土曜に行われたイタリア戦を振り返る

土曜に行われた日本代表サクラフィフティーンとイタリア代表のテストマッチ。日本にとっては来週に南アフリカで開幕するWXV2を控えた試合でしたが、格上のイタリア代表を相手に力の差を見せられて8-24で負けました。試合後のレスリーヘッドコーチ(HC)、長田キャプテン、出場した選手のコメントは、こちら。またWorldRugbyのWebサイトでの記事は、こちら ⇒「女子日本代表、WXV2前哨戦でイタリア代表に黒星、修正点確認で本大会へ

試合はイタリアラグビー協会のYoutubeでLIVE配信されました、ありがたい

試合はLIVEで見ましたが、まずホームチームのイタリアのパフォーマンスが良かったですね。日本の粘り強いDFにミスもありましたが、ボールキャリアーの接点での圧力は強く、日本のDFを押し込んでいました。前半の序盤は日本が攻め続けていましたが、終盤の10分で2トライを奪いましたし、最後のモールをきっかけに奪ったトライはTMOの結果で無効になったものの、FWは力強かったですね。

去年のWXV2のイタリア戦のハイライトを改めてみましたが、当時も良いアタックを見せていましたね

試合後の長田キャプテンのコメントにも「テンポよくスペースに運ばれて、コンタクトで前に出られずディフェンスが難しかった。ほかのチームに比べてイタリアは接点に入る際のフットワークが優れていて、個人的にやりづらく、結果的にディフェンスが受け身になった。」とありましたが、戦った選手も力の差を感じたのではないでしょうか。試合を見ていて先日のアメリカ戦のような勝てそうな雰囲気はなかったですね。

そんな厳しい試合でしたが、目立った活躍を見せていたのがFWでは永田選手。もともとはHOでしたが、この試合では右PRで出場し安定したスクラムを日本にもたらし、相手FW選手へのタックル回数も多く、そこから素早く起き上がってのセットなど、良い動きを見せていました。BKでは古田選手。ここ数試合のテストマッチでも活躍を見せていましたが、イタリア戦でも攻守に奮闘してチームをリードし、試合終盤の時間帯にもキックチェイスで素早く前に出てカウンターを狙うイタリア選手を捕まえていました。この試合はリザーブにいたBKがSHでこの日が代表デビュー戦の妹尾選手、キックとランに優れた松村選手の2名でしたが、前半途中にSOの山本選手が松村選手と交代。BKは試合前のプランとは違う形になったと思いますが、大きく崩れなかったのは古田選手の活躍もあったと思います。

WXV2に向けて、気になるのは得点力不足ですね。これまでのフィジーとのアウェー2試合、米国とのホーム2試合、そして今回のイタリア戦合わせて5試合で奪ったトライは10本(3,2,3,1,1)。試合を重ねてきましたが、トライ数は減っています。今回のイタリア戦は前回のエコパでのアメリカ戦に比べて、ボールをスペースに動かくという点ではよく修正されていたと思います。一方で敵陣22mに入ったときに得点まで繋げるようなプレーはまだ足りない。試合開始から敵陣に攻め込みましたが、トライは奪えず16分にようやくPGで先制という流れでは勝利に繋げるのは難しいと感じました。

WXVに向けて、レスリーHCは試合後のコメントで「私たちの1週間の努力、前半のプレーを反映した結果とはなリませんでした。しかしこれがWXVに向けてのモチベーションの源となることでしょう」と話していました。確かにそうですし、本番はWXVなのでポジティブに捉えるのもわかるんですが、大丈夫ですかと(苦笑) 以前からブログでも触れていますが、私個人はレスリーHCについて世間というか関係者が思う評価とは違っていると思います。またレスリーHCを支えるスタッフの体制も充実してきていると感じています。

サクラ15、海外遠征のメンバーにサクラ7sから2名選出

日本協会のHPで9月1日に7日土曜からイタリア、南アフリカへの遠征に参加する女子日本代表サクラフィフティーンのメンバー32名が発表されました、こちら。先月の米国代表とのテストマッチに向けたメンバーが中心の中、デベロップメント・スコッドという形でパリ五輪に出場した松田凜日、水谷咲良の2名が選ばれました。

