関東学院六浦が全国U18女子セブンズ初優勝

先週末に熊谷で行われた高校女子の全国大会、昨年から続くコロナ禍の影響でコベルコカップや花園での試合が中止となり、高校女子にとっては唯一の全国大会となりました(夏のオッペンカップはオープン参加のため外してます)。昨年は惜しくも準優勝だった関東学院六浦が決勝戦で石見智翠館を17-7で破り、初優勝しました。日本協会HPの発表はこちら過去の大会も調べてみたら、関東学院六浦は3年連続で決勝に進出するも優勝できずにいたので、悲願の日本一でしたね。ラグビーリパブリックの記事も出たので、リンク張っておきます。
⇒『関東学院六浦、初の日本一。一丸の石見智翠館も力及ばず

六浦の勝因は日本一のDF、大会4試合で失トライは3のみ

悲願を達成した関東学院六浦、ここ数年は神奈川や大阪のスクールで活躍する選手が多数進学し、関東高校女子をリードするチームになりました。私は2019年のコベルコカップで2位になった関東女子代表にコーチングスタッフとして帯同していましたが、その時も六浦の選手が一番多く選ばれて主力として活躍していたと思いますし、今年の大会MVPの向来選手は1年生で選ばれていました。9月に行われたセブンズユースアカデミーのメンバーを見ても六浦からは向来、寺谷、西、松村、矢崎の5名が選ばれていますね。

石見智翠館との決勝は4:10:00過ぎから、堅い守りを見せ相手のノッコンから繋いで奪った先制トライはお見事

8月のオッペンカップでも麗澤、佐賀工業を破って優勝し、Bチームも4位と選手層も厚く、大会前から優勝候補だと思っていました。おそらく参加チームもターゲットにして、分析していたかもしれません。そんな六浦の初日、予選プールの初戦は緊張もあったのか、四国の鳴門渦潮を相手に前半を終えて5-0、そして後半3分にハイタックルでシンビンが出てしまい6人に。そこから鳴門渦潮が上手に繋いでG前まで攻め込みますが、必死に守り、最後は5番西選手が相手のインゴールノッコンを誘う激しいタックルを見せてターンオーバーしました。結局、最後の1プレーでトライを奪い、12-0と勝利しました。よく走る連携の取れたDFに、スコア以上に六浦の強さを感じる試合でした。

大会MVPは六浦の向来桜子選手でしたが、発表前からMVPとるかなと思っていました。圧倒的な運動量、攻守にわたっての躍動感あるプレー、そして激しいタックル。六浦が目指すラグビーを体現していると感じましたし、今後の更なる成長が楽しみですね。

六浦の監督の梅原先生は私と同い年で、以前から高校女子カテゴリーでお世話になっていたのでこの大会でも試合を見た後に連絡をしていましたが、この初戦の展開はさすがにドキドキだったそうです(笑) 六浦はこの苦しんだ初戦からしり上がりに調子を上げて優勝しましたが、大会4試合で失トライは3のみ、総得点は91でした。トーナメントを勝ち上がる強豪チームは、2019年W杯の南アフリカもそうですが、堅いDFを持っています。アタックではどうしてもミスが出がちですが、DFは防げるミスの割合が高いかと思います。そして六浦の選手は総じてタックルの強い選手が多い印象です。失トライの少なさについて書いたので、過去の大会を調べたところ3年前の第1回大会では優勝した石見智翠館が4試合で失トライ0で、総得点は158でした。これは凄い、圧倒的すぎますね・・・

初出場の麗澤が3位、プレートは追手門学院、ボウルは開志国際が優勝

関東学院六浦以外のチームを見ると、初出場の麗澤(千葉県柏市)が予選プールで関西1位の追手門学院を14-12と逆転勝利して1位通過すると、2日目の3位決定戦では佐賀工業を破って3位になりました。初日の追手門学院戦では、追いかける後半に相手の裏へのキックを拾った4番池崎選手が左のスペースを走り切って同点トライを奪うと、5mライン付近の難しい位置から5番原田選手が逆転のキックを決めました。その後もノータイムでもゲームを切らずに攻め続けるプレーが印象的でした。

