アジアセブンズシリーズ2024に向けて

まず今日3日未明に行われたパリパラリンピックの車いすラグビー決勝、日本は米国を破って念願の金メダルを獲得、本当におめでとうございます。第1ピリオドを終えて米国にリードを許した時はどうなるか心配でしたが、試合が進むにつれて日本のハードなDFが米国のパスミスを誘うなど試合の流れを掴むと、終盤に連続得点を奪ってリードを広げて48-41と圧勝。日本らしい戦い、ほかの競技でも参考にできますね。車いすラグビー、選手のフィジカルの差はないというか、感じさせないのが面白い。

https://twitter.com/JWRF2020/status/1830680750427111475

今週末からアジアセブンズシリーズが開幕します。今年は韓国、中国、タイの3大会が行われ、男女ともに8か国のトーナメントになります。Asia RugbyのWebsiteによると、昨年の成績をもとに予選プールの組み合わせも決まっているみたいです、こちら

https://twitter.com/asiarugby/status/1830934706470228082

男子は日本と同組なのは、中国、マレーシア、そして昨年の下部トーナメントで優勝して昇格したタイ。女子はタイ、カザフスタン、そして男子のタイと同様に昇格したUAE。女子はUAEと試合した経験はほとんどない気がします(過去にアジア大会で経験しているかもですが)。男女ともに新たなHCを迎えて、短い準備期間での大会となりますが出場する選手はしっかりアピールして欲しいですね。アジアでは常に優勝争いをしなければいけません。特に女子はパリ五輪で日本を上回る6位入賞を果たしたライバル中国もいます。

弘前合宿のレポートから拝借、兼松HCの新体制がスタートしてどんな戦いを見せるか

女子はパリ五輪の大会登録メンバー以外から選出

日本協会のHPで今回の韓国遠征のメンバーが発表されました、こちら事前の合宿からパリ五輪のメンバーは外れていておそらくこの韓国大会、そして21-22日の中国大会はこのメンバーを中心に戦うのではないでしょうか。6月にフランスで行われた世界学生選手権で優勝したメンバーから、キャプテンを務めた高橋選手(日体大3年)、大橋選手(ナナイロプリズム福岡)ら5名、今年の太陽生命ウィメンズセブンズシリーズでも活躍した藤崎選手(ながとBA)、迫田選手(ナナイロプリズム福岡)、岡元選手(東京山九フェニックス)、ワールドセブンズシリーズ出場経験のある吉野選手(ナナイロプリズム福岡)らが入りました。

世界学生選手権を制した若きサクラメンバー、アジアでも堂々と戦ってほしいですね

またパリ五輪ではバックアップメンバーから出場した辻崎選手(ながとBA)がメンバー入りしています。JUST RUGBYの記事でも紹介されていました ⇒ 「辻崎由希乃[サクラセブンズ]◎道の途中が記憶の真ん中。」きっと韓国大会でも鋭い走りで活躍してくれると思います。それにしてもメンバーが大きく変わり、それぞれがどんなポジションで出場するのか。特にFWのメンバーが読めないので、初戦の先発メンバーの顔触れが楽しみですね。

弘前合宿では地元の子供たちと交流した女子、後半に辻崎選手のインタビューがあります

パリ五輪を戦ったメンバー、特に主力のメンバーは東京五輪の前から4,5年ほど代表中心に活動してきて国際経験を重ねてきました。パリ五輪から帰国して何人かは先日の国体ブロック大会で地域の代表として戦っていましたし、代表から引退を表明している選手もいますが、8月9月は代表を離れてしっかりリフレッシュし、また10月から代表活動に戻るのではないでしょうか。それに加えて主力として活躍してきたものの、怪我などの理由で代表から外れていた須田選手(追手門学院VENUS)や永田選手(ナナイロプリズム福岡)にも個人的には期待しています。

ラグビーマガジンを読んで面白かった話

先週から予想進路がどんどん変わる台風10号による大雨の影響で日本中が悩まされましたね。昨夜の雨が過ぎ去って今日は良い天気になりそうです。この台風の影響は仕事にもあって、先週は自宅で過ごす時間が増えて、久しぶりにラグビーマガジンをじっくり読みました。