2022年のニュージーランドW杯にも出場した松田選手はパリ五輪の後にも「来年のイングランドW杯出場を目指す」というコメントを見たので、コンディションに問題なければ呼ばれるだろうなと思っていましたが、水谷選手の招集はちょっと予想外でした。松田選手はBKですが、水谷選手はセブンズではFWで出場していますし、15人制ではおそらくFLでのプレーを考えていると思います。

今の日本のアタックではFLの2人は大外のWTBに近いポジショニングをするので、水谷選手がセブンズで見せる思いっきりの良いランは期待したくなります。一方で米国との2試合ではジャッカルに長けた長田キャプテン、LOも出来て高さのある川村選手の2人がFLで先発フル出場し、良いプレーを見せていました。またFLでは向來選手も活躍していて、21歳ですでに15キャップを獲得しています。FL、No8のポジションを務める選手が固まってきた中での、フレッシュな水谷選手の招集は刺激というか、ポジション争いを狙っているのかもしれませんね。

また得点力不足が課題になっている日本にとっては、スピードもフィジカルもある松田選手の招集は代表選手の中からも期待されていると思います。22歳で9キャップを持つ松田選手は2022年のW杯前はどのポジションで出場させるのがベストか考えるくらいすでに主力選手という扱いでした。今の日本代表のBK3で出場している今釘選手、松村選手、西村選手はみなキックスキルに長けていますが、ここに松田選手が加わることで松田選手を大外のWTBに固定し、ほかの2人がダブルFBみたいなポジションを取るのも面白いのかなと。また外側のCTBに入る可能性もありますね。

改めて今回の遠征メンバーの顔触れを見ると、キャップ数が20を超える選手が13名。大学の頃から日本代表に選ばれてテストマッチに出場している選手が着実に経験を重ねてきています。PEARLSの齊藤聖奈選手は最多キャップ44を持ち、この秋のテストマッチでも活躍すると、来年は日本の女子で初の50キャップの達成が見えてきますね。また年齢が一番下なのはWTB松村選手(19歳)で、大学生は向來選手、峯選手、弘津選手、松村選手の4名で年代のカテゴリーでいえば20歳の水谷選手も入ります。

https://twitter.com/WXVRugby/status/1830538677186859465

WXV2の開幕を前に14日土曜、日本時間21時から世界ランク9位のイタリア代表とのテストマッチが行われます。海外遠征は10月12日まで1か月を超える長期になりますが、遠征の中でレベルアップして強い日本女子を見せてほしいですね。頑張れサクラフィフティーン!!

アジアセブンズシリーズ2024に向けて

まず今日3日未明に行われたパリパラリンピックの車いすラグビー決勝、日本は米国を破って念願の金メダルを獲得、本当におめでとうございます。第1ピリオドを終えて米国にリードを許した時はどうなるか心配でしたが、試合が進むにつれて日本のハードなDFが米国のパスミスを誘うなど試合の流れを掴むと、終盤に連続得点を奪ってリードを広げて48-41と圧勝。日本らしい戦い、ほかの競技でも参考にできますね。車いすラグビー、選手のフィジカルの差はないというか、感じさせないのが面白い。

https://twitter.com/JWRF2020/status/1830680750427111475

今週末からアジアセブンズシリーズが開幕します。今年は韓国、中国、タイの3大会が行われ、男女ともに8か国のトーナメントになります。Asia RugbyのWebsiteによると、昨年の成績をもとに予選プールの組み合わせも決まっているみたいです、こちら

https://twitter.com/asiarugby/status/1830934706470228082

男子は日本と同組なのは、中国、マレーシア、そして昨年の下部トーナメントで優勝して昇格したタイ。女子はタイ、カザフスタン、そして男子のタイと同様に昇格したUAE。女子はUAEと試合した経験はほとんどない気がします(過去にアジア大会で経験しているかもですが)。男女ともに新たなHCを迎えて、短い準備期間での大会となりますが出場する選手はしっかりアピールして欲しいですね。アジアでは常に優勝争いをしなければいけません。特に女子はパリ五輪で日本を上回る6位入賞を果たしたライバル中国もいます。

