関東女子大会OTOWAカップ第2節

12月に入ってから、2回目のブログになります。2週間前の第1節を終えてから振り返りのブログを書くつもりが、更新できずに第2節になりました。前節の試合については、関東協会のYoutubeチャンネルにハイライト動画がUPされています。昨年は無観客開催となり女子ラグビーのファンの方々に選手のプレーを見せる機会がほとんどありませんでしたが、今年は会場によっては有観客で行われています。

私が現地で見た試合、単独チームになった東京山九フェニックスが快勝しました

第1節の東京山九フェニックスとPTS立正の試合を簡単に振り返ると、前半にフェニックスが5トライを奪いましたが、ワイドに素早くボールを動かして、PTS立正を振り回していました。前半はほとんどがフェニックスのアタックの時間帯で、PTS立正は自陣でDFするばかりでチャンスを作れず。後半は慣れてきたPTS立正が交代で入った日本代表の阿部選手、長田選手らの奮闘もあり、敵陣G前まで攻め込んで1トライを返しますが、フェニックスはラインアウトからモールを押しこんで2番塩崎選手がトライを奪うなど2トライを追加し、快勝しました。スコアは離れましたが、初戦を迎えた時点でチームの完成度の差が現れていましたね。

第1節の勝者通しの対決は予想以上にアルテミスターズが快勝

そして今日26日、全国各地でかなりの冷え込みになる中、横河武蔵野アルテミスターズとRKUグレースの試合が、茨城県の流通経済大学第2ラグビー場で行われました。

第1節では日体大に勝利したアルテミスターズ、ラインブレイクから一気に走り抜けたり、見事なトライが多かったです

第1節はRKUグレースがBRAVE LOUVEに大勝、アルテミスターズが日体大に大量リードから2点差まで追い上げられるも逃げきってそれぞれ勝利しています。お互い相手を研究した上での試合は接戦になるかと予想していました。今回アルテミスターズの兄弟チーム、アトラスターズのYoutubeチャンネルで試合の配信があったので、自宅で観戦出来ました。

風のぶつかる音が聞こえ、アシスタントレフリーのフラッグもかなりの勢いで揺れていました。天気は良かったですが、少し難しいコンディションだったと思います。ラインアウトではスローイングが風に流されてノットストレートになる場面も多かったです。

それでも両チームともに自陣から積極的にボールを動かしていました。アルテミスターズは9番津久井、10番高木のHB団が上手く試合をコントロール、鋭いパスから味方の選手を前に出し、敵陣に入ってチャンスを作ります。敵陣中央スクラムからFKを奪いクイックで攻め込むと、前半8分に14番名倉選手が右隅に飛び込み先制のトライ。その後も接点の攻防でも前に出る場面が多く、優位に経ちました。グレースもDFの素早い寄りからジャッカルを決める場面もありましたが、試合が進むにつれてアルテミスターズの勢いがゲームを支配していきました。0-17で迎えた前半27分にグレースが13番内海選手がラインブレイクし、40m独走トライを返すも、前半の終盤に2トライを加えたアルテミスターズが前半だけで5トライを奪い、27-7でリードしてハーフタイム。

後半はサイドが変わり、風向きがどう影響するか注目していました。開始から風上に立ったRKUグレースが敵陣22mに入り、トライチャンスを作りましたが、アルテミスターズが何とか守り切りました。この開始10分の攻防が勝敗を決めた印象です。グレースは前半に比べてアタックする機会は増えましたが、ハンドリングエラーや反則が目立ち、最後まで試合の流れを掴めませんでした。

アルテミスターズは後半13分に突き放すトライを奪い、その後もDFでも前に出る場面が多かったです。グレースは後半23分にエリア中盤から内海選手がラインブレイクし、G前まで一気に進んで2トライ目を奪いますが、反撃はその1トライのみ。後半36分にはアルテミが敵陣22mでのラックから9番津久井が少し持ち出すと、まっすぐ走りこんできた7番小西に繋いで裏に抜けると、サポートに走った2番の選手がダメ押しのトライ。最終スコアは37-14でアルテミスターズがグレースに快勝しました。

