NZ戦は7点差の健闘、明日3日から関東大会開幕

先月29日に行われた日本代表とニュージーランド代表All Blacksとのテストマッチ、日本代表が終盤まで逆転を狙える点差につける展開で、見ているファンは盛り上がったと思います。最後は逆転を狙うアタックで反則を取られ、PGを決められて31-38で負け。それでも国立競技場に65,000人を超える観客を集めたテストマッチはそれ以上の価値を見せました。All Blacks側のハイライトは見応えたくさん ⇒ https://www.youtube.com/watch?v=wAqpHh7ghgU

ハイライトを見て改めて感じたのは、日本代表のアタックはAll Blacks相手にもしっかりチャンスを作って、大きくゲインしたりトライに結び付ける力がある。そこには事前に相手を分析した上でアタックプランを決めているとお漏れわれますが、この試合では13番のライリー選手が相手の裏に小さいキックを蹴ってチェイスしたり、前半の2トライを見ても大外にキックやオフロードに長けたライリーを置いたことでトライに結び付きました。本来であれば大外にいるのはWTBの松島選手、フィフィタ選手なのですが、チームの意図を感じましたね。DFでも5トライを奪われたもののG前での姫野選手のジャッカル、3トライ目を生んだワーナー選手のキックチャージの前も、素早いプレッシャーとダブルタックルでエリアを前に進めていました。日本代表としてはプラン通りのプレーが多かったんだと思います。

注目していた山沢選手、点差が離れた時間帯でキックチェイスから日本の初トライを奪い、プレースキックを確実に得点に結びつけるなど、期待通りの活躍を見せてくれました。斉藤健仁さんが書いたスポルティーバの記事はこちら ⇒ 「オールブラックス戦でチーム最多の12得点。早熟と言われたSO山沢拓也の才能がついに開き始めた」 高校1年生の花園で驚くような活躍を見せたのはもう10年以上前。この活躍が遅かったような見方もありますが、このまま活躍を続けて、来年のW杯でも期待したくなりました。

また大西将太郎さんのマッチレビューの記事もRUGBY JAPAN 365さんのサイトに掲載されています、こちらは有料のプレミアム会員向けの記事ですが、試合の展開と両チームの状況や推測が分かりやすい記事でした。こちら ⇒ 「65,000人の後押しで熱戦になった日本vオールブラックス%20敗れたものの、日本の進化が証明された80分だった

今日2日からヨーロッパ遠征に向かうメンバーもJRFUのHPで発表されました、こちら。12日土曜にイングランド代表、20日水曜にフランス代表と戦います。どちらも来年のW杯で優勝を狙うレベルの強豪国ですね。昨年の秋の遠征では初戦のアイルランドで大敗したものの、ポルトガルに勝利し、スコットランド代表とは20-29と終盤まで接戦でした。事前の準備が大切とはいえ、遠征の初戦は苦戦することが多い日本代表。今回は日本を良く知るエディーさん率いるイングランド、どんな戦いを見せるか楽しみです。それにしても代表チームの選手層が確実に厚くなっているのを感じます。少し不安なのはFW第2列、LOですかね。

女子の関東大会は明日3日から開幕、今年は総当たり戦になり最高

試合スケジュールと会場はこちら

そして女子の関東大会が明日から始まります。今回は1月7日まで、約2か月の期間ですね。7チームが参加しての総当たり戦になりました、何度も言っていますが最高ですね。以前から参加チームの受付から試合日程を決める際に総当たりで戦う案はありました。理由は順位がつけやすい、15人制の公式戦の機会を多く作りたいなどありましたが、懸念されたのはチームの人数と試合の日程調整でした。例えば昨年は11月にサクラフィフティーンが英国遠征でしたので、その期間は代表選手が不在。また1月には関西代表との全国選手権が予定されているため、終わりが1月と決まっていて、なかなか難しいものがありました。なので2つの予選プールと上位2チームのプレーオフによる関東代表決定戦、という流れでしたね。