パリ五輪の振り返りが面白い

先日発売したラグビーマガジンは付録で大学ラグビー写真名鑑があり、ボリューム増してますが中身も高校ラグビーは全国セブンズにコベルコカップ、大学ラグビーは夏の合宿の話題など盛りだくさんでした。そして女子ラグビーの話題もたくさんあったので、いくつか自分の感想も踏まえながら紹介していきます。

まずパリ五輪、見たのはほぼ日本代表の試合で海外の強豪国のメダル争いは男子の決勝しか見てなかったです。母国開催で連覇を狙うフィジーを破って金メダルを獲得したフランス、決勝戦は15人制でも活躍するSHのデュポン選手の大活躍が目立ちましたが、フランスではラグビーといえば15人制という空気があったとのこと。7人制の強化策としてはセブンズ代表でハイレベルの試合を経験し、選手も成長できるとメリットを話して能力の高いクラブのアカデミーの若手選手を代表にリリースしてもらうことに成功したとか。ただセブンズをステップに15人制での活躍を目指す、という流れは今後も続きそうです。一方で国内ではU16やU18などのユースレベルで今後はセブンズの大会を増やしていく計画だそうです。

日本は以前からセブンズユースアカデミー合宿を重ねてタレントのある有望な中高生を発掘し、鍛えてきました。ユニバーシアードなど学生レベルの世界大会では金メダルを獲得する成果もありましたが、海外の強豪国と戦うトップカテゴリーでは、ほかの国々の強化スピードに追いつけず苦しい状況。以前はアジアで勝つのは当たり前のような空気もありました。東京五輪の前もワールドセブンズシリーズのコアチームに入って、世界トップレベルの経験を増やすかというのが目標でしたが、パリ五輪を控えた去年はそのシリーズの下のカテゴリーでも勝てずにプレーオフにすら進めない現状。最下位で終わった後のエイモーHCのコメントにも「特に運動能力的に相手に及びませんでした」とありました。

エイモーHCのコメントの中にはポジティブに振り返って「素晴らしいアタックシーンを作ることはできた」というのもありました。キックをうまく使ってのトライは鮮やかだったかもしれませんが、それ以外でアタックからトライまで繋げるパターンがない印象でした。リスクを背負って前に出るDFを試みて失点が多かった戦いは、何となくリオ五輪での女子と重なる印象です。「自分たちの戦いが出来れば勝てる」と自信を持っても、結局はその舞台まで辿りつけない。力の差を感じる、悔しい思いしかない。

男子と比べて女子は目標とするメダル争いはできなかったもののリオの10位を上回る過去最高の9位という成績で終えました。その内容については以前のブログでも書いていますが、振り返っての平野主将や内海選手のコメントが面白かったですね。「(五輪を意識しすぎずに)通常通りのマインドでやろうと言ってきましたが、オリンピックではほかがいつもと違う」、こういう感じ方が出来るのも、初日の苦しい2敗から立て直して、自分たちの戦いが出来てこそだなと。東京五輪後に就任した鈴木HCがパリ五輪までの3年で、ワールドセブンズシリーズのコアチームに昇格、そこからセブンズW杯、シリーズ大会でも過去最高の成績を残すまで強化を着実に進めてきました。後任にはリオ五輪を経験し、ここ数年はユースアカデミーを中心に担当してきた兼松さんに決まりましたが、今後はどう強化を継続していくか、ですね。

パリ五輪を前にフランスで開催された学生セブンズ大会で見事優勝した日本、ここから代表入りする選手に期待

パリ五輪については先日、日本協会からもオンライン会見で振り返りがありました。東京中日スポーツでも記事があったので、紹介します ⇒ 「パリ五輪ラグビー7人制 女子9位、男子最下位に岩渕健輔専務理事、女子「前向き」男子「厳しかった」と総括
男女ともに新体制はさっそく今週末のアジアセブンズシリーズ韓国大会から始まるので、まずは見守りたいです。

