サクラ15は来月にヨーロッパでテストマッチ2試合

10月に入りました。男子日本代表は合宿中ですが、23日に大分で強豪オーストラリアとテストマッチが行われます。日本協会のHPの発表はこちら。W杯優勝の南アフリカに連勝して絶好調のオーストラリア、ベストメンバーで来るかはわかりませんが、およそ2年ぶりの国内でのテストマッチでジェイミーJAPANがどんな戦いを見せてくれるか楽しみですね。

女子日本代表はウェールズ、スコットランドとのテストマッチが決定

そして女子日本代表サクラフィフティーンの秋の予定も発表されています。スコットランド戦に関する日本協会HPの発表はこちら。また先週の市原での強化合宿のレポートはこちら。試合形式の練習を重ねていて、戦術、ゲームプランの落とし込みも始めているのでしょうか。遠征前に菅平での2回、合わせて14日間の強化合宿も予定されています。この時期に菅平とも思いましたが、来月の遠征の準備であらかじめ肌寒いところで合宿することで、現地での対応力を高める良い準備が出来ると感じました。4日時点で発表されている遠征予定ですが
10月31日(日) 日本から出発
11月7日(日)  ウェールズ代表戦(世界ランク11位、KO時間未定)
11月14日(日)  スコットランド代表戦(同9位、まだKO時間は日本の深夜1時過ぎ)
※11月20日には男子がスコットランド代表とテストマッチ予定。また帰国日は調整中…

スコットランド協会のYouTubeから、劇的な逆転勝利をした先日のアイルランド戦のハイライト

スコットランドについては、先月のW杯予選で格上のスペインに27-22、アイルランドに20-18(World Rugbyの試合経過リンク)とそれぞれ逆転勝利をして、ヨーロッパ2位でW杯最終予選への進出を決めたばかりです。試合映像もフルでYouTubeにあるので、代表候補の選手たちもチェックしているのではないでしょうか。ウェールズについては、今年の春に行われたSix Nations(6か国対抗)で最下位だったようで4月10日にはアイルランドとも戦い、0-45で完敗したとか。前回大会の成績で来年のW杯出場は決めているため、日本代表とのテストマッチは貴重な試合機会と考えているでしょう。帰国日は未決定のため、もしかしたら翌週に別のテストマッチが組めるよう調整しているのかもしれません。ただ個人的にはこの2試合にフォーカスしてよいかと思います(帰国後には関東・関西大会も開催する予定のため)。

またこの2か国で4月24日にテストマッチを行っていて、その時はスコットランドが27-20で勝利しました。実力に大きな差はない分、ウェールズも手ごわい相手ですね。ただ試合映像がこうして見れるのは、大きなアドバンテージだと思います。2か国とも日本より強度が高い相手、その強度に最初から戦えれば試合の流れを掴めると思いますし、接点で受けたり、反則からラインアウトモールで攻め込まれると、後手後手に回り苦しくなると思います。故に国内の強化合宿でゲームプランの落とし込み、遂行力がどれだけ出来るかが大事です。後はイギリスでプレーする山本選手、小林選手、加藤選手の合流もあるかと思いますが、チームのピースとしてしっかりハマれるかどうか。過去の女子日本代表でこういったケースはおそらくないと思いますが、そこはオンラインでのミーティングなど、上手くやってくれると思います。

探したら14分のハイライト動画があったので紹介、フルの映像もありました。

なので万全の準備をして、世界ランク12位の日本が11位のウェールズ、9位のスコットランドをアウェーで撃破し、世界ランクトップ10入りを果たしたいですね。またスコットランドはウェールズとのテストマッチを分析した上で挑んでくるでしょう。そして翌週20日には男子日本代表もスコットランドでテストマッチが行われます。男女ともに2019年に日本に負けただけに、ホームで揃ってのリベンジを果たすべく、全力で来るでしょう。まさにW杯本番に近いプレッシャー、ここで勝てれば1年後のW杯ベスト8進出が大きく近づくと思います。4日時点で男子は世界ランク10位ですし、先日の東京オリンピックの成績を上回る活躍をサクラフィフティーンには期待しましょう。

