女子のW杯開幕まであと10日

9月ももうすぐ終わり10月に入りますね。国内では男子の日本XV(代表ではなくあくまでJAPAN XV)と豪州Aとのシリーズ戦が行われますが、NZでは女子ラグビーのW杯が来月の8日に開幕。日本代表サクラフィフティーンは9日にカナダとの試合を迎えます。その直前にNZ代表BlackFernsとのテストマッチが24日に行われました。

BlackFernsには12-95で完敗、猛攻を止める術がなかった日本

https://youtu.be/2Tk7Kzj6uIg
NZ代表BlackFernsがポーシャ・ウッドマンの7トライなどの猛攻を見せ日本に圧勝

イーデンパークで行われた、女子NZ代表BlackFernsとの初めてのテストマッチ。日本は開始からBlackFernsに巧みなオフロードパスでラインブレイクされると、個々の強さ、スピードを止めきれず、次々にトライを許す展開。正直、南アフリカやアイルランドと違い、個々がシンプルにヒットする強さよりもスキルやアングルチェンジなどでアタックを仕掛けるNZとの相性はあまり良くないだろうと予想していました。上手く戦えたら30点差くらいになるかな、と思っていましたが全く外れてしまいました。NZの迷いないアタックは凄かった。新しく就任した神戸製鋼コベルコスティーラーズでの指導経験もあるウェイン・スミスHCののもと、母国開催のW杯での優勝に向けて、セブンズ組も合流して強さが増し増しした印象です。

日本の選手たちには本当に苦しい時間の多かったテストマッチだったと思いますが、それぞれ学びも多かったでしょう。トーチュウのHPにはCTB古田選手、WTB名倉選手のオンライン会見のコメントが記載さ入れていましたね、こちら。協会HPには試合詳細がこちらに載っています。個人的には活躍が目立ったのはFL齊藤聖奈選手がトライ場面だけでなく、DFで粘り強く球に絡んだりするプレーが多かったですね。それと後半から出てきたPR加藤幸子選手もスクラムでは劣勢でしたが、フィールドでは安定したプレーを見せていました。こういう点差の離れた展開ではリザーブ選手もどんどん出すべきだと思っていますが、SHの津久井萌が出る機会がなかったのは残念を通り越して、意味が分かりません。コンディション不良ではないと思いますが・・・とにかく格上相手には、本当に全力というか、瞬間瞬間で120%を出して挑んでいかないと、どんどんやられて相手のペースにはまってしまいます。このNZとの試合経験が9日のカナダ戦に活きると良いのですが。

W杯開幕に向けて、協会HPにも遠征レポートが上がっています、こちら。予選プールで戦うカナダ、米国、イタリアも日本相手にはフィジカルとセットプレーでプレッシャーをかけてくるので、まずはそこでどれだけファイト出来るか。DFの確認、再構築とATに関してはBlackFernsのを参考に出来るのかもしれませんね。アイルランド戦の時のようにBKでもトライを奪えるチームにならなければ、ベスト8進出は大変厳しいです。残り10日間、チームが成長し続けて、世界を驚かせるような試合を見せて欲しいです。頑張れサクラ、頑張ろう日本!

サクラフィフティーン、W杯メンバー32名を発表

サクラセブンズが活躍したセブンズW杯が終わったばかりですが、来月にニュージーランドで行われる女子の15人制W杯は開幕まであと24日。昨日、その大舞台に挑む女子日本代表サクラフィフティーンの選手32名が発表されました。日本協会HPの発表はこちら、選手1人1人のコメントや試合予定含めた遠征スケジュールも掲載されていますね。またJSPORTSのラグビーコラムでも記事になっています、こちら

W杯の試合予定、アイルランド戦の前だったので9月24日のNZ代表戦はアナウンス前ですね

前回2017年のアイルランドW杯を振り返ると、ベスト8進出を目標に掲げるも予選プールで初戦のフランスに大敗、アイルランドに逆転負け、オーストラリアにも敗れて3敗で9位以下トーナメントへ。そしてイタリアに負けて、最後に同じアジアから出場した香港に快勝して11位で終えました。あの悔しい結果からもうすぐ5年、前回大会に出場したメンバーは当時高校3年生、チーム最年少で大活躍を見せた津久井萌、あとは大学生も多く若い代表チームでした。2大会連続で選ばれた選手は9名ですが、クラブチームに所属する選手が多く、大学生の選手は少なくなりました。なお今回の最年少メンバーは大学1年生で選ばれた向来桜子ですね。若いですが、運動量とタックルに長けた選手で、今後の更なる成長が楽しみです。