サクラ15の国内テストマッチの振り返りが面白い

深掘りでのハイライト、個々の選手の活躍がわかって面白い

そして8月のサクラ15のテストマッチ2試合の記事も読みごたえがありました。大友信彦さんが書いていますが、強豪のアメリカを相手に2試合合計で25-28というトータルスコア。本当によく戦った、そして勝てなかった、勝つべき試合だった。8-11に終わった2試合目については私も現地観戦しましたし、以前のブログでも触れています。

サクラ15については、毎年のようにチームが成長しているのを感じますし、それは選手(特にFW)のサイズアップからも感じます。海外遠征などテストマッチの機会が増えて、強豪国とも戦えるステージまで来たと感じます。春から合宿を重ねてきたFW陣がセットプレーでも奮闘し、ラインアウトからのモールにもトライという結果は示せなかったものの、拘りを感じました。この2試合で特にDFに成長を感じる一方で、感じたのは得点力不足。去年のWXVでも見せたワイドに展開して外のスペースを攻略するアタックが見えなかったです(これは温度湿度が高い日本の夏でボールがスリッピーな状況もありますが)。

ラグビーマガジンではSHの津久井萌、CTBの弘津悠もピックアッププレーヤーで紹介されていました。津久井選手は以前にサクラ15でもBKコーチを務めていた藤戸さんに個人レッスンをお願いした話がありました。弘津選手は以前はセブンズを主戦にしていましたが、そこから15人制に移った経緯を話していました。女子は以前に比べればテストマッチの増加含めて話題に出る回数が増えてきたし、今はYoutubeで地方のマスコミがニュースとして扱った映像が見れたりもしますが、個人にフォーカスした記事を見かけることはまだ少ないので、この2人の話は面白かったです。個人的にはともに200年3月生まれで日本代表で10代から活躍している平野優芽、津久井萌の対談とか見てみたいですね。

サクラ15ではないですが、パリ五輪を終えた原選手の地元里帰り動画

そのほか、コベルコカップの記事もあり今年から男子と同様、全国9ブロックを3つのプールに分けて行う予選、そして順位リーグで順位を決める形になりました(昨年までは強化、育成の2リーグ)。女子は出場した選手の顔写真付きプロフィール紹介が今年もありました。出場する選手にとってはきっと思い出になりますね。今後もより多くの選手が高校卒業後もプレーを継続してほしいと願っていますが、そのためには国体を含めた各地域の強化策はもちろん、セブンズユースアカデミーに加えて、15人制に向けたユース選手の合宿だったり、環境をもう少し整えていかなければと思います。

今はコベルコカップの後に、菅平女子セブンズ大会が行われていて、中学生のカテゴリーも開催されるために、多くの女子ラグビー選手が集まる機会になっています。全国のタレントある選手を発掘する機会にもなると思いますし、今後のサクラ7s、サクラ15の強化を継続するためにはユース選手からの発掘、育成が求められると思うので、頑張ってほしいです。個人的には、今の女子代表はセブンズ含め1999年、2000年生まれの黄金世代が20代前後で代表に選ばれて、経験を重ねて成熟し、この数年がピークになるのかなと。その辺りはまた別の機会にかければなと。

女子代表選手が地元の子供たちと一緒に入場、こういう機会が将来につながるかもしれませんね

本当は週末に始まるアジアセブンズシリーズや遠征メンバーが発表されたサクラ15にも触れたかったのですが、長文になったのでまた大会が始まる前に更新出来ればと思います。

17日のエコパで活躍した選手と秋の海外遠征への期待

前回のブログでは17日のテストマッチ第2戦から何を学ぶか、という視点で振り返りましたが、今回は選手のパフォーマンスについて振り返りながら、次の遠征についても書きたいと思います。ブログを書く前に3年前のW杯での米国戦のハイライト映像を見ました。8月の日本のコンディションもあり、安易に比べてはいけませんが、日本がDFでラインブレイクをされた数は明らかに減っていますし、日本は確実にレベルアップしていると思いますね。