今年はW杯があるため、どうなるかと思いましたが、総当たりで全チームが6試合を戦います。選手の少ないチームにとっては相当ハードな戦いになるかと思いますが、関東はこれが今後のスタンダードになるための新たな一歩、チャレンジと私は捉えています。15人制については、高校カテゴリーでももう少し公式戦の機会を作れたら良いですね。5年ほど前は11月23日に江戸川陸上競技場で3地域対抗戦が行われていました。今は10月終わりに全国U18女子セブンズが行われるため、再開は厳しいかと思います。どうしても公式戦になると7月のコベルコカップや12月の花園の東西対抗など選抜チームの大会になってしまいますが、各地域の練習会や交流試合に繋がる試みがあればと。15人制をプレーする機会を増やすことで、FW特にフロントローの選手が活躍する、そして大学へ行ってもプレーを続けることに繋げたいですね。

優勝予想はさっぱりわかりませんが、昨年のプレーオフを勝ち抜いた横河武蔵野、RKUグレースが引っ張るか。それとも明日、そのグレースと戦うフェニックスは昨年のプレーオフで負けた相手にリベンジなるか。そしてW杯メンバーの出場の有無を含めると、11月20日までの序盤戦が大事かもしれませんね。代表入りを狙うような活躍を見せる選手が現れるのを期待。

明日は国立でABs戦とアジアセブンズの振り返り

10月も終わりに近づいてきましたが、今週は明日29日に行われる日本代表とニュージーランド代表All Blacks(ABs)とのテストマッチの話題が毎日のようにありました。日本に到着してすぐにABsの選手がラーメンを食べに行ったTweetが話題になっていましたね。それとABsの選手が千葉県内で小中学生向けにラグビークリニックも行っていました。コラムはこちら

https://twitter.com/Te_Nug/status/1584498490809335808
いま探してみたらいいねが4000を超えていました。歓迎されていますね。チッピングはタンパク質多め。

JSPORTSのコラムでは解説者の村上晃一さんがこのテストマッチに向けた日本代表のコラムを書いています、こちら「オールブラックスからどんなトライを奪うか? みんなで歴史の目撃者になろう」両チームの試合登録メンバーも載っていますが、日本の注目選手はやはり10番山沢拓也選手でしょう。10代の頃から将来は必ず日本代表で活躍すると期待されながら、怪我などのコンディション不良や司令塔というポジションの厳しいセレクションもあり、日本代表で見る機会はこれまで期待されていたほどではありませんでした。ラグビーファンはいよいよ来たかと待ち遠しいのではないでしょうか。

そしてABsは今回も豪華メンバーと言っていいでしょう。以前にコベルコスティーラーズでプレーしたレタリック選手も4番先発出場ですね。バレット3兄弟など遠征不参加の選手もいますが、それでもやはりABs、誰が出ても強力な感じがします。そんなABsに対してもリーチ選手は「勝ちに行く」と宣言していますし、明日の試合がどういう展開になるか。私は日本代表が勝つとは正直思っていませんが、開始15分の攻防、セットピースは見応えがありますし、何より国立には6万人を超える観客が集まる予定。どんな戦いになるか、楽しみしかない。

先週末のアジアセブンズシリーズ2022タイ大会の2日目を振り返る

こちらは準決勝の動画、男子は59:30辺りからUAE戦、女子は2:15:00辺りから香港戦

JRFUのHPにも2日目の結果とHCとキャプテンのコメントが掲載されています、こちら。対戦スコアもありますが、奪ったトライは多くて3トライ。ワールドセブンズシリーズを控え、世界を目指す男女セブンズ日本代表としては、アジアでの大会はしっかり勝ちたいところですが、タイ大会は両チームとも準優勝でした。新たな選手を加えてのシリーズ初戦、優勝を逃したとはいえ、そんなに悲観しなくても良いかなと思いました。準決勝については、男子は11番津岡選手の見事な走りから右手オフロードパスが決まってUAEから先制トライを奪って、逃げ切りました。女子は香港を相手に前半の14点のリードを守り切ったようなスコアですが、内容では素早い守りで香港にアタックの形を作らせず、圧倒していました。

