サクラ7sは順調に準決勝進出、仕上がりが最高に良い

南米チリの首都サンティアゴで行われている、ワールドセブンズチャレンジャーシリーズ大会。日本は予定通り、予選プールを3勝で全体2位通過。今朝行われたトーナメント1回戦のベルギーを相手に31-0と快勝して、ベスト4進出を決めました。これまでの勝ち上がりはJRFUの写真と共にRUGBY JAPAN 365で大友さんがまとめています、こちら⇒「サクラセブンズ昇格大会、順調に準決勝へ

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ベルギーとの試合は昨年の東京五輪以降で見た試合の中で一番の出来と感じた試合でした。

好調の要因は豊富な運動量と粘り強いDF

サクラセブンズはこれまでの4試合で得点が122点、失点が22点。予選2試合目のコロンビア戦では前半リードされて折り返すも、後半に梶木選手の2トライの活躍もあって逆転勝利。それ以外の試合でも前半に先制トライを奪ってそのままリードを拡げてトライという展開でした。ワールドセブンズシリーズへの昇格を目指す大会とはいえ、数年前と比べて参加する各国の強化が進み、南米やヨーロッパの国の選手のサイズやフィジカルは日本以上ですね。

それに対して、日本は素早いサポートと起き上がりのリアクションで勝っています。これまでの大会と比べて、アタックではDFに絡まれてのノットリリースザボールがほとんどないですし、キャリアーが簡単に倒れないようファイトしている。サポートも低く強い姿勢で絡んでくるDFをはがせていて、SH役の選手もすぐに球を捌いて再び攻める。相手はDFでプレッシャーをかけきれずに、やりたいアタックが出来ていて、しかも原わか花選手の7トライなど、得点に繋げています。DFではしっかり体を当てて、足を掻いてキャリアーを簡単にコントロールさせないバトル出来ているのが良いですね。そして倒した後の起き上がり、ラックサイドに立つリアクションの早さは参加チームで一番でしょう。チーム内でも横と連携して素早く前に出る、この選手を狙いすましてタックル、チャンスがあればボールを奪う、というイメージが出来ている。それくらいこの大会のサクラセブンズは鍛え上げられている、仕上がっている印象です。応援しているファンも、安心して見られているという声がSNSでは多いですね。

ワールドセブンズシリーズではそれでも海外の強豪国がフィジカル、スピードで個に勝る部分が多く、タックルを決められずに繋がれたり、外のスペースを走られたりで失点を重ねてしまうのが多かったです。チャレンジャーシリーズ大会ではそれらの部分が見られないくらい、むしろ大きな相手を押し込んで倒すハードタックルが見られる、良いDFが出来ています。残り2試合、更なる強豪国を相手に同じスタイルをどれだけ貫けるか、楽しみです。

ケニア、中国、ポーランドを相手にどう戦うか、事前の準備と一貫性が大事

準決勝はこの後深夜にケニアと戦います。そして明日の朝行われる決勝戦、相手はこれまでに試合を見る限りポーランドが有力ですが、中国も昨年の東京五輪のような戦いが出来れば、勝ち上がってくるでしょう。ここからの負けられない2試合、相手をどれだけ分析できるかが大切です。それは直前の試合を見るだけではありません。ケニアは初戦、中国に勝利した後、チリとの試合は序盤にリードを許すなど、あれっと思う試合もありましたが、準決勝ではきっと調子を上げてくるでしょう。WTBは三重PEARLSでもプレーしていた選手ですし、手ごわい相手です。それでもアタックでキックを用いるようなスキル、奇襲的なものはないと思うので、日本はこれまでやってきたスタイルを貫く一貫性を大切に、戦ってくれると思います。DFで粘り強く守り、プレッシャーをかけて、自分たちのペースに持ち込めれば良いですね。

そして決勝戦、ポーランドを相手と想定すると、これが強敵です。今年、招待参加したワールドセブンズシリーズ大会でもベスト8入りを果たすなど、日本より格上と言ってよいでしょう。トーナメント初戦でも日本が予選で戦ったコロンビアを相手に36-0と快勝。日本と同様の仕上がりの良さ、と言って良いくらいです。アタックではループプレーを入れて仕掛けてきますし、DFでもしっかりセットし、前に出てくる。ジャッカルを狙う選手のリアクションも早い。日本もアタックでは原わか花選手が警戒されて、外を簡単には抜け出せないと思いますし、縦の突破も交えながらミスなくアタックしていかなければいけません。そんなポーランドとの戦いは、お互いの強みを出せた方がそのまま勝利してくれると思います(当たり前すぎて、すみません)。一方で相手の予想を上回るプレー、一発で抜けるサインプレーだったり、前に出たDF裏へのキックだったりも準備としては必要でしょうね。競った展開になれば、ポーランドのほうが経験は浅い分、ミスも出てくると思うので、日本が優勝するチャンスは十分にあると思います。