試合が進むにつれて米国に対応してファイトしたFW陣

FWから振り返りますが、みんな活躍していましたね。まずフロントローについては、3年前のW杯から主将を務めた南選手が引退し、2017年のW杯も経験している江渕(ラベマイ)まこと選手も不在の中、去年からは英国プレミアシップでも活躍した加藤選手や、左髙選手が引っ張ってきました。この2試合は1番峰選手、3番北野選手が出場し、最初のスクラムで反則を取られて、そこから米国に先制トライを許しましたが、そこからは徐々にチームで対応しスクラム、ラインアウトのセットプレーで奮闘していました。HOは公家選手、谷口選手がこの1,2年でスローイング、フィールドプレーがますます良くなっていますし、公家選手は後半、米国が反撃する中で見事なジャッカルを決める活躍も見せてくれました。フロントローは海外選手と比べてパワーやサイズで厳しい印象ですが、日本の層が厚くなっているのを感じました。

次にロック。佐藤選手、吉村選手は2枚看板と言ってよいくらいの活躍を見せていました。2人ともこの1,2年でサイズアップしてコンタクト場面でも激しく体をぶつける場面をよく見かけます。佐藤選手は密集近くでのタックル、すぐに起き上がってのセットが目立ちましたし、吉村選手もボールキャリーに加えて、DFでは素早く出て相手のボールをもぎ取る場面もありました。ロックは他に櫻井選手が久しぶりに代表合宿に招集されていますね。試合に出ては激しいバトルの中で大きな怪我が重なりリハビリが続いていましたが、ここからまた試合メンバーの争い含め日本代表に貢献してくれるのを期待します。

そしてバックロー。まずキャプテンの長田選手の活躍は常にハイパフォーマンスの中で、7番にロックもできる川村さんが入り、ラインアウトのオプションが増えていると思います。数年前はヨーロッパの強豪国を相手にラインアウトでボールキープに苦戦する場面が目立ちましたが、スローイングの向上とともにリフター、ジャンパーとのコンビネーションが良くなっています。これはFWコーチの存在も大きいですし、春先からFW中心の合宿を重ねてレベルアップを図ったと思いますね。そしてNo8に入った齊藤聖奈選手は試合前のキックオフからもうラスボス感が出てましたね。トライ場面含め、相手G前のチャンスにしっかりアタックセンスを見せてくれます。交代出場した向來選手はまだ21歳ですが、この試合で15キャップ目。なかなか先発の機会が得られない中、今後も出場した時の爆発的なプレーに期待しています。

キックを使って前に進み、接点でもファイトしてレベルアップを見せたBK

BKはこの試合、本当に裏へのキックを有効に使っていましたね。8月の蒸し暑い日本では裏へのキックで後ろに走らせて、相手選手も嫌だったと思います。先発したHB陣、津久井と大塚のコンビはもう安心して見ていられるというか、安定感がありますね。この試合ではスリッピーなコンディションでパスが乱れる場面もありましたが、アタックに加えてDFでも低いタックルやカバーDFで奮闘していました。また交代出場した阿部と山本のコンビも同点で勝ち越しを狙う状況の中で大きなミスもなく、山本選手はラインブレイクにペナルティーからのタッチキックで終盤を盛り上げました。この4人は前回のW杯も経験していて、もうベテランという見方ですね。だからこそチームを勝利に導くようなプレーを常に期待してしまいます。

https://twitter.com/RugbyPass_JP/status/1825372762594222363
試合後の津久井選手と吉村選手の振り返りコメント、直接こういうのが見れるのは良いなと

次にセンターですが、この日先発出場した弘津選手はアタックの起点づくりというか、ボールを持つたびに相手DFに仕掛けて前に出ていました。チームに与えられた役割だったかもしれませんが、良い働きだったと思います。13番アウトCTBに入った古田選手は12番で出ることもあり、日本のCTBとして欠かせない選手ですが、この試合のパフォーマンスは本当に良かったです。狙いすましたタックルに歓声が起こったり、ボールキャリーでは相手DFをずらして前に出ていました。細かなハンドリングエラーもありましたが、BKラインに古田選手がいることで安定感が増すと思います。そして後半途中で出場した小林選手も素早く出るタックルで存在感あるプレーを見せてくれました。英国プレミアシップでも活躍する小林選手がリザーブにいるのは、コーチ側としては流れを変えられる選手という期待もありますね。第1戦で畑田選手が負傷し、チームから離脱したのは残念ですが、秋の強豪国との戦いではこのCTBがアタックのラインを引っ張ってトライにつながる活躍を見せてほしいです。