そして決勝戦。香港を相手にキックオフからスタートしますが、香港の素早いアタックを止めれず1分で先制トライを許すとそのあとのレシーブでも上手くいかず、ターンオーバーからあっさり2トライ目を許す展開。その後のアタックではしっかり攻めて、最後は6番福士選手が相手DFとの1対1に勝ってコーナーに飛び込み1トライを返すも、そこからはキックオフでボールを奪われて速攻でトライをされる展開。結局、前半だけで5トライを奪われ勝敗はほぼ決まりました。後半開始からは香港の反則をどんどんクイックで攻めてインゴールに飛び込むも、相手が上手く絡んでノッコン。その後はこのタイ大会で代表デビューの丸尾選手が独走トライを奪うなど、後半は2トライを奪い、香港を上回りました。しかしスコアは19-36と前半の失点が響き完敗。香港は強くて速いランナーもいて、アジアの中でも少しレベルが違いましたが、この香港にしっかり勝つ実力がなければ、ワールドセブンズシリーズでの勝利も難しいですね。

そして女子はライバル中国との決勝戦。先発メンバー7人はチリのチャレンジ大会、南アフリカのW杯に遠征したメンバーが中心。試合開始から攻め込むと、1分過ぎに梶木選手がDFの間を突破して先制トライ。その後も攻守に良い動きを見せて、敵陣でプレッシャーをかけますが、外でゲインを許すと反則、そこからのクイックでランナーに振り切られて同点に追いつかれて前半終了。後半は両チームのエースがチャンスで一気に走り切ってインゴールに飛び込むなど一進一退の攻防。最後は3点差を追いかける中国が残り1分を切ってからの自陣中央スクラムで、日本のタックルを弾くとそこから一気に加速して日本のDFを振り切り逆転のトライ。17-21でトライ数は同数もゴール差で敗れました。日本の失トライはどれも敵陣でのDFから、わずかな隙やミスから中国に独走を許してしまいましたが、内容としては試合のほとんどを敵陣でプレーしていたと思います。そのわずかな隙や反則をなくせれば、次の大会ではさらに良い戦いが出来るかと思います。

次回のシリーズ大会ラウンド2は来月19日、20日に韓国で行われます。そしてラウンド2は翌週にUAEで。女子はさらに12月に入ってワールドセブンズシリーズのドバイ、ケープタウンと4週連続の大会。これ、かなりきついスケジュール。遠征メンバーも14名から増やすかもしれませんね。それでも更なる活躍に期待!!

9月の男女日本代表は忙しい

いつも女子ラグビーの話題ばかりですが、たまには男子の話題も。今月5日から男子日本代表の合宿がスタートしました。新しいメンバーに加えて、2019年W杯で活躍した姫野選手、松島選手らも招集されています。先週、協会のHPに発表された参加メンバーの顔触れを見ても、この数年間で日本代表の選手層が厚くなりました。特にFW第3列の選手は、誰もが活躍できる力を持っているような印象です。秋のテストマッチではNZ、フランス、イングランドと強豪ばかり。その前にも国内で豪州Aとの試合があります。9月のこの時期は少し前までは大学もトップリーグも開幕が話題でしたが、日本代表の話題があるのは嬉しいですね。

サクラセブンズは南アフリカW杯の開幕間近

https://twitter.com/WorldRugby_JP/status/1567469369034248193
明日9日の夜にフィジーとの初戦を迎えるサクラセブンズ、どんな活躍を見せるか

先月は南米チリで素晴らしい戦いを見せたサクラセブンズ、今週末は南アフリカで行われるセブンズW杯でどんな戦いを見せてくれるか。協会HPにある遠征レポートは、こちらトレーニングで来ているウェアにもW杯のロゴが入っていて、かっこいいですね。チリの遠征から帰国後、国内合宿を経て三枝選手(北海道バーバリアンズディアナ)が代表に復帰です。昨年のW杯アジア予選でも活躍していましたし、力強い走りを見せて欲しいです。

初戦の相手はフィジー、昨年の東京五輪では驚くくらいの活躍を見せていました。サクラセブンズは、チリ遠征と同様にしっかりとした準備をしていると思います。素早く前に出るDFでフィジーの選手を捕まえて、プレッシャーをかけられるか。もしフィジーが深いラインで、個人が仕掛けられるスペースを作れば、オフロードでどんどん繋いでくると予想します。日本のDFはそれを想定しながら、横との連携を保って粘りたいですね。今回のW杯は男子が予選敗退しているだけに、女子で世界を驚かせてほしいと期待しています。

