激闘のアルゼンチン戦、本当に素晴らしい試合でした

昨日の夜に行われたW杯予選プール、日本の最終戦の相手は格上のアルゼンチン。これまでの対戦で勝利したのは1度のみ(勝利は1998年の秩父宮、平尾JAPANで村田選手と岩淵選手のHBにTVの前で興奮しながら見ました)。前半を1点差で折り返して勝負の後半、突き放されても追い上げて接戦になりましたが、最後に突き放されて27-39の負け。それでも奪ったトライはどれも素晴らしいものでした。得点など試合経過のレポートはRUGBY JAPAN 365で。試合後の選手のコメントもどれも勝ちたい気持ちが伝わってきました。

World RugbyのYoutubeチャンネルからハイライト3分少しです

もう著名な方々が試合の振り返りコメントをSNSで出したり、試合後のジェイミーHCや選手のコメントもたくさん出ていますね。日本協会HPの試合経過は、こちら振り返れば勝てるチャンスもあると感じましたが、日本がリードする展開はなかったです。そして後半に追い上げた直後のキックオフからアルゼンチンにすぐにトライを返された(56分にJPNレメキDGの直後、58分ARGトライ/65分にJPNナイカブラトライの直後、68分ARGトライ)。ここが勝負の肝だったと思います。得点した後のキックオフで相手の気迫の籠ったアタックを何とか止めて、連続得点につなげられるか。

このW杯では振り返れば強豪を相手に、後半の大事な時間帯で得点を奪って勝負を決める流れを掴み切れませんでした。日本協会HPにある2戦目のイングランド戦の試合経過を見れば、12-13の1点差に追い上げてからイングランドに3T3Gを許して12-34で負け。サモア戦の試合経過を相手の11番がレッドカードを受けて退場になってから25-8とリードを拡げるも、そこから2T2Gを奪われて25-22で逃げ切り勝利。勝負所に関しては試合翌日の藤井雄一郎ナショナルチームディレクターがオンライン会見でもこう話していました。

やっぱり勝負所で取ったらすぐに取られるという、頑張らないといけないときに頑張れなかったのが昨日の敗因やと思うが、選手は頑張っていると思うが、勝負の力を入れないといけないところは経験を積んでいかないと、その部分は埋まっていかない。チーム内での競争も含めて選手層を厚くしていかないといけない。

本当に強度の高い試合を重ねることで得られる経験かもしれません。4年前はSUPER RUGBYにサンウルブズが参戦することで、日本代表で戦う選手の経験を底上げしました。アルゼンチンはサンウルブズと同様に、コロナ禍でSUPER RUGBYからは離れましたが、選手の大半はヨーロッパのリーグに移籍してタフな試合経験を重ねたようです。そこは本当に選手、スタッフの頑張りでは補いきれない、強化体制や仕組みのところですね。その辺はSNSでいろいろ見れると思います。

https://twitter.com/jsports_rugby/status/1711146252212318488
試合後のリーチマイケル選手のコメント、この大会でのパフォーマンスは素晴らしかったですね

いずれにせよ、日本代表の選手、スタッフは本当に頑張ったと思いますし、アルゼンチン戦の戦いも本当に勝つための準備を重ねてきたと感じさせてくれる戦いでした。後輩の福田はリザーブに入るも出ることなく終わり、悔しい思いもあるでしょうが、チームのために頑張っていました(今回の代表チームでは試合に出られないノンメンバーを柱と呼んでいました)。スタッフでロッカールームでは試合前の姫野キャプテンの隣で通訳をしていたジョシュも本当にお疲れ様でした。

男子のW杯の戦いは2大会連続の決勝トーナメント進出を果たすことなく終えましたが、女子は金曜にWXV2の初戦が、セブンズ代表はタイでのアジアシリーズが控えています。引き続き日本代表の活躍に期待しましょう!

サクラ15がイタリアに初勝利、世界ランク10位に

30日深夜に行われたラグビー女子日本代表とイタリア女子代表のテストマッチ、前半に4トライを奪った日本が後半のイタリアの追い上げを振り切って25-24(前半22-7)で勝利。去年のW杯予選プールでのリベンジを果たしました。あっぱれ!!そしてWorld RugbyのWebサイトに掲載されている最新の世界ランクでアイルランドを抜いて10位にUPしました、こちら

試合のレポートについては今回もラグビー専門Webマガジン「RUGBY JAPAN 365」の記事を載せておきます ⇒ 「アウェイの地でイタリアに初勝利!」
また試合後のレスリーHCや選手のコメントは日本協会HPに掲載されています、こちら。レスリーHCからも「両チームともに若い選手たちが出場していた」というコメントがありましたが、南アフリカで開催されるWXV2に向けてお互い試したい部分もあったのだと思います。それでも見事な戦いぶりを見せてくれました。

