。個々の力で劣る部分はあったかもしれませんが、それくらいアルテミが自陣からアタックをしっかり継続して攻め勝ちました。

来週23日からは全国選手権が始まります、三重PEARLSの連覇なるか

7チームで争った関東女子大会、短期間の日程だったとはいえ15人制の公式戦が多いチームで4試合、少ないチームだと3試合。女子選手のチームや人数も増えてきたなか、日程の関係もあり、試合数がなかなか用意できていない現状があります。個人的には、来年度は9月か10月の秋に開幕を早めて、総当たり戦で出来ないものかなと。代表強化に直結するわけではないですが、日ごろから頑張る選手にも応援する人にも多くの試合機会を作っていく必要はあるのかなと感じています。それが大会の価値、女子ラグビーの価値を高めるものになって欲しいです。

そして関東と関西の代表チーム4つで争う全国選手権が23日に鈴鹿で行われます。関西大会で優勝した三重PEARLSとプレーオフの得失点差により2位扱いとなったRKUグレースが戦いますね。もう1つの試合は九州合同チームと横河武蔵野アルテミスターズになります。私も今のところ、現地へ応援に行く予定なので楽しみです。

女子ラグビーで検索していたら、こんなニュースもありました。地元への恩返し、大事ですね。

最後に女子15人制だけでなく7人制も熊谷で合宿をしたり、高校生も先週に横浜市女子セブンズ大会があったりで、活動が活発化しています。新型コロナの変異株が猛威を振るい、感染が拡大している中、大会が予定通り開催されることを願っています。

関東女子大会OTOWAカップ第2節

12月に入ってから、2回目のブログになります。2週間前の第1節を終えてから振り返りのブログを書くつもりが、更新できずに第2節になりました。前節の試合については、関東協会のYoutubeチャンネルにハイライト動画がUPされています。昨年は無観客開催となり女子ラグビーのファンの方々に選手のプレーを見せる機会がほとんどありませんでしたが、今年は会場によっては有観客で行われています。

私が現地で見た試合、単独チームになった東京山九フェニックスが快勝しました

第1節の東京山九フェニックスとPTS立正の試合を簡単に振り返ると、前半にフェニックスが5トライを奪いましたが、ワイドに素早くボールを動かして、PTS立正を振り回していました。前半はほとんどがフェニックスのアタックの時間帯で、PTS立正は自陣でDFするばかりでチャンスを作れず。後半は慣れてきたPTS立正が交代で入った日本代表の阿部選手、長田選手らの奮闘もあり、敵陣G前まで攻め込んで1トライを返しますが、フェニックスはラインアウトからモールを押しこんで2番塩崎選手がトライを奪うなど2トライを追加し、快勝しました。スコアは離れましたが、初戦を迎えた時点でチームの完成度の差が現れていましたね。

第1節の勝者通しの対決は予想以上にアルテミスターズが快勝

そして今日26日、全国各地でかなりの冷え込みになる中、横河武蔵野アルテミスターズとRKUグレースの試合が、茨城県の流通経済大学第2ラグビー場で行われました。

第1節では日体大に勝利したアルテミスターズ、ラインブレイクから一気に走り抜けたり、見事なトライが多かったです

第1節はRKUグレースがBRAVE LOUVEに大勝、アルテミスターズが日体大に大量リードから2点差まで追い上げられるも逃げきってそれぞれ勝利しています。お互い相手を研究した上での試合は接戦になるかと予想していました。今回アルテミスターズの兄弟チーム、アトラスターズのYoutubeチャンネルで試合の配信があったので、自宅で観戦出来ました。

風のぶつかる音が聞こえ、アシスタントレフリーのフラッグもかなりの勢いで揺れていました。天気は良かったですが、少し難しいコンディションだったと思います。ラインアウトではスローイングが風に流されてノットストレートになる場面も多かったです。

それでも両チームともに自陣から積極的にボールを動かしていました。アルテミスターズは9番津久井、10番高木のHB団が上手く試合をコントロール、鋭いパスから味方の選手を前に出し、敵陣に入ってチャンスを作ります。敵陣中央スクラムからFKを奪いクイックで攻め込むと、前半8分に14番名倉選手が右隅に飛び込み先制のトライ。その後も接点の攻防でも前に出る場面が多く、優位に経ちました。グレースもDFの素早い寄りからジャッカルを決める場面もありましたが、試合が進むにつれてアルテミスターズの勢いがゲームを支配していきました。0-17で迎えた前半27分にグレースが13番内海選手がラインブレイクし、40m独走トライを返すも、前半の終盤に2トライを加えたアルテミスターズが前半だけで5トライを奪い、27-7でリードしてハーフタイム。

