高校ラグビー決勝戦の振り返り

2022年になって、2週間経ちました。私事ですが仕事の関係で、1か月ほど前に5年少し住んだ千葉県から大阪府に引っ越しました。これまでのようにラグビーを観戦したりするのは難しくなりましたが、今年も女子ラグビーを中心に細々と更新していきます。

花園は東海大大阪仰星が優勝、終わってみれば圧倒的な強さでした

先週8日に行われた高校ラグビーの決勝戦、準決勝で王者桐蔭学園を破った國學院栃木、春の選抜王者の東福岡を破った東海大大阪仰星の組合せとなりました。國栃は栃木県勢初のベスト4進出という勢いがありましたが正直、國栃があの桐蔭学園に勝つとは...しかも2トライに抑えての勝利、予想していませんでした。

対して東海大仰星は西のAシードの評判通りの勝ち上がり、堅いDFからのターンオーバー、速攻でトライを奪う高いレベルのチームです。それに対して東福岡はキックオフチェイスからボールを奪い、開始直後に先制トライを奪うも前半のうちに仰星が逆転。最終スコアは42-22と快勝でした。ちなみに仰星は3年前の全国中学大会でも優勝しています、決勝戦の相手は私の母校の茗溪学園で現地で観戦しましたが、高校と同様に個々の強さとチームの完成度が高くて本当に中学生のチームなのかと驚きました。

そして8日の決勝戦。ライブでは見れなかったので、毎日放送の花園のサイトにあるアーカイブで見直してみました。これまで順調に勝ち進んできた東海大大阪仰星が有利と予想していましたが、やはり開始から仰星が國栃陣内で攻める展開になり、前半7分に先制トライを奪いました。そのあとのキックオフでも國栃がタッチに出してしまうミスから敵陣でチャンスを作り、そこから攻め続けて2トライ目。國栃はなかなか敵陣深くでアタックできませんでしたが、反則からG前ラインアウトのチャンスを作り、前半22分にモールを押し込んでトライ。前半はその後仰星がPGを加えて、スコアは15-5でしたが両チームのDFの速さ、強さが目立ちました。國栃は素早く前に出るDF、仰星は堅い守りを見せつつ、タックル後にターンオーバーのチャンスがあれば数人が一気に押し込んでターンオーバーする場面もありました。

後半、逆転を狙う國栃はFBの青柳選手がラインブレイクをするなど、アタックを試みるのですが、仰星は堅い守りを見せては、國栃の陣内に入ってアタックする前半と同じ展開が続きました。後半12分過ぎにようやく國栃が敵陣22mに入ってアタックしますが、それもG前で倒した後すぐに他の選手がジャッカルに入り、守り切りました。そして久しぶりに反則から敵陣22mに入るとモールを押し切って後半20分過ぎに追加のトライ。まさに横綱相撲という感じで、相手のアタックを受けてからの攻撃でした。DFは本当にチーム全員が繋がって、同じ判断が出来ている印象で、隙が無いです。結局、ゲームを支配し続けた仰星が後半30分過ぎから2トライを加えて最終スコアは36-5。ともに自陣からアタックを試みてトライまでミスなく繋ぐ崩しは驚きでした。

國學院栃木、初めての決勝戦にも臆することなく、自分たちの力を出し切るような戦いでした。それでも試合が進むにつれて選手の表情も険しいというか、戦える手応えを感じれない悔しさというか、東海大大阪仰星の強さはそれを寄せ付けないような感じでした。またTwitterではSOの吉本選手のキックのコントロールが話題になっていました。自陣から敵陣22mを狙ってのタッチキック、素晴らしいですね。決勝戦でも前半に2回、上手くけり出して自陣からチャンスを作りました。相手DF、特にBK3へのプレッシャーにもなったと思います。

決勝戦での東海大大阪仰星のプレーは、本当に王者らしいものでした。そして果敢に挑んだ國學院栃木のプレー、モールで奪ったトライはお見事でした。そして新型コロナの変異型が急拡大する前とはいえ、無事に全チームが陽性者を出さずに大会を終えられたことは素晴らしいです。