これまでと同様に顔触れを見るとFWの選手が多い

選ばれた選手の顔ぶれを見るとFWが19名、BKが13名という構成。大まかなポジション別で見ればPRが6名、HOが2名、LOが5名、FLが5名、No.8が1名(永井彩乃)、SH2名、SO3名、CTB3名、WTB2名、FB3名といったところです。もちろんユーティリティーな選手もいるので、そのポジション以外でも活躍してくれるでしょう。

ここ最近のテストマッチでも、リザーブにFW6名、BK2名という形が多いので、遠征メンバーにもFWが多いです。個人的にはPRとLOの人数が多いな、CTBかWTBにもう少ないな、という印象です。イングランドで活躍し、今はリハビリ中の小林選手がいない一方、同じチームで今シーズンはリハビリが多かった加藤選手が、この前のアイルランド戦で復帰し、そのまま代表入りしました。

専門職のHOが2名ですが、スローイングに関してはFLの齋藤選手、鈴木実沙紀選手も放れるので、カバーできるということでしょう。個人的にはスローイングが優れた公家選手が外れてしまったのは残念です。あとは昨年の遠征での大怪我から手術、リハビリに励んでいた前回大会も経験しているLO櫻井選手、インパクトプレーヤーのライテ選手の2人も最終合宿のメンバーから外れました。FWはしっかりとコンタクト局面で活躍できる選手、攻守に苦しい時間帯でも規律を保てる、フィットネスのある選手を選考したのかもしれませんね。

BKを見ると、これも前回大会を経験したCTB黒木選手が外れてしまいました。WTBも出来るユーティリティーな選手ですが、残念ですね。SOは3名ですが、山本選手はCTB、今釘選手はWTBもカバーできるので、アイルランド戦の時と同様に大塚選手を軸にしていくと思われます。また気になるのは松田選手のポジション、先日のアイルランド戦ではFBで出場し、外で相手DFを振り切ってトライを奪う活躍を見せていました。別の試合ではCTBでも出場しましたが、いずれにしても日本の活躍には欠かせないキープレーヤーになりそうです。

レスリーHCはオンラインの会見で大会中の活躍を期待する選手としてSH阿部選手、PR加藤選手、FB松田選手の3名の名前を挙げました。SHは前回大会でドリームチームに選ばれた津久井選手もいますし、2人のポジション争いは白熱しそうですね。24日には優勝候補で開催地のNZ代表BlackFernsとテストマッチを行いますが、予想スタメンが難しい。ただ直近のアイルランド戦で勝利したメンバーが中心になるのは間違いないでしょう。リザーブ含めた23名を考えると、BKは枠が少ない可能性もあるので、頑張らないといけませんね。

それと大事なのは長い大会の中でチームの雰囲気を作るベテラン選手。例えば2015年のイングランドW杯では廣瀬選手がその役割を担い、トレーニングに励みつつ相手チームの分析を行ったり、練習相手としてサインプレーを研究していました。サッカーの日本代表でも決勝トーナメントに進出したチームには、そういったチームを支える、盛り上げるベテラン選手の頑張りがあったと聞いています。

女子日本代表のベテランと言えばやはりCTB鈴木彩香選手でしょうか。もちろんFLの齊藤選手は最多キャップ保持者ですし、鈴木実沙紀選手は2013年に行われた前々回のW杯アジア予選から代表入りしている。女子ラグビーが本格的に強化に取り組む少し前から代表入りしていて、この大会が集大成という思いもあるかもしれません、そして常に周りの選手、スタッフに気を配れると思います。試合に出る、出ないにかかわらず、それぞれが自主的にチームに貢献するべく、取り組んでいければ、きっと良い結果に繋がるはずです。

目指せ、ベスト8!世界を驚かそう、サクラフィフティーン!!