後半はサイドが変わり、風向きがどう影響するか注目していました。開始から風上に立ったRKUグレースが敵陣22mに入り、トライチャンスを作りましたが、アルテミスターズが何とか守り切りました。この開始10分の攻防が勝敗を決めた印象です。グレースは前半に比べてアタックする機会は増えましたが、ハンドリングエラーや反則が目立ち、最後まで試合の流れを掴めませんでした。

アルテミスターズは後半13分に突き放すトライを奪い、その後もDFでも前に出る場面が多かったです。グレースは後半23分にエリア中盤から内海選手がラインブレイクし、G前まで一気に進んで2トライ目を奪いますが、反撃はその1トライのみ。後半36分にはアルテミが敵陣22mでのラックから9番津久井が少し持ち出すと、まっすぐ走りこんできた7番小西に繋いで裏に抜けると、サポートに走った2番の選手がダメ押しのトライ。最終スコアは37-14でアルテミスターズがグレースに快勝しました。

改めて試合を見直しましたが、日本代表サクラフィフティーンの選手の活躍が目立ちました。アルテミスターズはHB以外にも1番南選手、3番ラベマイ選手を軸にスクラム、FW周辺のDFでも優位に経ちました。また14番名倉選手のボールキャリーも流石でしたね。グレースは10番大塚選手が得意のキックを使う場面があまり多くなかったです。ペナルティーからのタッチキックはもしかしたら意図的にノータッチを狙っていたかもしれませんね。また13番内海選手は再三のラインブレイクを見せていました。怪我で春からの代表合宿には呼ばれていませんが、次の試合でもあのランでチームを引っ張ることが出来れば、また呼ばれると思います。

また別会場の府中朝日フットボールパークの2試合は、日体大がBRAVE LOUVEに、PTS立正がYOKOHAMA TKMや国際武道大学、弘前オーバルズなどの合同チームに、それぞれ勝利しました。第2節を終えて、予選で2勝したアルテミスターズは、全国選手権をかけたプレーオフへの進出がほぼ決定。またPTS立正は1勝1敗で一足早く、予選での試合を終えましたが、2位でプレーオフに進出する可能性が高そうですね。

今日は女子以外にも大学選手権の準々決勝や、東京で中学生の全国ジュニア選抜大会が行われていました。そして明日からは高校ラグビー、花園が開幕します。年末、ラグビーの話題が増えてきますね。先週、女子の関西大会も三重PEARLSの優勝で幕を閉じましたが、また試合はチェックできていませんし、年内にもう1回はブログを更新できればと思います。

女子日本代表の英国遠征で感じた課題

12月になり、夕方になるとかなりの冷え込みを感じるようになりました。2021年も残り4週間ないですね、健康に気を付けていきましょう。

先週、大西将太郎さんがJ SPORTSのYoutubeチャンネルで、女子日本代表について熱く語っていました。再生回数がまだ3桁なのが残念ですが、ありがたいですね。動画の中で、日本協会のHP内にラグビー女子日本代表応援サイト Road to WRC2021、があるのを知りました。リンク張っておきますね。コンセプト、サクラウェーブ、改めて思い出しました。

https://www.youtube.com/watch?v=6yIlLfxVKM8
ヨーロッパ遠征3試合の結果にも触れてくれています

また11月27日にはラグビージャーナリストで女子ラグビーをよく取材してくださる大友信彦さんがRUGBY JAPAN 365のサイトで11月のイギリス遠征レビューを書いてくれていました。今回はこの記事の内容を紹介しながら、個人的な意見を整理しようと思います。