最後に先週末は大学選手権決勝、リーグワンの開幕、関東女子大会などラグビーシーズンは続きます。日付が変わって今日15日は関東女子大会のプレーオフ、勝った2チームが全国選手権に進出します。引き続き感染予防に努めながら、素晴らしい試合が見れるのを期待します。

関東女子大会OTOWAカップ第2節

12月に入ってから、2回目のブログになります。2週間前の第1節を終えてから振り返りのブログを書くつもりが、更新できずに第2節になりました。前節の試合については、関東協会のYoutubeチャンネルにハイライト動画がUPされています。昨年は無観客開催となり女子ラグビーのファンの方々に選手のプレーを見せる機会がほとんどありませんでしたが、今年は会場によっては有観客で行われています。

私が現地で見た試合、単独チームになった東京山九フェニックスが快勝しました

第1節の東京山九フェニックスとPTS立正の試合を簡単に振り返ると、前半にフェニックスが5トライを奪いましたが、ワイドに素早くボールを動かして、PTS立正を振り回していました。前半はほとんどがフェニックスのアタックの時間帯で、PTS立正は自陣でDFするばかりでチャンスを作れず。後半は慣れてきたPTS立正が交代で入った日本代表の阿部選手、長田選手らの奮闘もあり、敵陣G前まで攻め込んで1トライを返しますが、フェニックスはラインアウトからモールを押しこんで2番塩崎選手がトライを奪うなど2トライを追加し、快勝しました。スコアは離れましたが、初戦を迎えた時点でチームの完成度の差が現れていましたね。

第1節の勝者通しの対決は予想以上にアルテミスターズが快勝

そして今日26日、全国各地でかなりの冷え込みになる中、横河武蔵野アルテミスターズとRKUグレースの試合が、茨城県の流通経済大学第2ラグビー場で行われました。

第1節では日体大に勝利したアルテミスターズ、ラインブレイクから一気に走り抜けたり、見事なトライが多かったです

第1節はRKUグレースがBRAVE LOUVEに大勝、アルテミスターズが日体大に大量リードから2点差まで追い上げられるも逃げきってそれぞれ勝利しています。お互い相手を研究した上での試合は接戦になるかと予想していました。今回アルテミスターズの兄弟チーム、アトラスターズのYoutubeチャンネルで試合の配信があったので、自宅で観戦出来ました。

風のぶつかる音が聞こえ、アシスタントレフリーのフラッグもかなりの勢いで揺れていました。天気は良かったですが、少し難しいコンディションだったと思います。ラインアウトではスローイングが風に流されてノットストレートになる場面も多かったです。

それでも両チームともに自陣から積極的にボールを動かしていました。アルテミスターズは9番津久井、10番高木のHB団が上手く試合をコントロール、鋭いパスから味方の選手を前に出し、敵陣に入ってチャンスを作ります。敵陣中央スクラムからFKを奪いクイックで攻め込むと、前半8分に14番名倉選手が右隅に飛び込み先制のトライ。その後も接点の攻防でも前に出る場面が多く、優位に経ちました。グレースもDFの素早い寄りからジャッカルを決める場面もありましたが、試合が進むにつれてアルテミスターズの勢いがゲームを支配していきました。0-17で迎えた前半27分にグレースが13番内海選手がラインブレイクし、40m独走トライを返すも、前半の終盤に2トライを加えたアルテミスターズが前半だけで5トライを奪い、27-7でリードしてハーフタイム。

後半はサイドが変わり、風向きがどう影響するか注目していました。開始から風上に立ったRKUグレースが敵陣22mに入り、トライチャンスを作りましたが、アルテミスターズが何とか守り切りました。この開始10分の攻防が勝敗を決めた印象です。グレースは前半に比べてアタックする機会は増えましたが、ハンドリングエラーや反則が目立ち、最後まで試合の流れを掴めませんでした。

アルテミスターズは後半13分に突き放すトライを奪い、その後もDFでも前に出る場面が多かったです。グレースは後半23分にエリア中盤から内海選手がラインブレイクし、G前まで一気に進んで2トライ目を奪いますが、反撃はその1トライのみ。後半36分にはアルテミが敵陣22mでのラックから9番津久井が少し持ち出すと、まっすぐ走りこんできた7番小西に繋いで裏に抜けると、サポートに走った2番の選手がダメ押しのトライ。最終スコアは37-14でアルテミスターズがグレースに快勝しました。