サクラセブンズ、南アW杯を過去最高の9位で終了

昨日の夜はセブンズW杯3日目、女子は1回戦で負けた8チームで争われるチャレンジトーナメント(9位~16位決定戦)の順位決定戦、日本は先月のチリの大会決勝でも戦ったポーランドを相手に17-12と逆転勝利。見事9位になり、W杯では男女を通じて過去最高順位で終えました。試合レポートについては、選手のコメント含め、RUGBY JAPAN 365さんの方で見やすくまとめられているので、ご覧ください。

勝利したポイントはポーランドに走り勝ったところが大きいですが、苦戦した前半の終わりにアタックを継続、エースの原わか花選手が走り切ってトライを奪い、追い上げる流れを作ったのは間違いありません。前半にポーランドが奪った2トライはDFのミスというほどではないですが、それでも12点差を追いかけるのはかなりプレッシャーのかかる状況。7点差にしたことで、ポーランドに焦りというプレッシャーがかかったとも言えます。またハーフタイムで選手、鈴木HCのトーク「言っていることをしっかりやろう」、この言葉で後半に向けて、選手がイメージをしっかり共有出来たことが後半のパフォーマンスに繋がったと思います。

勝つべき相手にしっかり勝利したサクラセブンズ、写真はJRFUのTwitterから拝借
素早い仕掛けで走りぬけて逆転トライを奪った平野主将、南アフリカ戦のG前でのタックルなど、攻守の勝負所で良いパフォーマンスを見せました

未だ高い壁の8強、強豪を相手に勝利するためにどうするか

ポーランド戦については、たくさんの賞賛と先ほどのレポートがあるので、ここからは目標としていたベスト8を達成できなかったことにも触れたいと思います。フィジーとの初戦はキックオフを確保できず、そこからオフロードを交えたアタックにDFで前に出るタイミングを掴めず、開始40秒でトライを許しました。その後もキックオフを確保できず、フィジーの独特なアタックに対して、受けるようなDFになってしまい、個人技やオフロードで突破されて5分で4トライを奪われ、勝敗は前半でほぼ決まってしまいました。後半の途中でスタッツが出ましたが、タックルの成功数より失敗数のほうが多かった。やろうとしている事が上手く出来ない状況では、それを打開できる個人の力量が必要になりますが、久しぶりの格上との対戦に上手くいかないのは仕方なかったのかもしれません。

これから8強を狙う上で、対戦国との個人のサイズ、スピードの差の違いがあります。この避けられないフィジカルの課題は東京五輪、リオ五輪の前からあり、それをフィットネスで走り勝って、補おうとしてきたのが日本の戦い方だと感じています。それにどう個人個人が+αを加えていくか。まずはチームとしてキックオフをしっかり確保し、アタックの時間を増やしていかないといけませんね。強い個人の育成はやはり練習期間を確保できる代表チームでこそ、実現させていかないといけません。先月のチリ、今回の南アフリカでは原わか花選手がエース級の活躍を見せてくれましたが、強豪国を見るとトライを奪う選手が3,4人います。例えばNZだとミカエラブライド、ポーシャウッドマンの両エース以外にも走り切れる選手が何人かいますね。日本もラインブレイクする機会は以前より増えましたが、走り切れるスピードを持った選手、もしくは仕掛けてチャンスを作れる選手をもっと育てていかないとですね。

今回負けたフィジーも4年前の米国セブンズW杯では、日本に最後の1プレーで逆転負けしています。そこから数年でワールドシリーズでも4強に入る実力をつけました。ポーランドについても数年前はこういった大会で名前を聞いたことがあるかどうかでした。日本に負けたとはいえ、コアチームのスペインに勝ち、W杯10位という成績はここ3,4年の強化という見方を変えれば、十分誇れる結果とも言えます。ヨーロッパや南米では強豪国以外でも強化が進んでいますし、アジアも日本以外の国が強くなって、アジアシリーズのレベルが上がることが、日本の強化にとってもプラスになるはずです。

https://twitter.com/asiarugby/status/1568964616151257088
W杯3日目、アジアから参加した4か国は全て勝利したものの男子は香港の19位が最高、他の地域の強化からは少し遅れてしまっている印象です

8強への壁はやはり高いものの、今の鈴木HC体制のサクラセブンズはこの1年で着実に力をつけ、これまでとは違って見ごたえのある試合が出来ていると思いますし、選手のコメントからも自信を感じます。そして関係者やファンも、多くの方がそう感じているのではないでしょうか。今のメンバーの強化に加えて、新たな選手が出てきて、更にチームが進化していく、そんなサクラセブンズを見たいと願っています。頑張ろう、日本!!