改めて試合を見直しましたが、日本代表サクラフィフティーンの選手の活躍が目立ちました。アルテミスターズはHB以外にも1番南選手、3番ラベマイ選手を軸にスクラム、FW周辺のDFでも優位に経ちました。また14番名倉選手のボールキャリーも流石でしたね。グレースは10番大塚選手が得意のキックを使う場面があまり多くなかったです。ペナルティーからのタッチキックはもしかしたら意図的にノータッチを狙っていたかもしれませんね。また13番内海選手は再三のラインブレイクを見せていました。怪我で春からの代表合宿には呼ばれていませんが、次の試合でもあのランでチームを引っ張ることが出来れば、また呼ばれると思います。

また別会場の府中朝日フットボールパークの2試合は、日体大がBRAVE LOUVEに、PTS立正がYOKOHAMA TKMや国際武道大学、弘前オーバルズなどの合同チームに、それぞれ勝利しました。第2節を終えて、予選で2勝したアルテミスターズは、全国選手権をかけたプレーオフへの進出がほぼ決定。またPTS立正は1勝1敗で一足早く、予選での試合を終えましたが、2位でプレーオフに進出する可能性が高そうですね。

今日は女子以外にも大学選手権の準々決勝や、東京で中学生の全国ジュニア選抜大会が行われていました。そして明日からは高校ラグビー、花園が開幕します。年末、ラグビーの話題が増えてきますね。先週、女子の関西大会も三重PEARLSの優勝で幕を閉じましたが、また試合はチェックできていませんし、年内にもう1回はブログを更新できればと思います。

サクラセブンズ、ドバイ大会を制してW杯予選突破

12日金曜と13日土曜の2日間で行われたアジアセブンズシリーズドバイ大会、昨年はシリーズが全て中止になり、久しぶりのシリーズ大会でした。東京五輪で5戦5敗、最下位の12位に終わり、再起をかけたサクラセブンズは五輪メンバー、落選メンバー、新戦力がかみ合って、準決勝の香港戦では29-0と完勝し、W杯出場を決めました。そして決勝の相手はライバル中国、五輪では完敗した相手に14-12と競り勝って、見事ドバイ大会を制しました。

日本協会HPにある大会登録メンバーはこちら。東京五輪のメンバーが7名、セレクションで落選するも復帰したメンバーが中村、小笹、三枝、香川の4名、そしてデビュー大会の須田(追手門学院大)の12名。そしてドバイ大会では先発メンバーはほぼ固定、香港戦ではFWに梶木、中村、三枝、SHに平野、BKは須田、大谷、堤という7人でした。開始のキックオフをミスしてDFから始まるも、相手のBKへ素早く前に出てプレッシャーをかけ続け、1分30秒近く反則せずに相手のミスを誘うと、そこを起点にプレーを止めることなく継続して先制トライ。

その後も香港のアタックに連携の取れたDFでラインブレイクを許さず、アタックでは平野、須田が上手くペースをコントロール。梶木がDFのギャップをついて縦に抜け出したり、エースの堤が外を抜けて独走したり、様々パターンでトライを重ねました。五輪では相手DFの裏を狙うキックを用いたプレーもありましたが、この大会では同じアジアのライバルを相手に、しっかりキープして仕掛け続けることを意識していたのかもしれません。得点の通り、見ていて余裕を感じさせるような試合でした。

https://twitter.com/JRFUMedia/status/1463119083331670022
予選から危なげない戦いでW杯出場を決めたサクラセブンズ、慌てることなく自信をもってプレーしているのが伝わってきました

迎えた決勝戦の相手は中国、高さ対策かFWは香港戦で先制トライを奪った三枝に代わってサイズのある小笹が先発メンバー入り、それ以外の6人は香港戦と同じメンバーで挑みました。最初のキックオフでノット10mから中国にアタック機会を与えると、そのまま継続されてG前に攻め込まれ、先制トライを与えてしまいました。いい立ち上がりではなかったですが、中国の深く広いラインに対して、素早く前に出つつも左右の連携を保ち、大きく速い相手に慌てずチームとしてどうDFするか統一されているのが見れました。そして中国が先制トライから難しくない位置からのキックを失敗し、この2点差が最後の結果に表れました。