厳しい2試合になると思いますが、それでもこれだけ期待を持たせてくれるサクラセブンズは個人的には久しぶりです。それだけ活躍を見せる選手が多い。リザーブの選手もいい状態でしょう。なのでPCの前でしっかり応援したいと思います。頑張れサクラセブンズ!

最後にサクラフィフティーンも来週のアイルランド戦に向けて、釜石で早朝からトレーニングに励んで、仕上げています。協会HPの合宿レポートはこちら。写真を見ると櫻井選手もヘッドキャップ被ってますし、南アフリカ戦は出番のなかった公家選手、津久井選手も良い顔しているので、こちらも楽しみです。頑張れ日本!頑張れサクラ!

サクラ7sもサクラ15も活動中、大事な8月

8月中旬、お盆休みの時期にまとまったお休みを頂いています。女子ラグビーは7月にサクラ15が南アフリカのとのテストマッチを1勝1敗で終えてから、国内ではコベルコカップや菅平女子セブンズ、ユース世代の中高生の大会が行われていました。そして8月、タイトルの通り、サクラ15はアイルランドとのテストマッチに向けて釜石で再び合宿に入り、サクラ7sは遠く南米のチリで開催されるワールドシリーズのチャレンジャーシリーズ大会に参加、日本時間深夜に行われる大会はライブ中継で見れるそうです。チリ遠征のレポートは、こちら

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サクラ7sの登録メンバー、太陽生命WSSで活躍した大黒田選手や大竹選手が久しぶりの代表入り。

サクラ7sは12日から3日間で行われるチリ大会、優勝して昇格なるか

日本はコアチーム入りと降格を繰り返すような時期があり、5年ほど前は当たり前に決勝まで進み、優勝していたのがこの昇格大会でした。今回の大会では12チームが参加、他のプールには昨年の東京五輪で日本に勝ったケニア、中国もいます。過去の大会の中でもこの大会にこれほど強豪国が集まったのは初めてかもしれません、それだけこの数年の間に海外の各国の強化が進んでいるのでしょう。

男子と並行して行われる大会、試合時間は深夜でも早朝でもなんとか応援したい。

日本は予選プールで戦う3チームを見ると、コンディションに問題なければ1位通過は問題ないでしょう。その後のトーナメントで戦うであろう、ヨーロッパ勢、そして中国、ケニア相手にしっかり戦えるかどうか、ある程度の緊張と余裕を持ちながら、3日目にピークを持って行って欲しいですね。東京五輪でも活躍し、その後も代表に定着している梶木選手、大谷選手、そしてキャプテンの平野選手には注目ですが、東京五輪への出場を逃しながらも懸命にトレーニングに励んで代表に復帰した大黒田選手、大竹選手がどんな活躍を見せるか注目ですね。特に大竹選手は日本代表の中でもフィジカル、スピードに長けているので、彼女が活躍する場面が増えると、勝利に近づくでしょう。

勝ちパターンとしては、まずセットプレーの安定、キックオフの攻防で負けないことが前提。そしてアタックでは素早いサポートでしっかりボールをキープして攻め続ける。DFでは反則をせずに粘り強く守る。外のスペースでスピードランナーと1対1になると厳しいので、サイドからのアタックは素早く前に出るDFで止める。サクラセブンズの試合は久しぶりに見れるので、どのような進化をしているか、楽しみにライブで見たいと思います。

サクラ15は強豪アイルランドとの試合に向けて、選手のセレクションに注目

そしてサクラ15、熊谷で行われた南アフリカとのテストマッチは2連勝するかと思っていましたが、DFでは強力なランナーに走られて敵陣からトライを奪われ、ATではチャンスを作るもハンドリングエラーや勢いに乗った相手の粘り強いDFに後半ノータイムでトライを奪い返すのがやっとでした。熊谷での試合映像はハイライトでしか見ていませんが、Twitterで実況してくれる方もいたので、印象はどちらかと言えばミスで自滅してしまったのかなと。夏のこの時期なので夕方にキックオフ、ナイターに近い状況でボールが滑り、ミスが生まれやすい状況だったかもしれません。いずれにせよそれを試合中に修正して逆転に繋げられるか、そこもW杯への準備としては良い経験だったのではないでしょうか。