試合ごとに内容が良くなるも、得点力不足が明らかになった

先ほど紹介したレビューにあった3試合の戦績
 11月7日 日本×5-23ウェールズ(T:齋藤聖奈)
 11月14日 日本×12-36スコットランド(T:永田虹歩、加藤幸子、C:平山愛)
 11月20日 日本×12-15アイルランド(T:古田真菜、齋藤聖奈、C:大塚朱紗)
世界ランクで格上の3か国を相手にした遠征、各試合のレビューは以前のブログでも書いたので、そちらをご覧ください。レスリーHCのコメントには「W杯本番と同じようなサイクルを経験できた。これはチームにとって大事な学びの時間になったと思う」とあり、確かに来年開催のW杯に向けて、学びは多かったと思います。選手も2年ぶりの遠征できっと苦労やストレスもある中、良い戦いを見せてくれたと思います。この遠征からさらに成長してくれるはず。

一方で多くのファンからは「良い試合だった、来年に向けて良い準備になった」というコメントがアーカイブ内やSNSでも見れました。何をもって良い試合だったのか、と思うと強豪国相手に持てる力を出し切って粘り強い戦いが出来た、というのかもしれません。選手が必死に起きて、素早く動き、攻守に奮闘していた姿は本当に良かった。ただそれで満足してしまい、勝敗に関しての意識が少ない印象は否めません。来年に向けて良い準備?本当に良い準備が出来たのか?私が感じたのは得点差以上の何か、勝利までたどり着けない相手との差の部分です。

そして見出しに書いた話になりますが、女子日本代表の大きな課題は得点力不足です。遠征中の5トライのうち、G前に迫ってラックサイドを攻め込んだのが4トライ。もう1トライは、敵陣10m付近でタックルを受けた小林選手が素早く起き上がってラインブレイクし、フォローに繋いで古田選手がトライしたアイルランド戦の1トライのみでした。試合を見ていて、チームとしてどうトライを取るのか、どう得点を取るのかが見えないと感じました。極論、今のサクラはG前まで攻め込まない限り、トライは取れません。

https://www.youtube.com/watch?v=s-34nIiItmY

チーム内ではアタックのプランとして、阿部、津久井という国際レベルの球捌きの良いSHがいて、ハイテンポでボールを動かして仕掛け続けるというのはあると思います。SOからのアタックのオプションが少なく、そこからの1パスを相手DFに狙われて思いっきりタックルを受ける場面も何回かありました。ラックからプレッシャーを受けてアタックのテンポがスローになった時など、DFの崩し方をチームで取り組めているのかどうかがはっきり見えません。海外の強豪国と比べると、外の選手(FB、WTB)のスピードは劣っていて、一気にラインブレイクしてチャンスを作る場面がなかなか作れませんでした。BKがユニットで上手く動いて、抜けだす場面を作りたいのですが、意図してそういうセットや動きがない印象です。

そのため何とか敵陣に攻め込んでチャンスを作った時に、こうトライを奪う決め事のようなオプションがなく、取り切れないんじゃないかなと個人的には思いました。そしてコーチ陣はそういうトライを取り切るプレーを指導しているのか。男子にはトニー・ブラウンという世界レベルのアタックコーチがいて、2019年のW杯では外に福岡、松島のような世界レベルのフィニッシャーがいました。そして試合では上手く余らせた大外を抜け出してトライチャンスをたくさん作りました。その時の男子のイメージが私には強すぎるのもありますが、サクラは果たしてどう得点を取って勝つのか。

ここ最近の女子の試合結果(World Rugby HPより)を改めて見ると、勝ったチームは最低15~20点は奪っています。そして日本は退場者が出て14人になったアイルランドから50分で1トライしか奪えなかった。悔しい現実ですが、やはり3トライを取る力をつけないことには勝つ可能性は低いまま、良い試合で終わってしまうでしょう。気になって2017年のW杯の5試合のスコアを探してみましたが、予選3試合で7トライ、イタリアには0-22と完封負けで、最終戦の香港には44-5で勝利しました(参考サイト)。また接戦になると、キッカーのプレースキックの精度が大事になります。実際、アイルランド戦では古田選手のトライ後のコンバージョンが外れましたが、もし決まっていて14-15の1点差でゲーム終盤に進んでいたら、敵陣の反則で逆転PGを狙うこともできたはずです。もしラインアウトが取れる計算が出来ていたら、ラインアウトからモールを組んでG前まで押し込むことも狙えたはずです。しかし前のブログで触れたとおりプレッシャーを受けてクリーンキャッチが出来なかったので、それも出来なかった・・・あの12-15の負けはそういう悔しい負けでした(あくまで個人的な印象です)。