改めて試合を見直しましたが、日本代表サクラフィフティーンの選手の活躍が目立ちました。アルテミスターズはHB以外にも1番南選手、3番ラベマイ選手を軸にスクラム、FW周辺のDFでも優位に経ちました。また14番名倉選手のボールキャリーも流石でしたね。グレースは10番大塚選手が得意のキックを使う場面があまり多くなかったです。ペナルティーからのタッチキックはもしかしたら意図的にノータッチを狙っていたかもしれませんね。また13番内海選手は再三のラインブレイクを見せていました。怪我で春からの代表合宿には呼ばれていませんが、次の試合でもあのランでチームを引っ張ることが出来れば、また呼ばれると思います。

また別会場の府中朝日フットボールパークの2試合は、日体大がBRAVE LOUVEに、PTS立正がYOKOHAMA TKMや国際武道大学、弘前オーバルズなどの合同チームに、それぞれ勝利しました。第2節を終えて、予選で2勝したアルテミスターズは、全国選手権をかけたプレーオフへの進出がほぼ決定。またPTS立正は1勝1敗で一足早く、予選での試合を終えましたが、2位でプレーオフに進出する可能性が高そうですね。

今日は女子以外にも大学選手権の準々決勝や、東京で中学生の全国ジュニア選抜大会が行われていました。そして明日からは高校ラグビー、花園が開幕します。年末、ラグビーの話題が増えてきますね。先週、女子の関西大会も三重PEARLSの優勝で幕を閉じましたが、また試合はチェックできていませんし、年内にもう1回はブログを更新できればと思います。

女子日本代表の英国遠征で感じた課題

12月になり、夕方になるとかなりの冷え込みを感じるようになりました。2021年も残り4週間ないですね、健康に気を付けていきましょう。

先週、大西将太郎さんがJ SPORTSのYoutubeチャンネルで、女子日本代表について熱く語っていました。再生回数がまだ3桁なのが残念ですが、ありがたいですね。動画の中で、日本協会のHP内にラグビー女子日本代表応援サイト Road to WRC2021、があるのを知りました。リンク張っておきますね。コンセプト、サクラウェーブ、改めて思い出しました。

https://www.youtube.com/watch?v=6yIlLfxVKM8
ヨーロッパ遠征3試合の結果にも触れてくれています

また11月27日にはラグビージャーナリストで女子ラグビーをよく取材してくださる大友信彦さんがRUGBY JAPAN 365のサイトで11月のイギリス遠征レビューを書いてくれていました。今回はこの記事の内容を紹介しながら、個人的な意見を整理しようと思います。

試合ごとに内容が良くなるも、得点力不足が明らかになった

先ほど紹介したレビューにあった3試合の戦績
 11月7日 日本×5-23ウェールズ(T:齋藤聖奈)
 11月14日 日本×12-36スコットランド(T:永田虹歩、加藤幸子、C:平山愛)
 11月20日 日本×12-15アイルランド(T:古田真菜、齋藤聖奈、C:大塚朱紗)
世界ランクで格上の3か国を相手にした遠征、各試合のレビューは以前のブログでも書いたので、そちらをご覧ください。レスリーHCのコメントには「W杯本番と同じようなサイクルを経験できた。これはチームにとって大事な学びの時間になったと思う」とあり、確かに来年開催のW杯に向けて、学びは多かったと思います。選手も2年ぶりの遠征できっと苦労やストレスもある中、良い戦いを見せてくれたと思います。この遠征からさらに成長してくれるはず。

一方で多くのファンからは「良い試合だった、来年に向けて良い準備になった」というコメントがアーカイブ内やSNSでも見れました。何をもって良い試合だったのか、と思うと強豪国相手に持てる力を出し切って粘り強い戦いが出来た、というのかもしれません。選手が必死に起きて、素早く動き、攻守に奮闘していた姿は本当に良かった。ただそれで満足してしまい、勝敗に関しての意識が少ない印象は否めません。来年に向けて良い準備?本当に良い準備が出来たのか?私が感じたのは得点差以上の何か、勝利までたどり着けない相手との差の部分です。