予選プールで麗澤に惜しくも敗れた追手門学院はプレート戦の初戦で京都成章と10-10の同点になり抽選で決勝に進むと、PEARLSを相手に7-7の後半、自陣スクラムでSHの4番小西選手が持ち出すとそのままDFのギャップを駆け抜けて独走しトライを決めて勝利しました。またボウル戦優勝の開志国際は予選初日の第1試合目、佐賀工業を相手に前半を終えて12-7とリードするなど健闘していました。2日目のボウルトーナメントでは2試合とも6トライ以上を奪う大勝で、予選の組み合わせ次第ではもっと上位に行けるチームでしたね。総じて振り返れば、全国各地からユースアカデミーに選ばれている選手が、活躍を見せた2日間でした。

毎年、大会を見る度にレベルが向上したと感じますが、東北選抜や北海道選抜など下位のチームにも良いプレーを見せる選手がいました。強豪校のレベルが高いのはもちろんですが、それ以外の地域でも男子と一緒に練習したり、それぞれの環境で良い選手が増えているのを感じました。ユースレベルはStrong Girls 発掘プロジェクトや15人制TIDユースチームも始まりましたし、今後の成長が楽しみですね!!

女子日本代表はヨーロッパ遠征前の最終調整に入りました

そして来月にヨーロッパで3つのテストマッチが予定されているサクラフィフティーン、昨日26日から菅平での遠征直前合宿が始まっています。日本協会HPの発表はこちら遠征メンバーは週末に発表されるとのことですが、このメンバーを見るとFWに青山学院大4年の小西想羅がいないのが気になりますね。2年前のスコットランド戦、後半から出場し大活躍し、前回の菅平合宿の試合形式でもかなりアピールしていたみたいです。RugbyJapan365に掲載されていたレポートはこちら ⇒ 「豪州遠征へ白熱バトル!
この遠征メンバーの8割以上がおそらく来年のW杯に挑むことになるかと思います。個人的にはセブンズ代表メンバーは来月のアジア予選を突破すれば来年W杯を控えているため、15人制代表へのメンバー入りはかなり厳しいと思っています。

またヨーロッパ遠征にはイギリスでプレーする山本、小林、加藤の3名も招集されると思いますので、どんな試合メンバーになるのか、楽しみですね。また近くなってきたらブログに書きたいと思います。男子と共に頑張れ、サクラフィフティーン!頑張れ、日本!

来年のニュージーランドW杯予選の話

新型コロナの第5波もだいぶ落ち着いてきましたね。大学ラグビーのシーズンも開幕し、ラグビーの話題が増える季節になってきました。女子日本代表は今日から26日まで市原市で合宿を行っています。予定されていたアジア予選の直前合宿のスケジュールで、FW22名、BK18名参加メンバーはこちら、大学生以下のTIDは13名ですね。もし予選が行われるとして、実際の遠征メンバーの数は30数名くらいになりますかね。テストマッチも2年弱行われていないので、先発メンバーも予想がつきません(苦笑)

来月行われる予定だったアジア予選、Asia Rugbyのサイトのカレンダーを見ても開催時期が未定になっています。どうなるかさっぱりわかりませんが、先週末はU18女子のセブンズ大会がウズベキスタンで行われるなど、徐々に国際大会も行われているのは良い流れですね。

ヨーロッパ予選は最終日を前に4チームが1勝1敗で並ぶ大混戦・・・

https://twitter.com/rugbyworldcup/status/1439662561138552839
ラグビーの試合でリーグ戦の4チームが1勝1敗で並ぶのは本当に珍しいですね

19日の深夜に行われたヨーロッパ予選の第2節、第1節で負けていたアイルランド、スコットランドが勝利し、上にある画像の通り、大混戦です。試合のフル動画はWorld RugbyのYouTubeチャンネルで見れます。

19日のスペインとスコットランドの試合のハイライト、開始早々に先制トライをしたスペインが快勝するかと思っていましたが、予想外の展開になりました。
19日のイタリアとアイルランドのハイライト、ホームのイタリアを相手に初戦のスペイン戦に負けて後がないアイルランドが魂のラグビーを見せて15-7で勝利