弘前合宿のレポートから拝借、兼松HCの新体制がスタートしてどんな戦いを見せるか

女子はパリ五輪の大会登録メンバー以外から選出

日本協会のHPで今回の韓国遠征のメンバーが発表されました、こちら事前の合宿からパリ五輪のメンバーは外れていておそらくこの韓国大会、そして21-22日の中国大会はこのメンバーを中心に戦うのではないでしょうか。6月にフランスで行われた世界学生選手権で優勝したメンバーから、キャプテンを務めた高橋選手(日体大3年)、大橋選手(ナナイロプリズム福岡)ら5名、今年の太陽生命ウィメンズセブンズシリーズでも活躍した藤崎選手(ながとBA)、迫田選手(ナナイロプリズム福岡)、岡元選手(東京山九フェニックス)、ワールドセブンズシリーズ出場経験のある吉野選手(ナナイロプリズム福岡)らが入りました。

世界学生選手権を制した若きサクラメンバー、アジアでも堂々と戦ってほしいですね

またパリ五輪ではバックアップメンバーから出場した辻崎選手(ながとBA)がメンバー入りしています。JUST RUGBYの記事でも紹介されていました ⇒ 「辻崎由希乃[サクラセブンズ]◎道の途中が記憶の真ん中。」きっと韓国大会でも鋭い走りで活躍してくれると思います。それにしてもメンバーが大きく変わり、それぞれがどんなポジションで出場するのか。特にFWのメンバーが読めないので、初戦の先発メンバーの顔触れが楽しみですね。

弘前合宿では地元の子供たちと交流した女子、後半に辻崎選手のインタビューがあります

パリ五輪を戦ったメンバー、特に主力のメンバーは東京五輪の前から4,5年ほど代表中心に活動してきて国際経験を重ねてきました。パリ五輪から帰国して何人かは先日の国体ブロック大会で地域の代表として戦っていましたし、代表から引退を表明している選手もいますが、8月9月は代表を離れてしっかりリフレッシュし、また10月から代表活動に戻るのではないでしょうか。それに加えて主力として活躍してきたものの、怪我などの理由で代表から外れていた須田選手(追手門学院VENUS)や永田選手(ナナイロプリズム福岡)にも個人的には期待しています。

ラグビーマガジンを読んで面白かった話

先週から予想進路がどんどん変わる台風10号による大雨の影響で日本中が悩まされましたね。昨夜の雨が過ぎ去って今日は良い天気になりそうです。この台風の影響は仕事にもあって、先週は自宅で過ごす時間が増えて、久しぶりにラグビーマガジンをじっくり読みました。

パリ五輪の振り返りが面白い

先日発売したラグビーマガジンは付録で大学ラグビー写真名鑑があり、ボリューム増してますが中身も高校ラグビーは全国セブンズにコベルコカップ、大学ラグビーは夏の合宿の話題など盛りだくさんでした。そして女子ラグビーの話題もたくさんあったので、いくつか自分の感想も踏まえながら紹介していきます。

まずパリ五輪、見たのはほぼ日本代表の試合で海外の強豪国のメダル争いは男子の決勝しか見てなかったです。母国開催で連覇を狙うフィジーを破って金メダルを獲得したフランス、決勝戦は15人制でも活躍するSHのデュポン選手の大活躍が目立ちましたが、フランスではラグビーといえば15人制という空気があったとのこと。7人制の強化策としてはセブンズ代表でハイレベルの試合を経験し、選手も成長できるとメリットを話して能力の高いクラブのアカデミーの若手選手を代表にリリースしてもらうことに成功したとか。ただセブンズをステップに15人制での活躍を目指す、という流れは今後も続きそうです。一方で国内ではU16やU18などのユースレベルで今後はセブンズの大会を増やしていく計画だそうです。