日本は次のキックオフをキャッチすると、中国DFと上手く間合いを取ってキープすると、自陣22m内で素早く展開。外にいた堤が仕掛けて大谷に繋ぎ、カバーのDFに捕まるも再び堤に繋いで裏に抜けると、後ろにいたスイーパーをステップでかわし、およそ70mを独走し逆転。さらに次のキックオフでプレッシャーをかけて、相手のスローフォワードを誘うと敵陣22mスクラムから、中国DFの位置をよく見ていた平野がスクラムから持ち出してそのままポスト下にトライ。トライを奪われた後の大事な時間帯の2分で連続トライを奪えたことで、チャレンジャーの立場の日本が落ち着きを取り戻した好プレーでした。相手DFに粘らせることなくあっさりトライしたのも良かったですね。

そして2点リードで迎えた後半の大事な立ち上がり、中国のキックオフが10m付近に高く上がった場面で、梶木が中村を1人リフトして相手より先に触り、ボールをキープしました。このプレー、素晴らしいですね。後半はずっと日本の陣地でのプレーが続き苦しい展開でしたが、東京五輪の時と違ったのは自分たちの反則から相手にボールを与えて、あっさりトライを許すことがなかったです。ノッコンやスローフォワードのミスはありましたが、相手のアタックにしっかりプレッシャーをかけてミスを誘っていました。特に中村選手の必死に内から追いかける姿が目立ちました。それと大事なラインアウトで大きな中国を相手に、ダミーを交えてしっかりキープしたのも良かったです。ここは先日のサクラフィフティーンの試合と大きく違うところで、セットプレーが計算できるというのは、選手に落ち着く機会を与えてくれます。後半は両チームともノースコア、日本が逃げきったというより中国にミスが多かったです。それでも相手を2トライに抑えたDFは素晴らしかったですし、ナイターで照明もそこまで明るくなかった影響もあるかもですね。

https://twitter.com/RugYume/status/1463062018391379968
キャプテンを務めた平野優芽、東京五輪では出場時間が限られていましたが、ドバイ大会ではキープレーヤーとして期待以上の活躍を見せました

東京五輪で完敗した中国を相手に、短い準備期間で立て直し、自分たちの目指すラグビーをやり切って2点差での勝利。来年のW杯出場を決めて、良いスタートが切れました。今後は国内での合宿が続くと思いますが、世界レベルを目指して、引き続き強化を進めてほしいですね。

男子セブンズは準決勝で韓国に敗れて残念な結果に

そして男子セブンズ、準決勝で東京五輪で快勝した韓国を相手に、いいところがない試合展開で後半残り1分を切ってトライを奪われ、最後のアタックでもミスをして14-21で負け。W杯の連続出場が途切れてしまいました。東京五輪と大きくメンバーが変わる中、W杯出場をかけた大事な試合で動きがあまり良くなかったです。代表デビューの選手も多かったようで、想像以上に緊張やプレッシャーがあったのかもしれませんが、言い訳のしようがない内容でした。

男子も女子も11月は国際試合が続くテストマッチ月間でしたが、先週末でほぼ終わりました。どのカテゴリーも厳しい試合が続いた中、サクラセブンズの勝利という結果が明るいニュースとなりました。国内では関西大会も始まり、来月には関東大会も始まります。女子ラグビーから明るい話題を届けられるように、これからの頑張りに期待します。頑張れサクラ!!

惜敗したアイルランド戦のレビュー

土曜は男女の15人制の試合とセブンズの試合が重なり、日本代表を応援する夜でした。結果として勝ったのは女子セブンズのみ、他のカテゴリーは勝利できず、悔しい結果となりましたが、1年前には男子のヨーロッパ遠征も中止にせざるを得なかったので、新型コロナの猛威を乗り越えて、ようやくここまで戻ってきたという気持ちもありますね。マイナスから0に戻ったというか、ここからどう積み上げて勝てるようにするかですね。

試合前のコイントスでしょうか、日本はリザーブも南主将。写真はJRFUのTwitterから拝借。

サクラフィフティーンの相手はアイルランド。前の試合で世界ランク6位で格上の米国を破り絶好調のアイルランド。日本は前半に2トライを奪い、優位に進めるも、後半はホームのアイルランドが勢いを取り戻し、強力なFW陣が2トライを奪い返して、12-15で負けてしまいました。日本はこの遠征の3試合で一番良い出来と感じた分、悔しい負けですね。日本協会HPのアイルランド戦後のコメントはこちら。個人的には南主将のコメントにとても共感します。それとラグビーリパブリックの振り返り記事はこちら、マッケンジーHC「苦い経験も収穫」

https://twitter.com/JRFUMedia/status/1462100006220058630
前半2トライを奪ってリードして折り返したものの、後半に無得点なのは2017年W杯の予選プールと同じ結果ですが、内容は良かったです