そして見出しに書いた話になりますが、女子日本代表の大きな課題は得点力不足です。遠征中の5トライのうち、G前に迫ってラックサイドを攻め込んだのが4トライ。もう1トライは、敵陣10m付近でタックルを受けた小林選手が素早く起き上がってラインブレイクし、フォローに繋いで古田選手がトライしたアイルランド戦の1トライのみでした。試合を見ていて、チームとしてどうトライを取るのか、どう得点を取るのかが見えないと感じました。極論、今のサクラはG前まで攻め込まない限り、トライは取れません。

https://www.youtube.com/watch?v=s-34nIiItmY

チーム内ではアタックのプランとして、阿部、津久井という国際レベルの球捌きの良いSHがいて、ハイテンポでボールを動かして仕掛け続けるというのはあると思います。SOからのアタックのオプションが少なく、そこからの1パスを相手DFに狙われて思いっきりタックルを受ける場面も何回かありました。ラックからプレッシャーを受けてアタックのテンポがスローになった時など、DFの崩し方をチームで取り組めているのかどうかがはっきり見えません。海外の強豪国と比べると、外の選手(FB、WTB)のスピードは劣っていて、一気にラインブレイクしてチャンスを作る場面がなかなか作れませんでした。BKがユニットで上手く動いて、抜けだす場面を作りたいのですが、意図してそういうセットや動きがない印象です。

そのため何とか敵陣に攻め込んでチャンスを作った時に、こうトライを奪う決め事のようなオプションがなく、取り切れないんじゃないかなと個人的には思いました。そしてコーチ陣はそういうトライを取り切るプレーを指導しているのか。男子にはトニー・ブラウンという世界レベルのアタックコーチがいて、2019年のW杯では外に福岡、松島のような世界レベルのフィニッシャーがいました。そして試合では上手く余らせた大外を抜け出してトライチャンスをたくさん作りました。その時の男子のイメージが私には強すぎるのもありますが、サクラは果たしてどう得点を取って勝つのか。

ここ最近の女子の試合結果(World Rugby HPより)を改めて見ると、勝ったチームは最低15~20点は奪っています。そして日本は退場者が出て14人になったアイルランドから50分で1トライしか奪えなかった。悔しい現実ですが、やはり3トライを取る力をつけないことには勝つ可能性は低いまま、良い試合で終わってしまうでしょう。気になって2017年のW杯の5試合のスコアを探してみましたが、予選3試合で7トライ、イタリアには0-22と完封負けで、最終戦の香港には44-5で勝利しました(参考サイト)。また接戦になると、キッカーのプレースキックの精度が大事になります。実際、アイルランド戦では古田選手のトライ後のコンバージョンが外れましたが、もし決まっていて14-15の1点差でゲーム終盤に進んでいたら、敵陣の反則で逆転PGを狙うこともできたはずです。もしラインアウトが取れる計算が出来ていたら、ラインアウトからモールを組んでG前まで押し込むことも狙えたはずです。しかし前のブログで触れたとおりプレッシャーを受けてクリーンキャッチが出来なかったので、それも出来なかった・・・あの12-15の負けはそういう悔しい負けでした(あくまで個人的な印象です)。

遠征3試合すべてに出場した南キャプテン、これからの頑張りに期待

会HPにあるアイルランド戦後のコメントで南キャプテンが最後に「来年のワールドカップに向けては、セットピースを安定させること、精度を上げることや、攻撃のオプションを増やすことが重要になってくる」と語っていましたが、本当にその通りだと思います。選手の頑張り以上に、コーチングスタッフの頑張り、チームの引き上げがないと、来年のW杯でのベスト8入りは難しい状況だと思います。個人的な予想ではほかの予選プールの予想もしたうえで、米国、カナダ、イタリアを相手にどれかで1勝すれば、ベスト8進出に大きく近づくと思います。だからこそ、攻撃のオプションを増やし、得点力を高めるのを1年かけて準備してほしいですね。改めてチームのコンセプトで掲げられている「サクラウェーブ SAKURA WAVE」をどう体現するか、イメージから具体性を持ったアクションに変えてほしい。