最後に今後の大会スケジュール、アジアシリーズでは新たな選手が代表入りのチャンスを掴むか。

サクラ15、アイルランドとの初戦を振り返る

20日土曜に静岡にあるエコパスタジアムで行われたアイルランド女子とのテストマッチ初戦、女子日本代表は22-57と大敗してしまいました。正直、予想外のスコア・・・得点経過を含めた試合の流れは、RUGBY JAPAN 365さんのフォトレポートがわかりやすく、試合後のレスリーHCや南キャプテンのコメントも見れるので、リンク貼っておきます

こちらはJSPORTSではなく、アイルランド協会のYoutubeでアップされたもの。18歳で代表デビューした10番のキックが正確でびっくり。数年後には大物になる可能性大ですね。

試合の入りが良かった前半、チャンスを作れなかった後半

試合映像を見ましたが、個人的な感想は「得点差ほど、ひどくやられてはいないな」でしょうか。前半15分の入り、相手が反則を重ねたのもありますが、鮮やかに15点を奪い、ここ数年のテストマッチでは一番良い入りでした。特にラインアウトからの2トライ目、こういうBKのアタックで抜け出してのトライがようやく見れたので、良かったです(No8永井選手のラン、松田選手のサポートにあっぱれ)。15点差をつけた後、アイルランドの反撃にあいますが、しっかり守るべきところは粘り強く守れていたと思います。反則もちょっと厳しい判定かなと思う場面もありました。レフリーはW杯も担当するNZ人の方でした。ARは日本人の方だったので、この辺りは日本代表チームにも何かしらフィードバックがいくのかなと。

https://twitter.com/jsports_rugby/status/1560933316005601280
女子日本代表はこういうトライがなかなかありませんでした、ようやく見れた

変わって後半は6トライも取られてしまいました。ラインアウトモールもですが、1フェイズ目で抜かれてそのままトライされたり、キックチャージからトライされたり、ラックサイドをラインブレイクされて独走されたり・・・。なんというか日本が取り組んできた素早いDFラインの上り、横とのコネクトがフィジカルで粉砕されたわけではないですが、アイルランドはわずかな隙を見逃さなかったですね。あとは何度もやられたラインアウトモール、良く見返すとボールを持つジャンパーにプレッシャーをかけたい日本に対して、リフター役の選手が壁となってブロックしていました。オブストラクションぎりぎりのプレーでしょうか。そこからしっかり組まれると、日本はパワー負けしてインゴールまで押されてしまいました。アイルランドは日本相手の得点源としてモールを仕上げてきたんでしょう。日本はこのタイミングで体験出来た、豪州戦のように組まない選択肢もあったでしょうが、W杯に向けてバトルできたことは結果はどうあれ正解だと思います。

あとはアタック、後半奪ったトライはラベマイまこと選手が飛び込んだ1トライだけ。チャンスを作れませんでした。ノッコンなどハンドリングエラーが目立ったのは、得点差含めたアイルランドのプレッシャーにやられて、スキルが落ちた印象です。焦りからちょっとパスが乱れる、走りこむタイミングがちょっと早くなる、この「ちょっと」がテストマッチという場所ではミスに繋がる。練習で取り組んできたことができなくなる、一貫性がなくなるといった感じです。個人個人が悪いというよりは、試合の流れ、雰囲気ですね。こういう時にパフォーマンスを発揮するには、やはり試合の経験値というのが影響するのかもしれません。パフォーマンスでいえば、個人的にこの試合は10番大塚選手、7番細川選手がとても良かったです。

あとはセットプレーの安定とか、個人のタックルとか、キックカウンターの攻防とか、まあ色々と反省すべきところはあるかと思います。ラインアウトは人数を少なくして、素早くリスタートするパターンを見せていましたね。代表チームは土曜の再戦に向けて、スタートしていますし、選手もW杯前の最後の壮行試合で気合入りまくりでしょう、きっと。個人的には土曜のメンバーはまだセレクションも兼ねているので、幾つかのポジションで選手を入れ替えてベストメンバーで挑めれば、昨年秋の遠征のように、もっと拮抗した展開に持ち込めると考えています。リハビリから復帰を目指す選手は、今週末の秩父宮のパフォーマンスにかけていると思いますし、特に2列目、LOの代表争いには注目しています。

以前にお世話になった元ラグビー日本代表の野澤さんのコメント、本当に修正すべきところを見つけるって大事です。

今週末の秩父宮、多くの観客が集まるでしょうか。先月の熊谷で2000人弱だったかな。3000人は入って欲しいな。もちろん勝って欲しい一方で、50日を切ったW杯本番の予選プールで戦う米国、カナダ、イタリアはこのアイルランドとの2試合を中心に見て、日本を分析するでしょうから、あえて全部を見せなくても良いのかなと。それでも相手云々の細かいことは気にせずに、思いっきりぶつかって初勝利するのも良いですしね。またサクラセブンズ含め、色々と思ったことはブログに書いていければと思います。頑張れサクラ、頑張ろう日本!