勝てる可能性を大いに感じさせながら後半に得点を奪えず惜敗

https://twitter.com/JRFUMedia/status/1461348980852363265
アイルランド戦の登録メンバー、南主将がリザーブに回ったり、5番LOに立正大学の吉村選手が先発出場で代表デビューとなりました

遠征最終戦についてレビューしながら、色々と振り返り思ったことは短く書いていこうと思います。まず試合登録メンバー、強力なスクラムを持つアイルランドを相手に、これまでスクラムをリードしてきた南主将をリザーブに入れたのはちょっと疑問です。まだ代表デビューの吉村選手よりも前の試合でも出場した北野選手を先発に入れるべきではと思いました。リザーブにはFW6名を並べましたが、期待していたインパクトプレーヤーのライテ選手はメンバー外。BKはSHの阿部選手とSOの山本選手で他のポジションをカバーするにはなかなか厳しいのかなと思います。今後はユーティリティープレーヤーが求められるかもしれません。

試合について、協会HPの詳細はこちら。前半は攻め込まれた6分にボールを奪い返して自陣から脱出しようとしたキックでオフサイドを取られ簡単にアイルランドにPGで先制されました。しかしホームのアイルランドに対して日本のDFの素早いプレッシャーを受けて、外のスペースに展開するもノッコンやパスミスが目立ち、勢いを掴めず。日本は相手のペナルティーからSH津久井選手が積極的にクイックを仕掛け、サポート選手も加わり、オフロードを売内で大きく前に出る場面も。キックは避けて、コンタクトを重ねて継続して攻め込みます。

前のスコットランド戦はメンバー外だった庵奥選手、この試合では先制トライの場面にも絡むなど、素晴らしいプレーを見せました。写真はJRFUのTwitterから拝借。

アイルランドは自陣でボールを奪うとキックで前に進もうとしますが、FB庵奥選手が素晴らしいキックレシーブから敵陣に攻めこむなど、中盤から前でプレーする時間帯が多かったです。そんな中で前半17分に敵陣ラインアウトからのアタックで倒されたCTB小林選手が素早く起き上がって裏に抜け出すと、サポートに寄ったFB庵奥選手、CTB古田選手と繋がり逆転のトライ。DFもしつこく動き回り、アイルランドには得点チャンスを作らせず、前半29分には相手のNo.8が顎への危険なタックルでレッドカードとなり14人になりました。そんな中でFW陣がDFラインを突破し、G前に攻め込んで、ラックサイドをしつこく攻めると、37分にFL齊藤選手が飛び込み逆転トライ、トライ後のキックも決まって12-3とリード。そのあとのキックオフからも、FWが自陣22m付近のラックからオフロードでつないで抜け出しNo.8永井選手が独走し、あわやトライというチャンス場面を作るなど、自分たちのラグビーを見せる時間帯が多い前半でした。

逆転トライを奪った古田選手を祝福する庵奥選手、写真はJRFUのTwitterから拝借。

9点リードで迎えた後半の立ち上がり、アイルランドがG前に攻め込んでプレッシャーをかけてくると、日本は4分にキックチャージからトライを返されます。この場面、スクラムでプレッシャーを受けて、フロントローがラックへの動きが遅れ、アイルランドDFへの壁を作れずに、キッカーの小林選手へのコースを開けてしまったのが原因で、防げた場面でした。遠征中、立ち上がりに勢いに乗れずにいた悪い部分が出たのと、これをきっかけにアイルランドが逆転へ向けてスイッチが入ります。前半のミスを修正し、シンプルに接点で前に出るようになったのと、ホームの声援を受けて、アタックに勢い、モメンタムが出てきました。日本は受ける時間帯が多く、前半のように敵陣でアタックする時間がなかなか作れず、体力を奪われたかもしれません。