女子7人制代表サクラセブンズはドバイ大会に向けて大丈夫か

最後に気になっているのがサクラセブンズの現状、先日の熊谷合宿のスケジュールが発表されていましたが、合宿レポートなどの情報は協会HPで見当たらず。先日の合宿の参加メンバーはこちら。東京五輪の登録メンバーは大谷選手、梶木選手、白子選手、堤選手、永田選手、原選手、平野選手、山中選手の8名。それ以外にも五輪前まで代表の主力メンバーとして活躍した小笹選手、香川選手、また中村選手はプレイングコーチとして参加していたり、春の太陽生命WSSで活躍した高校生や大学1年生など合計21人が選ばれていますね。

男子の15人制、セブンズも合宿をしている中、活動予定が見えない分、出遅れているような印象はありますが、経験値の高いメンバーもいますし、まずは戦いのベースとなるスピードとパワーを継続して強化しないといけないのは変わりません。東京五輪を終えて中国を追いかける立場になりましたが、まずはワールドシリーズ、来年のW杯出場に向けて代表スコッドを決めて、継続して強化していかないといけません。頑張ろう、日本。

来年のニュージーランドW杯予選の話

新型コロナの第5波もだいぶ落ち着いてきましたね。大学ラグビーのシーズンも開幕し、ラグビーの話題が増える季節になってきました。女子日本代表は今日から26日まで市原市で合宿を行っています。予定されていたアジア予選の直前合宿のスケジュールで、FW22名、BK18名参加メンバーはこちら、大学生以下のTIDは13名ですね。もし予選が行われるとして、実際の遠征メンバーの数は30数名くらいになりますかね。テストマッチも2年弱行われていないので、先発メンバーも予想がつきません(苦笑)

来月行われる予定だったアジア予選、Asia Rugbyのサイトのカレンダーを見ても開催時期が未定になっています。どうなるかさっぱりわかりませんが、先週末はU18女子のセブンズ大会がウズベキスタンで行われるなど、徐々に国際大会も行われているのは良い流れですね。

ヨーロッパ予選は最終日を前に4チームが1勝1敗で並ぶ大混戦・・・

https://twitter.com/rugbyworldcup/status/1439662561138552839
ラグビーの試合でリーグ戦の4チームが1勝1敗で並ぶのは本当に珍しいですね

19日の深夜に行われたヨーロッパ予選の第2節、第1節で負けていたアイルランド、スコットランドが勝利し、上にある画像の通り、大混戦です。試合のフル動画はWorld RugbyのYouTubeチャンネルで見れます。

19日のスペインとスコットランドの試合のハイライト、開始早々に先制トライをしたスペインが快勝するかと思っていましたが、予想外の展開になりました。
19日のイタリアとアイルランドのハイライト、ホームのイタリアを相手に初戦のスペイン戦に負けて後がないアイルランドが魂のラグビーを見せて15-7で勝利

予選1位が本大会出場を決め、2位が最終予選に回り、3位以下は予選敗退となります。そして1位のチームが来年のW杯で日本と同じ予選プールBに入るだけに注目です。最終予選もこのヨーロッパ予選と比べると格下が相手になると思います。得失点差で1位のイタリアですが、次の相手はスペイン。調べたら2017年のW杯で戦っていますね、日本は同じ日に11位決定戦で香港に勝利して11位でした。

2017年のアイルランドW杯では最終日の9位決定戦で激突、HTでは3-3の同点でしたが、後半に3トライを奪ったスペインが22-8で勝利しています

そして2位のアイルランドはスコットランドと対戦。他の2チームに比べると、スコットランドは実力が劣りますし、過去に6か国対抗で毎年のように試合をしているので、優位に進めるでしょう。19日のイタリア戦はDFの激しさでイタリアを圧倒し、魂を感じさせる素晴らしい試合でした。Twitterに2トライ目の場面がありましたが、11番の走りが良かったので紹介。いずれにせよ、25日の試合で勝った2チームがW杯出場すると見てよいので、負ければ予選敗退の地獄。ホーム開催のイタリアは難敵スペイン相手でも負けられませんね。