サクラ15も勝ちパターンを考えると、まずはDFで相手を止め続けられるかどうか。熊谷での失点場面のように敵陣でプレッシャーをかけつつも、少しのDFの連携ミス、タックルミス、少しのカバーの遅れが致命傷になります。まだ海外勢とのフィジカル、スピードの差は否めない。その中でどう勝利を手繰り寄せるかは、選手もスタッフもわかっていると思います。アタックではいかに敵陣22mに入るかですね。テンポ良いアタックで前に出ながら、キックも交えて敵陣に入っていく。そしてターンオーバーを狙うようなシチュエーションを意図的に作れるようにならないと、W杯では厳しいでしょう。

またG前のアタックのオプションが気になりますが、今のところFW中心で拘っていくと感じています。なので昨年からの課題であるラインアウトでスローもリフトもミスなく安定できるかどうか。改善してきた中で、スクラム含めてセットプレーで余裕を持てると、FWの力をより発揮させることに繋がります。そしてBK。南アフリカ戦では以前より、ワイドに素早くボールを動かすプレーが増えたと感じています。一方でDFラインを切りに行く、トップスピードで走りこんで一気にラインブレイクするようなプレーもあればいいと思いますね。

そしてW杯に向けて今回の釜石合宿では参加メンバーも絞られてきました、協会HPのお知らせはこちら。オーストラリア遠征のメンバーを中心に、代表に復帰してきたFWの加藤選手、櫻井選手、BKの谷口選手の名前もありますね。前回の大会から比べると、本当に選手の層が厚くなってきたなと感じます。この中からW杯登録メンバーに向けてのセレクションを考えると、まずは経験の浅い大学生選手がいかに練習からアピールできるか。もちろん全員が毎日必死に戦っているとも思いますが、チームが成長していく中でやはり若手の思いっきりの良さは大事ですし、リーダー陣はそれも含めてしっかりまとめ上げて欲しいですね。

そんなサクラ15と戦うアイルランドですが、昨年のヨーロッパ遠征でも戦っていて、日本より格上の印象です。W杯出場は惜しくも逃したものの、強化は進めていますし、2019年のW杯でアイルランドと戦った、静岡エコパで女子のテストマッチを行うとは、日本協会も粋な計らいをしましたね。W杯の予選プールで戦う米国、カナダ、イタリアに向けて、自分たちの力量を図るうえでも非常に良い相手だと思います。一方でW杯を見据えて、ベストメンバーで戦うのか、ポジション変更などチャレンジングなメンバーで戦うのかも注目です。その辺りは今後の合宿のレポートや選手のSNSを見ながら、考えていこうかなと思います。

今日の南アフリカ戦、サクラ15の戦いに注目です

7月の終わりに近づき、夏らしい天気になったようで、たまに梅雨みたいな天気にもなったり。そんな中でラグビー女子日本代表、サクラフィフティーンは岩手県釜石市で強化合宿を行いながらW杯前の国内テストマッチ4連戦に向けて、強化に励んでいます。日本協会の発表では、選手やスタッフから新型コロナの陽性者が若干名出ているようですが、男子と同様に上手くコントロールしながら活動を継続していますね。協会の合宿レポートは、こちら

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試合メンバーは初キャップ含め若手を上手くミックスしています

14番磯貝選手は初キャップでスタメン、19番川村選手、23番向来選手も交代出場で初キャップなるか

今回のテストマッチシリーズは男子のテストマッチが終わり、リーグワンのチームはオフシーズン中、大学ラグビーも春シーズンを終えて夏合宿の前、そんな状況もあってかJSPORTSさんが積極的に女子ラグビーをPRしている印象。相手の南アフリカは世界ランクでは格下ということもあり、チームの情報はあまりわかりませんが、それでも勝って当たり前という印象はあります。そんな相手に対し、日本代表はチャレンジングなメンバー。レスリーHCのメンバー発表に関するコメントは、こちら