日本のアタックが過去最高の出来と言えるくらいはまった前半

試合の前に「サクラ15が目指す戦い方を感じられるような試合を期待」をポストしましたが、前半の内容はそれがしっかり感じられました。今のサクラ15のアタックは両FLがそれぞれワイド(タッチラインから10m辺りかな)にポジショニングし、外のスペースで数的優位を作ろうとしています。この試合では久しぶりにスタメン出場したSO山本実選手、いつも攻守にハイパフォーマンスを見せるSH津久井萌選手の2人がテンポよくボールを動かし、FWBK全員が良く走って早めにポジショニングし仕掛けるサクラのアタックがイタリアDFのプレッシャーをかわして、何度も前進しました。

2016年のW杯予選からHBを組んでいる山本、津久井のアタックはサクラ15を引っ張りました

キックオフから敵陣でプレッシャーをかけるもラインブレイクを許し、そこから前半7分にイタリアに先制トライを奪われたものの、前半13分、21分、33分、41分と連続トライを奪いました。スタッツ(統計)がないのでわかりませんが、前半の日本のパス回数はかなり高かったと思います。キックも上手く使いながら、イタリアに敵陣でのアタックの機会を上手く作らせませんでした。イタリアは最初のキックオフレシーブからキックを蹴らずにボールを動かして攻めてきましたが、時間が経つにつれて思うような戦いが出来ずに焦りもあったでしょう。結果的には、前半最後にG前に攻め込んで取り切った7点が大きかったですね。

15点のリードをもって迎えた後半、YoutubeのLIVEのチャットにも「後半開始の10分で激しく来るイタリアに流れを渡さないように」と書きましたが、予想通りイタリアが個々に強気なアタックで粘る日本のタックルを引きずるように前に出始めると10分、16分と連続トライを奪って22-19の3点差になり、勝敗の行方は残り20数分で分からなくなりました。もちろん日本も流れを渡したくて渡したわけではないですが、もともと格上のイタリアが相手。昨年のW杯の試合のように後半はいよいよ本気を出してきたとみる方が良いかもしれません。そして日本が前半のようなアタックで前に出る機会がほとんど見られず、必死にDFする時間が増えました。接点でのフィジカルバトルで上回るのは厳しいなかで、こういう流れの中でも自分たちのアタックで前に出ていくスキル、メンタルがWXV2へ向けての課題、伸びしろですね。

ボールキャリー、タックルで持ち味を見せた向來選手はこれからさらに良い選手になりますね

個々の選手のパフォーマンスもこうした国際レベルの試合で安定したプレーを見せられる選手が増えてきたと感じています。事前の国内での合宿期間が長くなり、若い選手も含めてチームで良い準備が出来ているのでしょう。このイタリア戦では個人的なMVPとして攻守に激しい強気なプレーを最後まで見せた6番FL向來選手をあげました。また今年15人制の代表デビューした12番CTB弘津選手ら大学生の若手選手も良いパフォーマンスでした。そしてPR加藤選手、SO大塚選手、CTB小林選手ら経験の多い選手がリザーブにいたことで、後半の厳しい時間帯でも上手く戦えると信じていましたが、26分に大塚選手が決めたPGの3点追加により、イタリアの4トライ目のコンバージョンが外れ、1点リードで逃げ切り勝ちに繋がりました。

イタリアに勝利した勢いで南アフリカで開催されるWXV2に挑めるのは本当に良いですね。そして遠征メンバーも日本協会のHPで発表され、新たに東京フェニックスの柏木選手が招集されました。豪州でのスーパーラグビーで経験を積んだ柏木選手、代表に新たな勢いを与えるかもしれませんね。また先日のフィジーとの試合で代表デビューした日本体育大学の畑田選手も再招集。この大会期間の中でサクラ15のレベルもますます上がると期待できますし、良い結果を続けられたら今後は北米の米国、カナダとの試合機会も生まれるかもしれません。

結果を出し続けることがチームに良い流れ、自信を生み、強くなるのはサクラセブンズを見ていても感じます。「サクラ15が自信をもって、やりたいことをぶつけていく」そんな戦いがWXV2でも見れるよう、女子日本代表を応援しましょう!