日本は以前からセブンズユースアカデミー合宿を重ねてタレントのある有望な中高生を発掘し、鍛えてきました。ユニバーシアードなど学生レベルの世界大会では金メダルを獲得する成果もありましたが、海外の強豪国と戦うトップカテゴリーでは、ほかの国々の強化スピードに追いつけず苦しい状況。以前はアジアで勝つのは当たり前のような空気もありました。東京五輪の前もワールドセブンズシリーズのコアチームに入って、世界トップレベルの経験を増やすかというのが目標でしたが、パリ五輪を控えた去年はそのシリーズの下のカテゴリーでも勝てずにプレーオフにすら進めない現状。最下位で終わった後のエイモーHCのコメントにも「特に運動能力的に相手に及びませんでした」とありました。

エイモーHCのコメントの中にはポジティブに振り返って「素晴らしいアタックシーンを作ることはできた」というのもありました。キックをうまく使ってのトライは鮮やかだったかもしれませんが、それ以外でアタックからトライまで繋げるパターンがない印象でした。リスクを背負って前に出るDFを試みて失点が多かった戦いは、何となくリオ五輪での女子と重なる印象です。「自分たちの戦いが出来れば勝てる」と自信を持っても、結局はその舞台まで辿りつけない。力の差を感じる、悔しい思いしかない。

男子と比べて女子は目標とするメダル争いはできなかったもののリオの10位を上回る過去最高の9位という成績で終えました。その内容については以前のブログでも書いていますが、振り返っての平野主将や内海選手のコメントが面白かったですね。「(五輪を意識しすぎずに)通常通りのマインドでやろうと言ってきましたが、オリンピックではほかがいつもと違う」、こういう感じ方が出来るのも、初日の苦しい2敗から立て直して、自分たちの戦いが出来てこそだなと。東京五輪後に就任した鈴木HCがパリ五輪までの3年で、ワールドセブンズシリーズのコアチームに昇格、そこからセブンズW杯、シリーズ大会でも過去最高の成績を残すまで強化を着実に進めてきました。後任にはリオ五輪を経験し、ここ数年はユースアカデミーを中心に担当してきた兼松さんに決まりましたが、今後はどう強化を継続していくか、ですね。

パリ五輪を前にフランスで開催された学生セブンズ大会で見事優勝した日本、ここから代表入りする選手に期待

パリ五輪については先日、日本協会からもオンライン会見で振り返りがありました。東京中日スポーツでも記事があったので、紹介します ⇒ 「パリ五輪ラグビー7人制 女子9位、男子最下位に岩渕健輔専務理事、女子「前向き」男子「厳しかった」と総括
男女ともに新体制はさっそく今週末のアジアセブンズシリーズ韓国大会から始まるので、まずは見守りたいです。

サクラ15の国内テストマッチの振り返りが面白い

深掘りでのハイライト、個々の選手の活躍がわかって面白い

そして8月のサクラ15のテストマッチ2試合の記事も読みごたえがありました。大友信彦さんが書いていますが、強豪のアメリカを相手に2試合合計で25-28というトータルスコア。本当によく戦った、そして勝てなかった、勝つべき試合だった。8-11に終わった2試合目については私も現地観戦しましたし、以前のブログでも触れています。

サクラ15については、毎年のようにチームが成長しているのを感じますし、それは選手(特にFW)のサイズアップからも感じます。海外遠征などテストマッチの機会が増えて、強豪国とも戦えるステージまで来たと感じます。春から合宿を重ねてきたFW陣がセットプレーでも奮闘し、ラインアウトからのモールにもトライという結果は示せなかったものの、拘りを感じました。この2試合で特にDFに成長を感じる一方で、感じたのは得点力不足。去年のWXVでも見せたワイドに展開して外のスペースを攻略するアタックが見えなかったです(これは温度湿度が高い日本の夏でボールがスリッピーな状況もありますが)。