自陣でキックをキャッチした11番の選手がイタリアのDFを何人もかわしてビッグゲインすると、そのラックから展開してトライ。ゲームを優位に進めました。

2試合ともしっかりフルで見たわけではないですが、2017年のW杯の時と比べると、選手全体のサイズ感、フィジカルが大きく増している印象です。日本の選手たちも大きくなったと前にブログで話しましたが、ヨーロッパの国々も同じでした。特にスペイン以外は6か国対抗で強豪のイングランドやフランスと毎年のように戦っているので、強化もそこに注力せざるを得ないのでしょう。今年、日本の平野選手がスペインの国内リーグに挑戦していましたが、男子はあまり強くないのに女子はセブンズでもワールドシリーズのコアチームにいますし、15人制でもW杯の常連なので、どういう強化をしているのか気になりますね。

一方で細かなスキルはまだこれからというか、日本のほうが優れているようにも感じます。2017年のW杯でも感じましたが、スクラムやラインアウトのセットプレーで優位に立ち、接点の攻防で簡単にやられない、粘ってラインブレイクを防いでいければ、十分に勝つチャンスはありそうです。来年のW杯に向けて試験的ルールの「50-22ルール(?)」を上手く使ったキックの攻防を身につけること、あとは個々のタックル力をつけて、1対1の場面で捕まえる(大きく走らせない)ことが出来るかどうかですね。2019年の日本W杯の日本代表のようなイメージ、女子の選手たちも持っているのかもしれません。ヨーロッパに渡って、海外リーグに挑戦する選手も増えて、本当に良い流れは来ています。後は国内の試合の充実ですね(苦笑)

目指せベスト8!頑張れ、サクラフィフティーン!頑張ろう、日本!!

女子15人制代表はW杯予選まで残り1か月

9月になりオリパラで暑かった夏も終わりに近づいていますね。五輪を終えたセブンズ代表が一休みしている中、女子15人制日本代表は来月行われるW杯予選に向けて、強化合宿を行いました。HPの合宿レポートはこちらFWのメンバーを中心にここ数年でウエイトトレーニングに励み、しっかりサイズアップしている印象です。海外の強豪を相手にするうえで、接点、コンタクトのファイトで戦える力が身についてきたのかなと思います(実際に戦う機会がないので実感するのが難しいのもありますが・・・)。

釜石市での合宿では日本代表のジャージを着ての試合形式練習も行われています。一般公開もしていましたが、実際に観戦できた方はうらやましいですね。レポートにある写真からそれぞれのチームの顔触れを見ると、紅白戦といったところで、これから来月のW杯予選に向けて、メンバーを固めて成熟度を上げていくのかなと。また岩手県大槌町出身の平野恵里子選手がメディアの取材対応で意気込みを語っていましたFNNのリンクはこちら。またラグビーリパブリックにも記事が掲載されていました、こちら。参加した選手のTwitterなどを見ても、非常に充実した合宿だったと伺えます。

一昨年11月のスコットランド戦から2年近くテストマッチを戦っていませんが、選手個々のサイズアップの努力と、合宿を重ねてきてW杯へ向けての強化は順調に進んでいる印象です。また15人制の試合経験を増やそうと海外に出る選手も増えてきています。昨年は横河の加藤選手、アルカスの鈴木選手が英プレミア、現在はアザレアセブンに所属している平野選手がスペインに渡って活躍していましたが、今年は春に日体大を卒業し横河に加入した小林選手、パールズの山本選手が新たに英プレミアにチャレンジするべく海を渡りました。そして英プレミアは昨日、開幕しました。

英プレミアについて、詳しくは知らないのですが、リーグ戦は長期に渡って行われます。試合映像も登録すればWebで見れるようです(私はまだ未登録です・・・)。日本国内では女子の15人制の公式戦は年間で5,6試合程度ですが、英プレミアは二けた、あわよくば20試合くらい戦うのかな。いずれにせよW杯ベスト8進出に向けて、インターナショナルレベルの選手が10名ほどいるのが条件だと考える中、レスリーHCが海外チームへ移籍するきっかけを作っているようです。思えば男子のエディーさんも2015年のW杯を前に豪州のスーパーラグビーのチームに選手を派遣するきっかけを作っていたと聞いたことがあります。少し前はNZに留学してチャレンジする選手もいましたが、遠いヨーロッパの地で活躍する選手が増えるのは驚きとともに、大きく成長してくれるのを期待せずにはいられません。