最後にレスリーHCは「日本の女子選手は国内での15人制をプレーする機会が極端に少ない」と話していました。これは本当にそうで、関係者が新しい大会やシーズンスケジュール含めて考えないといけません。あくまで個人的な意見になりますが、今後の国内スケジュールは
 2月中旬~6月下旬 セブンズ(太陽生命WSS、リージョナルSなど)
 9月中旬~2月上旬 15人制(関東大会、関西大会、全国選手権など)
という形になるかなと。そして10月11月はサクラのテストマッチ期間でしょうか。本当は春にもテストマッチを組みたいと思いますが、なかなかハードルは高いかもしれません。2019年のように7月に南半球に遠征できれば良いですが、予算に限りはありますしね・・・それと東京五輪のレビューの時にも書きましたが、国内で15人制の試合機会を増やすことがそのまま代表強化に繋がるとも限らないのは否めません(選手にとっては経験=プラスですが)

そんなこんなで長文になりましたが良い試合をしたことで満足して、ここから勝ち上がるために克服すべき課題を見逃してしまうと、東京五輪のセブンズのように、思い描いた戦いが出来ず、悔しい結果になります。2017年W杯で11位に終わった後のレビューから進歩しないと。実はサクラセブンズも世界大会に出れば、得点力不足という点は同じだと思います。選手の強化と同じくらい、コーチングスタッフがいかに鍛え上げられるかが大事と改めて感じました。頑張ろう、サクラフィフティーン、サクラセブンズ!!

サクラセブンズ、ドバイ大会を制してW杯予選突破

12日金曜と13日土曜の2日間で行われたアジアセブンズシリーズドバイ大会、昨年はシリーズが全て中止になり、久しぶりのシリーズ大会でした。東京五輪で5戦5敗、最下位の12位に終わり、再起をかけたサクラセブンズは五輪メンバー、落選メンバー、新戦力がかみ合って、準決勝の香港戦では29-0と完勝し、W杯出場を決めました。そして決勝の相手はライバル中国、五輪では完敗した相手に14-12と競り勝って、見事ドバイ大会を制しました。

日本協会HPにある大会登録メンバーはこちら。東京五輪のメンバーが7名、セレクションで落選するも復帰したメンバーが中村、小笹、三枝、香川の4名、そしてデビュー大会の須田(追手門学院大)の12名。そしてドバイ大会では先発メンバーはほぼ固定、香港戦ではFWに梶木、中村、三枝、SHに平野、BKは須田、大谷、堤という7人でした。開始のキックオフをミスしてDFから始まるも、相手のBKへ素早く前に出てプレッシャーをかけ続け、1分30秒近く反則せずに相手のミスを誘うと、そこを起点にプレーを止めることなく継続して先制トライ。

その後も香港のアタックに連携の取れたDFでラインブレイクを許さず、アタックでは平野、須田が上手くペースをコントロール。梶木がDFのギャップをついて縦に抜け出したり、エースの堤が外を抜けて独走したり、様々パターンでトライを重ねました。五輪では相手DFの裏を狙うキックを用いたプレーもありましたが、この大会では同じアジアのライバルを相手に、しっかりキープして仕掛け続けることを意識していたのかもしれません。得点の通り、見ていて余裕を感じさせるような試合でした。

https://twitter.com/JRFUMedia/status/1463119083331670022
予選から危なげない戦いでW杯出場を決めたサクラセブンズ、慌てることなく自信をもってプレーしているのが伝わってきました

迎えた決勝戦の相手は中国、高さ対策かFWは香港戦で先制トライを奪った三枝に代わってサイズのある小笹が先発メンバー入り、それ以外の6人は香港戦と同じメンバーで挑みました。最初のキックオフでノット10mから中国にアタック機会を与えると、そのまま継続されてG前に攻め込まれ、先制トライを与えてしまいました。いい立ち上がりではなかったですが、中国の深く広いラインに対して、素早く前に出つつも左右の連携を保ち、大きく速い相手に慌てずチームとしてどうDFするか統一されているのが見れました。そして中国が先制トライから難しくない位置からのキックを失敗し、この2点差が最後の結果に表れました。