予選1位が本大会出場を決め、2位が最終予選に回り、3位以下は予選敗退となります。そして1位のチームが来年のW杯で日本と同じ予選プールBに入るだけに注目です。最終予選もこのヨーロッパ予選と比べると格下が相手になると思います。得失点差で1位のイタリアですが、次の相手はスペイン。調べたら2017年のW杯で戦っていますね、日本は同じ日に11位決定戦で香港に勝利して11位でした。

2017年のアイルランドW杯では最終日の9位決定戦で激突、HTでは3-3の同点でしたが、後半に3トライを奪ったスペインが22-8で勝利しています

そして2位のアイルランドはスコットランドと対戦。他の2チームに比べると、スコットランドは実力が劣りますし、過去に6か国対抗で毎年のように試合をしているので、優位に進めるでしょう。19日のイタリア戦はDFの激しさでイタリアを圧倒し、魂を感じさせる素晴らしい試合でした。Twitterに2トライ目の場面がありましたが、11番の走りが良かったので紹介。いずれにせよ、25日の試合で勝った2チームがW杯出場すると見てよいので、負ければ予選敗退の地獄。ホーム開催のイタリアは難敵スペイン相手でも負けられませんね。

自陣でキックをキャッチした11番の選手がイタリアのDFを何人もかわしてビッグゲインすると、そのラックから展開してトライ。ゲームを優位に進めました。

2試合ともしっかりフルで見たわけではないですが、2017年のW杯の時と比べると、選手全体のサイズ感、フィジカルが大きく増している印象です。日本の選手たちも大きくなったと前にブログで話しましたが、ヨーロッパの国々も同じでした。特にスペイン以外は6か国対抗で強豪のイングランドやフランスと毎年のように戦っているので、強化もそこに注力せざるを得ないのでしょう。今年、日本の平野選手がスペインの国内リーグに挑戦していましたが、男子はあまり強くないのに女子はセブンズでもワールドシリーズのコアチームにいますし、15人制でもW杯の常連なので、どういう強化をしているのか気になりますね。

一方で細かなスキルはまだこれからというか、日本のほうが優れているようにも感じます。2017年のW杯でも感じましたが、スクラムやラインアウトのセットプレーで優位に立ち、接点の攻防で簡単にやられない、粘ってラインブレイクを防いでいければ、十分に勝つチャンスはありそうです。来年のW杯に向けて試験的ルールの「50-22ルール(?)」を上手く使ったキックの攻防を身につけること、あとは個々のタックル力をつけて、1対1の場面で捕まえる(大きく走らせない)ことが出来るかどうかですね。2019年の日本W杯の日本代表のようなイメージ、女子の選手たちも持っているのかもしれません。ヨーロッパに渡って、海外リーグに挑戦する選手も増えて、本当に良い流れは来ています。後は国内の試合の充実ですね(苦笑)

目指せベスト8!頑張れ、サクラフィフティーン!頑張ろう、日本!!

東京五輪の中国戦、ケニア戦を見逃し配信で振り返る

24日に東京パラリンピックの開会式が行われて、さっそく車いすラグビー日本代表が予選リーグを3戦3勝で1位通過して大会を盛り上げてくれていて嬉しいですね。一方で女子15人制日本代表候補は合同(強化+TID)合宿を岩手県釜石市で行っています。協会HPの合宿レポートはこちら。また釜石市でもSNSで積極的に情報発信していますね。私も昨年10月に釜石市を訪れる機会がありましたが、ラグビー関係者には特別な場所なんだなと感じました。合宿の話題については、週末にでも改めてブログに書きたいと思います。

東京五輪の振り返りを何度もブログで書きましたが、幾つかの媒体で新しいものが出ていましたね。結果はどうあれ、ここ5年間の目標としていた大会なので、たくさんの意見があって良いかと思います。今回はまだNHKスポーツのWebで見逃し配信があるので、4週間前の2試合を簡単に振り返ってみます。まず中国戦、見逃し配信のリンクはこちら(1:10:00過ぎから)