ラグビーマガジンではSHの津久井萌、CTBの弘津悠もピックアッププレーヤーで紹介されていました。津久井選手は以前にサクラ15でもBKコーチを務めていた藤戸さんに個人レッスンをお願いした話がありました。弘津選手は以前はセブンズを主戦にしていましたが、そこから15人制に移った経緯を話していました。女子は以前に比べればテストマッチの増加含めて話題に出る回数が増えてきたし、今はYoutubeで地方のマスコミがニュースとして扱った映像が見れたりもしますが、個人にフォーカスした記事を見かけることはまだ少ないので、この2人の話は面白かったです。個人的にはともに200年3月生まれで日本代表で10代から活躍している平野優芽、津久井萌の対談とか見てみたいですね。

サクラ15ではないですが、パリ五輪を終えた原選手の地元里帰り動画

そのほか、コベルコカップの記事もあり今年から男子と同様、全国9ブロックを3つのプールに分けて行う予選、そして順位リーグで順位を決める形になりました(昨年までは強化、育成の2リーグ)。女子は出場した選手の顔写真付きプロフィール紹介が今年もありました。出場する選手にとってはきっと思い出になりますね。今後もより多くの選手が高校卒業後もプレーを継続してほしいと願っていますが、そのためには国体を含めた各地域の強化策はもちろん、セブンズユースアカデミーに加えて、15人制に向けたユース選手の合宿だったり、環境をもう少し整えていかなければと思います。

今はコベルコカップの後に、菅平女子セブンズ大会が行われていて、中学生のカテゴリーも開催されるために、多くの女子ラグビー選手が集まる機会になっています。全国のタレントある選手を発掘する機会にもなると思いますし、今後のサクラ7s、サクラ15の強化を継続するためにはユース選手からの発掘、育成が求められると思うので、頑張ってほしいです。個人的には、今の女子代表はセブンズ含め1999年、2000年生まれの黄金世代が20代前後で代表に選ばれて、経験を重ねて成熟し、この数年がピークになるのかなと。その辺りはまた別の機会にかければなと。

女子代表選手が地元の子供たちと一緒に入場、こういう機会が将来につながるかもしれませんね

本当は週末に始まるアジアセブンズシリーズや遠征メンバーが発表されたサクラ15にも触れたかったのですが、長文になったのでまた大会が始まる前に更新出来ればと思います。

17日のエコパで活躍した選手と秋の海外遠征への期待

前回のブログでは17日のテストマッチ第2戦から何を学ぶか、という視点で振り返りましたが、今回は選手のパフォーマンスについて振り返りながら、次の遠征についても書きたいと思います。ブログを書く前に3年前のW杯での米国戦のハイライト映像を見ました。8月の日本のコンディションもあり、安易に比べてはいけませんが、日本がDFでラインブレイクをされた数は明らかに減っていますし、日本は確実にレベルアップしていると思いますね。

試合が進むにつれて米国に対応してファイトしたFW陣

FWから振り返りますが、みんな活躍していましたね。まずフロントローについては、3年前のW杯から主将を務めた南選手が引退し、2017年のW杯も経験している江渕(ラベマイ)まこと選手も不在の中、去年からは英国プレミアシップでも活躍した加藤選手や、左髙選手が引っ張ってきました。この2試合は1番峰選手、3番北野選手が出場し、最初のスクラムで反則を取られて、そこから米国に先制トライを許しましたが、そこからは徐々にチームで対応しスクラム、ラインアウトのセットプレーで奮闘していました。HOは公家選手、谷口選手がこの1,2年でスローイング、フィールドプレーがますます良くなっていますし、公家選手は後半、米国が反撃する中で見事なジャッカルを決める活躍も見せてくれました。フロントローは海外選手と比べてパワーやサイズで厳しい印象ですが、日本の層が厚くなっているのを感じました。

次にロック。佐藤選手、吉村選手は2枚看板と言ってよいくらいの活躍を見せていました。2人ともこの1,2年でサイズアップしてコンタクト場面でも激しく体をぶつける場面をよく見かけます。佐藤選手は密集近くでのタックル、すぐに起き上がってのセットが目立ちましたし、吉村選手もボールキャリーに加えて、DFでは素早く出て相手のボールをもぎ取る場面もありました。ロックは他に櫻井選手が久しぶりに代表合宿に招集されていますね。試合に出ては激しいバトルの中で大きな怪我が重なりリハビリが続いていましたが、ここからまた試合メンバーの争い含め日本代表に貢献してくれるのを期待します。