最後にBK3、前回のブログでも触れましたが3選手ともにキックを蹴れるのは、ほかの国の代表チームでもあまりいないのではないでしょうか(その分、爆発的なランで活躍する選手がいますが)。特に松村選手のキックオフはチェイスに十分な高さとコントロールがあり、これまでの日本代表の中でもセブンズ含めて一番だなと思いました。また試合を重ねるにつれてポジショニングも良くなり、相手キックへの対処、カウンターもますます良くなっている印象です。いまBK3のリザーブは置いていないのはこの3人への信頼度の高さもあるかもしれません。そしてCTBと同様、秋の海外遠征ではこのBK3がしっかり走り込んでボールを貰いラインブレイクを増やしていかないといけません。BKラインの成長が日本の得点力を高めて、敵陣G前に攻め込んだチャンスでスコアに繋げられると思います。

サクラ15は米国との第2戦、逆転負けから何を学ぶか

17日土曜に静岡県のエコパスタジアムで行われた女子日本代表サクラフィフティーンと女子米国代表のテストマッチ第2戦、日本は裏へのキックを有効に使ってアタックのチャンスを作り、DFでも第1戦と同様に粘り強くファイトしましたが、終了間際に逆転のPGを許して8-11で敗れました。現地で応援しましたが、本当に惜しい試合でしたね。色々と現地で感じたことも含めて振りかえりながら、秋のテストマッチに向けての学びを探っていきます。

なお試合の写真とレポートについてはRUGBY JAPAN 365の記事に得点経過含めてわかりやすいのでリンク載せます ⇒ 「サクラフィフティーン一歩及ばず惜敗

ハイライトの映像だけでも、日本が敵陣へのキックをうまく使ったことがわかりますね

試合前のウォームアップから日本が勝利する可能性を十分に感じました

この試合の米国代表のメンバーですが、先発メンバーの総キャップ数はFWBKともに日本の方が上回っています(日本が294、米国が245)。米国は3か月前にメルボルンというアウェーでオーストラリアから5トライを奪い32-25で勝利していました。その時の先発メンバーはFW8人のキャップ数が201、BKが127でした。土曜の日本戦のメンバーを見ると、3か月前の試合ではリザーブだった選手が先発入りしたり、他にも若い選手が入ってチャレンジングなメンバーと言えるでしょう。

試合前のウォームアップを見ていましたが、日本と比べて米国は明らかにミスが多かったです。ADをやっていてもパスミス、キャッチミスのハンドリングエラーが多くて、もしかしたらストレスがあったかもしれません。第1戦の同点引き分けから準備してきたとはいえ、前日に関東地方の東を台風が過ぎ去り、南の温かな空気がもたらした日本の蒸し暑さはかなり影響していたと思います。一方で日本のウォームアップは順調に進んでいるように見えましたし、第1戦から修正したプレーをしっかり出せれば、普通に勝てるのではないかと感じました。

ここからは試合で感じた話をしますが、勝敗を左右したと感じた場面をいくつか。まずは試合の入りですね。相手のタッチキックから敵陣ラインアウトでのアタック、1stフェイズでSO大塚選手が前に出たDFラインの裏を狙ったキックを相手がチャージして自陣に戻されてピンチになり、そこから米国のアタック、ラインアウトモールを押し込まれました。春の香港戦でも感じましたが、試合序盤で得たチャンスですぐにキックを選択するのはもったいないなと。もちろん上手くいけばビッグチャンスになりますが、そこは精度をもっと高く、確率を上げていかないと。試合後の会見で米国のキャプテンが「前半は35分間守っていた感じ」と話し、まさに前半6分過ぎに先制を許して以降は、日本がほとんど敵陣でプレーできていました。

