サクラセブンズの22-23シーズンを振り返る

前回のブログ、でも速報でお伝えした通り、過去最高の成績で22-23シーズンのワールドセブンズシリーズを終えた女子日本代表サクラセブンズ。このシーズンに参加した代表チームの中で一番成長したチームと言っても良いかもしれません。およそ2年前に行われた東京五輪、期待を背負った中で悔しい試合ばかりで1勝も出来ずに最下位に終わりました。そんなどん底から新たに鈴木貴士HC体制となって強化を進め、進化し続けてきました。大会を重ねるごとに良い戦い、BIG WINが増えて、多くの関係者、ファンを喜ばせてくれました。改めて選手、スタッフの皆様、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。

アイルランド戦の入場、とにかく動き、全員で走り勝って過去最高の順位を勝ち取るベストゲームを見せてくれました

1年前の5月にカナダラングフォード大会に参戦した過去のブログを見直すと
予選プールの結果はスコアを見ると、完全に負け試合。
第1試合 VSアイルランド  7-22●負け 
第2試合 VSフランス    5-41●負け 
第3試合 VSブラジル   12-38●負け
最後にメキシコに45-0と大勝して11位でした。そこから9月に行われた南アフリカW杯セブンズ、男女を通じて過去最高順位の9位で終えました。当時のブログを見ると、トーナメント初戦のフィジー戦では開始5分で4トライを奪われたそうです。トゥールーズ大会で見せた我慢を続けるDFから考えると、本当に成長しましたね。そこからの敗者戦ではライバル国にもリベンジを許すことなく、内容では圧倒しました。ここから強豪国にどう戦って勝つか、がチームの本当のターゲットになったのかもしれません。

W杯後はアジアセブンズシリーズを戦い、12月のドバイ大会からワールドセブンズシリーズ2022-2023が開幕し、初戦を10位で終えました。シリーズ大会HPの女子の順位表で、大会ごとの獲得ポイントが見えますが、3戦目のNZハミルトン大会で9年ぶりの8強入りを達成し、6位で終えたのは本当に大きかった。チームに殻を破るようなインパクトを与えてくれたと思います。8強入りを成し遂げた後のブログはこちら、全体8位で抜けると全体1位のNZと戦うことになりますが、その時は12-43と大敗。4か月前の時点でも、まだDFで粘り切れずに、トライを許してしまうようなところがあったのかなと。その翌日の5位トーナメントでは予選プールで負けたフランスを19-12で破り、5位決定戦ではイギリスとトライ数は同じ2本でしたが、10-14とキック差で惜敗。トーナメントの終盤で勝つ難しさ、厳しさを体験しました。

その後の3大会ではなかなか勝利を積み重ねられませんでしたが、チームは合宿と試合を重ねる中で、選手の入替もありながらも、プレーの成熟度を高めきました。トゥールーズ大会で見せた安定感、落ち着きを感じさせるようなプレーは決定的なミスをなくしたのと、自陣からでもチャンスには大胆なアタックを見せてトライを奪いました。NZハミルトン大会の予選プールは1勝2敗で得失点差-16、今回の仏トゥールーズ大会は同じ1勝2敗でもスペインを相手に5トライを奪って33-5で勝利したのが大きく影響して得失点差は+9。予選プールの組合せも違うとはいえ、同じ8位通過でも試合内容は確実に良くなりました。チームの中でも狙いのプレーというか、自分たちのフォーカスして、戦術、戦略通りにプレー出来れば勝てるような感覚があったんじゃないかと。スタッフの分析もそれを後押しできたと思います。

改めてトゥールーズ大会を振り返った時に、個人的にMVPを挙げるならFWの水谷選手ですね。これまではリザーブスタートが多かったですが、この大会では先発に定着したチーム最年少の19歳(2003年12月生)。攻守に積極的なプレーが目立ち、スペイン戦では独走トライも見せて、チームに勢いを与えてくれました。そして代表復帰した大竹選手。東京五輪前の大怪我から復帰し、昨年の太陽生命WSSでも東京山九フェニックスの主力としてチーム初の総合優勝にも貢献しました。代表合宿に参加するも怪我などもあって、久しぶりのワールドセブンズシリーズでしたが、期待通りの大胆なアタックでチャンスメイク。イギリス戦ではトライを奪われた直後のキックオフレシーブからのアタックで、逆転のトライをアシストしました。

大竹選手はキックオフの攻防でも高いジャンプで貢献してくれました

そして22-23シーズンを振り返ると、どの選手も本当に成長してくれたと褒めずにはいられません。東京五輪を戦った平野キャプテン、梶木選手、大谷選手、原選手、永田選手らはどの大会でも安定した質の高いプレーを見せました。そして東京五輪を目指しながらも代表入りを逃した中村選手、大竹選手は出場している時間帯で、インパクトを与えるアタックを見せてくれました。東京五輪後にチームに加わった須田選手はキレキレのステップ、安定したキックで得点力を代表にもたらし、最年少の水谷選手は先ほど書いたように代表チームの中での競争を勝ち抜いて良いプレーを見せました。須田選手に関しては、これまでの大会でタックルミスからトライを奪われる場面が目立っていましたが、この大会では狙って相手に刺さり倒すタックルを多く見せてくれました。きっと課題を認識して、集中的にトレーニングをしていたんじゃないかなと。サクラセブンズの司令塔として今後も期待大です。そしてトゥールーズ大会ではメンバー入りを逃しましたが、これまでのシリーズ大会に出場したベテランの小笹選手や、今は怪我からのリハビリ中の内海選手など、メンバー外の代表選手もサクラセブンズの活躍を支えてくれたと思います。

私が選ぶシーズンMVPは大谷選手、攻守にインパクトを与える貴重な選手

そしてシーズンを通してのサクラセブンズMVPを選ぶなら、大谷選手です。アタックでは思い切ったランニングでラインブレイクし独走、DFでは狙いすましたタックルにジャッカルなど、試合の流れを日本に引き寄せるプレーをどの試合でも見せていました。そしてバランスの取れたチームを率いた平野キャプテン、FWとBKを繋ぐSHで安定したゲームメイク。ボールを動かして周りの選手の強みを引き出しながらも、目の前にギャップがあれば鋭い走りで抜け出す。DFでは1対1の場面で相手をしっかり止める、狙いすました低いタックルで倒す、当たり前のことを当たり前にやってくれる安定感はまさにキャプテンでした。

サクラセブンズでは主力として何年も戦い続けてきた頼れるキャプテン
スペイン戦で見せた中央スクラムからの独走トライは、このシーズンベストトライの1つ。

ほかにもシリーズ通算24Tを挙げて、サクラセブンズのエースに成長したミニロケット原選手。シリーズ通算で参加した選手全体の中で3位のタックル数、サイズを上回る相手にも負けないフィジカル、フル出場も多く、チームに貢献し続けた梶木選手など、選手それぞれの強みがチームを前に進める歯車になりました。大会を重ねるごとに、選手間でチームでの役割もはっきりして、それぞれパフォーマンスアップに繋げられたのだと思います。他にも伝えたいことはどんどん出てくるのですが、文章量がだいぶ多くなってしまったのでこの辺で(苦笑)

今週末はリーグワンのプレーオフ、太陽生命WSSの熊谷大会が行われます。そこから9月に開幕するフランスW杯に向けて、ラグビーの話題も多くなってくると思うので、たくさん楽しんでいきましょう!