日本は遠征中、不安だったラインアウトでミスが目立ち、ゲーム展開に大きく影響しました

そして一番の誤算は前後半共にラインアウトでミスばかりが続き、ゲームの展開を作れなかったこと。試合映像を見直してみましたが、15本のマイボールのうち、キープしてアタックできたのは半分以下。それもキャッチミスだったり、低いボールをタップしたりで、クリーンキャッチは0でした。正直テストマッチレベルに関係なく、これでは勝てません。逆転を狙った後半に敵陣に攻め込んで反則を獲得した位置は、PGを選択して同点も狙える位置。タッチからG前ラインアウトでモールのオプションもあったかもしれませんが、結局タップキックから攻め込むしかありませんでした。人数を少なくしたり、工夫してキープするオプションがあったのかわかりませんが、スローイングだけでなく、LOの佐藤選手、櫻井選手の不在も影響したのかもしれません。ラインアウトコーチとしてサクラフィフティーンOGの中嶋さんがいますが、今後に活かして欲しいです。セットプレーの安定は強豪に勝つための必須条件なので。

日本な終盤に敵陣に攻め込むチャンスを作りましたが、G前のラック脇を攻め込んだ選手がダブルモーションを取られたり、ノータイムからのアタックでもタックルを受けて耐えられずに倒れたところのサポートが遅れて、ノットリリースを取られるなど、3点差を追いかける展開で得点を取り切ることが出来ませんでした。アタックの戦術、オプションが少ないのも、この遠征で感じたことです。遠征3試合で奪ったトライは5つ、そのうち4つはG前に攻め込み、FW陣がラックサイドへのアタックを続けてもぎ取ったトライでした。BKが1次攻撃のサインプレーで抜け出す場面もなかったです。戦術を整理し、オプションを多く準備することで、G前に攻め込んだ時に、良い判断が出来て、日本らしい展開ラグビーからのトライを奪う場面が見たいですね(ただ凄く時間がかかることですし、指導できるアタックコーチがいるかどうか…)

後半になかなか得点チャンスが作れない中、3点リードしているアイルランドが簡単なPGを失敗した場面もあり、本当に勝てる可能性が大いにあった試合でした。良い経験だった、良い試合だった、で済ますにはもったいないというか、14人になった相手に逆転されて、勝ちを逃したと選手、スタッフは感じているのではないでしょうか。これがもしW杯の予選プールだったら、PGを狙って同点にするという選択肢もあったかもしれません。いずれにせよ、得点力を上げていかないと、今後も良い試合までで終わってしまうかもしれません。

遠征3試合を振り返れば、どれも世界ランクが格上で戦い方も似たような相手に対し、通用した部分と通用しなかった部分がはっきりしました。W杯まで1年を切り、どれだけテストマッチの機会を作れるかはわかりませんが、まずは引き続き個々のスキルアップ、サイズアップを続けていかないといけません。テストマッチのゲーム強度に慣れることで良くなる部分もありまが、男子と同様に女子でも国内の試合では正直難しいです。英プレミアでプレーする加藤、小林、山本の3名はこの遠征中、本当に活躍が目立った選手に入りますが、本当に今後ベスト8入りを目指すなら、海外で毎週のように試合をしてタフになる選手がもう少し出てこないと厳しいかもしれませんね。

最後にWorldRugbyのHPにある他の国の試合結果を見ると、予選プールで日本と戦う米国は連勝を続けるイングランドに0-89と完敗。カナダは2週間前に日本に勝ったウェールズを相手に、24-7と逆転勝利しています。同じプールのイタリアはW杯予選をホームで戦い抜いたからか、テストマッチは行っていませんね。それとフランスがNZに29-7で勝利するなど、ヨーロッパ勢の強さが目立ちますね。

サクラセブンズは東京五輪で完敗した中国に14-12で勝利し、アジア予選1位でW杯出場を決めました。素晴らしいですね。試合映像を見直して、ブログで振り返り出来ればと思います。サクラはフィフティーンもセブンズもここから来年に向けてますます強化を進めないとです。

日曜のスコットランド戦のレビュー

日曜深夜に行われたスコットランド戦、協会SNSでのライブ中継は試合開始から見れませんでしたが、前半終了間際に12-10と逆転するも、後半は4トライを奪われて、12-36で敗れました。日本協会HPにある試合後のレスリーHCや選手のコメントはこちら。またキックオフ前にラグビージャーナリストの大友さんが2年前の試合メンバーやキャップ数を比較をしてくれていました。貴重ですね。先発メンバーの総キャップ数が100に満たない日本と、450を超えるスコットランド・・・10年あっても埋まらないですね、近隣に定期的に戦えるライバルがいないのは残念。いつぞやの男子のパシフィックリム的な大会を女子で・・・実現は難しいか。