そしてバックロー。まずキャプテンの長田選手の活躍は常にハイパフォーマンスの中で、7番にロックもできる川村さんが入り、ラインアウトのオプションが増えていると思います。数年前はヨーロッパの強豪国を相手にラインアウトでボールキープに苦戦する場面が目立ちましたが、スローイングの向上とともにリフター、ジャンパーとのコンビネーションが良くなっています。これはFWコーチの存在も大きいですし、春先からFW中心の合宿を重ねてレベルアップを図ったと思いますね。そしてNo8に入った齊藤聖奈選手は試合前のキックオフからもうラスボス感が出てましたね。トライ場面含め、相手G前のチャンスにしっかりアタックセンスを見せてくれます。交代出場した向來選手はまだ21歳ですが、この試合で15キャップ目。なかなか先発の機会が得られない中、今後も出場した時の爆発的なプレーに期待しています。

キックを使って前に進み、接点でもファイトしてレベルアップを見せたBK

BKはこの試合、本当に裏へのキックを有効に使っていましたね。8月の蒸し暑い日本では裏へのキックで後ろに走らせて、相手選手も嫌だったと思います。先発したHB陣、津久井と大塚のコンビはもう安心して見ていられるというか、安定感がありますね。この試合ではスリッピーなコンディションでパスが乱れる場面もありましたが、アタックに加えてDFでも低いタックルやカバーDFで奮闘していました。また交代出場した阿部と山本のコンビも同点で勝ち越しを狙う状況の中で大きなミスもなく、山本選手はラインブレイクにペナルティーからのタッチキックで終盤を盛り上げました。この4人は前回のW杯も経験していて、もうベテランという見方ですね。だからこそチームを勝利に導くようなプレーを常に期待してしまいます。

https://twitter.com/RugbyPass_JP/status/1825372762594222363
試合後の津久井選手と吉村選手の振り返りコメント、直接こういうのが見れるのは良いなと

次にセンターですが、この日先発出場した弘津選手はアタックの起点づくりというか、ボールを持つたびに相手DFに仕掛けて前に出ていました。チームに与えられた役割だったかもしれませんが、良い働きだったと思います。13番アウトCTBに入った古田選手は12番で出ることもあり、日本のCTBとして欠かせない選手ですが、この試合のパフォーマンスは本当に良かったです。狙いすましたタックルに歓声が起こったり、ボールキャリーでは相手DFをずらして前に出ていました。細かなハンドリングエラーもありましたが、BKラインに古田選手がいることで安定感が増すと思います。そして後半途中で出場した小林選手も素早く出るタックルで存在感あるプレーを見せてくれました。英国プレミアシップでも活躍する小林選手がリザーブにいるのは、コーチ側としては流れを変えられる選手という期待もありますね。第1戦で畑田選手が負傷し、チームから離脱したのは残念ですが、秋の強豪国との戦いではこのCTBがアタックのラインを引っ張ってトライにつながる活躍を見せてほしいです。

最後にBK3、前回のブログでも触れましたが3選手ともにキックを蹴れるのは、ほかの国の代表チームでもあまりいないのではないでしょうか(その分、爆発的なランで活躍する選手がいますが)。特に松村選手のキックオフはチェイスに十分な高さとコントロールがあり、これまでの日本代表の中でもセブンズ含めて一番だなと思いました。また試合を重ねるにつれてポジショニングも良くなり、相手キックへの対処、カウンターもますます良くなっている印象です。いまBK3のリザーブは置いていないのはこの3人への信頼度の高さもあるかもしれません。そしてCTBと同様、秋の海外遠征ではこのBK3がしっかり走り込んでボールを貰いラインブレイクを増やしていかないといけません。BKラインの成長が日本の得点力を高めて、敵陣G前に攻め込んだチャンスでスコアに繋げられると思います。