サクラフィフティーンはW杯の壮行会を行いました

先月のアイルランドとのテストマッチ、秩父宮で素晴らしいパフォーマンスを見せて勝利したサクラフィフティーンはその2日後にW杯に向けての壮行会に参加。今は明後日10日から始まる直前合宿に向けて、リフレッシュ中でしょうか。JSPORTSさんのサイトにあるラグビーレポートに、国内総括会見のレポートが載っています、こちら。40名からいよいよ来月のW杯スコッドの32名+何人かに絞られます。選手には所属先への派遣依頼もあるので、既に伝わっていると思われますが、どんな顔触れになるか楽しみですね。

そして今月24日には、NZ女子代表BlackFernsとのテストマッチが行われます。初対戦、そしてW杯前、最後の対戦相手となります。このマッチメイクには驚き増した、正直。さらにAllBlacksの試合とのダブルヘッダー、会場は2011年のNZW杯の決勝戦も行われたあのイーデンパークですし、ある意味W杯と同じくらいの緊張感、雰囲気を体験できるのは良いと思います。W杯に向けてベストのメンバーで挑むだろうし、選手もこの試合のメンバー入りを目指して、合宿でも切磋琢磨して、更に強くなることでしょう。

先月はライバルの豪州相手に2連勝、かなり調子を上げているNZとのテストマッチはビッグチャレンジです

女子15人制日本代表サクラフィフティーンについては、セブンズW杯が終わって落ち着いたころに、またブログで書いていければと思います。改めて9月にラグビー日本代表の話題がこんなに出るとは。南アフリカのセブンズW杯の試合もフィジー戦はLIVEで見れませんが、出来る限り見たいと思います。頑張れ日本代表、頑張れサクラセブンズ!!

日本とフランスのテストマッチ振り返り

7月2日に豊田スタジアムで行われたテストマッチ、気温も35度近くになる猛暑で、世界ランク2位のフランス相手にどのような戦いを見せてくれるか注目でした。前半はリードを奪う時間もあり同点で折り返しましたが、勝負の後半に突き放されて、23-42で敗れました。

https://www.youtube.com/watch?v=iaYy7A3Cy3M

強豪フランスにしっかり戦えた前半、相手にペースを上手く握られた後半

前半の立ち上がり、キックオフレシーブからのアタックをDFに絡まれて自陣22m内でモールパイルアップを取られると、そこからのスクラムで触れられずに先制トライを奪われる悪いスタートでした。しかし、すぐにPGを決めて差を詰めると、自陣から連続アタックで敵陣G前に進み、最後はNo8のテビタ・タタフ選手がDFを突き破って逆転のトライを奪うなど、素晴らしいプレーを見せました。フランスはDFで反則が目立つものの、所々で個々の強さ、特にDFでキャリアーを押し返すようなプレーを見せ、若手主体と言われていても強烈でした。11番で出場したフィフィタ選手も試合後のインタビューで「フィジカルのところは今までやってきた中で一番強かったんじゃないかな」と話していました、こちら。そのフランスを相手に前半を同点で折り返し、後半はどういう試合になるか期待を抱いていました。

迎えた後半はフランスが開始から攻め込んでモールを押し込みチャンスを作ると、BKがラインブレイクしてトライ。前半は日本のキックカウンターから攻め込まれていましたが、後半はビッグチャンスを作らせず。タックル後のブレイクダウンでも隙が無い。試合を徐々に優位に進め、追いかける日本は焦りもあったかもしれません。ハーフタイム時の期待とは裏腹にフランスが試合をコントロールし、オフロードパスを重ねてラインブレイクしたり、連続トライを奪って突き放し、勝負を決めました。フランスの修正力の高さ、底力を感じた試合でした。一方で、日本も勝負できた時間帯もありましたし、次の国立での試合が楽しみですね。

試合後の両チームのインタビューがわかりやすい、次の国立でのリベンジに期待

照明の関係か暗く見えますが、こういう現場レベルの動画が見れるのは良いですね

試合後のフランス代表チームのインタビューの内容が記事になっています、こちら。この記事を読むと、フランス代表がいかにハーフタイムで問題点を整理して、修正できたかがわかりました。それに対して、日本代表のジョセフHCと坂手主将のインタビューも記事になっています、こちら。日本代表も何人かの主力選手にコロナ感染の疑いがあり、急な入替が出てきた状況の中で、チームとして対応できたことを前向きに捉えているようでした。これは先日の女子日本代表でも起きていましたが、チームとしてしっかり準備していることの証明ですね。それぞれW杯に向けて、選手だけでなくスタッフも対応力が上がっています。素晴らしい。