試合を振り返る前に、佐藤優奈選手が前半にレッドカードを貰った危険なタックルについて。ラグビー元日本代表の大西さんが動画を引用ツイートする形でコメントしていました。優奈とは前にお話ししたこともあります。とても真面目な子なので、すごく反省していると思うのですが、ここから学んで、素晴らしいプレーヤーに成長してくれると思います。

大西さんは男子の解説でお忙しい中、女子ラグビーの話題も触れてくれます、ありがたい。

SNSのコメントでは厳しい判定だとか、前半の終わりに抜け出した齊藤聖奈選手を追いかけたスコットランドのタックルもハイタックルじゃないか、などといったコメントがありました。TMOでの判定はレフリングの判定基準に合わせる形でレフリーとテレビマッチオフィシャルが相談して決めています。そして首から上への直接的なコンタクトプレーについては、大怪我の可能性もあるため、故意かどうかは関係なく厳しい裁定になっています。齊藤選手へのタックル場面については、個人的な意見として、追いかけている状況でインゴールに抑えようと齊藤選手が低くなったために結果的に高くなった印象で、危険なタックルには見えませんでした(もちろんトライを防いだ素晴らしいタックルです)。

また試合展開についてはRUGBYJAPAN 365の記事に素晴らしいまとめがあるので、リンクを載せておきます ⇒ 「欧州遠征第2戦・スコットランドに敗れるも戦う姿勢は崩さず、勝利にこだわり最終戦に向かう」

ウェールズ戦の課題を修正して良い戦いを見せた日本

前回のブログでプレビューを書いたときに、スコットランド対策として、相手10番のキックからいかに攻めるか、という話をしましたが、日本はBK3に加えて両CTBも素早く戻って対応して、仕掛けるアタックが出来ていました。また強みであるラインアウトモールの対策として、あえて入らずに見ることでオブストラクションを誘う賢い判断もありました。ただ大事な立ち上がり、開始から10分の攻防でアタックを継続するもラックでプレッシャーを受けてターンオーバーされたり、11分のスコットランドの先制トライはDFのギャップに仕掛けた相手にオフロードを繋がれて、ラインブレイクされて、外にいたBKが内側に寄った外のスペースへ展開されて、14番に走られました。

またこの試合でもアタックで倒れた選手へのサポートが遅れて、ノットリリースを取られる場面が目立ちました。ただ前半は、ミスもありましたが、スコットランドとの攻防で日本のDFが素早く絡んで反則を奪う場面もありました。そして最後の10分は、相手のアタックをDFがしっかり止め続けて、ミスからチャンスを作ってG前まで攻め込み、1人少ないFW陣がラックサイドを押し込んで2トライを奪い、自分たちの目指すラグビーを見せて逆転しました。

試合を見ながらハーフタイムで呟いた後半の注目点、立ち上がりに自陣での攻防が長く続き、2トライを奪われて、相手に余裕を持たせてしまい、チャンスを作れず。

迎えた後半、スコットランドのキックオフをしっかりキャッチし、自陣での攻防が続くなか、人数優位のスコットランドが外の14番へ上手く運び、敵陣22mに入ると、バックドアなど細かいパスをつないでDFの的を絞らせず、サイドは外で1対1の状況を作って逆転のトライ。そして日本は相手の反則から敵陣22mでのラインアウトを得ますが、そこでのミスから一気に攻め込まれてトライを奪われました。後半の立ち上がりの攻防で5点差を追いかける展開になり、ペースを掴みたい中で個人のミスが連続してあっさり2トライ目を奪われたのが痛かったです。ミスをカバーできる余裕がなかったのかもしれません。

その後も自陣での攻防が続き、なかなか敵陣深くに攻め込むことは出来ませんでしたが、ウェールズ戦に比べると、アタックでは短いパスを上手く交えてオプションを用意したり、フェイズを重ねてもボールをキープし続けることが出来ていました。どこかで上手く仕掛けて、ラインブレイクから22mに攻め込んでチャンスを作れたら良いのですが、そこまではたどり着けず。アタック面では修正できた部分が多かったですが、一方でBKラインでトライチャンスを作れていないのが気になります。この2試合、数少ないチャンスでFWが合わせて3トライを取っていますが、DFの人数を減らして外に展開して飛び込むような場面がありません。ただテンポ良く攻め込むアタックでは、前には出れても、ラインブレイクが出来ないのが現状なのかもしれませんし、次のアイルランド戦ではBKのアタックにもっと注目したいですね。