PR1番南選手、FL6番齊藤選手、WTB11番名倉選手は昨年秋の豪州遠征、5月の豪州遠征から主力として活躍していて今回も先発メンバー入り。PR3番北野選手、No8小西選手などは久しぶりのメンバー入りでしょうか。試合をコントロールしていく9番10番はアルカス熊谷の阿部選手、今釘選手、春のフィジー戦でも活躍していました。そして代表デビューは14番磯貝選手、昨年から代表には選ばれていましたが、なかなか試合メンバーに入れない中で今回、先発のチャンスを掴みました。そしてリザーブの2名、川村選手と向来選手も初のメンバー入り。特に向来選手は昨年秋には熊谷で行われた全国U18女子セブンズで、関東学院六浦の優勝に貢献する大活躍をしていました。後半にはFLで出場予定かな、出てきたら注目です。

リザーブには他にもハードタックルの16番江渕選手、出たらジャッカル決める17番鈴木選手、そして英プレミアに挑戦し、たくさんの経験を積んで大きくなった22番山本選手もいます。そんな山本実選手の英プレミアでのレポートを大友信彦さんがアップしてくれています、こちら。試合メンバーを改めてみると、どんなプレーを見せるのか楽しみですね。

チームとしては課題のセットプレー、アタックの出来に注目

そんな楽しみなメンバーが挑むテストマッチ、個人的には課題と考える2点、セットプレーとアタックに注目です。まずセットプレーですが、スクラムはある程度計算が出来る中、ラインアウトはまだ不安なところがあります。豪州遠征では公家選手が強みのスローイングの正確さを見せて、精度が上がってきました。今日は国際武道大学の永田選手が先発、昨年秋の豪州遠征では良いボールキャリーを見せ、チームを前に進めていました。セットプレーの安定に向けてアピールして欲しいですね。

アタックについては、チームのアタックのストラクチャー(であっているかな?)をやり切ってのトライという場面が見られるかどうか。G前に進んでFWがトライを奪う場面が多いサクラフィフティーンですが、自陣から敵陣に入って、BKが展開してトライを奪うようなアタックをテストマッチで見せられるかどうか。それがW杯でのベスト8入りに向けて、必要になってきます。そして豪州遠征に続き、元パナソニックのべリック・バーンズがスポットコーチとして釜石合宿にも参加しています。現役の時も素晴らしいキックを見せていましたが、サクラ15にもキックやアタックの指導を通じて、レベルアップに大きく貢献していると期待します。

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そしてアタックの中で、個人のパフォーマンスがどれだけ出てくるか、8番の小西選手は2019年のスコットランド戦では後半に出場すると、ボールキャリーでチームをどんどん前に進めて、終了間際の逆転に繋がる勢いをもたらしました。あとは13番古田選手が攻守にわたって毎試合良いプレーを見せてくれていますし、今回15番に入った松田選手が良いボールキャリーをする場面が増えれば、おのずとトライチャンスも増えてくるでしょう。釜石で行われるテストマッチ、個人的には勢いを掴んで4トライ以上獲得して欲しいですね。

今日の南アフリカ戦から国内では熊谷、静岡、東京でテストマッチを行う女子ラグビー。W杯を前にファンの注目をたくさん集めるためにも、選手スタッフが勝利に向けて日々励んでいると思います。今日のテストマッチではその成果をたくさん見れるのを期待しています。頑張れサクラフィフティーン!!

東京山九フェニックスが太陽生命WSS2022総合優勝

前回のブログから1か月以上空きました。その間に太陽生命WSS静岡エコパ大会の応援にも行ったり、鈴鹿大会もYoutubeで2日目の試合を観戦したりしていましたが、結局ブログを更新せず・・・そうしていたら、シリーズ最終戦の弘前大会も終了しました。

シリーズ初開催の弘前大会を制したのは東京山九フェニックス

弘前大会二日目、得点経過や解説も加わり、大会が進むにつれてLIVE中継も良くなりました。

ちなみに太陽生命WSS(ウィメンズセブンズシリーズ)は2014年から始まりました。私は当時、TKM(現YOKOHAMA TKM)のコーチをしていたので、初年度から参戦していました。当時は龍ヶ崎、札幌定山渓、横浜のYCACの3大会だったかな。あれから秩父宮開催の東京大会、秋田大会、神奈川の保土ヶ谷大会、静岡の裾野大会、三重の鈴鹿大会など開催地が拡がっていく中、今回は青森県。6月中旬、梅雨の時期としては、良かったのではないでしょうか。