個々の選手で見れば、ワイルドナイツ所属のFLガンター選手、CTBライリー選手の強さが目立っていましたし、サンゴリアス所属のタタフ選手のアタックはフランス相手にも脅威でした。そしてコベルコ神戸スティーラーズ所属のSO李承信選手、テストマッチは先日のウルグアイ戦に続き2試合目、先発は初めて。まだ21歳ながらキッカーを務め、PGをしっかり決めて、ボールを上手く動かしてゲームをコントロールしました。後半にはタックルを弾かれて、相手のトライの起点を作ってしまったり、敵陣でペナルティーからのG前ラインアウトを狙ったタッチキックを失敗する場面もありました。この厳しい試合から多くを学んだと思います。次の日本代表のSOはワイルドナイツ所属の山沢選手だろう、と思っていましたが司令塔のSOというポジションで競争が行われるのは良いですね。

7月9日は国立でフランス戦、観客は3万人以上は入りますかね。2日に行われたJリーグの試合では5万人を超えたようですし、たくさんの観客の前で、日本のフランス戦初勝利に期待しています!!頑張ろう、日本!!

日経の五輪振り返り記事を読んでコメント

先週13日に日本経済新聞の谷口さんの記事が出ました。タイトルは五輪惨敗の7人制ラグビー 強化へ先進的な挑戦必要に、メダル獲得を目指した結果、男女合わせて10試合で1勝9敗ですから悔しいけれど、惨敗です。無料で全部読めるので読んだラグビー関係者も多いと思います。今回はその内容を読み返しながら、思ったことをコメントしていきます。前回のブログから繋がる内容かもしれませんが、似たようなこと言っているかもしれません(苦笑)

惨敗の理由は色々あれど、結局は個々の力がトップに及ばないのは否めず

「ただでさえ国際経験が乏しい我々にとって、本番でベストなパフォーマンスを発揮するコンディショニングをすることは難しかった」というコメントがありましたが、男女ともにワールドセブンズシリーズに昇格し、コアチームとして参加するも勝てずに翌年降格というのがありました。一方で東京五輪を控えている日本を招待チームとして参加し、強化させたいWorld Rugbyの意向みたいなものを感じることもありました。そうした実戦の機会にも自分たちの強みを出して勝利を重ねるような戦いは出来なかった。試合映像を見る機会は限られましたが、負けるパターンはどれも似ていたのではないか。ベストなパフォーマンスと聞いて思い出すのは2016年のリオ五輪の男子、これまで勝ったことのないNZに照準を合わせて勝つとその勢いを続けて準決勝へ。3日目のフィジーと南アフリカは力及ばずでしたが、それでも日本のスタイルが見える試合だったと記憶しています。

2021年の東京はホーム、実際に会場の東京スタジアムで本大会1年前にリハーサルで試合形式を行ったり、対策をしていましたが、それでもコンディショニングが難しかったというコメント。また大会前に男女とも海外勢との実戦機会をあまり作れなかったともありました。コロナの感染防止対策と海外勢の来日のタイミングもあり、やはりこの状況下で国内で実戦機会を作るのは難しいのは本当でしょう。結果的に石橋をたたきすぎたのだろう、とのコメントもありましたが、もしベストなパフォーマンスを発揮したところで、本当にメダルに届く力があったのかなんとも微妙です。やはりコアチームとして海外の強豪相手に試合経験を積み重ねながら、地力をつけないといけない、岩渕HCのコメントは最もだと思いますし、五輪でメダルを狙うとはそういうことかなと思います。