振り返ると全体的に前回からの修正がわかる場面も多く、スコットランドに勝つための準備をしてきたのだと思います。それでも60分を14人で戦うというこれまでにない状況の中で、勝敗を見ればスコアが示す通りの内容だったなと思います。SNSにあるファンの方々はサクラフィフティーンの奮闘に良いコメントが見られます。2年ぶりのヨーロッパ遠征で強豪相手にしつこく食らいつくプレーを見せている一方で、アタックでは相手の長い手に絡まれてのノットリリースや、競った展開での連続したミスなど、海外の強豪国との戦う中でのプレッシャーを乗り越えるにはまだ経験が足りないのかなと。アタックでは慌てず、テンポをコントロールして継続することで、日本が目指す展開に持ち込められないかなと思いました。

あと気になったのはキックの使い方ですかね。自陣からの脱出、DFの部分は良くなっていますが、敵陣のアタックでは裏に転がす無理なキックが目立ちます。もしかしたらオプションがない中で、キックしかないという判断かもしれませんが、もう少しチェイスのタイミング含め、改善できると思いました。今のサクラフィフティーンがヨーロッパ勢とのテストマッチに勝利するなた、相手を3トライ以下に抑えて、何とか3トライ以上奪うようなロースコアの展開になるかと思います。残り1試合、米国を倒して上向きのアイルランドを相手に、選手の多くは2017年W杯での逆転負けを思い出しているでしょう。タフな遠征の中で、怪我人なども出ていますが、次のアイルランド戦ではさらに良い戦いを見せてほしいですね。

ウェールズ戦のレビューをしてみた

昨日の深夜に行われた日本女子代表サクラフィフティーンとウェールズ女子のテストマッチ、結果はご存じだと思いますが、5-23(前半0-11)で負け。日本はアウェーの中、所々で良いプレーを見せてチャンスを作るも、スコアは終盤に1トライを返すのがやっとでした。日本協会HPにあるウェールズ戦後のコメントはこちら

https://twitter.com/WelshRugbyUnion/status/1457496098323542019
両チームが入場する直前には花火や煙など会場を盛り上げる演出が素晴らしかったですね

前後半共に立ち上がりの大事な時間帯でミスが目立ち苦しい展開に

サクラフィフティーンの試合メンバー、玉井選手のTwitterから拝借。スクラム重視のメンバーと感じました

昨日はライブで観戦しながら、Twitterで気づいたことを呟いていました。色々と振り返ると長くなりそうなので、勝敗のキーポイントに絞って、整理できればと思います。前半、ウェールズのキックオフから始まりましたが、大事な1stアタックでプレッシャーを受けてペナルティー、そこからラインアウトのモールを押し込まれ、開始わずか1:25でトライを奪われました。

2年ぶりのテストマッチとはいえ、チャレンジャーの立ち上がりとしては最悪ですね。この立ち上がりに慌てず、先手を仕掛けて、何フェイズか継続して、敵陣に入るなり出来れば違った展開になったと思います。その後もアタックでキックをチャージされたり、ラインアウトでのミスもあり、10分間はほぼ自陣でのDFの時間帯となりましたが、粘り強く守りました。ウェールズの攻撃のオプションがあまりないのは、事前に予想していた通りで、むしろオフロードを狙ってくる場面もありましたが、全体的には裏へのキックの対処含め、意図するDFが出来ていたと感じました(ナイターという状況で落球する場面もありましたが)。

11点差を追いかける後半の立ち上がりについては、日本のキックオフから相手のミスもありボールを奪うと、アタックでフェイズを重ねたり、裏へのキックを使って前に出てプレッシャーをかけていました。ウェールズのアタックもしっかり止めて敵陣に攻め込むと、後半6分過ぎにウェールズ6番の選手がパスで浮いたボールを叩き落したためにシンビンになり、追い上げるチャンス。しかしG前のラインアウトでモールを組んだところ、ウェールズの選手に絡まれ失敗。その後もミスが目立ち、後半12分に自陣22m内でのアタックで落とした球をセービングされると、そこからウェールズの15番のJoyce選手にトライを奪われてしまいました。

https://twitter.com/WelshRugbyUnion/status/1457419412030599172
事前の試合映像を見ても警戒する選手だった15番Joyce選手、線は細いですがステップはキレキレの良いランナーでした