日本は次のキックオフをキャッチすると、中国DFと上手く間合いを取ってキープすると、自陣22m内で素早く展開。外にいた堤が仕掛けて大谷に繋ぎ、カバーのDFに捕まるも再び堤に繋いで裏に抜けると、後ろにいたスイーパーをステップでかわし、およそ70mを独走し逆転。さらに次のキックオフでプレッシャーをかけて、相手のスローフォワードを誘うと敵陣22mスクラムから、中国DFの位置をよく見ていた平野がスクラムから持ち出してそのままポスト下にトライ。トライを奪われた後の大事な時間帯の2分で連続トライを奪えたことで、チャレンジャーの立場の日本が落ち着きを取り戻した好プレーでした。相手DFに粘らせることなくあっさりトライしたのも良かったですね。

そして2点リードで迎えた後半の大事な立ち上がり、中国のキックオフが10m付近に高く上がった場面で、梶木が中村を1人リフトして相手より先に触り、ボールをキープしました。このプレー、素晴らしいですね。後半はずっと日本の陣地でのプレーが続き苦しい展開でしたが、東京五輪の時と違ったのは自分たちの反則から相手にボールを与えて、あっさりトライを許すことがなかったです。ノッコンやスローフォワードのミスはありましたが、相手のアタックにしっかりプレッシャーをかけてミスを誘っていました。特に中村選手の必死に内から追いかける姿が目立ちました。それと大事なラインアウトで大きな中国を相手に、ダミーを交えてしっかりキープしたのも良かったです。ここは先日のサクラフィフティーンの試合と大きく違うところで、セットプレーが計算できるというのは、選手に落ち着く機会を与えてくれます。後半は両チームともノースコア、日本が逃げきったというより中国にミスが多かったです。それでも相手を2トライに抑えたDFは素晴らしかったですし、ナイターで照明もそこまで明るくなかった影響もあるかもですね。

https://twitter.com/RugYume/status/1463062018391379968
キャプテンを務めた平野優芽、東京五輪では出場時間が限られていましたが、ドバイ大会ではキープレーヤーとして期待以上の活躍を見せました

東京五輪で完敗した中国を相手に、短い準備期間で立て直し、自分たちの目指すラグビーをやり切って2点差での勝利。来年のW杯出場を決めて、良いスタートが切れました。今後は国内での合宿が続くと思いますが、世界レベルを目指して、引き続き強化を進めてほしいですね。

男子セブンズは準決勝で韓国に敗れて残念な結果に

そして男子セブンズ、準決勝で東京五輪で快勝した韓国を相手に、いいところがない試合展開で後半残り1分を切ってトライを奪われ、最後のアタックでもミスをして14-21で負け。W杯の連続出場が途切れてしまいました。東京五輪と大きくメンバーが変わる中、W杯出場をかけた大事な試合で動きがあまり良くなかったです。代表デビューの選手も多かったようで、想像以上に緊張やプレッシャーがあったのかもしれませんが、言い訳のしようがない内容でした。

男子も女子も11月は国際試合が続くテストマッチ月間でしたが、先週末でほぼ終わりました。どのカテゴリーも厳しい試合が続いた中、サクラセブンズの勝利という結果が明るいニュースとなりました。国内では関西大会も始まり、来月には関東大会も始まります。女子ラグビーから明るい話題を届けられるように、これからの頑張りに期待します。頑張れサクラ!!

惜敗したアイルランド戦のレビュー

土曜は男女の15人制の試合とセブンズの試合が重なり、日本代表を応援する夜でした。結果として勝ったのは女子セブンズのみ、他のカテゴリーは勝利できず、悔しい結果となりましたが、1年前には男子のヨーロッパ遠征も中止にせざるを得なかったので、新型コロナの猛威を乗り越えて、ようやくここまで戻ってきたという気持ちもありますね。マイナスから0に戻ったというか、ここからどう積み上げて勝てるようにするかですね。