そんな弘前大会はシリーズ最終戦、総合成績も決まる大事な大会。前回の鈴鹿大会から、新たにセブンズ女子日本代表候補(SDS)に入った選手など代表候補選手はフランス遠征により不参加。チームの層の厚さ、総合力も試されるような大会でしたが、SDSのフランス遠征に4名の選手を派遣した東京山九フェニックスが、予選プールではTKMを相手に4点差で勝利。2日目は準決勝で三重PEARLSを相手に3点差で勝利し、決勝では総合優勝争いをするながとブルーエンジェルスに21-12と勝利。7-7の後半に見事なアタックでリードを奪うと、粘り強いDFで逆転を許さない試合展開で、王者にふさわしい戦いでした。

個人的に総合優勝できた要因を考えると、今シーズン加入した米国セブンズ代表経験のあるニア・トレバー選手の圧倒的な得点力、そして粘り強いチームDF力ではないでしょうか。シリーズを通じて負けた試合は、熊谷大会の決勝TKM戦(0-17)、鈴鹿大会の決勝ながとBA戦(7-35)の2試合のみ。静岡エコパ大会と鈴鹿大会の1日目の予選では3試合とも完封勝利。2日目のトーナメントもほとんどの試合では相手を3トライ以下に抑えていると思います。そして今シリーズのトライ女王ニア・トレバー選手は4大会で通算41トライ。1試合平均で2トライ近く。相手チームが警戒しても、それでもトライを奪ってしまう強さと速さは凄かったですね。

アタックとDF、ともに強力でしたが、それを最大限に発揮するチームの戦術、戦略の完成度が高かった印象です。アタックを見ていても、2人目のサポートの速さ、ボールの展開に意図を感じました。特に鈴鹿大会のトーナメント準決勝、三重PEARLS戦の2トライ目、自陣10m付近のラインアウトからアタック、大竹選手が外を大きくゲインしてラック、ワイドに展開し、走りこんだ原わか花選手がコーナーに飛び込んだトライが、印象に残っています。

準決勝、PEARLS戦の2トライ目を奪ったアタックは2:32:30過ぎです。また後半に出場したニア・トレバー選手がKOをキャッチした後、DFを吹き飛ばして、急加速で走り抜ける驚異的なプレーは2:41:00過ぎです。

4大会とも4強の顔ぶれは変わらず、クラブと大学チームの差が出てきた2022

大会4強の顔ぶれが変わらなかった今シリーズ、大友信彦さんのTwitterを拝借。

日本協会HPにある年間総合順位のお知らせは、こちら。またRUGBY JAPAN 365で弘前大会のドリームセブンと個人得点ランキングがUPされました、こちら。今年のシリーズは強豪クラブであるフェニックス、ながとBA、TKM、PEARLSのクラブチームが毎大会ベスト4に進出、大学生チームは日体大の総合5位が最上位でしたが、総合ポイントは48。4位のPEARLSとは12ポイントの差でした。クラブチームと比べると大学生は外国人選手のリクルーティング、チームの強化費用など差はありますが、フェニックスや三重PEALSの主力選手には大学生もいますし、実力のある大学生選手は各地で育っていると感じました。

その一方で厳しいシリーズだった北海道BBディアナ、サクラフィフティーンの豪州遠征中の熊谷大会で負傷者が出たことで大会途中で棄権したPTSなど、登録選手を集めるのに苦労しているチームもありました。所属選手が多いと練習でも試合形式など出来ますし、選手の確保、リクルーティングは今も悩みの種かもしれません。チャレンジチームはセブンズユースアカデミーの高校生主体で厳しい試合ばかりでしたが、強豪相手に果敢に挑み、惜しい試合もありました。前半は相手の勢いを受けて劣勢になるも、ハーフタイムで修正して、後半に素晴らしいプレーを見せる試合もありました。ただ個人的には太陽生命WSSよりも、接戦が期待できるリージョナルセブンズに出場させるべきかなと思います。

今シリーズは各チームの強化に加えて、リージョナルセブンズからの招待チームの参加もあり、素晴らしいシリーズとなりました。運営してくださった協会、大会関係者の皆様、そして参加チームのスタッフ、選手の奮闘に感謝です。女子ラグビー、今後も益々盛り上げていってほしいですね。