ここでシンビンの間に得点差を詰めたい状況から、一転して拡げられて18点差となり、苦しい状況に追い込んでしまいましたね。Joyce選手は後半32分にもトライを追加し、この試合のPlayer of the Matchに選ばれました。このトライも自陣でのアタックでのパスミスから、ボールを落としたのをセービングされて奪われたのがきっかけでした。奪われた3トライを振り返ると、DFを崩されたというよりは、テストマッチのプレッシャーの中で、自分たちのミスから失点に繋げてしまいました。こういう展開では、選手が奮闘して良い試合はできても、勝つのは正直、厳しいですね。コメント欄を見ても、女子ラグビーファンから健闘を称えるようなコメントが多かったです。ただ男子も過去にそうだったように、善戦するのが精いっぱいで勝ち切るだけの実力はまだないのかもしれません。そしてここを乗り越えないと、来年のW杯のベスト8進出(予選プールで米国、カナダ、イタリアを相手に勝利)も見えてきません。

スタッツは互角に戦えていても、中身はどうだったか

斉藤健仁さんがスタッツを紹介してくれていて、一方で課題はセットと決定力というのも示してくれていました。本当にその通りで、遠征前からもまずはセットプレーである程度戦えないと厳しい試合になるなと予想していました。試合を振り返れば大事な場面でミスが目立ったのは、チャレンジャーの日本。スクラムに関しては、反則を取られる場面もありましたが、相手が交代した直後だったり、早めに仕掛けてきたようにも見えました。逆に反則を奪った場面もあり、決して対応できないほどの差があったとは思えません。後半に点差がついてウェールズにも余裕が出てきた中で、前に出る場面が増えましたが、前半からそういう場面を作れないと、トータルのスタッツでは上回っていても、勝負には勝てないですね。

決定力に関しては、世界ランク上位の国と比べると、明らかにBKのスピードには差があります。キャリーやメーターで上回っていても、ウェールズのJoyce選手のようにチャンスで取り切る選手がいなかったですね。日本はこの試合、11番名倉選手や13番古田選手のボールキャリーが目立ちました。後半に追いかける状況で、アタックのオプションがあまりなく、ウェールズのDFはFW経由含めた2パス目やラインの後ろにセットした選手を明らかに狙っていて、外のスペースに素早くボールを運んでチャンスを作る場面があまりなかったです。DF裏へのキックを外でチェイスした選手が再獲得して前に出る場面もありました。日本は攻め方のオプションを幾つか用意し、DFのポジショニングなど状況を見て、チームで良いオプションを選べるようにならないといけません。むしろラインブレイクしたのは、倒されてからラックになる前にすぐに立ち上がって前に抜け出したりした場面ですね。これは2年前のスコットランド戦でも小西選手がチャンスを作っていましたし、海外のチームはあまりやらないので、今後の試合でもチャンスがありそうです。

個人的には世界ランクが上の相手とは言え、個人個人の実力差はあまり離れていないと感じるで、来年のW杯でのベスト8を目指すなら善戦をしたところで結果がすべて、というスタンスで見ています。日本に勝利したウェールズはこの後、南アフリカ、カナダとの試合を控えています。来年のW杯の予選プールで日本と戦うカナダとどんな試合を見せるのか、注目ですね。そのカナダは米国相手に2連勝して好調です。試合映像はYoutubeにあるので、近いうちに見てみたいと思います。日本は来週にスコットランド、次にアイルランドとウェールズと同様に強い相手とのテストマッチが控えています。戦い方はウェールズと似ていると思いますが、1週間でどう準備するか。ともに注意すべき選手は事前の試合映像で分かっているので、まずはウェールズ戦で出た課題、アタックでのオプションを整理して、接点でボールをしっかりキープし、動かし続けること、そして立ち上がりから慌てず、仕掛けていって、自分たちの展開に持っていけるかですね。

また長文になってしまいました。個人個人について詳しくは書きませんが試合後に呟いた通り、よいプレーを見せた選手もたくさんいました。特に後半に出てきた加藤さん、小林さんの英エクセター・チーフスのコンビはいい活躍をしていましたね。次のスコットランド戦ではDFで激しさやしつこさで目立つ選手が出てきてほしいですね。またライブ中継があるのを期待して、応援していきます。