試合開始から中国のDFの圧力を受けて仕掛けられなかったサクラセブンズ

中国のキックオフで始まった前半、お互い大量得点を奪って3位で8強を狙う者同士の戦いは日本がしっかりキャッチするも、自陣22m内で外から内へパスを折り返したところで中国のタックルをしっかり受けてしまいそこから反則。そのペナルティーからわずか28秒で中国が先制のトライ。その次のキックオフでは梶木選手が平野選手を1人リフトでしっかりキャッチして攻めようとするも、外でボールを受けた白子選手が捕まってタッチに出されてピンチに。そこでのラインアウトから中国BKの選手のステップにDFが触れずポスト下にトライを許し、この時点で僅か2分30秒。その後の前半では攻撃権を得ると捕まるのを避けてDFの裏のスペースを狙ってボールを蹴るも確保はできず、またDFでも粘りを見せられず、1人のタックルミスから独走トライを許してしまう残念な展開で、前半は0-19。日本は敵陣でのアタックが出来ない苦しい展開の中で梶木選手のタックル、自陣G前でのジャッカルが目立ちました。

迎えた後半、中国選手の独走を原選手が追いかけてノッコンを誘いますが、その後のスクラムで交代で入った堤選手がスクラムから持ち出したところで中国選手が手をかけてターンオーバー。また自陣で相手にボールを奪われて、そこから相手の突進を止め切れずトライされました。一言で言えば、攻守に仕掛けて前に出る中国、プレッシャーを受けてやりたいラグビーが出来ない日本、ですね。日本の攻撃権からスタートするも、パスを繋いでいるうちにボールを奪われて、中国はそこからトライで終わる。仕掛ける選手が出てこないなか、後半に入ってきた選手が仕掛けていくと良い場面も出てきましたが、結局捕まるのを避けて裏へのキックを蹴っては継続できず。レフリーのジャッジもアンラッキーでしたが、攻守に前に出る中国の勢いに飲まれましたね。戦う準備が整っていたとは思えない試合、最後は後半残り1分に敵陣中央のペナルティーからクロスダミーでスピードに乗った相手を捕まえきれず、独走トライをされるなど、悔しい云々を感じないほどの完敗でした。キックを上手く使ったアタックを目指してきたと言いますが、ある程度仕掛けて相手DFを注目させたうえでキックを使うことでより友好的になりますが、この試合ではキック頼みのアタックにしか見えませんでした。DFでも中国の個々の選手が仕掛けに接点でやられて倒れる選手が多かったです。その中でジャッカルでボールを奪う場面もありましたが、プレッシャーをかけ続ける場面はなかったですね。そして次のケニア戦、見逃し配信のリンクはこちら(40:30過ぎから)

負けられないケニア戦、勝敗を分けたのは何だったのか

ケニアのキックオフで始まった前半、日差しが差し込む中でケニアにボールを奪われるも、そこから低いタックルで相手を倒すと山中選手がジャッカルに成功。クイックで仕掛けて敵陣に入ると、そこからアタックが左右に揺さぶり前に出て、ケニアからオフサイドの反則を誘い、最後は外の原選手がインゴールに飛びこんで5点先制。その後のキックオフでは相手を捕まえられず、追いかける展開であっさり自陣に攻め込まれるも、素早く戻り、ポジショニングの遅いケニアのアタックに対して低いタックルで孤立したところで6番弘津選手がジャッカル成功。中国戦とは明らかに違う動きでゲームを支配し始めます。

ここで日本の選手から「裏、裏」というコールが聞こえますが、試合を見ていて感じたのは「今は蹴るべきではない」という印象です。ケニアより動き出しが早く、プレッシャーをかけている状況、継続してテンポよく振り回せばチャンスは作れそうでした。しかし日本の選手は明らかに「裏へのキック」という判断になっていました。キックをした結果、ケニアの選手がボールを拾うと、倒し消れずに繋がれ、80mを一気に独走されてポスト下にトライされました。その後のキックオフでは自陣から左右に広く揺さぶり、ボールを1分以上継続してチャンスをうかがいます。敵陣に攻め込んだところで、ラックでの球出しが上手くいかず反則してしまうと、そこでのスクラムを起点に外に仕掛けられると日本のDFを上手く引き付けて、外に繋がれてまたしても独走トライを許してしまい、5-14で前半を終了しました。良い場面は日本のほうが多かったと思いますが、結局DFの場面になると、どうしても弱い部分が出てしまいます。それでも攻撃で継続できれば、後半は勝負できると思わせる戦いでした。