サクラ7s、チャレンジャー大会優勝おめでとう

今朝行われたチャレンジャーシリーズ大会決勝、日本代表サクラセブンズはポーランドを相手に17-0と勝利し、優勝。来季のワールドセブンズシリーズ大会のコアチーム昇格を決定しました。優勝おめでとうございます。選手、スタッフの皆様、本当にお疲れ様でした。ラグビーリパブリックさんが早速、記事をアップしてくれています。鈴木HCと平野キャプテンのコメントもあります、こちら

https://twitter.com/WorldRugby7s/status/1558956751986335748
6試合全て応援できましたが、こう勝ってみんなで喜ぶ姿が見れると嬉しいです

準決勝のケニア戦は4トライを奪い昨年の五輪のリベンジ達成

まず昨日の深夜に行われた準決勝のケニア戦の振り返りを。日本は試合の立ち上がりから良い動きを見せて、須田選手が抜け出して先制トライ。Gも成功して7点を奪うと、ケニアはそのあとのキックオフから、エースの8番オケロ選手がライン際を抜け出して追撃のトライ。競った展開になりますが、そこから日本は連携の取れたハードなDFでケニアにプレッシャーをかけてミスを誘うと、すっかりサクラセブンズのエースの貫禄がついてきた原選手が2トライを奪ってハーフタイム。特に前半の最後に敵陣スクラムから1フェイズで取り切ったトライでリードを拡げたのが大きかったですね。

後半も日本は良い動きを見せ、ケニアは細かいミスを連発。さらにシンビンを出してしまい6人に。自陣から狭いサイドを仕掛けたものの、パスをインターセプトされて7点差に。そこからまた攻め込まれて残り1分近くを残して、2点差になりました。昨年の東京五輪ではノータイムのスクラムから逆転負けという悔しい終わり方でしたが、今回は日本が上回りました。キックオフを確保すると、相手DFのギャップを上手くついてライン際を梶木選手がビッグゲイン。G前で相手の反則を誘い、アドバンテージを貰って大きく展開すると、原選手がハットトリックの3トライ目を奪い、22-15で勝利。競った展開を楽しむかのような勝利でした。

https://twitter.com/WorldRugby7s/status/1558851918595870721
ケニア戦のラスト、梶木選手のビッグゲインから原選手が勝利を決定づけたトライ

決勝のポーランド戦は日本のスタイルを貫いてノートライに抑える完勝

迎えた決勝戦、5分前に目覚ましで起きて急いで観戦準備。試合前の国歌斉唱で君が代をうたいながら、いい顔をしている選手たち、とくにキャプテンの平野選手がわくわくしたような顔で頼もしかったですね。開始からポーランドが攻めますが、日本はしっかり守ると、相手がこぼした球を須田選手が拾って一気に原因、DFを引き付けてエースの原選手にパスすると、一気にG前へ。相手のエースの4番に追いつかれるものの、上手くサポートに繋いで最後は中村選手(プレイングコーチ)が先制トライ。G前に追いついた選手は日本のほうが多いですね。

https://twitter.com/WorldRugby7s/status/1558950387381682176
見事な先制トライでしたが、チャンスにサポートに走った日本の選手の多さが勝因ですね

対してポーランドはカウンターラックでボールを奪い返すなど、評判通りの強さを見せました。自陣でのアタックに7人DFでプレッシャーをかける日本の裏にボールを蹴りこみ、追いかけて一気にG前まで攻め込みます。日本対策として予想されたこの状況に、日本は中村選手などしっかり戻って相手を捕まえると、鍛え上げてきたDFでポーランドを押し下げます。外側の選手が一気に前に出て外での1対1を作らせず、内側に走った相手をしっかり倒す。最後はポーランドがノッコンをしてピンチを脱出。このバトルが勝利を手繰り寄せた、日本が勝てるという流れを作りましたね。10-0というスコア以上に、日本が自信を持てた展開でした。