なお来月に行われるアジア予選について、未だに会場は発表されていませんが、2日土曜にカザフスタンと7日木曜に香港とそれぞれ戦います。World Rugbyにある世界ランキングでは日本が12位、カザフスタンが15位、香港が18位です。相手の情報も少ない中での戦いになりますが、アジア予選を圧勝して来年NZで行われるW杯に繋げたいですね。ぜひ生観戦したい。

またアジア予選を1位で突破すると予選プールで米国、カナダと戦います。これまでヨーロッパ遠征や豪州遠征を行ってきましたが、北米の強豪2チームとは15人制で試合をしたことがおそらくありません。ベスト8進出に向けて、本大会までに試合する機会を作ることで、相手を知り、より具体的な対策を練れるかと思います。ただレスリーHCはカナダ人ですし、この辺りは協会のマネジメントになるのかもしれませんが、何とか実現させてほしいですね。

大学ラグビーもいよいよ開幕しますが、女子ラグビーも大事なW杯予選に向けて、一層強化に励んでほしいですね。頑張れサクラフィフティーン!

東京五輪の中国戦、ケニア戦を見逃し配信で振り返る

24日に東京パラリンピックの開会式が行われて、さっそく車いすラグビー日本代表が予選リーグを3戦3勝で1位通過して大会を盛り上げてくれていて嬉しいですね。一方で女子15人制日本代表候補は合同(強化+TID)合宿を岩手県釜石市で行っています。協会HPの合宿レポートはこちら。また釜石市でもSNSで積極的に情報発信していますね。私も昨年10月に釜石市を訪れる機会がありましたが、ラグビー関係者には特別な場所なんだなと感じました。合宿の話題については、週末にでも改めてブログに書きたいと思います。

https://twitter.com/kama_stadium/status/1431140058413760512

東京五輪の振り返りを何度もブログで書きましたが、幾つかの媒体で新しいものが出ていましたね。結果はどうあれ、ここ5年間の目標としていた大会なので、たくさんの意見があって良いかと思います。今回はまだNHKスポーツのWebで見逃し配信があるので、4週間前の2試合を簡単に振り返ってみます。まず中国戦、見逃し配信のリンクはこちら(1:10:00過ぎから)

試合開始から中国のDFの圧力を受けて仕掛けられなかったサクラセブンズ

中国のキックオフで始まった前半、お互い大量得点を奪って3位で8強を狙う者同士の戦いは日本がしっかりキャッチするも、自陣22m内で外から内へパスを折り返したところで中国のタックルをしっかり受けてしまいそこから反則。そのペナルティーからわずか28秒で中国が先制のトライ。その次のキックオフでは梶木選手が平野選手を1人リフトでしっかりキャッチして攻めようとするも、外でボールを受けた白子選手が捕まってタッチに出されてピンチに。そこでのラインアウトから中国BKの選手のステップにDFが触れずポスト下にトライを許し、この時点で僅か2分30秒。その後の前半では攻撃権を得ると捕まるのを避けてDFの裏のスペースを狙ってボールを蹴るも確保はできず、またDFでも粘りを見せられず、1人のタックルミスから独走トライを許してしまう残念な展開で、前半は0-19。日本は敵陣でのアタックが出来ない苦しい展開の中で梶木選手のタックル、自陣G前でのジャッカルが目立ちました。

迎えた後半、中国選手の独走を原選手が追いかけてノッコンを誘いますが、その後のスクラムで交代で入った堤選手がスクラムから持ち出したところで中国選手が手をかけてターンオーバー。また自陣で相手にボールを奪われて、そこから相手の突進を止め切れずトライされました。一言で言えば、攻守に仕掛けて前に出る中国、プレッシャーを受けてやりたいラグビーが出来ない日本、ですね。日本の攻撃権からスタートするも、パスを繋いでいるうちにボールを奪われて、中国はそこからトライで終わる。仕掛ける選手が出てこないなか、後半に入ってきた選手が仕掛けていくと良い場面も出てきましたが、結局捕まるのを避けて裏へのキックを蹴っては継続できず。レフリーのジャッジもアンラッキーでしたが、攻守に前に出る中国の勢いに飲まれましたね。戦う準備が整っていたとは思えない試合、最後は後半残り1分に敵陣中央のペナルティーからクロスダミーでスピードに乗った相手を捕まえきれず、独走トライをされるなど、悔しい云々を感じないほどの完敗でした。キックを上手く使ったアタックを目指してきたと言いますが、ある程度仕掛けて相手DFを注目させたうえでキックを使うことでより友好的になりますが、この試合ではキック頼みのアタックにしか見えませんでした。DFでも中国の個々の選手が仕掛けに接点でやられて倒れる選手が多かったです。その中でジャッカルでボールを奪う場面もありましたが、プレッシャーをかけ続ける場面はなかったですね。そして次のケニア戦、見逃し配信のリンクはこちら(40:30過ぎから)