W杯第2戦目はノートライの負け、茗溪学園中学が全国優勝

昨日18日は未明4時からラグビーW杯の日本代表とイングランド代表との試合が行われました。前回大会で準優勝、過去に10試合戦っていまだに勝利したことのないイングランドを相手に後半途中まで良い戦いを見せて接戦に持ち込むも、トライを奪えずに終盤に突き放されて12-34で負けてしまいました。

この試合、前半は非常によく戦いました。相手に1トライを与えて9-13というスコアでしたが、昨年秋の試合ではスクラムでやられてゲームの流れを掴めませんでしたが、この試合では互角以上に組みました。相手のDFライン裏へのキックに対しても松島選手、マシレワ選手の負傷で急遽出場したレメキ選手らが良く対応してチャンスにするような場面もありました。ただ日本からのキックに対しては相手のFBスチュワート選手が196㎝の高さとジャンプでコンテストに勝っていましたね。日本が準備してきた戦いをしっかりフィールドで見せられたことが9-13というスコアにも表れたと思います。

一方で後半は徐々に疲れも出てしまい、終盤に攻め切ることが出来ずトライを奪われていました。これについては、前イングランド代表のエディーさんがWEB媒体の「THE ANSWER」で特別観戦記を投稿していました⇒「日本は前回W杯以来、最高の40分間だったが…」 両国とも指揮したエディー・ジョーンズが見た後半暗転の深層【特別観戦記】

エディーさんは記事の中で「メンタルフィットネス」という言葉を用いていました。精神的なタフさと持久力、日本は強豪イングランドを相手に最後までそこが持たなかったというところです。日本代表はこの10数年でW杯で決勝トーナメント進出を狙うくらいに強くなりましたが、それでも格上の強豪国に勝つには80分最後まで自分たちのラグビーをやり切らないと勝てない。それが2015年の南アフリカ戦だったり、2019年のアイルランド戦、スコットランド戦だったと思いますし、多くのファンもそれは感じているところだと思います。次のサモア戦、予選プール最終戦のアルゼンチン戦も、後半に勝負を決めるトライを奪えるかが注目ですね。

茗溪学園中学が全国優勝、単独での優勝は高校生含めて初ですね

私より25歳下の後輩たち、地元茨城で念願の単独優勝!! 写真はJRFUのHPから拝借

そしてこの3連休に水戸市で開催された太陽生命カップ2023、全国中学大会ですが中学校男子の部で茗溪学園中学が優勝しました。これは嬉しかったですね。第2回から水戸市での開催になった太陽生命カップ。地元茨城の茗溪は過去に10年前の第4回大会では決勝に進出しましたが、台風の接近に伴い決勝戦は中止となり、奈良の天理中学と両校優勝になりました。その後、第9回大会でも決勝に進出するも東海大仰星中等部が前回大会に続いて優勝。昨年は8チームを前期、後期の日程に分ける4チームのトーナメントで開催して優勝していましたが、今年は全国の予選を勝ち抜いた強豪8チームのトーナメントを勝ち抜いての優勝。やりました。

18日の朝に行われた大阪の東生野中学との決勝戦はこちらで見れます(うまくはめ込みできませんでした) ⇒https://www.youtube.com/watch?v=Layc9PQJI9o

去年も感じましたが、最近の中学生プレーヤーはサイズが大きい。この決勝戦までの戦いでも、初戦の宮崎の富島中、準決勝の京都の藤森中もFWには本当に大きくて強い選手がいて、茗溪はアタックで攻め込むもラックを作った際に接点のバトルでやられてターンオーバーを許す場面もありました。それでも茗溪学園伝統のハンドリングラグビーに加えて、相手DF裏のスペースへの鋭いキック、DFでは鋭いタックルで相手を倒し、前後半の40分しっかり走り勝つラグビーを見せていました。決勝戦では後半開始してG前のスクラムから東生野に逆転を許しますが、そのあとのアタックで攻め込んで再逆転したのが大きかったですね。両チームとも中学生らしい積極的なプレー、ミスも目立ちましたが、最後まで一進一退の攻防を見せていました。逆転を目指した東生野が自陣から攻めて、裏のスペースへキックを蹴って追いかけるも懸命に戻った茗溪の選手が外にボールを蹴りだして終了。14-12で見事な勝利でした。

茗溪にはいい走りを見せる選手もいたので、今後セブンズユースアカデミーに呼ばれたりするかな

ここ数年はなかなか母校に顔出す機会がなく、中学生の様子もあまりわからない中で、ラグビー部の先輩のご子息が活躍している縁で情報が入ってくるようになりました。決勝戦でも逆転に繋がるトライを奪った三森君のお父さんは私の6学年上、慶応義塾大学時代に学生日本一を達成した三森卓さん。ご子息は私がラグビーを始めた地元のラグビースクール、ツクバリアンズJr.の後輩でもありますね。中学生は秋冬に行われる東日本大会、そして茨城中学選抜として出場する全国ジュニア選抜大会もあるので、引き続き高校生とともに強くなって、冬にユースラグビーを盛り上げて欲しいと思います。