9点差を追いかける後半、日本はキックオフからボールを奪い一気に敵陣22mに攻め込みます。そこからはケニアのDFの粘りに前に出れませんが、継続してチャンスをうかがうと、永田選手が裏に蹴りこんだボールをインゴールで小出選手が抑えてトライ。4点差に詰め寄ります。前半同様、日本のやりたいラグビーが見えるスタートでした。さらに次のキックオフでケニアのミスから敵陣でアタックチャンスを得ます。敵陣22mに入ったところでラックのボールがこぼれてケニアにボールを奪われますが、その後のDFでしっかり面を作って前に出てプレッシャーを仕掛けます。もしかしたらケニアにはキックするオプションがないと事前に分析したうえでのプレーかもしれません。敵陣G前に押し込むと、4番梶木選手がジャッカルに成功し、クイックで仕掛けてインゴールに飛び込み逆転のトライ。後半の開始から逆転するまでの4分は完全に日本のペース、ケニアはパニックみたいな状況でした。

残り3分を切って3点リードした状況から日本のキックオフ。ケニアのアタックは個々が仕掛けるシンプルなもので、1人2人としつこく捕まえては素早く起き上がり、粘り強くDFします。狭いサイドのライン際の1対1を抜かれてピンチになりますが、必死に自陣に戻って相手のノッコンを誘います。残り1分半を切っての自陣スクラム、左右に揺さぶるもラインブレイクは出来ない中でケニアがオフサイドの反則。場所は自陣10mの中央付近、残り時間は40秒、日本はスクラムを選択し、時間を使って逃げ切ろうとしましたが、そこからの逆転負けは皆様も知っているかと思います。スクラムから持ち出した堤選手が捕まってボールがこぼれ、ケニアにボールを奪われますが、この時点でノータイム、守り切れば勝てます。しかし外に振られて1対1の場面になると劣勢になり、中央のラックで外のスペースを走られてG前に攻め込まれると、最後はタックルで倒した後にオフロードで繋がれてインゴールに飛び込まれました・・・勝ちを意識した残り1プレーからまさかの逆転負け。日本のやりたいラグビーをたくさん見れましたが、結局は個々の強さが際立ったケニアが最後に勝利をつかみ取りました。

改めて勝敗を分けたのは何だったのか。試合展開は日本のペースでした、ケニアは前半のようにトライした場面はあっさり取りましたが、それ以外の時間は日本の粘り強いDFに手を焼いているようでした。日本の良いプレーも目立ちましたが、勝負所での判断ミスから相手にトライを奪われたのも事実。勝負所でしっかり判断し、ミスのないプレーをするチームの成熟度が僅かに足りなかったのかもしれません。前半のキックの判断、後半最後のスクラムの判断、プレーする選手がどのように判断したのか。個々で反省はしていると思いますが、チームとしてもしっかり振り返ることで、これからの日本代表の成長に繋がるはずだと信じています。4週間経ちましたが、来月にはまた7人制の代表の活動も再開するでしょう。どういう強化体制になるのかわかりませんが、まずは個々の選手のレベルアップ、パワーアップがなければ、世界では通用しないので、その辺りは引き続き注目しようと思います。

東京五輪、女子セブンズの戦いを記事と振り返る

まず26日から始まった7人制ラグビー競技が終わり、著名なスポーツジャーナリストの何人かがすでに振り返る記事をアップしているので、3つの記事の内容を紹介しながら自分の感想も加えていければと思います。

まず女子の大会中の3日間、Twitter上でお世話になった斉藤健仁さんの記事から「女子ラグビー メダルを狙った若き「サクラセブンズ」は1勝もできず、悔し涙で大会を終える