負けられないケニア戦、勝敗を分けたのは何だったのか

ケニアのキックオフで始まった前半、日差しが差し込む中でケニアにボールを奪われるも、そこから低いタックルで相手を倒すと山中選手がジャッカルに成功。クイックで仕掛けて敵陣に入ると、そこからアタックが左右に揺さぶり前に出て、ケニアからオフサイドの反則を誘い、最後は外の原選手がインゴールに飛びこんで5点先制。その後のキックオフでは相手を捕まえられず、追いかける展開であっさり自陣に攻め込まれるも、素早く戻り、ポジショニングの遅いケニアのアタックに対して低いタックルで孤立したところで6番弘津選手がジャッカル成功。中国戦とは明らかに違う動きでゲームを支配し始めます。

ここで日本の選手から「裏、裏」というコールが聞こえますが、試合を見ていて感じたのは「今は蹴るべきではない」という印象です。ケニアより動き出しが早く、プレッシャーをかけている状況、継続してテンポよく振り回せばチャンスは作れそうでした。しかし日本の選手は明らかに「裏へのキック」という判断になっていました。キックをした結果、ケニアの選手がボールを拾うと、倒し消れずに繋がれ、80mを一気に独走されてポスト下にトライされました。その後のキックオフでは自陣から左右に広く揺さぶり、ボールを1分以上継続してチャンスをうかがいます。敵陣に攻め込んだところで、ラックでの球出しが上手くいかず反則してしまうと、そこでのスクラムを起点に外に仕掛けられると日本のDFを上手く引き付けて、外に繋がれてまたしても独走トライを許してしまい、5-14で前半を終了しました。良い場面は日本のほうが多かったと思いますが、結局DFの場面になると、どうしても弱い部分が出てしまいます。それでも攻撃で継続できれば、後半は勝負できると思わせる戦いでした。

9点差を追いかける後半、日本はキックオフからボールを奪い一気に敵陣22mに攻め込みます。そこからはケニアのDFの粘りに前に出れませんが、継続してチャンスをうかがうと、永田選手が裏に蹴りこんだボールをインゴールで小出選手が抑えてトライ。4点差に詰め寄ります。前半同様、日本のやりたいラグビーが見えるスタートでした。さらに次のキックオフでケニアのミスから敵陣でアタックチャンスを得ます。敵陣22mに入ったところでラックのボールがこぼれてケニアにボールを奪われますが、その後のDFでしっかり面を作って前に出てプレッシャーを仕掛けます。もしかしたらケニアにはキックするオプションがないと事前に分析したうえでのプレーかもしれません。敵陣G前に押し込むと、4番梶木選手がジャッカルに成功し、クイックで仕掛けてインゴールに飛び込み逆転のトライ。後半の開始から逆転するまでの4分は完全に日本のペース、ケニアはパニックみたいな状況でした。

残り3分を切って3点リードした状況から日本のキックオフ。ケニアのアタックは個々が仕掛けるシンプルなもので、1人2人としつこく捕まえては素早く起き上がり、粘り強くDFします。狭いサイドのライン際の1対1を抜かれてピンチになりますが、必死に自陣に戻って相手のノッコンを誘います。残り1分半を切っての自陣スクラム、左右に揺さぶるもラインブレイクは出来ない中でケニアがオフサイドの反則。場所は自陣10mの中央付近、残り時間は40秒、日本はスクラムを選択し、時間を使って逃げ切ろうとしましたが、そこからの逆転負けは皆様も知っているかと思います。スクラムから持ち出した堤選手が捕まってボールがこぼれ、ケニアにボールを奪われますが、この時点でノータイム、守り切れば勝てます。しかし外に振られて1対1の場面になると劣勢になり、中央のラックで外のスペースを走られてG前に攻め込まれると、最後はタックルで倒した後にオフロードで繋がれてインゴールに飛び込まれました・・・勝ちを意識した残り1プレーからまさかの逆転負け。日本のやりたいラグビーをたくさん見れましたが、結局は個々の強さが際立ったケニアが最後に勝利をつかみ取りました。