遠征3試合すべてに出場した南キャプテン、これからの頑張りに期待

会HPにあるアイルランド戦後のコメントで南キャプテンが最後に「来年のワールドカップに向けては、セットピースを安定させること、精度を上げることや、攻撃のオプションを増やすことが重要になってくる」と語っていましたが、本当にその通りだと思います。選手の頑張り以上に、コーチングスタッフの頑張り、チームの引き上げがないと、来年のW杯でのベスト8入りは難しい状況だと思います。個人的な予想ではほかの予選プールの予想もしたうえで、米国、カナダ、イタリアを相手にどれかで1勝すれば、ベスト8進出に大きく近づくと思います。だからこそ、攻撃のオプションを増やし、得点力を高めるのを1年かけて準備してほしいですね。改めてチームのコンセプトで掲げられている「サクラウェーブ SAKURA WAVE」をどう体現するか、イメージから具体性を持ったアクションに変えてほしい。

最後にレスリーHCは「日本の女子選手は国内での15人制をプレーする機会が極端に少ない」と話していました。これは本当にそうで、関係者が新しい大会やシーズンスケジュール含めて考えないといけません。あくまで個人的な意見になりますが、今後の国内スケジュールは
 2月中旬~6月下旬 セブンズ(太陽生命WSS、リージョナルSなど)
 9月中旬~2月上旬 15人制(関東大会、関西大会、全国選手権など)
という形になるかなと。そして10月11月はサクラのテストマッチ期間でしょうか。本当は春にもテストマッチを組みたいと思いますが、なかなかハードルは高いかもしれません。2019年のように7月に南半球に遠征できれば良いですが、予算に限りはありますしね・・・それと東京五輪のレビューの時にも書きましたが、国内で15人制の試合機会を増やすことがそのまま代表強化に繋がるとも限らないのは否めません(選手にとっては経験=プラスですが)

そんなこんなで長文になりましたが良い試合をしたことで満足して、ここから勝ち上がるために克服すべき課題を見逃してしまうと、東京五輪のセブンズのように、思い描いた戦いが出来ず、悔しい結果になります。2017年W杯で11位に終わった後のレビューから進歩しないと。実はサクラセブンズも世界大会に出れば、得点力不足という点は同じだと思います。選手の強化と同じくらい、コーチングスタッフがいかに鍛え上げられるかが大事と改めて感じました。頑張ろう、サクラフィフティーン、サクラセブンズ!!

サクラセブンズ、ドバイ大会を制してW杯予選突破

12日金曜と13日土曜の2日間で行われたアジアセブンズシリーズドバイ大会、昨年はシリーズが全て中止になり、久しぶりのシリーズ大会でした。東京五輪で5戦5敗、最下位の12位に終わり、再起をかけたサクラセブンズは五輪メンバー、落選メンバー、新戦力がかみ合って、準決勝の香港戦では29-0と完勝し、W杯出場を決めました。そして決勝の相手はライバル中国、五輪では完敗した相手に14-12と競り勝って、見事ドバイ大会を制しました。

日本協会HPにある大会登録メンバーはこちら。東京五輪のメンバーが7名、セレクションで落選するも復帰したメンバーが中村、小笹、三枝、香川の4名、そしてデビュー大会の須田(追手門学院大)の12名。そしてドバイ大会では先発メンバーはほぼ固定、香港戦ではFWに梶木、中村、三枝、SHに平野、BKは須田、大谷、堤という7人でした。開始のキックオフをミスしてDFから始まるも、相手のBKへ素早く前に出てプレッシャーをかけ続け、1分30秒近く反則せずに相手のミスを誘うと、そこを起点にプレーを止めることなく継続して先制トライ。

その後も香港のアタックに連携の取れたDFでラインブレイクを許さず、アタックでは平野、須田が上手くペースをコントロール。梶木がDFのギャップをついて縦に抜け出したり、エースの堤が外を抜けて独走したり、様々パターンでトライを重ねました。五輪では相手DFの裏を狙うキックを用いたプレーもありましたが、この大会では同じアジアのライバルを相手に、しっかりキープして仕掛け続けることを意識していたのかもしれません。得点の通り、見ていて余裕を感じさせるような試合でした。

https://twitter.com/JRFUMedia/status/1463119083331670022
予選から危なげない戦いでW杯出場を決めたサクラセブンズ、慌てることなく自信をもってプレーしているのが伝わってきました