サクラセブンズを振り返る内容で、大会7か月前に就任したマキリHCの就任時のコメントやメンバー選考、4月のドバイ遠征の結果、東京五輪を終えての選手のコメントもあり、非常にわかりやすい記事です。ドバイ遠征は東京五輪にも参加したチーム6か国が集まり、映像は全く見れませんが、発表されたスコアを見ると、まだまだ世界との実力差はあるなと私も感じていました。そこから約3か月で迎えた本番の五輪での結果については、「◆一貫性がなく、迷走したサクラセブンズの強化」という段落名でまとめていますが、新しいHCのもと戦略・戦術を落とし込む時間が十分とは言えず、コロナ禍の影響で海外勢との試合経験も積めなかった、とあります。本当にその通りですね。チームが若返って、経験が足りない中で、どんな戦いを見せるか大会前から注目していましたが、上手くいかなかったのは間違いありません。

また斉藤健仁さんは別の記事「女子ラグビー 2ヶ月間、ともに過ごし絆を深めたNZが金メダル! 東京で歓喜のハカを披露」もアップしていて、これは朝起きて読んだのですが、読み応えのある内容でした。

東京五輪の女子ラグビーを振り返る内容で、主にフィジーとNZが活躍した背景を伝えています。フィジーの女子はこれまで世界大会などで上位に入った経験がなく、銅メダル獲得は私もちょっと想像していませんでした。大会を終わってから、東京五輪のフィジー女子はリオ五輪の男子日本代表と似ているなと気づいたくらいです。男子の代表経験のあるサイアシ・フリHCが規律面を改善してきたとありましたが、やはり男子のノウハウを上手く戦略・戦術に落とし込めて、選手が自信をもって戦えたのでしょう。本当にこれまでの大会で見たことのない、フィジーの戦いでした。このレベルが安定したら、ワールドセブンズシリーズでも上位進出する強豪国になるでしょう。ただ代表強化が五輪イヤーのように毎年できるかは国それぞれなので簡単には言えないですね。フィジーの銅メダル獲得のプロセスは参考にすべきですね。

金メダルを獲得したNZ、私は2年前のワールドセブンズシリーズの戦いを見て、大会前から「金メダル獲得は間違いないだろうな」の予想でした。当時の記事がラグビーリパブリックにありました、こちら。予選でイギリス相手にミスから3トライを奪われた時は「嫌な流れだな」と思いましたが、その後のキックオフからすぐにトライを返したのを見て「これで息を吹き返して逆転だな」と思ったら、やはりその通りになりましたね。フィジーとの準決勝、3トライ目を奪って逆転した後半のラストプレーのキックオフのミスからフィジーに同点に追いつかれました。それでもこれまでの大会を勝ち抜いた経験、チームの成熟度は明らかにフィジーより上なので、延長戦になったら勝ち切るだろうなと思っていたら、やはりその通りになりました。前回リオの決勝で豪州に惜敗したNZ、そこから若い世代も加わり、まさに国を挙げての強化が実を結んだと感じました。記事の最後のほうにはブラックファーンズのハカの歌詞についても紹介しています。改めて、読み応えあります。

紹介する記事をもう1つ。リオ五輪でチーム日本を4位に導いた瀬川智弘さんが産経新聞に投稿していました。「【チェックEYE】ラグビー完敗、態勢づくりを 瀬川智広氏

男女の振り返りとなっていますが、まさにその通りといった内容です(もちろんリオ五輪を経験した瀬川さんだからそう感じさせるのもありますが)。女子は「コンタクトレベルに世界と大きな差があった」、やはり他の国の選手との体格差は大きかったですね。同じアジアの中国も以前からサイズはありましたが、東京大会での中国はさらにパワフルさと戦略・戦術を身につけて8強入りすると、トーナメントの3試合も堂々と戦い、最後はROCを破って7位になりました。予選で豪州、中国に完封負けした時の日本のような迷い、不調はなかったですね。ここからパリ五輪に向けて、さらに強化が進めば世界でも活躍するチームになるかもしれません。あとは日本のセレクションにも触れて「若手と経験のある選手のバランスが必要だった」と書いているのと、若い選手が体を張れていたとポジティブな面を評価もしています。