改めて勝敗を分けたのは何だったのか。試合展開は日本のペースでした、ケニアは前半のようにトライした場面はあっさり取りましたが、それ以外の時間は日本の粘り強いDFに手を焼いているようでした。日本の良いプレーも目立ちましたが、勝負所での判断ミスから相手にトライを奪われたのも事実。勝負所でしっかり判断し、ミスのないプレーをするチームの成熟度が僅かに足りなかったのかもしれません。前半のキックの判断、後半最後のスクラムの判断、プレーする選手がどのように判断したのか。個々で反省はしていると思いますが、チームとしてもしっかり振り返ることで、これからの日本代表の成長に繋がるはずだと信じています。4週間経ちましたが、来月にはまた7人制の代表の活動も再開するでしょう。どういう強化体制になるのかわかりませんが、まずは個々の選手のレベルアップ、パワーアップがなければ、世界では通用しないので、その辺りは引き続き注目しようと思います。

日経の五輪振り返り記事を読んでコメント

先週13日に日本経済新聞の谷口さんの記事が出ました。タイトルは五輪惨敗の7人制ラグビー 強化へ先進的な挑戦必要に、メダル獲得を目指した結果、男女合わせて10試合で1勝9敗ですから悔しいけれど、惨敗です。無料で全部読めるので読んだラグビー関係者も多いと思います。今回はその内容を読み返しながら、思ったことをコメントしていきます。前回のブログから繋がる内容かもしれませんが、似たようなこと言っているかもしれません(苦笑)

惨敗の理由は色々あれど、結局は個々の力がトップに及ばないのは否めず

「ただでさえ国際経験が乏しい我々にとって、本番でベストなパフォーマンスを発揮するコンディショニングをすることは難しかった」というコメントがありましたが、男女ともにワールドセブンズシリーズに昇格し、コアチームとして参加するも勝てずに翌年降格というのがありました。一方で東京五輪を控えている日本を招待チームとして参加し、強化させたいWorld Rugbyの意向みたいなものを感じることもありました。そうした実戦の機会にも自分たちの強みを出して勝利を重ねるような戦いは出来なかった。試合映像を見る機会は限られましたが、負けるパターンはどれも似ていたのではないか。ベストなパフォーマンスと聞いて思い出すのは2016年のリオ五輪の男子、これまで勝ったことのないNZに照準を合わせて勝つとその勢いを続けて準決勝へ。3日目のフィジーと南アフリカは力及ばずでしたが、それでも日本のスタイルが見える試合だったと記憶しています。

2021年の東京はホーム、実際に会場の東京スタジアムで本大会1年前にリハーサルで試合形式を行ったり、対策をしていましたが、それでもコンディショニングが難しかったというコメント。また大会前に男女とも海外勢との実戦機会をあまり作れなかったともありました。コロナの感染防止対策と海外勢の来日のタイミングもあり、やはりこの状況下で国内で実戦機会を作るのは難しいのは本当でしょう。結果的に石橋をたたきすぎたのだろう、とのコメントもありましたが、もしベストなパフォーマンスを発揮したところで、本当にメダルに届く力があったのかなんとも微妙です。やはりコアチームとして海外の強豪相手に試合経験を積み重ねながら、地力をつけないといけない、岩渕HCのコメントは最もだと思いますし、五輪でメダルを狙うとはそういうことかなと思います。