サクラ15とオーストラリア戦の振り返り

昨日は夕方からラグビー関係者のSNSが「女子日本代表、強豪オーストラリアに12-10で勝利」という話題で溢れていました。サクラ15の選手、スタッフ、関係者の皆様、本当におめでとうございます。チーム内で新型コロナの陽性者が出るなど、タフな状況の中でのアウェー戦の勝利、2019年のスコットランド戦以上の出来と言ってよいでしょう、本当に。

POM(Player of the Match)を獲得した10番大塚選手、写真は映像を配信したStan SportのSNSから拝借。

勝利の要因は粘り強いDFに加えて、キックを使ってのエリア獲得

試合の簡単なレポートと試合後の南主将をはじめ選手、スタッフのコメントはRUGBY JAPAN 365で見事な記事にまとめられているので、ご覧ください
 ⇒ 「ワラルーズに勝利!歴史的快挙を成し遂げた」

試合は相手の強みであるラインアウトモールに対して、あえてコンタクトせずに見て、反則を誘うなど、しっかり対策を練っていました。先日のフィジー戦を会場で見れたことで、チーム内でいい議論が出来たのではないかと。スクラムでは大型FWを相手に反則を取られたり終始苦しい展開でしたが、課題のラインアウトでは初テストマッチの公家選手が安定したスローイングを見せました。そしてDFでは素早いセットから相手FWのアタックを止めて、DFで前に出る場面が多かったです。キックのカウンターから外のBKに走られることもありましたが、内側からカバーしたり、FB庵奥選手が捕まえるなど、トライチャンスを作らせません。

30分過ぎに最大にピンチの場面が訪れました。相手スクラムのアタックからラインブレイクされ一気にG前まで攻め込まれますが、SH津久井が見事なカバーDFでタックル、WTB今釘が左サイトから全力で戻って右サイトのスペースを埋めます。早くトライを奪いたい豪州は外へ大きなパスを放りますが、今釘選手が見事なインターセプト、そこから一気に敵陣G前まで進みました。津久井、今釘の2人の素晴らしい献身的なプレーで大ピンチを防ぎました。

後半開始のキックオフ、相手FWの多いサイドの逆を狙う賢い選択。そこからG前ラインアウトのチャンスを作り、開始から攻め続けます。敵陣でプレーを続けた結果、オーストラリアのミスから大塚選手が先制のトライ。後半のプレーを見ていると相手の豪州が明らかにストレスを感じているというか、自分たちのやりたいことが出来ない印象でしたね。スクラムでのターンオーバーをきっかけに後半14分にG前のラインアウトからトライを返されますが、この時間帯までこの嫌な形を作らせない、エリアを優位に進められたのが勝因の1つでしょう。

そしてこの後のキックオフでまたしても逆サイドを狙い、素早くプレッシャーを仕掛けて今釘、古田の2人で相手の反則を取り、G前ラインアウトのチャンスを作りました。そこからモール、ラックサイドなど攻め込むと、最後は相手の反則からSH津久井がクイックスタートし、FL細川選手がトライ。豪州に試合の流れを渡さずにトライを返したこの1連の流れは、この試合に勝つために徹底的な準備をやってきたと感じさせるものでした。その後も豪州の大型選手のアタックに、何度もゲインを許しますが、粘り強いDFを最後まで見せてくれました。

1番南主将はスクラムで厳しい戦いを強いられた中のフル出場、素晴らしい。写真はJRFUのSNSから拝借

最後は相手の簡単な位置からのPG失敗に助けられたという見方もあるかもしれません。ただこれまでは2017年のW杯など後半残り数分の時間帯にトライを奪われて悔しい負けをしたテストマッチもありました。この試合でもPGを狙う前、トライを狙う豪州の必死なアタックを止め続けていました。試合後のインタビューでの南主将の「自分たちのスタンダードが上がった」というコメントにはこれまでいい試合をして勝てなかった苦労を感じて、ちょっと感動しましたね。豪州協会のHPにあるゲームスタッツをみても、セットプレーの成功率は豪州が上回り、タックル回数は豪州の倍以上など、我慢の中、粘り抜いて、本当によくやりました。

格上の豪州との試合で感じた課題は色々とありますが、自分たちのやりたいラグビーを出して勝ち切った経験、これに勝るものはありません。遠征で感じた代表チームの振り返りは別にするとして、今は本当におめでとう。そして少し早いけれど、遠征お疲れ様でした。ここからが新たなスタート、という南主将の言葉に期待して、これからも応援します。