試合前のコイントスでしょうか、日本はリザーブも南主将。写真はJRFUのTwitterから拝借。

サクラフィフティーンの相手はアイルランド。前の試合で世界ランク6位で格上の米国を破り絶好調のアイルランド。日本は前半に2トライを奪い、優位に進めるも、後半はホームのアイルランドが勢いを取り戻し、強力なFW陣が2トライを奪い返して、12-15で負けてしまいました。日本はこの遠征の3試合で一番良い出来と感じた分、悔しい負けですね。日本協会HPのアイルランド戦後のコメントはこちら。個人的には南主将のコメントにとても共感します。それとラグビーリパブリックの振り返り記事はこちら、マッケンジーHC「苦い経験も収穫」

https://twitter.com/JRFUMedia/status/1462100006220058630
前半2トライを奪ってリードして折り返したものの、後半に無得点なのは2017年W杯の予選プールと同じ結果ですが、内容は良かったです

勝てる可能性を大いに感じさせながら後半に得点を奪えず惜敗

https://twitter.com/JRFUMedia/status/1461348980852363265
アイルランド戦の登録メンバー、南主将がリザーブに回ったり、5番LOに立正大学の吉村選手が先発出場で代表デビューとなりました

遠征最終戦についてレビューしながら、色々と振り返り思ったことは短く書いていこうと思います。まず試合登録メンバー、強力なスクラムを持つアイルランドを相手に、これまでスクラムをリードしてきた南主将をリザーブに入れたのはちょっと疑問です。まだ代表デビューの吉村選手よりも前の試合でも出場した北野選手を先発に入れるべきではと思いました。リザーブにはFW6名を並べましたが、期待していたインパクトプレーヤーのライテ選手はメンバー外。BKはSHの阿部選手とSOの山本選手で他のポジションをカバーするにはなかなか厳しいのかなと思います。今後はユーティリティープレーヤーが求められるかもしれません。

試合について、協会HPの詳細はこちら。前半は攻め込まれた6分にボールを奪い返して自陣から脱出しようとしたキックでオフサイドを取られ簡単にアイルランドにPGで先制されました。しかしホームのアイルランドに対して日本のDFの素早いプレッシャーを受けて、外のスペースに展開するもノッコンやパスミスが目立ち、勢いを掴めず。日本は相手のペナルティーからSH津久井選手が積極的にクイックを仕掛け、サポート選手も加わり、オフロードを売内で大きく前に出る場面も。キックは避けて、コンタクトを重ねて継続して攻め込みます。

前のスコットランド戦はメンバー外だった庵奥選手、この試合では先制トライの場面にも絡むなど、素晴らしいプレーを見せました。写真はJRFUのTwitterから拝借。

アイルランドは自陣でボールを奪うとキックで前に進もうとしますが、FB庵奥選手が素晴らしいキックレシーブから敵陣に攻めこむなど、中盤から前でプレーする時間帯が多かったです。そんな中で前半17分に敵陣ラインアウトからのアタックで倒されたCTB小林選手が素早く起き上がって裏に抜け出すと、サポートに寄ったFB庵奥選手、CTB古田選手と繋がり逆転のトライ。DFもしつこく動き回り、アイルランドには得点チャンスを作らせず、前半29分には相手のNo.8が顎への危険なタックルでレッドカードとなり14人になりました。そんな中でFW陣がDFラインを突破し、G前に攻め込んで、ラックサイドをしつこく攻めると、37分にFL齊藤選手が飛び込み逆転トライ、トライ後のキックも決まって12-3とリード。そのあとのキックオフからも、FWが自陣22m付近のラックからオフロードでつないで抜け出しNo.8永井選手が独走し、あわやトライというチャンス場面を作るなど、自分たちのラグビーを見せる時間帯が多い前半でした。

逆転トライを奪った古田選手を祝福する庵奥選手、写真はJRFUのTwitterから拝借。

9点リードで迎えた後半の立ち上がり、アイルランドがG前に攻め込んでプレッシャーをかけてくると、日本は4分にキックチャージからトライを返されます。この場面、スクラムでプレッシャーを受けて、フロントローがラックへの動きが遅れ、アイルランドDFへの壁を作れずに、キッカーの小林選手へのコースを開けてしまったのが原因で、防げた場面でした。遠征中、立ち上がりに勢いに乗れずにいた悪い部分が出たのと、これをきっかけにアイルランドが逆転へ向けてスイッチが入ります。前半のミスを修正し、シンプルに接点で前に出るようになったのと、ホームの声援を受けて、アタックに勢い、モメンタムが出てきました。日本は受ける時間帯が多く、前半のように敵陣でアタックする時間がなかなか作れず、体力を奪われたかもしれません。