その他、リオ五輪からの変化や男子については東京五輪後の代表候補メンバーの選考について危惧していました。これについては劇的には変わらないというか、男子の国内が15人制がメインで新リーグの開幕を控える中、東京五輪に向けてトレーニングしてきたメンバーから大きく変わってしまうかなと感じています。女子はどちらかといえば国内は7人制がメインなところがあります。太陽生命WSSという世界でも類を見ない国内シリーズの冠大会があり、今はむしろ15人制の試合の機会をどう作るか、が議論になったりもしますね。

3つの記事を紹介してみましたが、これを読めばほぼ大会の総括が出来る内容です。これらはあくまで外から見た内容なので、実際に戦った選手・スタッフはまた別の感想があったり、強化のシステム含めた課題を感じているのかもしれませんね。ただ直近の課題は「フィジカルとスピードの差をどう埋めるか」これは試合を見た関係者も現場も同じだと思います。日本はユースアカデミーで中高生のタレントある有力な選手を合宿などで鍛えていきますが、やはり若い選手を5年以上かけて育成するのか、または陸上の短距離選手やほかの球技からサイズやスピードのある選手を発掘して3年かけて代表レベルに持っていくか、いずれにせよこれまでやってきた「女子ラグビー界の中で上手い、速い選手を代表チームで鍛えていく」計画に加え、新たな強化策が求められていると感じる東京五輪の戦いでした。

最後に昨日のブログを投稿した後に、ハッシュタグ「#7人制女子ラグビー改革素案」をつけてSNSで発信した主務の部屋さんから返信で、「ぜひ聞きたい」とご指名を受けました(主務の部屋さんは旧知の仲です、念のため)。下に呟きを載せますが、経緯はこんな感じです。次回はこれに被せるというか、提案について自分の考えを整理して答えていきたいと思います。

東京五輪、女子セブンズは全敗の12位で悔しい終戦

29日から行われた女子7人制ラグビー競技、日本は予選の3試合、9位~12位決定戦の2試合、1勝もできずに12位で大会を終えました。リオ五輪で金メダルを目指しながら10位に終わってからスタートした5年間の強化の集大成。悔しい、という言葉では表しきれない深い悔しさは選手、スタッフ、そして応援したファンの皆様にも多いのではないでしょうか。

大会5試合のスコアはこちら。5試合で6トライ、36点、そして失点は136点。
予選1戦目 VS豪州 0-48
  2戦目 VS米国 7-17
  3戦目 VS中国 0-29
トーナメント1回戦 VSケニア 17-21
11位決定戦 VSブラジル 12-21

大会期間中、日本協会HPには試合の結果と選手コメントが比較的早くアップされていました。忙しい中の情報提供、ありがたいですね。今日の昼にアップされた大会を終わってのヘッドコーチ、選手のコメントはこちらです。また中日スポーツさんも小出選手のコメント「日本は5年前より成長したが、世界のレベルに達していなかった」をタイトルに入れた記事をアップしていました、こちらです。個人的に大会の3日間を振り返ろうと思います。正直に思ったことを書くので、見苦しい文もあるかもしれません。ご了承ください。

試合展開を振り返ると5試合を通じて、リードする時間は短く、7点差より開くような展開もありませんでした。開始から相手DFのプレッシャーを受けて、前に進めずに、どうアタックしするか迷ってしまい、ボールを奪われて一気に得点される場面が予選の3試合では目立ちました。見ていて日本はどういう戦術、戦い方をやりたかったのか。人とボールが動くラグビー、という言葉も出ていたと思います。しかし見ていてそうした意図を感じさせるアタックの時間帯は短かったです。ケニア戦やブラジル戦の1トライ目はそれが感じられて良かったですね。裏へキックする場面もありましたが、きれいにトライに繋がったのはケニア戦の永田選手からのキックをキャッチした小出選手のトライくらいでしょうか。単純に相手に脅威を与えるようなアタックが出来なかった、キックは蹴らざるを得なかった印象もあります。