勝利するために準備してきたラインアウトモールで取り切れなかった日本

私は第1戦をハイライトしか見ていないのですが、日本は守る時間が長かったと聞いていました。第2戦はそこを修正して前半からキックを有効に使い敵陣に入り、アタックを継続して、米国を自陣に釘付けにしていました。試合中も米国がタッチキックを狙う場面では、日本の選手から「右足、右足」と相手のキッカーにプレッシャーをかけていました。ただ攻め続けた前半に奪った得点が1T1PGの8点のみ。ここはもっとPGを狙ってもよかった意見があるかもしれませんが、前半から敵陣22mに入ったラインアウトではBKの選手がモールに加わって押し込んでいました。おそらくチームとしてはラインアウトモールでトライを奪うために練習を重ねてきたと感じました。

この日も攻守にアグレッシブなプレーを見せた古田選手、ラインアウトモールにも加わっていました

また前半37分に大塚選手がPGを決めて8-5とリードした直後、このまま3点差でリードして前半を終わるかと思ったところに、相手の自陣でのミスから敵陣でアタックチャンスが生まれ、距離的にPGを狙える状況になりました。結果的にタッチキックを選んでトライを狙いに行った前半ラストプレーでのミス、そして逆転を狙う試合終盤でのBK選手のオフサイド、ラストのオブストラクションで終わったのを含め、準備してきたモールでミスからトライを奪いきれなかったところは反省、修正しないといけませんし、それはコーチングスタッフ側の力量になると思います。またFWのモール一本だけでなく、BKでも1発でトライを狙うようなサインプレーの準備も必要ですね。アタックのオプションを複数用意したいです。

ほんの少しの判断の遅さ、小さなミスが勝敗を左右するテストマッチ

日本としては第2戦に向けての戦略、目指してきたプレー、やりたいことはかなり見せていたのではないかと感じています。それはアタックだけでなく、DFも同様で後半の8-8の同点という状況の中で米国のアタックを低いタックルで止めて、2人目がジャッカルを決めてマイボールにする場面が続きました。18時キックオフでも蒸し暑さが残る中、日本の選手は本当によく走っていましたし、相手がこぼした球にセービングしたり、相手のボールをもぎ取る場面もありました。米国の選手はアタックで思ったより前に出れず、ストレスを感じていたと思いますし、キックで敵陣へ進もうとするも、日本のBK3の今釘選手、松村選手、西村選手の3人が本当に上手く対応して、大塚選手含めて相手陣のタッチライン際を狙うキックはかなり有効でした。またDFラインの裏への短いキックにも素早く反応してダイレクトキャッチからカウンターアタックを仕掛けていました。

同点のまま迎えた試合終盤、自陣で相手のキックをキャッチした西村選手が相手のポジショニングを見て敵陣を狙ったキックをチャージされて自陣22mに侵入されると、そこでの反則をきっかけに攻め続けた米国が逆転のPGを決めました。この場面も西村選手がもう少し早めに判断して裏に蹴れば防げたと思いますが、終盤の疲れもある時間帯で素早く正しい判断をするのは本当に難しい。この辺りは試合経験を積み重ねて、判断とスキルを磨かないといけません。これは逆転を狙う終盤に敵陣22mに入ったラインアウトでも同様です。またコーチングスタッフが用意した戦略、ここではプレーの判断や制限も含めて、選手へどう落とし込むかを徹底して考えてほしいなと思います。練習で取り組んだことを試合でいかに100%出し切ってスコアに結び付けるか、もっと細部への拘りが必要です。

試合を振り返って感じるのは、日本は勝つための準備をしっかり重ねてきて、試合でも狙ったプレーを見せていました。それでも結果的に勝利できなかった。もしW杯のようなトーナメントだったら、敵陣でのPGチャンスで3点を重ねていたかもしれません。国内でのテストマッチ、さらに第1戦ではトライ数を上回っての引き分けだったからこそ、第2戦は積極的にトライを奪いにいったのもあると思います。ただスコアだけを見ての勝敗ではなく、あくまで個人的な思いとして、この調子が良くなかった米国を相手に日本らしい戦いを見せて勝てなかったのは本当に悔しい。だからこの試合から学んだことは本当に多くて、苦くても良い勉強と捉えて、秋の海外遠征での勝利に繋げてほしいなと思います。選手、そしてコーチングスタッフ含めて、勝利への拘りをもって頑張ってください。