女子は「選手の力を引き出せたとはいえない」というコメントがありました。それに加えて「ここ数年の体づくりが非効率だったとの批判があるほか、五輪直前に男子チームと多く試合をしてけが人が続出するなどHCの体調管理にも疑問が残る。」ともありました。記事を疑うわけではないのですが、どれだけそうだったのかは正直わからないです。体づくりが非効率、って具体的に何なんだろうと。男子チームと試合をしたからけが人が続出したんですかね。それはHCの体調管理という責任なのか(もちろんチーム内ではS&Cやメディカルのスタッフ含めての責任と感じているのでしょうが)。根本の課題は選手層、ともありました。女子バスケの競技人口と比べたりもしていますが、女子ラグビーの競技人口は果たして他の国と比べて日本より多いのか。トーナメントで惜敗したケニア、ブラジルに競技人口で負けているとは思いません(実際は未確認です)し、国内でもジュニア世代からトップ世代まで様々な指導者が工夫を凝らして選手を鍛え、育てていると感じています。

ラグビーの裾野が広がれば、代表がおのずと強くなるというのは違うのでは

それからラグビーの裾野をどう広げるか、若手のタレント発掘をどうやるか、などというコメントもありました。確かに大事ですし、ここ数年でも男子高校生のBIGマンFASTマンキャンプなど強豪校以外のチームからサイズやスピードのある選手を育てようという取り組みが行われています。実際に2年前の菅平でのキャンプの様子を見学することが出来ましたが、カンタベリーのビブスがピタッとしているFWの選手たちを見ると、将来が楽しみになりました。女子は世界でも稀な国内のセブンズシリーズ大会、太陽生命WSSが2014年から行われ、国体と合わせて全国各地で女子ラグビーチームが立ち上がったり、高校でも新たに女子ラグビー部が出来た学校も増えています。

ただ競技人口が増えた結果、代表の強化に直結するというわけではないと思います。他の国の戦いを見ても、セブンズという競技に特化して鍛え上げられた集団という印象です。日本もそうやって鍛えてきたと思いますが、力の差は埋めきれませんでした。Twitterのフォロワーや関係者の話の中に、女子は太陽生命WSSの試合を増やしたほうがいい、みたいなコメントもありましたが、それと代表チームの強化は全く別物ですね。国内の試合経験を増やすことで、海外の代表チームと戦えるかというと正直そうは思えない。だからこそ代表チームの強化の仕組み、システムをいかに作っていくかが直近の課題ですね。そこが整って、出来上がってこそ、タレント発掘と育成がより結果に結びつくのだと思います。

そして最後の段落ですが「「東京五輪は終わったが、協会として7人制の強化はむしろ加速していく」と岩渕専務理事は強調する。「男女ともどこの国もやっていないような先進的な取り組みが必要になる」とも話した。現場、それを支えるマネジメント、普及や育成……。自国での惨敗を、様々なレベルで先進的な挑戦を始めるきっかけにしてほしい。」とありました。むしろ加速、先進的な取り組み、とありますが、今のところ実際にそうなるのかどうか疑問です。具体的なアイデアはこれから考えるのでしょうが、そもそも強化に必要な財源がどこにあるのだろうか、東京五輪の準備以上の予算を付けられるような結果ではないでしょう。

本当に手っ取り早いのは、海外から優秀な指導者を引っ張ってくることだと思います。協会の本気度が伝わりやすいですし、国内チームの協力も得やすいのではないでしょうか。男子の15人制は2012年からエディーさんがHCになりましたが、代表強化に加えて各地でジュニア選手へのクリニックなどの普及活動やコーチ向けの勉強会などを通じて自分のコーチング哲学や取り組みを積極的に共有するなどの育成活動にも携わってきました。その中で全国各地の指導者の横の繋がりも増えていったと感じています。

また先週Numberで柔道の井上康生と女子バスケのホーバスHCの記事がありました。
「目標設定からの逆算」で五輪を好成績に導いた指導者2人、“もう一つの共通点”とは
こちらの記事の内容からも参考になる部分は多いと思います、是非是非。7人制ラグビー競技は他の強豪国と比べて、まだ力の差はあるのが事実です。この惨敗から5年10年かけて、しっかりした地力をつける強化が出来ることを願っています。

最後に女子15人制日本代表の話を少しだけ。まず新たなアシスタントコーチが加わることが発表されました。元スコットランド女子代表のダルグリーシュ氏だそうです、ラグリパの記事はこちら。また来週から釜石市で合宿を行うことも発表されていますね。こちらは改めてブログで整理できればと思います。