日本は遠征中、不安だったラインアウトでミスが目立ち、ゲーム展開に大きく影響しました

そして一番の誤算は前後半共にラインアウトでミスばかりが続き、ゲームの展開を作れなかったこと。試合映像を見直してみましたが、15本のマイボールのうち、キープしてアタックできたのは半分以下。それもキャッチミスだったり、低いボールをタップしたりで、クリーンキャッチは0でした。正直テストマッチレベルに関係なく、これでは勝てません。逆転を狙った後半に敵陣に攻め込んで反則を獲得した位置は、PGを選択して同点も狙える位置。タッチからG前ラインアウトでモールのオプションもあったかもしれませんが、結局タップキックから攻め込むしかありませんでした。人数を少なくしたり、工夫してキープするオプションがあったのかわかりませんが、スローイングだけでなく、LOの佐藤選手、櫻井選手の不在も影響したのかもしれません。ラインアウトコーチとしてサクラフィフティーンOGの中嶋さんがいますが、今後に活かして欲しいです。セットプレーの安定は強豪に勝つための必須条件なので。

日本な終盤に敵陣に攻め込むチャンスを作りましたが、G前のラック脇を攻め込んだ選手がダブルモーションを取られたり、ノータイムからのアタックでもタックルを受けて耐えられずに倒れたところのサポートが遅れて、ノットリリースを取られるなど、3点差を追いかける展開で得点を取り切ることが出来ませんでした。アタックの戦術、オプションが少ないのも、この遠征で感じたことです。遠征3試合で奪ったトライは5つ、そのうち4つはG前に攻め込み、FW陣がラックサイドへのアタックを続けてもぎ取ったトライでした。BKが1次攻撃のサインプレーで抜け出す場面もなかったです。戦術を整理し、オプションを多く準備することで、G前に攻め込んだ時に、良い判断が出来て、日本らしい展開ラグビーからのトライを奪う場面が見たいですね(ただ凄く時間がかかることですし、指導できるアタックコーチがいるかどうか…)

後半になかなか得点チャンスが作れない中、3点リードしているアイルランドが簡単なPGを失敗した場面もあり、本当に勝てる可能性が大いにあった試合でした。良い経験だった、良い試合だった、で済ますにはもったいないというか、14人になった相手に逆転されて、勝ちを逃したと選手、スタッフは感じているのではないでしょうか。これがもしW杯の予選プールだったら、PGを狙って同点にするという選択肢もあったかもしれません。いずれにせよ、得点力を上げていかないと、今後も良い試合までで終わってしまうかもしれません。

遠征3試合を振り返れば、どれも世界ランクが格上で戦い方も似たような相手に対し、通用した部分と通用しなかった部分がはっきりしました。W杯まで1年を切り、どれだけテストマッチの機会を作れるかはわかりませんが、まずは引き続き個々のスキルアップ、サイズアップを続けていかないといけません。テストマッチのゲーム強度に慣れることで良くなる部分もありまが、男子と同様に女子でも国内の試合では正直難しいです。英プレミアでプレーする加藤、小林、山本の3名はこの遠征中、本当に活躍が目立った選手に入りますが、本当に今後ベスト8入りを目指すなら、海外で毎週のように試合をしてタフになる選手がもう少し出てこないと厳しいかもしれませんね。

最後にWorldRugbyのHPにある他の国の試合結果を見ると、予選プールで日本と戦う米国は連勝を続けるイングランドに0-89と完敗。カナダは2週間前に日本に勝ったウェールズを相手に、24-7と逆転勝利しています。同じプールのイタリアはW杯予選をホームで戦い抜いたからか、テストマッチは行っていませんね。それとフランスがNZに29-7で勝利するなど、ヨーロッパ勢の強さが目立ちますね。

サクラセブンズは東京五輪で完敗した中国に14-12で勝利し、アジア予選1位でW杯出場を決めました。素晴らしいですね。試合映像を見直して、ブログで振り返り出来ればと思います。サクラはフィフティーンもセブンズもここから来年に向けてますます強化を進めないとです。