DFに目を向けると、3トライを奪ったほうが勝利の可能性がかなり高いセブンズで、5試合すべてで相手に3トライを奪われています(ケニア戦は最後に逆転された展開でしたが)。入場する様子を見た時点で、海外勢との体格差を感じた方は多いと思います。それは試合を見ていても、懸命にタックルに行きますが、1対1のフィジカルのバトルで負けているのを痛感しました。タックルに行く日本の選手が体を当てて倒すというより、当てて掴んで倒れているイメージでしょうか。またDFでタックルを外されてそのまま独走される場面が目立ちました。選手の絶対的なスピード不足は得点に現れました。8強に進んだチームの試合を見ていると、自陣から独走されてもカバーするDFが追い付いて止めて粘ります。日本はハーフラインを超えた時点でもう振り切られていて、相手が減速してポスト下にトライ、みたいな場面が多かったです。これは最終戦の前半のブラジル戦でもありました。

5年前のリオ五輪の試合を見た時に感じたのは、最初のキックオフでボールをキープできないのが課題でしたが、東京五輪ではプレッシャーはあれどしっかり対応できていたほうでした(むしろ男子のほうがかなりやられていました)。そしても1つの課題は圧倒されていたフィジカルとスピードの差、ここは上回るのは難しいけれども、最低限ファイトして我慢できるくらいのものはないと厳しいなと感じていました。この課題2点を東京五輪に向けてどう克服するかが、個人的には代表強化のキーファクターかと思っていましたが、今回の5試合を見て、フィジカルの差は埋めきれませんでした。むしろコロナ禍で大会が1年延期したことで、海外勢がそこを強化してきて、日本が遅れを取ったのかもしれません。

選手の大会期間中のコメントを見ると「(前の試合は)良くなかった(やりたいことが出来なかった)けれど、(次の試合で)修正、成長できた」みたいな言葉がありました、確かにそうですし、苦しい試合が続く中でのポジティブなコメントだとも思います。それでもこれまでの長く厳しいトレーニングを積み重ねて、準備をしてきてようやく訪れた本番の舞台で、そのような言葉が出るのはかなり悔しいですね。見ていて力を出し切れなかったというより、相手のプレッシャー(強さと速さ)を受けて力を出せなかった場面が多かったのが予選の3試合でした。

目標としていた8強進出を逃し、気持ちを切り換えて挑んだトーナメントの2試合は、過去に勝ったこともある相手で、実力的にも勝つ可能性のある相手でした。そして自分たちが目指すラグビーを出来た時間帯もありました。しかし終盤に疲れも出て、プレッシャーのかかる中でミスも出て、最後にトライされてしまった。それまで開始から全力で戦ってきたからこそ、残り数分でメンタル含め、余力がなかったのかもしれません。個人もチームも勝ち抜く力が足りなかったということでしょう。得点と順位が残酷なくらいに表していると思います。

今回のチームはリオ五輪の経験者が2人、これまで代表チームを引っ張ってきたベテランの選手がセレクションから漏れて、かなり若がえったチームでした。内定メンバーが発表された時のブログを振り返ると「どんな戦いをするか、予想がつきません」と書いていました。メンバーのセレクションについてはどうこう言うのはおこがましいですが、今回の戦いを見ると、突破役となる選手がいないのがアタックの迷いに繋がったのかもしれません。内定メンバーから負傷で外れた松田選手、アメリカ戦の怪我で戦列を離れたライチェル海遥選手は、まさに突破役の選手でした。それと個人的には、バックアップに入っていた鈴木彩夏選手もワールドシリーズなどで仕掛けて抜け出すプレーができる選手だったので、いないのが残念な選手の1人でした。

他にも大会後の強化をどうしていくか、他のチームの強さの話など、まだまだ振り返り足りないのですが、ちょっと長くなったので今回はこの辺で。もう少し自分の中でも色々と整理して、次回以降のブログで書きたいと思います。ありがとうございました。最後にTwitterでも書きましたが、リオ五輪からこれまで代表の強化に携わってきたスタッフ、本当に厳しいトレーニングを重ねてきた候補選手皆様(本大会から外れたメンバー含め)、本当にお疲れ様でした。東京五輪、皆様の奮闘を見守り、全力で応援できました。ありがとうございました。