迎えた決勝戦の相手は中国、高さ対策かFWは香港戦で先制トライを奪った三枝に代わってサイズのある小笹が先発メンバー入り、それ以外の6人は香港戦と同じメンバーで挑みました。最初のキックオフでノット10mから中国にアタック機会を与えると、そのまま継続されてG前に攻め込まれ、先制トライを与えてしまいました。いい立ち上がりではなかったですが、中国の深く広いラインに対して、素早く前に出つつも左右の連携を保ち、大きく速い相手に慌てずチームとしてどうDFするか統一されているのが見れました。そして中国が先制トライから難しくない位置からのキックを失敗し、この2点差が最後の結果に表れました。

日本は次のキックオフをキャッチすると、中国DFと上手く間合いを取ってキープすると、自陣22m内で素早く展開。外にいた堤が仕掛けて大谷に繋ぎ、カバーのDFに捕まるも再び堤に繋いで裏に抜けると、後ろにいたスイーパーをステップでかわし、およそ70mを独走し逆転。さらに次のキックオフでプレッシャーをかけて、相手のスローフォワードを誘うと敵陣22mスクラムから、中国DFの位置をよく見ていた平野がスクラムから持ち出してそのままポスト下にトライ。トライを奪われた後の大事な時間帯の2分で連続トライを奪えたことで、チャレンジャーの立場の日本が落ち着きを取り戻した好プレーでした。相手DFに粘らせることなくあっさりトライしたのも良かったですね。

そして2点リードで迎えた後半の大事な立ち上がり、中国のキックオフが10m付近に高く上がった場面で、梶木が中村を1人リフトして相手より先に触り、ボールをキープしました。このプレー、素晴らしいですね。後半はずっと日本の陣地でのプレーが続き苦しい展開でしたが、東京五輪の時と違ったのは自分たちの反則から相手にボールを与えて、あっさりトライを許すことがなかったです。ノッコンやスローフォワードのミスはありましたが、相手のアタックにしっかりプレッシャーをかけてミスを誘っていました。特に中村選手の必死に内から追いかける姿が目立ちました。それと大事なラインアウトで大きな中国を相手に、ダミーを交えてしっかりキープしたのも良かったです。ここは先日のサクラフィフティーンの試合と大きく違うところで、セットプレーが計算できるというのは、選手に落ち着く機会を与えてくれます。後半は両チームともノースコア、日本が逃げきったというより中国にミスが多かったです。それでも相手を2トライに抑えたDFは素晴らしかったですし、ナイターで照明もそこまで明るくなかった影響もあるかもですね。

https://twitter.com/RugYume/status/1463062018391379968
キャプテンを務めた平野優芽、東京五輪では出場時間が限られていましたが、ドバイ大会ではキープレーヤーとして期待以上の活躍を見せました

東京五輪で完敗した中国を相手に、短い準備期間で立て直し、自分たちの目指すラグビーをやり切って2点差での勝利。来年のW杯出場を決めて、良いスタートが切れました。今後は国内での合宿が続くと思いますが、世界レベルを目指して、引き続き強化を進めてほしいですね。

男子セブンズは準決勝で韓国に敗れて残念な結果に

そして男子セブンズ、準決勝で東京五輪で快勝した韓国を相手に、いいところがない試合展開で後半残り1分を切ってトライを奪われ、最後のアタックでもミスをして14-21で負け。W杯の連続出場が途切れてしまいました。東京五輪と大きくメンバーが変わる中、W杯出場をかけた大事な試合で動きがあまり良くなかったです。代表デビューの選手も多かったようで、想像以上に緊張やプレッシャーがあったのかもしれませんが、言い訳のしようがない内容でした。

男子も女子も11月は国際試合が続くテストマッチ月間でしたが、先週末でほぼ終わりました。どのカテゴリーも厳しい試合が続いた中、サクラセブンズの勝利という結果が明るいニュースとなりました。国内では関西大会も始まり、来月には関東大会も始まります。女子ラグビーから明るい話題を届けられるように、これからの頑張りに期待します。頑張れサクラ!!