中学校の部の結果、秋田の将軍野中も素晴らしい戦いで5位ですね

サクラ15はフィジーに逃げ切り勝利、伸びしろたくさん

10日日曜は夕方16時から女子、20時から男子の日本代表戦が行われ、共に勝利してよいスタートを切りました。女子のフィジー戦の試合レポートはRUGBY JAPAN 365のサイトに掲載されています ⇒ 新しい力が躍動、フィジーに勝利また日本協会HPにあるギャラリーにも当日の写真が掲載されています、こちら

https://www.youtube.com/watch?v=LR5dxC4ChOw
5トライを奪って快勝したサクラフィフティーン

相手のフィジーは現在世界ランキングで19位、日本が5月に大勝したカザフスタンは18位です。それでもランク以上の実力はある国。私はインゴールの裏から試合を見ていましたが、前半はフィジーにやりたいことをさせずむしろストレスを与えるくらい日本の良いプレーが目立ちました。相手の反則もあって敵陣でプレーする時間も長く、フィジーの得点チャンスも粘り強く守り抜きました。その勢いの前半最後に敵陣でアタックしながらも外にキックを蹴って終わらせたのはちょっと残念でした。

上記の試合レポートでも触れていましたが、それがきっかけになったのか、試合後のインタビューでもフィジーのキャプテンが「目が覚めた」と語ったように後半はフィジーが修正。アタックでは前に出る日本のDFに倒される前に細かくオフロードパスで繋いで前進し、ノーホイッスルトライ。その後も前半の流れから変わってフィジーのアタック時間が増えて、日本はDFでの反則が増えました。ただ追い上げられ、プレッシャーを受けながらもアタックする意識を保ち、攻め込んで生まれたチャンスをサクラ15のデビュー戦だった松村選手が2トライ。前半のリードを守り切って29-24で勝利しました。

活躍が目立った選手が多かったサクラ15、これからさらに仕上がるはず

この試合ではテストマッチ経験の多い選手の活躍が目立ちました。重たいフィジーのFWを相手に安定したスクラム、アタックにタックルに攻守で80分躍動した1番加藤選手、昨年のW杯以来の代表復帰でいきなりの先制トライ、相手のスキを見逃さないジャッカル、そして後半途中からはLOに入ってスクラムを押した6番齊藤選手。ボールを持てば細かいステップで相手をずらしては前に出続け、接点でファイトし続けた12番小林選手。ここ数年のサクラ15を支得てきた選手たちがトライを奪ってチームを勢いづけました。

消耗の多いPRのポジションで80分フル出場の加藤選手、大活躍

一方で活躍が目立った若手選手もいました。デビュー戦2トライの活躍の松村選手は前半でもライン際を抜け出す場面もあり、期待以上のプレーを見せていました。長い距離のキックも蹴れる選手と聞いているので、次のパフォーマンスにも期待ですね。今年から代表入りした15番西村選手はこれまでの試合でも見せたキックに加えて、この試合ではフィジーのDFのギャップを見つけてランを仕掛けてチャンスを作っていました。DFでもランに長けたフィジーの選手をしっかり止めていたと思います。

他にも良い活躍を見せていた選手も多い中、後半は試合の流れをフィジーに渡してしまい、反則も目立つなど課題もありました。これから来月のWXV2まで1月半以上も続く代表活動の序盤なので、テストマッチでは勝つことが第一ですが、この長期の活動の中での強化のプランニングもあるでしょう。まずはゲームプランなど目指すパフォーマンスを試合本番で見せること。そして試合後に振り返って出てきた課題を1つずつ改善して、パフォーマンスを上げて成長し続ける姿を見せて欲しいですね。個人的にこうした方が良いのでは、と感じた部分もありますが今回は割愛します。

そして次は16日土曜に東京に場所を移して再びフィジーと戦います。なかなか男子と同じように国内でのテストマッチの機会は多くない女子日本代表。今回選ばれなかった選手もまずは試合登録メンバー入りを目指して頑張るでしょうし、チーム内での競争が出場選手のパフォーマンスアップにも繋がるはずです。東京では福岡以上に多くのファンが観戦に来ると思うので、更に良い試合を見せて、海外遠征に繋げていきましょう。