試合後の大友さんのポスト「じれったい」という表現に、なるほどなと思いました。

サクラ15、米国とのテストマッチ1戦目は惜しい引き分け

昨日11日に北九州市で行われた女子日本代表サクラフィフティーンと女子米国代表とのテストマッチ、18時キックオフとはいえ日本の夏らしい厳しいコンディションだったと思いますが、スコアは17-17の同点引き分け。トライ数は日本3-2米国と上回りました。日本協会HPの試合結果は、こちら。試合前の世界ランクは11位の日本に対して、米国は7位と格上。一昨年のW杯では予選プールで戦い17-30と敗れました。試合映像はハイライトでしか見れていないので、今回はお互いのチーム状況を中心に書いていきます。

ハイライトでもいいプレーがたくさん見られました

様々なバックグラウンドを持つ世界ランク上位の女子米国代表

7人制ラグビーでも強豪の女子米国代表は先日のパリ五輪でも初戦でサクラセブンズと戦い快勝、そしてトーナメントでも3位決定戦で強豪オーストラリアに14-12と勝利して銅メダルを獲得しました。15人制の方は5月に行われた「パシフィック4シリーズ」という大会で女子豪州代表ワラルーズに32-25で勝利。秋に行われるWXVでも日本より上のリーグに入る中で、この日本との2試合は新しい選手を試す良い機会と考えていたと思います。

前半に豪州に3トライを奪われるも、後半に強力なFWを中心に4トライを奪って逆転勝利

JUST RUGBYの記事で、女子米国代表が紹介されていました。
 ⇒ 「ハーバード大卒に馬術出身。パワーと個性あふれる女子アメリカ代表」
米国内のリーグもありますが、英国のプレミアシップでは20人ほどがプレーしていて、国際レベルの選手も多いと思います。日本と明らかに違うのは子供のころからラグビーをプレーしている選手が少ないことですね。それでもチーム的にはフィジカルに長けていて、シンプルに強い。キャプテンも「このチームは、いろんなスポーツ経験がある選手たちで構成されているのも強みのひとつ」と先ほどの記事で話しています。女子ラグビーでは北米のカナダ、米国は強豪国という印象で、そこは昨年のフランスW杯では大陸予選で敗退した男子とは違いますね。

日本とのテストマッチに向けては「ツアーメンバーが揃ったのは日本到着時の空港」、それまではリモートで繋がりながらトレーニングを重ねてきたとのこと。チームの連携は日本に来てから仕上げていくような印象で、北九州での第1戦までの準備期間は4日。故にシンプルな戦い方をしてきたかもしれません。それは日本にとっては対策しやすかったと思います。試合後の米国代表の記者会見の内容を見ても、日本のプレッシャーを受けてしまったようです。日本の暑さに苦しめられていますが、静岡での第2戦に向けて確実に調子を上げてくるでしょう。

フィジー遠征を1勝1敗で終えて、WXVに向けてリスタートのサクラ15

日本は8月の頭から福岡のJAPAN BASEで強化合宿を行い、米国とのテストマッチに向けて1週間準備を重ねてきました。春の香港戦、カザフスタン戦、6月のフィジー遠征と以前より代表活動の時間が増えて、チームの連携も高まってきた中での国内での試合。8月の暑さにも慣れていて、米国よりも良いコンディションで試合に臨んだと思います。

試合について、お互いの先発15人のキャップ総数を調べてみました。日本は合計で264(FW135、BK128、20キャップ超えは6人)、米国は合計219(FW108、BK111、20キャップ超えは5人)でFW、BKともに日本が上回っていました。また米国はリザーブに初キャップの選手が3名いましたが、日本のリザーブには代表最多42キャップを持つPEARLSの齊藤聖奈選手や英国でプレーしていた山本実選手など20キャップ超えが4名いるなど、これまでの4試合よりも経験値の高いメンバーで挑みました。

なのでラインアウトモールをきっかけに先制トライを奪い、前半を12-14の2点ビハインドで折り返し、後半6分に逆転するなど、日本が優位に試合を進めることが出来ていたと思います。試合のレポートについては、JUST RUGBYの記事を載せておきます ⇒ 「タックルの日。PGで引き分けに持ち込まれるも、サクラフィフティーン、アメリカ相手に引かず