後半も決勝らしい緊張感のあるバトルが続きます。ポーランドも日本のDFを破ろうとアタックし続けますが、それでも日本はビッグゲインを許さず、試合のペースを渡しません。終盤に入ってきて、中盤でアタックをする日本は須田選手が緩急をつけたステップで相手DFを抜き去ると一気に独走し、決定的な3トライ目を奪い、勝利を決めました。後半はポーランドにチャンスらしい場面を作らせず、17-0というスコアながら、力を出し切っての完勝でした。

須田選手は予選3試合目からスタメン入りすると、勝負所で素晴らしいランニングとタックルを見せました。

目指すスタイルがはっきり分かる戦いを見せたサクラセブンズ

2019年の昇格大会では準決勝でスコットランドに敗れた日本、2017-2018シーズン以来5シーズンぶりのコアチーム復帰だそうです。おめでとうございます!

大喜びで終わった大会を振り返ると、苦戦したのは予選のコロンビア戦の前半くらいで、多くの時間帯で日本らしい戦いが出来た3日間でした。特にトーナメントに入ってからの安定した戦いはこれまでに見たことがないかのような安定感でした。具体的には起き上がりのリアクション、選手7人の攻守にわたる運動量と連携でしょうか。相手DFをテンポ良く振り回して仕掛けると、原選手、大竹選手、須田選手が走りぬけてトライする場面が多かったですね。

サクラセブンズのキーワードは「立・動・戦」みたいです。わかりやすい。

アタックで見ると、自陣からアタックしてラインブレイクし、トライに結び付ける場面がここ数年は昨年の東京五輪含めてほとんどありませんでした。この大会では梶木選手、須田選手、大谷選手がラインブレイクしてチャンスを作り、一気にトライを奪うという場面が非常に多かったです。前に出てきたDFに対して、焦って倒されるのではなく、上手く逃げてボールを継続し、素早いセットとテンポ良い球出しでチャンスを作れていました。東京五輪ではキックありきの戦術とも感じましたが、この大会はおそらくキックのプランはないですね。継続して相手を揺さぶって、チャンスを作って仕留める、そんな意識が徹底されていたのではないでしょうか。リアクション、サポート、運動量で勝つ、そんな印象です。

DFではこれまでで一番安定した、応援している方も安心して見れたと言っていいです。あえてスイーパーを置かず、7人DFで数的有利を作り、特に外でのラックからは外側の3人目辺りが相手の2人目(CTB)を狙って前に出て、中央辺りでハードタックルを決めてチャンスを作る場面もありました。横と連携することで自信を持って前に出る、そしてキャリアーにしつこく絡んでくる日本のDFには、どの相手も苦しめられたと思います。それでもケニアのオケロ選手は個人のスピードで振り切っていましたし、決勝のポーランドは裏へのキックを使ってきました。そこを全員が素早く戻って、逆に押し返したのはそこで戦えるかが勝負所だと鍛え上げられたからでしょう。ともかく頼もしくなるDFでした。

https://twitter.com/WorldRugby7s/status/1558873698450423809
三重PEARLSでもプレーするケニアのオケロ選手、警戒されてもトライを奪う素晴らしい走り。

長くなりましたが、まずは5シーズンぶりのコアチーム昇格は本当に素晴らしい結果。各国の強化が進み、過去最高レベルの大会で、こんなに安定した戦いで優勝するとは驚きでした。あっぱれ。

一方で平野キャプテンの「世界と戦うためのスタートラインにやっと立つことができた」というコメントの通り、このスタイルをコアチームの強豪国を相手にどれだけ貫けるか。分析もされるでしょうし、キックオフでの圧力も違います。選手、スタッフもその辺りの差はまだ感じていると思いますが、それでもこの日本スタイル、サクラセブンズが目指す戦いは多くの関係者が期待していると感じました。まずは来月の南アW杯。初戦のフィジーは個人のスキル、フィジカルに優れていて、今の日本のスタイルがどこまで通じるかを試す絶好の相手でしょう。そしてNZでのW杯を控えたサクラフィフティーン、怪我からの代表復帰を目指す選手など、多くの関係者にたくさんの期待と興奮をくれたサクラセブンズの皆様、本当におめでとう!