入替戦は横河武蔵野アルテミスターズが優勝

8月11日と12日に行われた太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ(WSS)2023入替戦、12日は朝から天気にも恵まれて、日向に当たるスタンド席はやはり暑かったです。試合を見ながら、汗が皮膚を伝っていくのがわかりましたね。試合の方も負けたら降格決定という緊張感、スタンドで応援するチーム関係者やノンメンバーの声援も良く聞こえてきました。その中で決勝に進んだのは横河武蔵野アルテミスターズと、2013年の初年度から参戦している北海道バーバリアンズディアナの2チームでした。前日の予選プールでも戦いアルテミが19-7で勝利していました

迎えた決勝戦は開始1分にアルテミスターズの中山選手がシンビンになって6人に。それでもディアナの猛攻をしっかり守りぬくと、敵陣に攻め込んだ前半5分にキャプテンのFW山本和花選手がダミーを交えてDFラインを抜け出すし、トライライン直前で倒されるもインゴールに手を伸ばして抑えて先制トライ。その後、ディアナの外国人選手がラインブレイクから走り切って5-7と逆転。後半もお互い一進一退の攻防を見せますが、アルテミが敵陣でプレーする時間が多く、逆転を狙って攻め込みます。そして後半6分に敵陣のスクラムからまずSHの小川選手が仕掛けて、小林選手へパス、そこに外の小畑選手がショート気味に走りこんで、対面のDFに捕まるもずらした状態になり、小林選手がループするように外でボールを貰いそのままインゴールに走りぬけて逆転トライ。アルテミスターズが10-7で勝利しました

決勝戦にふさわしい接戦から終盤に勝敗が決まった戦いでしたが、アルテミスターズが勝ち上がった要因はやはり日体大OGの選手を中心とした経験値があるのではないでしょうか。2018年に入替戦で2位になるも、翌2019年に入替戦で四国大学に負けて降格。一方で15人制では単独チームとして日本一になったり、サクラ15でも多くの選手が活躍。この日も試合の先発メンバーでBKはSH津久井選手から小林選手、中山選手、田代選手と日本代表経験者が並んだりしました。また入替戦で復帰した中山選手、髙崎選手などメンバーが復帰してチームも上向きだったのかなと思います。

熊谷大会で負傷するも入替戦で復帰した髙崎選手はフィールドを駆け抜けて暴れていました

一方でシリーズ4大会でなかなか勝てずに15位に沈んだディアナ、この入替戦での優勝を目指して新たに加入した外国人選手もいたみたいです。予選プールではアルテミスターズに負けたものの、トーナメントでは初戦のBRAVE LOUVEに前半相手のミスから3トライを奪い、リードを守り切って17-12と勝利。そして準決勝のRKUグレースではそれぞれ違う選手5人がトライを奪い、33-0と快勝。大きく勢いをつけて優勝まであと少しのところまで来ました。

ほかにも3位決定戦で戦った四国大学、RKUグレースもこの入替戦に向けて仕上がりの良さを見せて、予選プールで大勝した試合もありました。ただ土曜の試合を見ていて、決勝にいけなかったチームはゲームの流れもありますが、うまくいっている時と上手くいかない時の差が大きかったですね。入替戦のプレッシャーの中で、小さなミスから流れを相手に渡してしまい、そこから試合中に勢いを取り戻すような強さが見られなかったのは、やはりコアチームとしては力不足なのかもしれません。もしかしたら主力選手の怪我などの影響もあったかもしれません(四国大学には膝にギブスをして松葉杖をついてサポートする選手も見かけました)。

決勝のセレモニー後、スタンドには引退した南さんにサクラ15の櫻井選手、加藤選手の姿も

入替戦の最終順位は、こちら。アルテミスターズ以外のチームは来年にも行われるであろう昇格大会に向けて再びチャレンジを続けてほしいですね。また太陽生命WSSのチーム数、開催地、コアチーム以外が試合経験を積めるような下部大会の充実など、検討すべき課題はあるかと思います。ただ全てのチームがが満足するような答えはないのかもしれません。日本協会だけでなく、地域協会、そして各チームの協力も必要ですね。8月の後半には各地で国体予選が行われますし、引き続き関係者の皆様の頑張りを応援しています。

太陽生命WSSが始まって10年が経ちました。この10年で九州や東北などに新たなチームが誕生したり、サクラセブンズがワールドシリーズやW杯でも活躍したり、女子ラグビーの普及・強化は進化をし続けてきた印象です。そしてこれからの5年、10年をどうしていくかのビジョン、アクションプランを発信、共有していければ女子ラグビーももっと発展していけるのではないでしょうか。先日、サッカー女子日本代表なでしこジャパンがW杯ベスト8敗退してしまいました。やはり良い戦いをしても、求められる結果が出ないと多くの人の記憶から忘れられるのも早い。引き続き頑張って、女子ラグビーを盛り上げていきましょう。