女子は「選手の力を引き出せたとはいえない」というコメントがありました。それに加えて「ここ数年の体づくりが非効率だったとの批判があるほか、五輪直前に男子チームと多く試合をしてけが人が続出するなどHCの体調管理にも疑問が残る。」ともありました。記事を疑うわけではないのですが、どれだけそうだったのかは正直わからないです。体づくりが非効率、って具体的に何なんだろうと。男子チームと試合をしたからけが人が続出したんですかね。それはHCの体調管理という責任なのか(もちろんチーム内ではS&Cやメディカルのスタッフ含めての責任と感じているのでしょうが)。根本の課題は選手層、ともありました。女子バスケの競技人口と比べたりもしていますが、女子ラグビーの競技人口は果たして他の国と比べて日本より多いのか。トーナメントで惜敗したケニア、ブラジルに競技人口で負けているとは思いません(実際は未確認です)し、国内でもジュニア世代からトップ世代まで様々な指導者が工夫を凝らして選手を鍛え、育てていると感じています。

ラグビーの裾野が広がれば、代表がおのずと強くなるというのは違うのでは

それからラグビーの裾野をどう広げるか、若手のタレント発掘をどうやるか、などというコメントもありました。確かに大事ですし、ここ数年でも男子高校生のBIGマンFASTマンキャンプなど強豪校以外のチームからサイズやスピードのある選手を育てようという取り組みが行われています。実際に2年前の菅平でのキャンプの様子を見学することが出来ましたが、カンタベリーのビブスがピタッとしているFWの選手たちを見ると、将来が楽しみになりました。女子は世界でも稀な国内のセブンズシリーズ大会、太陽生命WSSが2014年から行われ、国体と合わせて全国各地で女子ラグビーチームが立ち上がったり、高校でも新たに女子ラグビー部が出来た学校も増えています。

ただ競技人口が増えた結果、代表の強化に直結するというわけではないと思います。他の国の戦いを見ても、セブンズという競技に特化して鍛え上げられた集団という印象です。日本もそうやって鍛えてきたと思いますが、力の差は埋めきれませんでした。Twitterのフォロワーや関係者の話の中に、女子は太陽生命WSSの試合を増やしたほうがいい、みたいなコメントもありましたが、それと代表チームの強化は全く別物ですね。国内の試合経験を増やすことで、海外の代表チームと戦えるかというと正直そうは思えない。だからこそ代表チームの強化の仕組み、システムをいかに作っていくかが直近の課題ですね。そこが整って、出来上がってこそ、タレント発掘と育成がより結果に結びつくのだと思います。

そして最後の段落ですが「「東京五輪は終わったが、協会として7人制の強化はむしろ加速していく」と岩渕専務理事は強調する。「男女ともどこの国もやっていないような先進的な取り組みが必要になる」とも話した。現場、それを支えるマネジメント、普及や育成……。自国での惨敗を、様々なレベルで先進的な挑戦を始めるきっかけにしてほしい。」とありました。むしろ加速、先進的な取り組み、とありますが、今のところ実際にそうなるのかどうか疑問です。具体的なアイデアはこれから考えるのでしょうが、そもそも強化に必要な財源がどこにあるのだろうか、東京五輪の準備以上の予算を付けられるような結果ではないでしょう。

本当に手っ取り早いのは、海外から優秀な指導者を引っ張ってくることだと思います。協会の本気度が伝わりやすいですし、国内チームの協力も得やすいのではないでしょうか。男子の15人制は2012年からエディーさんがHCになりましたが、代表強化に加えて各地でジュニア選手へのクリニックなどの普及活動やコーチ向けの勉強会などを通じて自分のコーチング哲学や取り組みを積極的に共有するなどの育成活動にも携わってきました。その中で全国各地の指導者の横の繋がりも増えていったと感じています。

また先週Numberで柔道の井上康生と女子バスケのホーバスHCの記事がありました。
「目標設定からの逆算」で五輪を好成績に導いた指導者2人、“もう一つの共通点”とは
こちらの記事の内容からも参考になる部分は多いと思います、是非是非。7人制ラグビー競技は他の強豪国と比べて、まだ力の差はあるのが事実です。この惨敗から5年10年かけて、しっかりした地力をつける強化が出来ることを願っています。

最後に女子15人制日本代表の話を少しだけ。まず新たなアシスタントコーチが加わることが発表されました。元スコットランド女子代表のダルグリーシュ氏だそうです、ラグリパの記事はこちら。また来週から釜石市で合宿を行うことも発表されていますね。こちらは改めてブログで整理できればと思います。